私は真剣に人生120年計画、、、人生はまだ始まったばかり。。。(1/3)

70代で死ぬ人、80代でも元気な人 第1回
血糖値、心不全…精神科医・和田秀樹氏がじわりと「老化」を感じたサインとは


人生100年時代――充実した老後のためには老後資金計画など“準備”も欠かせませんが、年齢を重ねるなかで、はつらつと過ごせる体とマインドを維持することも同じくらい重要です。

では、どうしたら、はつらつと年齢を重ねることができるのか?30年以上にわたって高齢者専用の精神科医として、医療現場に携わってきた和田秀樹氏は、70代が「ターニングポイント」だと指摘。70代を無事乗り越えることができれば、元気な80代を迎えられると言います。ただ、裏を返せば、70代には注意すべき危険が潜んでいることを意味します。

そんな70代を乗り越えるための「習慣」と「心がけ」についてのアドバイスがまとめたれた話題の書籍『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』から、第1章の一部を特別に公開します(全3回)。

※本稿は和田秀樹著『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』(マガジンハウス新書)の一部を再編集したものです。

じわりと身体に忍び寄る「老い」のサイン

一昔前であれば、60歳の還暦を迎えただけでもう十分に高齢者の仲間入りでしたが、いまの時代、60歳はバリバリの現役世代です。私も60歳を過ぎましたが、なってみれば「こんなもんか」というのが実感で、とくに老いを意識するということはありませんでした。

でも、病はべつです。

実際、60~70代になると半数くらいの人が何らかの薬を飲むようになります。久しぶりに昔の仲間と旅行に出かけたりすると、朝食の後に薬の入った袋を開いて飲み始める人が何人かいるものです。

「おまえもか」と言いながら、病気の話で盛り上がります。

若いときなら少しぐらい血圧や血糖値が高くても薬は飲まなかったのに、自分でも「用心するに越したことはない」と受け入れるのも老いのはじまりなのかという気がします。

かくいう私も、これはいろいろなところで書いてきましたが、血圧は200を越え、血糖値もコレステロール値も極めて高かったのですが、とくに気にすることもありませんでした。

ところが3年ほど前に血糖値が660まで上がって、まず歩くようになりました。少しは運動しなければ、と考えたのです。それまでは都会に暮らしているのにどこに出かけるのも車でした。運転が好きなうえに、少しの距離でもタクシーに乗る習慣が身についてしまっていたのです。

歩くようになると、今度はいきなり運動しはじめたので心不全と診断されました。それほど重い症状ではありませんが、とりあえず利尿剤を飲み、こまめに水分を摂るようにしています。

利尿剤を飲むと、トイレに行く間隔が短くなります。人と会っているときでも、「ちょっと失礼します」と席を立つことが多くなります。それでも理由を説明すると、みなさん「和田さんもそれなりに、ですね」と納得してくれます。

つまり老いはまず、こんな感じで何かの病気になって自覚することが多いのです。

「こうやってあちこちガタが来るのが、歳を取るということなんだろうな」と腑に落ちるものなのです。

次々に聞こえてくる、同世代の病

70歳を過ぎるころから、身体のあちこちに不調が出てきます。ちょうど、古希と呼ばれる年齢です。「区切りの歳だから久しぶりに集まろう」と同窓会が開かれるのも古希が多いといいます。

いざ集まってみると、話題は病気のことです。欠席した仲間の誰それは倒れたようだ、入院しているようだという話が出ます。

顔を合わせた仲間同士でも、「膝が痛くて歩くのがつらい」「脂っこいものは控えなくちゃ」「外で酒を飲むなんて久しぶりだな」などと、節制や養生の話が出てきます。

そして実際に、脳梗塞や脳溢血のような、動脈硬化や高血圧が原因で突然の発症をする人が出てくるのがこの年代です。いざ自分がそうなってみると、「あいつも病気だったのか」「あいつもリハビリ中らしい」といった噂が次々と耳に入ってくるのです。

そうなってくると、さすがに「もう若くないな」という気になります。「そろそろ歳相応の暮らし方をしなくちゃいけないな」と考えて、食事も含めてさまざまなことを自分にセーブしたり健診の数値の変化に注意するようになります。

でもそのとき、「だからアクティブにならなくちゃ」と考える人はどれくらいいるでしょうか?

