夫婦共生涯労働こそが最強の老後対策。。。

 

最強の老後資産形成は
夫が家事・育児をやること?

先日、Twitterを眺めていたら、ちょっと興味深い“つぶやき”が目に入ってきた。その内容は「最強の老後資産形成は夫が家事・育児をやることである」というごく短いツイートである。一見、老後資産作りと夫の家事は関係ないように思えるのだが、要するにこのツイートが意図するところは「夫婦共働きのススメ」ということなのである。それも、いわゆる「106万円の壁」や「130万円の壁」などを意識してパートで限定的に働くのではなく、妻もフル タイムの正社員で働いていることこそが最強であり、そのためには夫婦が協力して家事や育児をやるべきだというのがツイートの趣旨だと思う。これは全くその通りで、筆者も以前から夫婦共働きこそが最強の老後対策だと考えているが、それには3つの理由がある。

専業主婦世帯は
2億円以上損をする?

まず最も大きな理由は、言うまでもなく「収入」それも「生涯年収」が大きく増えることである。労働政策研究・研修機構が2019年に出している資 料※1によれば、大卒で正社員の場合、男性の生涯賃金は平均で約2億6900万円、女性の場合で約2億1700万円となっている。残念ながらまだまだ男女 の賃金差は大きいのが現状なのだが、それでも夫婦が共働きの場合だと、夫一人が働いて妻が専業主婦になる場合に比べ、生涯賃金は2億円以上差がつくことになる。

一方、高校卒の場合は男性が2億1100万円、女性は1億5000万円である。仮に夫婦共に高校卒であったとしても合計すれば3億6100万円となるので、大卒で男性一人だけが働く場合と比べても1億円近く多くなる。

後述するが、この金額はいずれも退職金は含まず、60歳まで働いた場合のものなので、これに退職金および60歳以降の就労による賃金を加えると、「1人」対「夫婦」で稼ぐ総額の差はさらに大きくなるだろう。

共働きなら「老後資金2000万円問題」も
解決できる?

次に2つ目のポイントだが、将来受け取る年金額についてもその差は大きくなる。令和2年度の年金額改定によるモデル年金額は、夫婦2人の場合で月 間22万724円だ。これは妻が専業主婦、夫が平均標準報酬43.9万円で40年間就業した場合の数値である。これが単身の場合だと男性の場合で約15万6000円、女性の場合は12万7000円が平均となっている。

ここでも生涯賃金における男女差が反映されているのは残念だが、それでも夫婦共働きの場合はこの金額を合計すればいいので、その額は28万 3000円となる。夫1人で働き続けていた家庭の場合の22万724円と比較すれば月額6万円あまり増えることになる。昨年話題になった2000万円問題は収入よりも支出の方が5万5000円多いために5.5万円×12カ月×30年=1980万円が不足するという計算になっていた。

ところがここでも仮に夫婦共働きであれば、同じ30年間で2160万円増えることになるので、仮に2000万円不足という場合でも共働きをしてき たのなら一挙に解決することになる。つまり、生涯賃金で見ても、その後の年金額で見ても、夫婦共働きはやはり老後資産形成のためには最強の手段と言えるのだ。

リスクだらけの世の中だからこそ
共働きが最強

最後は3つ目の理由である。夫婦共働きは別の意味においても今後ますます必要になっていくと考えられる。それは何かと言うと、リスクコントロールである。

言うまでもなく、今回のコロナ禍の中で、飲食業や小売業においては多くの店が閉店や廃業に追い込まれることとなった。ケースごとに状況は異なるので一概には言えないが、いずれにしても突然、職を失うことになった人は多い。

さらにコロナの感染が収まったとしても、ここから経営状態の厳しい企業や商店が破綻するケースは出てくるだろう。さらに皮肉なことだが、ワクチン の開発やウイルス自体の終息に伴ってコロナ禍が収まってくると、公的支援も縮小されるかもしれない。そうなると経営状況の良くない企業にとっては、ますま す厳しくなることも予想される。

そんな状況の中で、収入源が一カ所しかないというのは明らかにリスクである。サラリーマンといえども、ある日突然、職を失うということが今後現実 的に起こりえるからだ。もちろん最近増えつつある副業もそれなりに必要なことだろうが、やはり夫婦がそれぞれ別の仕事を持つ、それもできれば異なる職種や 業種の仕事に就くのが理想だろう。

退職後の収入の大きさも考慮に入れると
「長く働く」ことも重要

また、「夫婦共働き」に加えて「長く働く」ということも重要なポイントだ。前述したように冒頭で紹介したレポートで出てきた生涯賃金はあくまでも 退職金を含めず、60歳まで働いた場合を基準としているため、60歳以降も働いた場合はさらに金額が増える。現時点で、サラリーマンが60歳以降に働く場 合、引退する年齢の平均は男性が68.8歳、女性が66.2歳である(総務省「国勢調査」から)。この年齢まで非正規、フルタイムで働いた場合の賃金の合 計は男性の場合で言うと、退職金を含めて4000万円となっている。

 女性についてのデータは掲載されていないが、引退年齢が早いことと男性に比べて生涯賃金がかなり低いことも合わせて考えると、男性の半分ぐらいではないかと推定される。それでも合計すれば6000万円ぐらいとなる。老後資金形成の方法として、最強なのは夫婦共働きだろうが、それに加えて、「長く働く」ということも重要なポイントであることがわかるだろう。

60歳で定年を迎えた後、68歳まで働くのは嫌だと思う人もいるだろうから、そういう人はもちろん働かなくてもよい。ただ、現在では男性の平均寿 命は81歳、女性は87歳となっている。かつて定年年齢が55歳だった昭和26年当時の平均寿命は、男性で65歳である。つまり仕事から完全引退した後、 残りの人生は10年ぐらいしかなかったのである。そこで、これを今の平均寿命81歳に置き換えて考えてみると70歳まで働いても別に不思議ではない。現に 高年齢者雇用安定法が今年の3月に改正され、来年(2021年)4月1日からは、企業に対して70歳までの就業機会の確保が努力義務として定められた。時 代はまさに「長く働く」方向へ向かいつつあるのだ。

世の中には老後の資産形成のために投資をすべきだという声は多い。筆者も投資は好きだし、それ自体を否定するものではないが、投資をするには自分でリスクを取る覚悟が必要だ。投資という不確実な手段を老後に備える方法の第一優先とすべきではない。やはり“夫婦共に”“長く働く”ということが最強の 老後資産形成法と考えるべきだろう。

(経済コラムニスト 大江英樹)

[DIAMOND online]

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