蔓延する日本人の寿命を削る悪習慣

日本人がやりがちな「寿命を削る」2つの悪習慣

外出自粛、リモートワークの人ほど要注意

日本人がやりがちな「寿命を削る」2つの悪習慣とは? パーソナルトレーナーの鈴木孝佳氏による『疲れない体を脳からつくる ボディハック』より一部抜粋・再構成してお届けする。

コロナ禍を受けて、リモートワークが推進されている現在。普通に通勤していた頃よりも心身の疲労を感じる人が増えています。その原因は脳と体の「刺激の偏り」にあるかもしれません。

ヒトは本来、自然の中で暮らす生き物で、日中は動いて夜は休むという生活を送ってきました。夜の間はしっかりと脳と体を休めることで、疲れやゴミを取り除いてリセットする。朝日がのぼり、あたりが明るくなるのと同時に起きて元気に活動する。刻々と変化する自然の中で生き抜くために、ヒトは脳と体のあ らゆる機能を最大限に働かせていたのです。

ずっと体を動かさないとどんな悪影響が出るのか

さて、最近の自分の生活を振り返ってみたとき、この「ヒトらしい生活」を送れていると言えるでしょうか? 体を動かさず単調な生活を繰り返していると、実は脳は使わない機能を捨ててしまいます。

体を動かす脳がサビつけば、体もサビつきます。「脳への刺激があるかないか」というインプットの違いは、体のアウトプットにもすぐさま変化をもたらすのです。

例として、目を通じて脳に刺激(インプット)を送り、体を柔らかくする体験テストをしてみましょう。

①直立姿勢から足を閉じて前屈し、地面にどこまで指が近づくか確認する
②元の姿勢に戻り、20秒間“寄り目”で鼻先を見つめる
③再度、前屈をして確認する

寄り目だけで体が柔らかくなるテスト、いかがでしたか? 変わらなかった方もいらっしゃるかもしれませんが、これを試していただいた方には、テスト前は半信半疑でも、深く前屈できるようになり、「魔法!?」とよく驚かれます。

前屈が苦手な方の多くは「体がかたいから」「筋肉が短いから」と考えています。しかし、このテストでわかるように、問題は筋肉の状態ではなく、目の使い方。スマホなどで偏った目の使い方をしていると、視覚情報とつながっている脳の機能も狭まってしまうのです。

そのため、目の運動を行い、脳への刺激(インプット)を増やすと、体のアウトプットである姿勢や柔軟性、筋力は簡単に変わります。テストで前屈がしやすくなった方は「体の動きやすさは筋肉の問題ではなく、脳への刺激の問題」だと体感できたのではないでしょうか?

脳への刺激が不足すると体はどんどん機能を失い、不調をきたすようになります。運動不足は世界的にも問題視されています。WHO(世界保健機関) は、2018年に世界中の14億人以上の成人(18歳以上)が運動不足で、2型糖尿病や心血管疾患、がん、認知症などにかかるリスクが高いことを発表しました。[※注1

これらが“生活習慣病”と呼ばれるように、無意識に過ごしている日々の習慣はダイレクトに健康へ影響しています。暴飲暴食や喫煙などの生活習慣が病気の原因になるのは、誰もが知っていることです。

実際に毎年の健康診断の結果を見て、お酒を控えて塩分を気にする方も多いはずです。しかし、すこし古いデータですが、日本における2007年の生活 習慣病での死亡者数(図)を見てみると、過度な塩分やアルコールの摂取、糖尿病を引き起こす高血糖よりも「運動不足」のほうが死者数が多く、おおよそ5万人もの方が亡くなっています。

(出典:『疲れない体を脳からつくる ボディハック』より)

運動不足も、喫煙や飲酒と同じように健康を脅かす問題の1つなのです。

「座りすぎ」が日本人の生命を削る

また近年では、“座りすぎ”と死亡リスク増加との関連が研究されています。54カ国の死亡者数の3.8%にあたる43万人弱が、毎日、長時間座って過ごす生活習慣によって死亡しているという研究発表もあります。[※注2

実は日本人は「世界一座っている」という調査結果もあるほど、1日の大半を座って過ごしている人が多い国です。[※注3

明治安田厚生事業団体力医学研究所の調査によれば、1日9時間以上座っている成人は、7時間未満と比べて糖尿病になる可能性が2.5倍も高くなります。日本の糖尿病にかかる医療費は世界第5位ですが、もしかすると“座りすぎ”と関連しているのかもしれません。[※注4