「それなりの年齢になったからこそ、もっとやりたいことをやって、外にも出ていろいろな場所や人と出会うようにしなくちゃ」「いままで以上に毎日を楽しまないと、このまま老け込んでしまうぞ」と自分を元気づけようとする人はどれくらいいるでしょうか?

私の予想では、むしろ大部分の人が「節制しなくちゃ」「健康に注意しなければ」と考えているような気がします。

そのことじたいは間違いではないと思いますが、いろいろな願望や欲望を封じ込めることで、いまの状態をキープしようと考えるのではないでしょうか……。

単純な例を出すと、「肉料理が食べたい」と思っても「いや、野菜料理のほうが身体にはいいんだから」と諦めるようなことです。「旅行に行きたいな」と思っても「生活のリズムが壊れる」とセーブするようなことです。

それによっていまの状態はキープできるかもしれませんが、自分の願望を封じ込めることで、快感も幸福感も得られなくなります。張り合いのない毎日が繰り返されるだけですから、気分が高揚することもないでしょう。

●“節制”がもたらす残念な事態とは?第2回へ続く>>

[フィナシー]

飲酒が口内環境に及ぼす影響(2/2)

 

一生健康で酒を飲むために気をつけたい、「爪楊枝」の使い方

居酒屋などで爪楊枝で歯茎を刺激するのは絶対NG!

葉石かおり
エッセイスト・酒ジャーナリスト

久里浜医療センター歯科医長の井上裕之氏から、「日常的な大量飲酒は口内環境を悪化させ、虫歯や歯周病を招きやすい」という話を聞いた酒ジャーナリストの葉石かおりさん。さらに、歯周病菌は全身に回って、心筋梗塞や糖尿病、認知症のリスクにも影響を及ぼすと聞き、驚きます。歯周病対策として、どのようなお酒の飲み方をすればいいのか、また歯磨きなどの口腔ケアのやり方についても、井上氏にお話を伺いました。

前回、日常的な大量飲酒は口内環境を悪化させ、虫歯歯周病を招きやすい、という話を久里浜医療センター歯科医長の井上裕之氏から聞いた。

アルコールによる脱水作用が口内環境を悪化させやすく、また酔っぱらうと歯磨きが不十分になることなどが原因だと考えられる。また、糖分たっぷりの酒も歯に悪影響を及ぼすという。

筆者の周囲の大酒飲みを思い浮かべてみると、口腔環境が悪い人が結構な数でおり、歯周病から歯を失っている人もいる。改めて自分の酒の飲み方を考え直さねばと思った。

さらに恐ろしいことに、「歯周病の影響は、口腔環境だけではなく全身に至る」と井上氏は言う。

自分は虫歯になりやすいと思っていたため、虫歯の対策については気をつけていたが、歯周病の対策が十分かどうか不安になってきた。

そこで、井上氏に、歯周病についてさらに深掘りして聞いていくとともに、歯周病のリスクを高めない酒の飲み方についても解説してもらった。

歯周病菌が糖尿病や認知症のリスクにも影響!?

先生、歯周病が口腔環境だけでなく、体全体に影響を及ぼすというのは、いったいどういうことなのでしょうか?

