断食は万病に効く。。。

食べ過ぎには18時間の“プチ断食”が効く!

「緊急2日間ダイエット」で脂肪や有害物質を排出

得意先の接待など、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎが続くと体調を崩しがちだ。気がついたら“体重増”一直線の憂き目を見ないためにはどうすればいい? 不快な胃もたれ・胸焼け、はたまた二日酔いから即効で立ち直るには? つい食べ過ぎ・飲み過ぎをしてしまった後でも、それをなかったかのようにカラダを復活させてくれる即効リセット術を3回連載でお届けしよう。

 本人が望む望まずにかかわらず、食べ過ぎ飲み過ぎが避けられない時がある。“サイズ増量”一直線をご心配の方も多いのではないだろうか? 果たして、「食べ過ぎた」ものをなかったことにできる夢のような即席ダイエット法はないのだろうか?

「食べ過ぎた糖分が体脂肪に変わり、体重が増えるのは約2週間後。1食くらいドカ食いしても、緊急対策として1~2日の間に食事の摂取制限と体に溜まった糖分の“消費”を行えば大丈夫です」

ダイエット法に詳しい管理栄養士の伊達友美さんは、きっぱりと言い切る。

その訳はこういうことだ。

食べ過ぎによる余剰カロリー分は、まず糖として肝臓に蓄えられる。その量はだいたい1食分程度。肝臓に入りきらなくなった分が脂肪細胞に運ばれ、徐々に体脂肪となる。なお、暴飲暴食の翌日、体重が増えたように感じても、実はそのほとんどが取り過ぎた食事に含まれていた水分の蓄積による「むくみ」が原因だ。

肝臓に蓄えきれなくなった糖分が徐々に蓄積されて、2週間後に太ってくるのなら、その前に使い切ってしまえばいい。その策を伝授しよう。

食べ過ぎたら18時間は食事を控える

「これ以上糖分を溜めないように、食べ過ぎてしまってから約18時間は、水分以外は何も口にしないようにしましょう」というのが伊達さんの最初のアドバイス。夜の10時まで食べた場合は翌日の夕方4時まで、午前様になった場合は夕方の6時過ぎまでは、基本的に通常の食事を控えたほうがよい。

つまり、朝食と昼食は基本的には抜く形になる。こうすれば、前夜のオーバーカロリー分は十分に相殺できる。同時に、18時間の絶食には胃のサイズを元に戻す効果もある。

胃は伸縮性に富んだ臓器で、食べれば食べるほど膨らんでいく。よって、食べ過ぎた翌日の胃は膨張している。この状態で食べ続けてしまうと、胃が膨らんだ状態が日常となってしまい、容量の増えた胃には普段より多くの食べ物が入ることになる。この結果として食べ過ぎ体質になり、糖分を消費するどころかさらに蓄積されることで、ぽっこりお腹まっしぐらとなってしまうのだ。そこで、胃の大きさを元に戻すことが重要になる。

とは言っても、朝食、昼食を抜くのは我慢できない人も多いだろう。そういった場合は液体のものならOKという。例えば野菜ジュース。また、みそ汁、わかめスープなどでもいい。どうしても固形物が食べたいという方には果物がお勧めだ。果物は成分の多くが水分で、含まれる酵素の働きによって消化がいいので、胃にたまりにくい。カリウムも豊富なので、むくみの改善にも役立ち、必要最小限の糖分やビタミンなども補給できる。

節制後は和食がオススメ

18時間の節制を行おうとすると、食べ過ぎの翌日の昼頃になって胃がグーグーと鳴ってくる。「この、グーグーという音は実は空腹のために鳴っている音ではなく、前日の食べ過ぎによって膨らんだ胃が縮む時に出る音です。この段階では胃が元に戻ろうとしている途中で、戻りきってはいませんので、まだ食べてはいけません」(伊達さん)。