“運動不足”や“座りすぎ”といった身近で何気ない毎日の習慣が不調を招き、場合によっては命に関わるということがおわかりいただけたかと思います。自粛生活やリモートワーク中、家で座ってばかりの方は、ぜひちょっとした時間だけでも立ち上がるようにしましょう。

【参考資料】
[※注1]Worldwide trends in insufficient physical activity from 2001 to 2016: a pooled analysis of 358 population-based surveys with 1·9 million participants(Regina Gutholdとその他、2018)
https://www.thelancet.com/journals/langlo/article/PIIS2214-109X(18)30357-7/fulltext
[※注2]All-Cause Mortality Attributable to Sitting Time Analysis of 54 Countries Worldwide(Leandro Fórnias Machado Rezendeとその他、2016)
https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(16)00048-9/fulltext
[※注3]日本人の座位時間は世界最長「7」時間! 座りすぎが健康リスクを高める あなたは大丈夫? その対策とは…(スポーツ庁「DEPORTARE」)
https://sports.go.jp/special/value-sports/7.html
[※注4]公益財団法人 明治安田厚生事業団「MYライフ・ドック®通信 第1号」
https://www.my-zaidan.or.jp/tai-ken/information/lifedoc/doc/lifedoc_01.pdf?190401[東洋経済ONLINE]

股関節ストレッチ2

骨盤の柔軟性を高める「骨盤歩き」「かかと突き出し」で、効率の良い歩行技術を高めよう!

理論がわかれば山の歩き方が変わる!

身体の柔軟性が怪我の予防に繋がるのはご存じと思うが、身体のパフォーマンスも高める効果も期待できる。登山では、骨盤の柔軟性を高めることで垂直方向への重心移動がスムーズになり、効率の良い歩き方へと繋がる。今回は、そのトレーニング方法を紹介する。

 

こんにちは。登山ガイドの野中です。これまでに、心肺機能や筋力以外に重要となる、登山に必要な身体機能として「柔軟性」について多く解説してきました。

日本人は正座が出来るために、膝関節の柔軟性が高い傾向があります。その一方で、比較すると足関節と股関節の柔軟性が不足しがちです。そのため、日ごろの講習会でも足関節と股関節の柔軟性に重点を置いて指導を行っており、これまでの連載でも解説を行ってきました。

中でも股関節は、下肢の根元の部分に位置するため、股関節の柔軟性は歩行姿勢や歩行動作に大きな影響を与えています。加えて、股関節の動きと連動している骨盤(腰)の柔軟性も重要となってきます。

そこで今回は、骨盤周囲の筋肉の柔軟性と可動域を増やすトレーニング、特に日常の中で取り組めるトレーニング法についてご紹介したいと思います。日々取り組んでおくことで、効率の良い歩行動作が出来るようになっていきます。

 

骨盤の動きを司るのは体幹部の筋肉

骨盤を回旋させる(前後に振る)動きを司るのは殿筋群ですが、骨盤を挙上・下制させる(上下に振る)動きを司っているのが、腹斜筋(腹筋の両脇の筋肉)や腰方形筋です(下図参照)。

これらの筋力が不足していたり、日ごろ動かさないことで硬くなっていたりすると、骨盤の動きが悪くなります。そこで、骨盤の回旋と挙上・下制への意識です。

骨盤を回旋(前後に振る)させる動きと、骨盤を挙上・下制(上下に振る)させる動き

骨盤が動くことで脚が動きやすくなるため、下肢の筋肉の負担が減り、重心移動がしやすい安定した歩行が出来ます。

逆に考えると、骨盤の動きが悪いと脚が動きにくく、下肢の筋肉への負担は増して重心移動がしにくい不安定な歩行となります。特に段差が多い登山道や 登り下り共に垂直方向への重心移動が多くなる登り下りでは、骨盤を動かしながら歩けているかどうかが、効率の良い歩行の鍵になってくるのです。

つまり段差が連続する道が苦手だという方は、この骨盤の動きが少ない可能性が高いと言えます。自分が該当すると考える人は、今回ご紹介するトレーニングに早速取り組んでみてください。

 

おすすめトレーニング法:かかと突き出しと骨盤歩き

骨盤を動かすトレーニングとして長座の姿勢からお尻を使って歩く「お尻歩き」というのが一般的に知られています。

お尻歩きの様子。骨盤を立てて、左右の脚を交互に動かして、文字通りお尻で歩いていく

お尻歩きの動作は、股関節を大きく屈曲させた状態で運動するため、登山での姿勢・動きとは大きく異なります。そこで勧めるのが「かかと突き出し」になりま す。かかと突き出しでは、登山に近い、身体が直立している歩行時に近い体勢となり、骨盤の動きを向上させることが出来ます。