「歯周病は、『歯周病菌』の感染によって引き起こされる炎症性の感染症です。昨今の研究によって、歯周病菌は、口内環境だけでなく全身に影響を及ぼし、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、そして認知症といった病気にも密接に関わっていることが明らかになってきました」(井上氏)

歯周病によって歯を失う危険性があるだけでなく、心筋梗塞や糖尿病のリスクにもつながるなんて……。歯周病菌は、どうやって体に悪さをするのだろうか。

「歯周病によって歯肉が傷つくと、歯周ポケット内がただれた状態になり、毛細血管がむきだしになります。これによって、血管を通して歯周病菌が全身へと回ってしまいます。歯周病菌は血液の成分であるたんぱく質や鉄分を好むため、血管内に定着しやすいのです。また、歯周病菌を食事の際などに飲み込み、それによって全身へ菌が回ってしまうルートもあります」(井上氏)

目に見えない歯周病菌が、気づかないうちに血管を通して全身に回り、命に関わる重篤な病気のリスクも上がってしまうなんて、考えただけでも恐ろしい。

「特に注意しなくてはならないのは、糖尿病です。歯周病があると体内に炎症物質が増え、インスリンの効きが悪くなることで、血糖値が下がりにくくなります。逆に、糖尿病があると血管がもろくなって歯肉が傷みやすくなり、歯周病が進みやすくなる傾向があります。つまり、糖尿病と歯周病はお互いに悪影響を及ぼしてしまうのです」(井上氏)

酒好きの人は、不摂生から血糖値が高めになってしまうことも多いので注意が必要だ。

「オーラルフレイル」が将来の寝たきりを招く

井上氏はまた、「歯周病によって歯を失うと、将来のフレイル(虚弱)につながる恐れがあります」と話す。

フレイルとは、加齢とともに筋力や認知機能などが低下した、いわば健康な状態と要介護の状態の中間だ。

「歯を失うと、咀嚼する機能が落ち、それが食事量の減少と体重の減少につながることがあります。この状態を『オーラルフレイル』と呼びます。オーラルフレイルになって体重が減少すると、次第に筋力も低下していきます。筋力が低下すると身体機能が低下し、転倒しやすくなり、最悪の場合は寝たきりになることも。また、オーラルフレイルによって咀嚼や嚥下の機能が落ちると、誤嚥性肺炎も引き起こしやすくなります」(井上氏)

これはもう、「負のサイクル」としか言いようがない。なるべくなら歯周病で歯を失わないよう、対策をとりたいものだ。

酒を飲むときはつまみも食べることが歯周病対策に

それでは、どのような酒の飲み方をすれば、歯周病のリスクを下げることができるのか、井上氏にアドバイスを聞いた。

「まず、お酒を飲む際には、水分をしっかりととることです。アルコールには利尿作用があり、それによって体が脱水状態になってしまいます。口腔内の唾液が少なくなり、喉が渇き、口の中がネバネバになった経験がある人は多いでしょう。これを防ぐには、アルコールによって失われていく水分を補えばいいのです。一般に、ビールを1リットル飲むと、1.2リットルの水分が体外へ排出されるといわれています。お酒と同量、またはそれ以上の水分を一緒にとるようにするといいでしょう」(井上氏)

日本酒の業界でも、日本酒と一緒に水を飲むことを以前から勧めている。確かに水分をきちんととっていると、少し深酒しても、翌朝に不快な口の渇きがほぼない気がする。「酒と一緒に水を飲むなんて邪道」などと言わず、口腔環境のためにも水分をとるようにしよう。

「水を飲むことに加え、おつまみを食べながらお酒を飲むのも大切です。食物をきちんと噛むことで、唾液が出やすくなるからです。何も食べずにお酒ばかりを飲んでいると、物を噛まないことに加え、アルコールによる脱水作用によって、唾液が分泌されにくくなり、口腔内がさらに渇いてしまいます」(井上氏)

前回の話にもあったように、唾液は口腔内を清潔に保つのに欠かせないもの。サラサラの唾液の分泌を促すためにも、つまみを一緒に食べることが大事なのだ。

「すきっ腹だと、つい飲み過ぎてしまうこともあります。つまみを食べながらお酒を飲むことで、体への負担が軽くなります。口腔環境はもちろん、体のためにもつまみとともに飲むよう心がけましょう」(井上氏)