18時間を経過したら、待ちに待った食事を取ることができるが、その内容には注意が必要だ。いきなりコテコテの肉を食べることは避けたい。例えば、魚がメインの和食などがお勧めだ。「魚の脂に含まれるオメガ3脂肪酸には、脂肪の代謝を促す働きがあります」と伊達さん。青魚に多く含まれているが、苦手な場合は旬の魚を選ぶといい。

「このタイミングで食べる食材としては、前の日に食べた食材が含む添加物などの有害物質の排出を促進してくれるものもお勧めです。例えば、葉物では苦みが少しあるヨモギや春菊、三つ葉など、根菜では食物繊維の多いゴボウやレンコン。粘り気のあるものもお勧めで、納豆や山芋、おくら、めかぶなどもいいですね。特にブロッコリースプラウトは排出作用が強く、私のお気に入りです」(伊達さん)。有害物質を排出することで、体の代謝が良くなり、脂肪の蓄積を防いでくれる。

食べ過ぎ・飲み過ぎの翌日はこのように食事に気をつけることに加え、午前中に水分をきちんと取らなければいけない。朝一番に口に入れる水は味も色も香りもない真水、もしくは白湯がよい。飲み過ぎによる脱水状態からの回復に加えて、食べ過ぎで溜まった有害物質の排出や、むくみの解消を促してくれる。コーヒーやお茶はカフェインが入っているので、朝一番に飲むには刺激が少し強すぎる。スポーツ飲料も、実は糖分が多く、一気に吸収されて血糖値が上がってしまうためNGだ。

体内の糖分はNEAT生活で消費

胃の調子を整えるだけでなく、脂肪の蓄積を防ぐには、食べ過ぎで一時的に体内に貯蔵されている糖分を消費しなければならない。そこで伊達さんが勧めてくれたのは、「NEAT」(Non-Exercise Activity Thermogenesis:非運動性活動熱発生)と呼ばれる活動を増やすライフスタイルだ。働かない若者を意味する“NEET”ではない。

具体的には、食べ過ぎた翌日は、エレベータを使わないで階段を使う、電車では立つ、家事を積極的に行うなど、日常生活での活動量を高めるよう少し気をつける。これだけで、肝臓に一時的に溜まっている糖分を消費することができ、体脂肪に変わるのを事前に止めることができるという。

何も特別な運動は必要ない。ファッションモデルのように、立ったり、歩いたり、座ったりする際に良い姿勢を保つこともNEATに含まれ、相当なエネルギー消費になるのだという。このほか、四股を10回踏むだけでもいいし、肺を大きく動かす深呼吸を何回かするだけでもNEATとなる。

このNEATが広く知られるようになったのは、1990年代後半に米メイヨークリニックの研究グループが関連の研究発表を行ってからだ。私たちは毎日、当然のごとく体を動かしているが、ちょっとした身体活動で使われるエネルギー熱量(NEAT)は、1日に使うエネルギー量の60%にもなるとされている。

さらに、NEATの値が高い人は、呼吸をしたり、臓器を動かしたりする基礎代謝量も高いことがわかっている。基礎代謝とNEATを合わせれば、1日に使うエネルギー量の70%にもなるのだ。

最後に、今回紹介した緊急2日間ダイエット法を以下にまとめた。宴席が続いた際の体型維持のお役に立てれば幸いである。

緊急! 2日間ダイエット法
  1. 食べ過ぎた後、18時間は何も食べない。ただし水分補給は必要。水か白湯、ほかには野菜ジュースやみそ汁などでもいい。
  2. どうしても固形物を取りたい場合は果物。
  3. 18時間経過した後はお腹にやさしい和食がお勧め。
  4. 18時間後の他のおすすめ食材は有害物質を排出してくれるもの。
  5. 「NEAT」(非運動性活動熱発生)を意識して、余分な糖分を燃焼させる。

[日経ビジネス]

呑まないにこしたことはないにせよ、せめても最小限の酒量にとどめましょう。。。

ホントに飲酒で免疫力は下がるのか? コロナ禍の今こそ徹底検証

 コロナ禍は、個人の「飲酒」にも大きな影響を及ぼしています。自粛生活を強いられ、外でお酒を飲む機会が激減し、その結果、自宅で飲むお酒の量が増えてしまった人も少なくありません。