就寝時など仰向けに寝転がった時に出来る運動なので、毎日寝る前に行うことをオススメします。

あお向けに床に寝転び、骨盤からかかとを押すように突き出す

 

この「かかと突き出し」で骨盤を動かす感覚を掴んだら、次は実際に歩きながら行う「骨盤歩き」にも挑戦してみましょう。骨盤の動きを中心として歩くように するため、あえて「ロボット歩き」のようになるべく膝関節を曲げないようにしながら歩きます。骨盤を挙上・回旋させる動きだけで前進していく運動です。

街中でこの歩きをしていると怪しい人だと思われるはずですので、誰も見ていない場所や、室内などで時間を見つけて取り組むようにしてください。

デスクワークなど同じ姿勢を長時間とり続ける生活が多い現代人にとって、骨盤周囲の体幹部の筋力が衰えたり、硬直が起こりやすくなったりします。

不安定な歩き方による身体への影響は、舗装路を短時間歩く分には問題は生じにくいですが、長時間の登山歩行には大きく出てきます。効率のより登山歩行を実現するために、脚だけでなく、骨盤、上半身と全身が上手く連動して動かすことが出来る状態を目指しましょう。特に、骨盤は上半身と下半身を繋げる重 要な部分です。意識的にトレーニングすることをオススメしたいと思います。

なお、私が主催している「山の歩き方講習会」「登山歩行技術講習2Days」は主に10-5月に定期的に開催しています。詳しくはホームページをご覧ください

野中径隆(のなか みちたか)
Nature Guide LIS代表

[YAMAKEI ONLINE]

股関節ストレッチ

ストレッチで股関節の柔軟性を高めれば、登りも下りも楽になる。股関節周囲の筋肉のストレッチ方法

理論がわかれば山の歩き方が変わる!

股関節周囲の柔軟性は、登山では欠かせない要素となっているものの、どうして重要なのか/どのように柔軟性を高めれば良いのかについて、わからない人も多い。そこで今回は、取り組んでもらいたい股関節周囲の筋肉のストレッチ方法について解説する。

 

こんにちは。登山ガイドの野中です。先月の記事では骨盤周囲の柔軟性について解説しました。今月はこの続きとして、股関節周囲の柔軟性について解説していきたいと思います。

人間の体は股関節を中心として脚を前方に上げる(屈曲させる)と90度以上曲げることが出来ますが、反対に脚を後方に上げる(伸展)動きは15~20度程度が一般的です。

股関節屈曲(左)と、股関節伸展(右)

このように、人体の構造上、股関節は屈曲させるよりも伸展させる動きが苦手であると言えるでしょう。

しかし、人間の脚の動きは股関節が起点となって動いています。脚を後方へ動かす(伸展させる)可動域が狭いと、上手く前方へ体を推進させることが出来ません。その代償として、足先を使った「蹴り足」動作に依存する歩き方になってしまいがちです。これでは、ふくらはぎの筋肉への負担が大きくなるうえに不安定となり、落石を起こりやすい歩き方になってしまいます。

また、下山時の歩行では、後ろ足が体重を長く支持し続けることで、着地時の衝撃が大きくなる「ドスン着地」を防いでいます。しかし、脚を後方に動か す(伸展させる)可動域が狭いと、着地をする前足での衝撃を吸収するだけの歩き方になり、着地衝撃が大きくなります。そのため、スリップしたりバランスを 崩したりしやすく、膝関節や大腿四頭筋への負担が大きくなってしまいます。

「股関節のストレッチ」と言うと、一般的には股関節を左右に開くストレッチを想像する方が多いかもしれません。しかし、歩行時に足を左右に動かす機会は少なく、前後に動かすことが大半です。大きな段差など一歩が大きくなるシチュエーションでは、大きく前後に股関節を動かす必要性があるのです。

効率の良い登り、安定して歩行速度を制御する下り、どちらの状況でも、股関節を伸展できる柔軟性を持っていると楽に歩くことが出来ると言えます。

そこで、今回は股関節周囲の筋肉のストレッチ方法を複数紹介しますので、日常的に柔軟性向上に取り組んでみて頂ければと思います。

 

腸腰筋のストレッチ

上半身が前かがみにならないように注意しながら伸ばす

 

大腿筋のストレッチ

両手で上半身を支えて、大腿部と上半身が一直線になるように倒す

 

腸腰筋・大腿筋の同時ストレッチ

バランスを崩しやすいので壁などに片手を置き、つま先か足首を持って伸ばす

 