すきっ腹で流し込むビールの爽快感といったらないのだが、そこは歯周病予防のためにもグッと我慢……、ということか。

おつまみには、噛み応えのあるエイヒレやスルメ、鶏のもも肉、牛の赤身肉などがお勧め。また、唾液の分泌を促す酢の物もよさそうだ。

「3カ月に一度」は歯科医院に通う

さて、飲み方に加え、気になるのは普段のケアだ。前回、歯磨きが十分でなかったりすると、口の中の細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面にくっつく「歯垢(プラーク)」ができると聞いた。歯垢の中には歯周病菌がたくさん存在しているという。歯周病対策としては、何より毎日の歯磨きが重要になる。

しかし、歯垢は数日経つと石灰化して「歯石」へと変わる。すると、通常の歯磨きでは取れなくなるため、歯科医院で取り除いてもらわなければならない。そのため、定期的に歯科医院に通うことが大切なのだ。

「歯石が一番たまりやすいのは、下の前歯です。歯を磨いた後、鏡でチェックし、歯石がついてきたなと思ったら、歯医者へ行くようにしましょう。また、歯茎が腫れたり、出血したりしたら歯医者へ行くという方もいますが、そういった自覚症状を感じる前に歯科医院を受診するほうがベターです」(井上氏)

歯周病の初期は、歯茎の出血や腫れ、歯茎が下がる、口臭などの症状が見られる。そうした症状に気づいてから受診するよりも、「3カ月に一度」のように定期的に受診したほうが、歯周病対策としてはよいという。

「定期的に歯医者に来れば、虫歯があっても早い段階から治療を始めることが可能です。また、銀歯やセラミックなどの詰め物をしている人は、こちらも定期的に診てもらうようにしましょう。天然の歯に比べ、人工物は固く、すり減り方に差があるため、噛み合わせに問題が生じることがあります。また、時間が経つと詰め物が緩んでしまうこともあるので注意が必要です」(井上氏)

爪楊枝で歯茎を刺激するのは絶対にNG

ケアといえば、毎日の歯磨きについては筆者も頑張っているつもりだ。電動歯ブラシに加え、水流で歯間を洗い、さらにはデンタルフロスや歯間ブラシでケアをしているのだが……。

「それは頑張りすぎです(笑)。基本としては、歯茎と歯の境目をきれいに磨くことが大切です。加齢によって歯と歯の間があいてくるので、歯間ブラシはもちろん効果的ですが、やりすぎると隙間が広がってしまい、食べ物のカスが挟まりやすくなります。それがかえって虫歯や歯周病の原因になるので、やりすぎは禁物です」(井上氏)

ショック! 「毎食しっかりケアしているから安心」と思っていたが、やりすぎだった可能性もあるとは。歯科医院では歯の磨き方も教えてくれるとのことなので、この際きちんと習うことにしよう。

「あと注意してほしいのが、爪楊枝の使い過ぎです。居酒屋でよく目にするのが、爪楊枝を2つに折って、その先端で歯茎をギューギュー押している年配の男性がいますよね。これは歯茎にとって非常によくない。歯肉が傷つき、歯茎が下がってしまいます。酔っていると力の加減も分からなくなって、血が出るまでやってしまう人もいると思います。これはすぐにやめてください」(井上氏)

これを聞いて、ドキッとした人も少なくないのではないだろうか? しかし歯の間に挟まったカスを取るための爪楊枝が、逆効果になりうることがあるとは、これも初耳。歯や歯茎は、もっと丁寧に扱ってやらないといけないようだ。

一生健康で酒をおいしく飲むためには、体を健常に保つことが第一。そのためには飲み過ぎないことはもちろんだが、口腔内をいい状態でキープすることも実は欠かせない。歯周病を防ぐためにも、酒量、飲み方に加え、日常的な口腔ケアを見直そう。

[日経ビジネス]

飲酒が口内環境に及ぼす影響(1/2)

 