酒ジャーナリストの葉石かおりさんは、コロナ禍で自宅での飲酒量が増え、「5リットルの業務用ウイスキー」を買ってしまったこともあります。そんな状態から飲酒量を見直し、酒との付き合い方を変えるのに役立ったのは、これまでに「酒と健康」をテーマに取材した専門家たちの言葉でした。

最新刊『名医が教える飲酒の科学』では、そうした専門家への取材の成果をまとめたもの。その中から、飲酒と人の免疫の関係についてのパートをお届けします。アルコールは、さまざまな免疫機能に悪影響を及ぼすことが分かっています。

アルコールは免疫システムに直接的な悪影響を及ぼすだけでなく、より深刻な“2次的”影響を与えるという。(写真:PIXTA)
アルコールは免疫システムに直接的な悪影響を及ぼすだけでなく、より深刻な“2次的”影響を与えるという。(写真:PIXTA)

酒はやはり免疫に悪影響を及ぼす

テレビをつけていたら、こんな会話が聞こえてきた。

「お酒飲むと『免疫力』が下がりますからね」
「そうそう、だからコロナ禍では飲まないほうがいいんですよ」

昔から「アルコールは免疫力を下げる」という話はよく耳にしていたが、コロナ禍だからこそ、話題になっているようだ。

とはいえ、「これって事実なのだろうか?」と疑っていた。私事で恐縮だが、これだけ日々酒を飲んでいるにもかかわらず、ここ数年、風邪らしいものをひいたことがないし、50歳過ぎても大病、入院などは皆無。数値などで測定したわけではないが、免疫力は高いつもりでいる。そんなこともあって、「アルコールは免疫力を下げる」という説を今ひとつ信じたくなかった。

だがしかし、新型コロナウイルス感染症に関連して、酒を多く飲む人ほど肺炎にかかるリスクが高いという研究があると聞いた。飲酒量が増えると免疫に問題が起き、肺炎にかかりやすくなるというわけだ。

これが真実なのだとしたら、どのような仕組みでアルコールが免疫に悪影響を及ぼすのだろうか。免疫の仕組みを知らないまま、酒を飲み続けるのもちょっと怖い。

そこで、帝京大学先端総合研究機構の特任教授で、免疫学を専門とする安部良さんに話を聞いた。先生、アルコールは免疫に悪影響を及ぼすのでしょうか?

「はい。アルコールはヒトの免疫に対してさまざまな影響を与えます。ひとつ例を挙げると、ウォッカのようにのどがチリチリするようなアルコール度数の高いお酒は、のどの粘膜を傷つける恐れがあり、粘膜に傷がつくと免疫力は低下します」(安部さん)

なんと……。酒好きの中にはウイスキーやウォッカがもたらす、あのチリチリとした刺激がたまらないという方も少なくない。そのチリチリが粘膜を傷つけ、免疫にも問題を与えているとは知らなかった。

そして、のどの粘膜も免疫に関わっているとは。免疫とはよく聞く言葉だが、そもそもどのような仕組みなのかよく知らない。改めて免疫について基本的なことから教えてくれませんか。

「免疫の『疫』は病気のことを指します。疫から免れる、つまり免疫とは文字通り、病原体から体を守る防御システムということです」(安部さん)

免疫による防御反応は「3段階」

ありがたいことに、私たちにはこの免疫が備わっているおかげで、新型コロナウイルスをはじめとするさまざまな病原体が体の中に侵入するのを防ぐことができ、また侵入を許した場合でも退治できる。そして、免疫による防御反応は「3段階」あるという。

「ウイルスなどの病原体は、3段階で撃退されます。第1段階は『自然バリア』と呼ばれ、皮膚や粘膜などが病原体の侵入を防ぎます。そして、万が一、侵入を許した場合は、次の第2段階である『自然免疫』で、マクロファージなどの食細胞が病原体をパクパクと食べてくれます。それでも退治できない場合、最後の第3段階『獲得免疫』で、その病原体に適した攻撃を繰り出します」(安部さん)

免疫は3段階
免疫は3段階

免疫による体を守るシステムは、このように非常に高度な仕組みで構成されている。それでは、この3つの段階のうち、どこにアルコールが影響を与えるのだろうか?