タオルを活用したストレッチ

足首を掴むことが難しい方は細く折ったバスタオルを使って足首を保持し、ストレッチすることが可能

 

上記、4つのストレッチはいずれも、写真の姿勢よりもさらに胸を張って、首を後ろに倒すと、さらにストレッチ効果が高まりますので試してみてください。以下の動画で確認しながら試すと効果的です。

動画では、これら4つのストレッチ法と合わせて、最後にダイナミックストレッチもご紹介しています。登山前の準備運動の際には、通常のストレッチ(静的ス トレッチ)よりもダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)の方がおススメです。特に冬場の登山の前のウォーミングアップに活用して頂ければと思います。

なお、私が主催している「山の歩き方講習会」「登山歩行技術講習2Days」は主に10~5月に定期的に開催しています。詳しくはホームページをご覧ください。

野中径隆(のなか みちたか)
Nature Guide LIS代表

[YAMAKEI ONLINE]

飲酒のデメリット、ここにも。。。

筋トレ後にお酒を飲むと、せっかくの効果が台無しに?

「筋肉の合成が飲酒によって抑制される」ことが研究で明らかに

葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

コロナ禍によって自宅で筋トレをする人が増え、また、自宅でお酒を飲む人も増えている。世の酒好きは、筋トレ後の飲酒を楽しみにしながらトレーニングに励んでいるかもしれない。だが、それは「百害あって一利なし」だとしたら? 筋トレと飲酒の関係について、立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんに聞いた。

酒飲みは筋トレをしても効果が薄い…?

 「筋トレ始めました」

何だか夏の定番「冷やし中華始めました」みたいだが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための外出自粛を機に、筋トレを始めた人がなんと多いことか。

多分に漏れず筆者もその1人で、軽量のダンベルや腹筋ローラーを買い込み、せっせと自宅筋トレを行っている。そのおかげが、なんとなーく、うっすらと腹部に縦線が入ってきたような…。

しかし、しかしである。日々30分近く筋トレを行い、プロテインだって飲んでいるのに、思ったようには筋肉がつかない。筆者と同様のことを口にしているのが、周辺の酒飲みたちだ。

筋トレの方法が間違っているのか、それとも酒が影響しているのだろうか? そういえば、酒飲みたちの多くが、トレーニング後のビールやハイボールを楽しみにしている(筆者も)。もしや、酒が筋トレに何らかの影響をしているのではないだろうか…?

ネットで検索すると、「筋トレ後のアルコールはNG」という記事も散見する。これはもう識者に聞くしかない。立命館大学スポーツ健康科学部教授で、『図解 眠れなくなるほど面白いたんぱく質の話』などの本を監修している藤田聡さんにお話を伺った。

藤田先生、筋トレの後にお酒はNGという記事を目にしたのですが、真意はどうなのでしょう?

「残念ながら本当です。筋トレ後にアルコールを飲むと、筋肉の合成に悪影響を及ぼします。それを示す研究結果もあります。ちなみに筋トレ前に飲んでも、血中のアルコール濃度は急激には下がらないので、結果はあまり変わらないですね」(藤田さん)

ショック…。覚悟はしていたけれど、やはり筋トレとアルコールは相性が悪いのだ(涙)。

ではなぜ、筋トレ後にアルコールを飲むと、筋肉の合成に悪影響を及ぼすのだろうか。筋肉の合成の仕組みを踏まえつつ、教えていただいた。

アルコールによって筋肉の合成率が下がる

「筋トレを行うと、筋肉を合成する生理作用が高まります。その際、筋肉の合成を高めるスイッチとなるmTOR(エムトール)という酵素が細胞内で働き、たんぱく質の合成が活性化されます。mTORを作用させるには、筋トレ以外に、たんぱく質を摂取して血中のアミノ酸の濃度が高まることが有効といわれています。ところが、筋トレ後にアルコールを飲んでしまうと、このmTORの作用が抑制され、筋肉の合成率が3割程度も減るという研究があるのです」(藤田さん)

藤田さんが見せてくれたその研究結果を見ると、一目瞭然だ。

筋トレ後のアルコール摂取と筋たんぱくの合成率
筋トレを行った後の2~8時間の筋たんぱくの合成率を表したもの。オーストラリアのRMIT大学で、8人の運動習慣のある健常者(平均年齢21.4歳)を対象にした研究。(PLoS One. 2014 Feb 12;9(2):e88384. を基に作成)