お酒をよく飲む人は歯が抜けやすい? アルコールと口内環境の関係

飲み過ぎると口の中が乾燥し、虫歯や歯周病のリスクが高まる

葉石かおり
エッセイスト・酒ジャーナリスト

大酒飲みの人ほど、歯が欠損していたり、虫歯や歯周病などになりやすいのではないか、と疑問を持った酒ジャーナリストの葉石かおりさん。深酒をした日には、歯を磨かずに眠ってしまうことがあり、それも問題なのではと感じているそうです。アルコールと口内環境の関係に詳しい、久里浜医療センター歯科医長の井上裕之氏にお話を伺いました。

酔っぱらっている方を中心に、面白おかしくインタビューしているバラエティー番組を見て、ふと気づいた。

「歯が欠損している人が多い」と。

単なる偶然かと思ったが、筆者の周囲の大酒飲みを見渡してみると、口腔環境が悪い人が結構な数でいる。

還暦を前にすでに残存歯が6本しかなく、部分入れ歯になった人もいれば、重度の歯周病で歯が抜け落ちてしまった人もいる。5年以上歯科医院に行っておらず、虫歯や歯石を放置しっぱなしの人もザラだ。

筆者の場合は、虫歯になりやすいということが経験から分かっているので、3カ月に一度は歯科医院に通っている。

いや、ちょっと待って。もしや「虫歯になりやすい」というのは、日常的な飲酒が影響しているのではないだろうか?

そういえば、深酒をした際、歯も磨かず化粧もしたまま寝てしまったことがあった。そんなことが影響して、虫歯になりやすかったりするのだろうか?

口腔環境が気になるお年頃の酒飲みのためにも、ここは真意を確かめておく必要がある。飲酒と口腔環境について詳しい、久里浜医療センターの歯科医長で歯科医師の井上裕之氏にお話を伺った。

アルコール依存症の人は虫歯や歯周病のリスクが高い

先生、お酒を日常的に大量飲酒している人は、口腔環境が悪い傾向があるのでしょうか?

「当院に診察に訪れるアルコール依存症(使用障害)の患者さんを診ていると、決して口腔環境がいいとは言えません。歯が全部で28本ある中で、虫歯が20本あるような人もいます。25~70歳以上のアルコール依存症の方437人を対象に調べたデータで、平均して5.7本の虫歯があるという報告もあります。もちろんこれはアルコール依存症の方に限った話ですが、お酒をよく飲む人も、同様に口腔環境に悪影響があると考えられます」(井上氏)

平均で5.7本といったら結構な数ではないか。しかも、この報告では、40~50代に限ると虫歯の平均は7本近くになるという。やはり大量飲酒は、口腔環境を悪化させるのだろう。それはいったいなぜだろうか?

「アルコールで口腔環境が悪くなる原因は、大きく分けて2つあります。1つはアルコールの脱水作用により、口腔内の唾液が少なくなることです。二日酔いになると、喉がカラカラ、口の中がネバネバになりますよね。あの状態が口腔環境にとっては最悪なのです」(井上氏)

なんと、体から水分がなくなって、口腔内の唾液が少なくなることが問題だったとは。唾液が減ると、虫歯などになるリスクが上がるのだという。

「唾液は、唾液腺から分泌されます。唾液腺には、大唾液腺と小唾液腺があり、主として大唾液腺から唾液が分泌されます。さらに大唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺の3種類に分かれ、それぞれから分泌される唾液の性質は異なります。主に耳下腺から分泌されるサラサラの唾液は口腔を洗い流し、清潔に保ってくれます。しかし、二日酔いのときはサラサラの唾液が不十分で、口の中がネバネバした状態では汚れが取れにくいため、口腔内で菌が繁殖しやすくなってしまうのです」(井上氏)

唾液に種類があるなんて、恥ずかしながら知らなかった。井上氏によると、「大量飲酒をする人は、食事の量が少ないことも唾液の分泌に影響を与えている」という。

「日常的に大量飲酒をしている人の中には、お酒が主体で食べる量が少ない人もいますよね。アルコール依存症の方がまさにそうで、食事をしないためやせてしまっています。肥満の方はまずいません。お酒しか飲まなくなると、咀嚼(そしゃく)が減り、唾液も減っていきます。さらに、水を飲まずにお酒ばかり飲むので、脱水症状になり、口腔内が渇いてしまいます」(井上氏)