「実は、3段階いずれにも、アルコールが直接的な影響を与えます。ヒトの免疫にとって、お酒は好ましくないものなのです」(安部さん)

ショック……。誰か噓だと言ってほしい。

3段階について、それぞれの詳しいメカニズムを教えてもらおう。

「まず、第1段階の自然バリアは、体のさまざまな箇所にあり、大きく3つに分類されます。ひとつは涙、汗、唾液、尿などの『物理的障壁』です。また目には見えませんが、腸管にある柔毛(じゅうもう)、気道にある線毛(せんもう)もまた、体内へ侵入しようとする病原体を外へと押し出す運動を常にしています。風邪をひいて痰が出るのは、線毛の働きによるものです」(安部さん)

病原体の侵入を防ぐ「自然バリア」は3種類
病原体の侵入を防ぐ「自然バリア」は3種類

こう聞くと自分の汗や涙まですべて愛おしくなる。ほかにはどんなバリアがあるのだろう。

「2つ目のバリアは『化学的障壁』です。胃などの粘液に含まれる酵素や酸性物質、皮脂に含まれる脂肪酸や乳酸、また体の表面に存在する抗菌ペプチドがこれに当たります」(安部さん)

そして3つ目は「微生物学的障壁」。「これは、皮膚や腸などに存在する常在菌を指します。やたら顔を洗ったり、風邪をひいて少し具合が悪かったりすると抗生物質を飲んでしまう人がいますが、こうしたことを考えると『もったいない』と思いますよね」(安部さん)

風邪をひいて処方された抗生物質を飲んだのはいいが、下痢をしてしまうことがあるが、この現象により「ありがたい常在菌が減ってしまう」のだという。

「若い世代は自然バリアがしっかりしているため、病原体に強いのです。新型コロナを例にとっても分かるように、若い世代は感染しても重症化しにくいですよね。これは自然バリアがしっかり働いているためと考えられます。ただし個人差があるので、『若いから絶対に重症化しない』とは言い切れません」(安部さん)

汗や胃酸、常在菌などによって守備が固められている自然バリア。先ほど、ウォッカのようにアルコール度数の高い酒に注意したほうがいいと説明したのは、のどの粘膜にある自然バリアを壊してしまうからなのだ。

酒を飲むと「マクロファージ」が“混乱”

病原体が第1段階の「自然バリア」を突破してきたら、次はどうなるのだろうか。

「次の第2段階である『自然免疫』が病原体をやっつけます。そこで大活躍してくれるのは、『マクロファージ』と呼ばれる病原体をパクパクと食べてくれる食細胞です。マクロファージは自分の中に病原体を取り込んで死滅させるだけではなく、サイトカインという物質をまき散らします。サイトカインにより、血管内から好中球(白血球の一種)をはじめとする援軍が呼び込まれます」(安部さん)

そして、こうした自然免疫の働きにより、熱や腫れなどを伴う「炎症」が起きる。

「炎症が起きると、結果として病原体が弱ります。分かりやすく言うと、風邪をひくとのどが腫れたり、鼻水が出たりしますよね。あれはまさに、のどや鼻で炎症が起き、自然免疫の力によって病原体を退治しようとしているのです。ですから、既往症のある方や高齢者はさておき、若い方は自然免疫がせっかく働いているのですから、少しのどが痛いくらいで薬を飲んでしまうのは、もったいないと私は思いますね」(安部さん)

そして安部さんによると、アルコールはこの食細胞であるマクロファージにダメージを与えてしまうという。

「アルコールがマクロファージに直接働いて混乱させ、機能を低下させたり、働きを抑制させたりすると考えられています。特にだらだらと長い時間飲むほど、その作用は大きくなる傾向が強いと言われています」(安部さん)

では「最後の砦」ともいえる第3段階の免疫システムはどうなのだろう?