オーストラリアのRMIT大学で行われた研究では、トレーニング後に、(1)プロテインのみ摂取、(2)アルコール+プロテインを摂取、(3)アルコール+糖質を摂取という3つのパターンを比較した。結果、(2)のアルコール+プロテインのパターンでは、プロティンのみ摂取した場合より、筋肉の合成が24%減少し、(3)のアルコール+糖質のパターンでは37%減少することが分かった。

汗水たらして一生懸命筋トレしても、その後にアルコールを飲んだら効果は激減ということか。そりゃ、いくら筋トレしてもカラダにキレが出ないはずである。肩を落とす筆者に、藤田さんがこんな情報を教えてくれた。

「筋トレ後のアルコールの影響は、女性に比べ男性のほうが大きいと考えられます。アルコールを飲むと、男性ホルモンの一種であるテストステロンの分泌が抑制されます。テストステロンは筋肉の合成と深い関わりがあるため、それゆえに男性のほうが筋肉の合成の落ち込みが大きいのではないかと考えられます」(藤田さん)

一瞬、「女性には影響が少ない」とぬか喜びしてしまったが、話の続きを聞くとそうではなかった。

「だからといって、『女性は安心して飲んでいい』というわけではありません。女性でも、筋肉の合成にアルコールが悪影響を与えていると考えられますし、 また長期的に毎日多くのアルコールを飲むことで健康に被害があることは変わりません。アルコールの影響を軽視しないようにしましょう」(藤田さん)

どれぐらいの量なら影響があるのか?

ところで、先ほどの研究で気になるのが、被験者が飲んだアルコールの量である。どのぐらいの量を飲むと、筋肉の合成にこれぐらいの影響が出るのだろう?

「この研究では、体重1kg当たり1.5gのアルコール摂取と、かなり多めの量を飲んでいます。体重が80kgの被験者が120gのアルコールを摂取しているということになります。ウォッカ60mLを4杯なので、どう考えても日常的に飲む量とはいえませんよね」(藤田さん)

…ということは、もっと少ない量であれば、筋肉の合成に影響はあまりないということなのだろうか? また、お酒の種類によって影響の大きさが変わったりしないのだろうか。わずかな希望を持って、藤田さんに聞いてみた。

「現在、どれくらいの量なら問題ないか、というデータはありません。ただ、先ほど挙げた研究の結果から推測すると、筋トレから十分に時間を空ければ、ビール(350mL)1~2缶くらいであれば影響が少ないのかなと思います」(藤田さん)

筋肉の合成が高まるのは筋トレの直後で、その後、合成率がだんだんと下がっていく。先ほどの研究も、2~8時間後の合成率について調べたものだ。そのため、十分に時間を空けて、少な目の量のアルコールを飲む分には、影響は少ないのではというわけだ。

「それから、お酒の種類はあまり関係なく、トータルのアルコールの量が問題になります。ですので、ワインのように、食事とともにゆっくり飲めるお酒か、低アルコールのお酒を選ぶようにするといいと思います。血中のアルコール濃度が急に上がらないようにするのがポイントです」(藤田さん)

朝筋トレして、夜ビール1缶ならOK?

明確なエビデンスはないにせよ、「350mLのビール1~2缶は許容範囲」と考えると、筋トレラブの酒好きとしては、ちょっとホッとする。

ホッとしたところで、藤田さんに気になる質問を1つ。先生ご自身は筋トレ後にお酒を飲むのでしょうか?

「きましたね、その質問が(笑)。僕は朝トレーニングして、夜にほぼ毎晩、ビールを1缶(350mL)飲んでいます。自宅ではこれ以上、飲みません。筋トレ直後に飲まないのは、筋トレ後の筋肉の合成のピークが1~2時間後だから。夜にお酒を飲むのであれば、朝に筋トレを行うのが効率的ではないかと思います。筋トレを行う時間帯による筋肉合成の差は少ないと考えられます。さらに言うと、注意しているのは空腹で飲まないということです。体内におけるアルコールの吸収を緩やかにし、血中アルコール濃度を急激に上げないようにするためです」(藤田さん)

朝筋トレ! これは良さそう。オンライン取材で、パソコンの画面越しでもわかる引き締まった藤田さんの姿を見ると、説得力大である。

「大切なのは、継続する、習慣化するということ。私の場合、トレーニングは毎朝30分で、筋トレとジョギングを15分ずつです。筋トレは、部位を日によって『今日は下半身』『今日は上半身』のように変えれば、飽きずにできます。筋トレは、やり方によっては週2~3回でも効果は出せますが、『明日にすればいいや』などと言い訳して先送りしそうなので、毎日することにしています」(藤田さん)