どうやら唾液は、私たちが想像している以上に、口腔環境にとって重要なものらしい。飲酒によって唾液に悪影響があるとは、大問題ではないか。

「唾液には、殺菌効果のほか、歯の再石灰化を促し、口腔内のpHを中性に保ち、食べカスを洗い流す、といったさまざまな効果があります。歯や歯茎は、唾液に守られていると言っても過言ではありません。生まれたばかりの免疫力が低い赤ちゃんがよだれをたらしているのも、口腔環境を整えたり、菌の侵入を防いだりするため。ネバネバの唾液になるまで深酒をするのは、体にとっても、口腔環境にとってもいいことがありません」(井上氏)

また、アルコールの筋弛緩作用により、喉周辺の筋肉が緩まって気道が狭くなったりすることで、いびきをかきやすくなることでも、口腔内が乾燥しやすくなるという。寝酒も要注意だ。

井上氏によると、ほどほどに飲む分には口腔内に悪影響を及ぼすことは少ないが、日常的に飲み過ぎてしまう人は、口腔環境が悪化して、虫歯や歯周病などのリスクが高くなるという。

泥酔すると、ちゃんと歯磨きできない!?

井上氏はまた、口腔環境が悪くなるもう1つの理由として、「泥酔して、歯の磨き方が甘くなること」を挙げた。

「深酒をして、アルコールの影響が運動機能を司る小脳に及ぶと、歯磨きをしても、歯の磨き残しが多くなってしまいます。磨き残しがあると、そこから細菌が繁殖し、虫歯や歯肉炎、歯周病になる確率が高くなります。ただ、虫歯には個人差があります。というのも、歯の質が強く、唾液の量がもともと多い人は、虫歯になりにくい体質なのです。アルコール依存症の患者さんでも、そのような人はいます。しかし、歯周病に関しては、虫歯になりにくい体質の人でも要注意です。日常的に大量飲酒をしていると、歯周病が原因で歯を欠損してしまうということが少なくありません」(井上氏)

泥酔して、歯も磨かず寝てしまったことがある身としては耳が痛い。先生、啓発のためにも、改めて歯周病の恐ろしさを教えてください。

「歯周病は、歯周病菌の感染によって引き起こされる炎症性の感染症です。歯磨きが十分でなかったりすると、口の中の細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。これが歯垢(プラーク)で、この中には歯周病菌がたくさん存在しています。歯周病の初期は、歯茎の出血や腫れ、歯茎が下がる、口臭などの症状が見られます。症状が悪化すると、歯がグラグラしたり、歯が抜けてしまうこともあります」(井上氏)

歯周病のメカニズム
歯周病のメカニズム
(画像=PIXTA)
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定期的に歯医者に行くことが最大の予防法

歯周病は、特に初期の頃は自覚症状があまりない。そのため、定期的に歯科医院に行くことが大切だという。

「ただ、日常的に大量飲酒をされている方は、歯医者に行くよりも、居酒屋に行って飲むことを選んでしまう傾向がありますよね(笑)。実際、アルコール依存症の患者さんは、虫歯や歯周病が進行しても、よっぽど痛みがなければ歯医者に行かないという方も少なくありません」(井上氏)

これを聞いて、歯が欠損した酒豪たちの映像が頭に浮かんできた。井上氏によると、「定期的に歯科医院を訪れようという意識があるうちは大丈夫」とのこと。筆者も早速、歯科医院に歯のクリーニングの予約を入れた。

「歯垢は、数日経つと石灰化して歯石へと変わってしまいます。すると、通常の歯ブラシによる歯磨きでは取れなくなるため、歯科医院で取り除いてもらわなければなりません。歯石も歯周病につながるやっかいなものなので、これを取ってもらうためにも定期的に歯医者さんに行きましょう」(井上氏)