藤田さんが言うように、何より大事なのは「継続」。筋トレの効果がイマイチという方は、酒量と筋トレの時間を見直すと同時に、飲みを優先してサボっていないかを振り返ってみよう。そして、繰り返しになるが、「トレーニング直後に飲むのは絶対NG」だ。

次回は筋肉の合成に欠かせないたんぱく質の効果的な摂り方について、引き続き藤田さんにお話を伺っていく。

(図版制作:増田真一)

藤田聡(ふじたさとし)さん 立命館大学スポーツ健康科学部 教授
[日経Gooday]

正しい知識と認識から、、、リテラシーこそが不確定な社会を生き抜く力。。。

 

新型コロナ「検査の陽性者」=「感染者」ではない…!PCR検査の本当の意味

ウイルス学研究者の定義する「根本的な感染」は

「新規の感染者」とは、じつは単なる検査の陽性者

ここ最近の報道では、新型コロナウイルスの「第2波」とも伝えられる現在の流行に関し、8月下旬、「7月末がピークであり、新規の感染者数はゆるやかに減少している」との専門家の見方が示されています。厚生労働省に助言する専門家組織(アドバイザリーボード)の見解です。

その根拠として、「1人の感染者が何人にうつすかを示す実効再生産数は、8月上旬の段階で多くの地域で1を下回っている」ということがあげられ、その結果、「感染は縮小している」との趣旨でした。

たしかに大筋では現在の状況はその見解に近いものにあるとは感じています。しかし、ウイルスを研究してきたものとして、この見解とその報道の仕方には異論があります。

日本で「第2波」がきている根拠として、「検査の陽性者」を「感染者」としてとらえ、報道されていることがほとんどで、これはとてもとても重大な問題です。私の結論から申し上げると、「検査の陽性者」=「感染者」ではありません

PCR検査でわかるのは、ウイルスが「いる」か「いないか」だけ

PCR検査での陽性とは、PCR検査で新型コロナウイルスが検出されたことを意味します。

PCR法は何を検出しているのかというと、ウイルス遺伝子(新型コロナウイルスRNA)の断片になります。ウイルス遺伝子の断片が見つかったということは、「ウイルスが今いる」、あるいは、「少し前にいた痕跡がある」ということになります。

つまり、ウイルスの断片が残っていれば陽性になるということです。そのうえで、ウイルスの状態がどうなのかまでは、わかりません。ここがポイントです。PCR検査で確定できないことはいくつもあるのです。その例を5つ示します。

1=「ウイルスが生きているか」「死んでいるか」もわからない。

ウイルスは「生物」ではないという考え方もあり、正式には「活性がある」との意味ですが、この記事では一般にわかりやすいように「生きている」と表現します。PCR検査では、ウイルスが生きていなくても、ウイルス遺伝子の一部が残っていれば陽性になります。

2=「ウイルスが細胞に感染しているかどうか」もわからない。

PCR検査では、細胞に感染する前のただ体内に「いる」段階でも陽性になりますし、感染し細胞に侵入したあとのいずれの場合でも陽性になります。

3=「感染した人が発症しているかどうか」もわからない。

PCR検査では、発症していてもしていなくても、ウイルス遺伝子の一部が残っていれば、ウイルスはいることになるので検査は陽性になります。

4=「陽性者が他人に感染させるかどうか」もわからない。

たとえば、体内のウイルスが死んでおり、断片だけが残っている場合は他人に移すことはありません。また、ウイルスが生きていても、その数が少なければ人にうつすことはできません。

通常ウイルスが感染するためには、数百〜数万以上のウイルス量が必要になります。しかし、PCR法は遺伝子を数百万〜数億倍に増幅して調べる検査法なので、極端な話、体内に1個〜数個のウイルスしかいない場合でも陽性になる場合があります。

5=ウイルスが「今、いるのか」「少し前にいた」のかも、わからない。

一度感染すると、ウイルスの断片は鼻咽頭からは1〜2週間、便からは1〜2か月も検出されることがあります。これらはあくまで遺伝子の断片です。

感染とは「生きたウイルス」が細胞内に入ることで、発症とは別

いっぽうで、「ウイルスに感染している」とは、どのような状態かというと、感染しているとは、通常(生きた)ウイルスが細胞内に入ることを意味します。

新型コロナウイルスは多くの場合、気道から感染します。気道に生きたウイルスがいても、粘膜や粘液、さらにはウイルスを排出する気道細胞のブラシのような異物を排除する作用などが強ければ、排除され感染に至りません。