特に注意したいのは、甘くて度数の高いあのお酒

ここまでの話で、アルコールの脱水作用による唾液の減少や、泥酔によって磨き残しが多くなることなどが口腔環境を悪化させることが分かった。

酒飲みとしてもう1つ気になるのは、「酒の種類によって、口腔環境への影響は変わるのか?」ということである。素人の考えでは、ワインやレモンサワーのように酸度が高い酒が、歯のエナメル質に影響を与えるのではないかと疑ってしまう。

「酸度の高いお酒よりも、歯垢のもととなる糖分がたっぷり入ったお酒のほうが口腔環境、特に虫歯にとってはダメージが大きいと言えます。大げさなことを言えば、そうしたお酒を飲んでいる数時間は、砂糖が口の中にずっとあるような状態なのですから。私がかつて診ていた患者さんでは、とても甘いお酒をケース買いしている方は虫歯だらけでした。甘いお酒が好きな方は注意が必要です」(井上氏)

昨今、コンビニの棚には甘いカクテル系の酒がずらっと並んでいるが、それを好んで飲む人は要注意だ。しかし、それ以上に井上氏が「あれは毒」と言う酒がある。

「アルコール度数が9%もあるストロング系のチューハイは、口腔環境はもちろん、体にとっても大きな負担になります。500mLのロング缶1本で、純アルコールにして36gですから、日本酒約2合分に相当するような量です。甘くて口当たりがいいので、飲み過ぎてしまう危険性もあります」(井上氏)

コロナ禍では、家で酒を飲む量が増え、値段が安くて入手しやすいことから、ストロング系を好んで飲むようになった人も少なくない。ましてや箱買いをしている人は、より注意が必要だ。糖により虫歯のリスクが上がるだけでなく、気がついたら脱水状態になって、口腔環境が悪化してしまう。

井上氏によると、「いずれにしても二日酔いになるまで飲むのは、口腔環境はもちろん、体にとっても大きなダメージになるので避けるようにしましょう」とのこと。一生健康で、おいしいものを食べながら酒を飲むためには、歯は特に大事にしたいもの。酒量も見直して、口腔環境を整えておくべきだろう。

次回は、歯周病菌が引き起こす恐ろしい全身の疾患や、歯に悪影響を与えない飲み方、具体的なケアの方法について、引き続き井上氏にお話を伺っていく。

[日経ビジネス]

 

生涯労働をしないできない人たちのために。。。

年収200万円時代、森永卓郎さんの「生き抜く知恵」支出の大半は「家」、都会を捨てる選択も

5人に1人が年収200万円以下という時代に突入した。物価高は進み、年金制度も不透明、投資する元手もなく、再就職など収入を得るハードルも高い。20年前に著書がベストセラーになったことがきっかけで「年収300万円」が流行語大賞になった森永卓郎さん。年収200万円時代に突入したいま、どう生きていくべきか話を聞いた。

ついに到来した超・低年収時代

《これから、過去に例のないほどの大不況が訪れ、年収200万円時代が到来する》

そう私が予見してから2年がたったいま、昨年の国税庁の調査で日本の労働者の5人に1人以上が年収200万円以下であることが明らかになりました。正確にいうと、給与所得者5245万人のうち年収200万円以下の人は全体の22.2%。さらに、200万~300万円の割合が15.5%ですから、なんと給与所得者の4割近くが年収200万円台以下です

この状況は、非正規社員の割合が爆発的に増えたことが原因と考えられていましたが、ここ数年を見てみると、正社員であっても年収200万円台という人が増えてきています

年収300万円以下の人の割合は37.7%。4割近くの人が年収200万円台以下である(出典:国税庁「民間給与実態統計調査」〈令和3年9月〉)