これらは重要な自然免疫の作用の一つです。補足すると、自然免疫にはさらに白血球などの細胞が関係する免疫もあります。

また、生きたウイルスが細胞内に入り、「感染」したとしても、その後に症状が出るかどうかはわかりません。細胞内に侵入しても、細 胞の自浄作用などでウイルスの増殖を阻止する場合があります。また、感染細胞が少ない場合も症状としては出ません。これらの場合は発症しないことになります。

一般には、感染したが症状が出ない場合を「不顕性感染」、感染して症状が出る場合を「顕性感染」といいます。

不顕性感染という言葉はよく使われますが、新型コロナウイルスでは、「ウイルスが気道にいるが感染する前の状態」と「感染してからも症状が出ない状態」の両方を不顕性感染とひとくくりにして使われていると思われます。理由は、これらの違いを区別できないからです。

不顕性感染では、通常症状が出ないまま(主に自然免疫系の働きで)治っていると考えられます。通常の感染症の場合、症状が出ない場合は感染しているかどうかわからない訳ですから、病院の受診も検査も薬の服用もしないことになります。

「発症」とは、症状を認める状態

それに対して、顕性感染は感染し症状を認める状態ですので、通常の感染症の場合、感染とはこの状態を指すことになります。この状態で病院を受診し検 査を受けてはじめて「感染している」といわれるのです。では、新型コロナウイルス感染症の「発症」とはどのような状態でしょうか。

新型コロナウイルス感染症が発症するとは、「病気として症状を認めること」をいいます。当然ですが発症している人が、感染した患者さんとなります。

ウイルスに体内の細胞内に侵入(=感染)されてしまうと、隠れてしまったような状態となり、通常、免疫系はウイルスを見つけることができずにウイルスを排除できません。この感染してから症状を認めるまでの期間を潜伏期といいますが、この間は症状が出ないのです。

症状が出るのは、ウイルスが細胞内で増殖し、感染細胞を破壊するか血液などを介して全身に広がることにより生じます。

「検査陽性者」を「感染者」とすることが問題になる理由

さて、ここからが、「検査の陽性者」を「感染者」とすることが、なぜ問題になるのかの説明になりますが、まずは、一般的な風邪のケースをあげてみます。

風邪とは、もちろん風邪の原因となるウイルスの感染により起こる病気です。寒い冬に、素っ裸で布団もかぶらずに寝てしまったら、よほど強靭な人でな ければ、間違いなく風邪をひきます。では、冬に裸で寝たときだけ「偶然に」「運悪く」風邪のウイルスをもらっているのでしょうか?

そうではなく、風邪のウイルスには、裸で寝ようが普通に寝ようが、私たちは普段から常に接触しているのです。つまり、常にウイルスは気道上(のどや鼻)に「いる」のです。

しかし、正常な免疫力がある場合には、風邪のウイルスに感染せずに発症もしません。風邪にかかったのは、冷えなどで免疫力が低下したことによるのです。つまり、通常の免疫力がある場合は気道にウイルスがいても全く発症しないのです。

もし、ウイルスが「いる」状態(PCR検査陽性)を感染=病気としたら、風邪の場合は国民のほぼ全員が感染している、つまり風邪をひいているということになります。

つまり「検査陽性=ウイルスがいる」ことだけでは「感染といってはいけない」のです。

ウイルスをもらっても感染しなければ何も問題はない

私たちは身の回りに存在する微生物と常に接触しているわけですから、ウイルスをもらっても(ウイルスがいても)感染しなければ何も問題はありません。感染しても発症しなければいいのです。そして、たとえ発症しても、重症化しなければいいのです。

補足ですが、これらを決めているのは、ウイルス自体ではなくウイルスをもらった側の免疫力であることも大切な部分です。

現在の日本では、「検査陽性数」=「感染者数」であり、ときには、「感染者数=発症数=患者数」としてひとくくりにされている場合が見られます。ここは今こそ明確に区別して伝える段階にあるのではないでしょうか。

ただし誤解のないように申し添えると、私はPCR検査に問題があるといっているわけではありません。PCR法は一般にはウイルスをもれなく見つける精度はとても高い検査になります。

繰り返しになりますが、遺伝子の一部を数百万倍から数億倍にも増やして検出しますので、理論的にはわずか1個〜数個の遺伝子の断片でも検出できます。

しかし、新型コロナウイルスに対してでは、この「もれなく見つけるという能力」が低く、精度は70%ほどと推定されており、せっかくのメリットが生かされていません。

この能力が低い理由は様々なことが考えられますが、大きくはウイルス量が少ないこととウイルスが変異していることの2点になると思います。にもかか わらず、新型コロナウイルスの検査法ととし、PCR法が世界で共通して行われているのは、他の検査法がないためという点に尽きます。