原因として考えられるのは弱肉強食社会での経済格差の拡大です。稼いでいる人はより大きな収入を得られる一方で、低所得者はさらに貧困に追い詰められていくという格差社会が問題の根源にあると思います。残念なことに、私はこの状況がさらに悪化していくと予想しています。戦後生まれの団塊の世代が後期高齢者に入る2025年以降、年金や医療、福祉などで国の負担は急速に増えていきます。その打開策として政府が打ち出したのが、労働力人口を増やすというもの。

労働力人口の減少は税収の減少に直結しますから、高齢者や女性、そして外国人労働者を安い賃金で働かせようというのが国策になりました。その結果が年収200万円問題なのです。この国最大の課題である少子高齢化が止まらない限り、経済格差はこれからも広がり続けます。

支出の大半は「家」。都会を捨てる選択も

年収200万円でも「豊かさ」を手に入れたいなら、まず、支出の大部分である住宅費に注目です

東京であれば23区内に3LDKのマンションを持つと管理費などで最低でも月数万円はかかります。賃貸であれば年収200万円のほとんどが家賃に消えてしまうでしょう。

そこでオススメしたいのが「トカイナカ」。私は都会と田舎の中間地点にあるトカイナカこそが、理想郷であると思うのです。実は私は30年以上前から、東京都心から電車で1時間半かかる埼玉県の所沢市内でトカイナカ生活を送り、そこから都心に働きに出ています。家賃相場は東京23区内に比べると3分の1以下、負担が大幅に減りました

物価に関しても大きな差を感じていて、特売品を上手に利用すると実質的な生活費は半分以下になる印象。私は自分で野菜も作っているのですが、30坪ほどの畑があれば家族分の野菜は十分に作ることができるし、健康的にもメリット満載です。

「トカイナカ」への移住で実質的な生活費は半分以下になる印象と森永さん(写真:週刊女性PRIME)

リモートワーク普及でトカイナカ生活が実現しやすい

以前ライザップのトレーニングを受けていたのですが、畑で1回農作業をするとライザップ1回分のトレーニングに匹敵する運動量だと実感しています。

もちろん、都心での暮らしを維持するために一生懸命働くのも1つの選択肢ですが、働けば働くほど税金や社会保険料は増えます。一方で、物価の低いトカイナカで生活費を下げた分には税金はかかりません。節約は無税ですからね(笑)。

コロナ禍の影響でリモートワークが進む今、トカイナカへの移住は人によっては大きな負担になりませんし、定年を控えたご家庭ならなおさら。住む場所を変えてゆったりと暮らすのも大いにアリではないでしょうか。

また、少し大胆ですが、私は日本でいちばんおトクなのは「住民税非課税世帯※」の人だと思うのです。世帯全員の住民税が0円になるだけでなく、医療費や国民健康保険料、介護保険料などの負担は最低ラインに軽減され、国から給付金が出たりといいことずくめです

※所得金額が各地方自治体の定める額より低かったり、生活保護を受けていたりする世帯が、税金や保険料などの負担が軽減される制度のこと

自治体の制度なども活用を

基準は自治体によって異なりますが、おおまかにいうと年収200万円以下なら住民税非課税世帯になるケースも少なくないので、条件を満たす人はぜひ活用を。

ただし、該当していても役所などから連絡があるわけではなく、自分での申請が必要です。当てはまるかなと思ったら、自治体の窓口に相談してみてください。使える制度は使わないとソンしますからね。

年収200万円時代を生き抜く知恵

・最大の支出である住宅費を削る
・住民税非課税世帯に該当しないか要確認

お話を伺ったのは……
森永卓郎さん
経済アナリスト

(取材・文/オフィス三銃士)

 

[東洋経済ONLINE]

コロナ回避食=自己免疫強化食

AIが分析「コロナにかからない人が食べているもの」発症リスクの高い食品もチェック

高齢者の感染対策は若者と全く違う(C)日刊ゲンダイ

発症リスクが高い5つの食品はコレ

陽性にならない人が食べているもの

陽性にならなかった人が食べているもの

[日刊ゲンダイDIGITAL]