陽性者が少ない状態で検査数を増やすと、間違いばかりが多くなる

検査にはある程度の間違いが必ず生じます。まず、PCR法は、まれに間違えて、他のウイルスを持っている人やウイルスがいない人(陰性)をいる(陽性)と判定してしまうことがあります。

間違いの頻度が少なくても、数が多くなると問題が大きくなります。とくに陽性者が少ない状態で検査数を増やすと、この間違えて「陰性を陽性」としてしまう数ばかりが多くなってしまうのです。

しかし、これを理由にPCR検査がまったく意味がないということにはなりません。陽性者が少ない状態で検査を増やすのが問題ですので、本当の陽性者が多いと疑われる集団に限定して検査するのは問題ないのです。

つまり、PCR検査とは、無症状の人を含めて闇雲に検査をするものではなく、医師が診察して(あるいは問診などにより)コロナウイルスの検査が必要だと判断した人(陽性の可能性が高い人)に対して行う検査なのです。

PCR検査は、これらのことを熟知して検査するのであれば、全く問題なくとても有益な検査になります。

検査に精力を傾けるよりもみずからの暮らし方や食生活を見直す

もう一点、逆の視点から補足すると、「検査陰性」でも絶対に安全とはいえないのが、PCR検査でもあるのです。

ウイルスをもらってすぐ、あるいは細胞に感染してすぐの状態でウイルスが増えていない場合では、結果は陰性になります。また、検査した後に新たにウイルスをもらっている可能性がありますので、検査が陰性であっても、絶対に安全とはいえません。

安全性を高めるためには、定期的に繰り返しの検査が必要になりますが、それでも絶対にはなりませんし、費用や煩雑さの問題も生じます。

そもそも新型コロナウイルスはそこまでして絶対にいないことを確認する必要があるウイルスではない、と私は考えています。

そこに精力を注ぐよりも、みずからの暮らし方や食生活を見直し、不自然な日常をひとつずつでも自然に沿った暮らし方に改めていくことが、自分自身の 免疫力や自然治癒力を高めていくことにつながります。それこそが、新型コロナを恐れない根本的、かつ、唯一の方法と信じています。

現在の流行は「感染の第2波」ではなく「第1波のくすぶり」ととらえるべき

最後にもうひとつ、定義があいまいなことは「感染の第2波」です。いったんは収束しつつあったとされた日本や、ヨーロッパ諸国で現在起きているとされる第2波は「何」を指していっている言葉でしょうか?

私は、全世界208か国のPCR陽性数やPCR検査数、死亡数などのデータを集めています。詳しい解析結果は私のSNSに紹介していますので、ここ では省きますが、現在の第2波がきているとされる世界のすべての国(16カ国)のデータをまとめると次のようなことが見えてきました。

●流行は必ず収束するが、患者の発生がなくなることはない。私はこれを「くすぶり状態」といっています。

●COVID-19では不顕性感染が多く、検査数が増えると陽性数も増えるため、陽性数だけでは第1波と第2波を単純に比較できない。

●陽性率(陽性者/検査数)を計算すると、全世界のすべての国の解析で第1波の陽性数ともよく相似しており、陽性数よりも流行の実態に近いと考えられる。

●第2波がきているように見えても、陽性率の推移ではほとんどの国(13か国)が第1波後のくすぶりの状態であり、死亡数の増加はみられない。日本もこの中に入る。

13か国とは、日本、スロベニア、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、デンマーク、ギリシア、マルタ、スロバキア、スペイン、カンボジア、トニダード・トバゴです。

●本当に第2波がきていると考えられる(陽性率も増加している)のはわずかに3か国だけで、第2波の死亡数が増加しているのは、この3か国のみである。

3か国とは、オーストラリア、イスラエル、クロアチアです。

●現在の日本の陽性者数であれば、今後重症者や死亡数が大きく増加する可能性は低いと思われる。

現在の日本の現状は、陽性数がかなり増加しているように見えても、陽性率ではほとんど増えておらず、第1波後の「くすぶりの状態」の範囲内というのが私の結論です。

つまり、見かけ上、「第2波」のよう見える今の流行は、本当の第2波ではないと思われます。陽性率もわずかに上昇していますので、これを仮に「第2波」としても、とても小さな第2波ということになります。

今後、新型コロナウイルス感染症は、単純に検査陽性数だけではなく、陽性率や重症者数、死亡数に着目していく必要があると考えています。そういう意味では、真の第2波に備えることは、これまで以上に大切になるでしょう。

[マネー現代]