「自然免疫でも病原体が撃退できなかった場合に働くのが、免疫システムの最終兵器ともいえる『獲得免疫(適応免疫)』です。これはマクロファージのように常に体の中をパトロールしているものではありません。そのため、病原体の感染から数時間で自然免疫が活性化するのに対し、獲得免疫が活性化するのには数日間のタイムラグがあります」(安部さん)

最終兵器というだけあって、そのシステムは実に巧妙かつ強力だ。

「まず、自然免疫として働く樹状細胞が病原体の情報をつかみ、それをリンパ球の一種であるT細胞へと渡します。樹状細胞はいわば“スパイ”のようなものです。病原体の情報を受けとったT細胞はその病原体に適した攻撃をするよう、さまざまな細胞に働きかけます。その中でもB細胞は優秀で、病原体を攻撃する『抗体』を作り出します」(安部さん)

自然免疫との大きな違いは、獲得免疫には「免疫記憶」があることだ。「免疫記憶とは、簡単に言うと、一度かかった感染症にかかりにくくなる、またはかかっても軽症で済むというものです」(安部さん)

樹状細胞はスパイで、T細胞は司令官で、B細胞が攻撃するミサイルを作り出す。目に見えないところで、私たちの体を守ってくれている高度なシステムがあるのだ。これだけ複雑で高度なのだから、「アルコールくらいへっちゃらなのでは?」と思いきや、そうもいかないらしい。

「自然免疫の段階で、マクロファージなどの働きがアルコールによって抑制されてしまうと、スパイ役の樹状細胞の働きが鈍ると言われています。またT細胞やB細胞をはじめとするリンパ球に対し、アルコールが何らかの影響を及ぼすという動物実験のデータもあります」(安部さん)

なるほど、T細胞やB細胞などが働く高度なメカニズムの免疫も、アルコールの影響を逃れられないのだ。

アルコールによる「2次的な影響」とは?

アルコールは人の免疫にさまざまな悪影響を及ぼすことが分かった。だが恐ろしいことに、安部さんは、「アルコールはさまざまな疾病につながり、それによる2次的な免疫への影響のほうが、これまで解説してきた直接的な影響より深刻である可能性もある」と言う。いったいどういうことなのだろう?

「2次的な弊害とは、分かりやすく言うと、アルコールの慢性的な飲み過ぎ、おつまみの食べ過ぎによって、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の罹患リスクが上がったり、肝機能が低下したりすることが、免疫にも悪影響を及ぼすということです」(安部さん)

確かに、酒を飲み過ぎたとき、アルコールが免疫システムに直接的に悪影響を及ぼしたとしても、それは一時的なもので、二日酔いがよくなっていくように、免疫システムのほうも次第に回復していくのかもしれない。それに対して、長年の飲酒により生活習慣病になってしまったら、今度は慢性的に免疫力を低下させることにつながる。

アルコールが免疫に及ぼす“2次的”な影響
アルコールが免疫に及ぼす“2次的”な影響

アルコールの飲み過ぎは糖尿病、高血圧、動脈硬化、肝臓の機能低下、がんなどを誘発する。こうした病気に罹患している人は免疫機能が低下していて、新型コロナウイルス感染症が拡大する状況においてリスクに直面していると言われている。ではいったい、どのような仕組みでこうした病気が免疫に影響を及ぼすのだろう?

「考えられるのは、『血流』です。糖尿病では高血糖により血液がドロドロになることで、また動脈硬化では血管が硬くなることで、血流が悪くなります。血流が悪いと、必要な免疫細胞が、体の必要な場所へと届かなくなってしまうのです」(安部さん)

どんなに高度な免疫システムがあっても、「血流」という弱点があったとは……。近年、血管年齢の重要性が叫ばれているが、血管の状態や血流は免疫にも大きく影響しているようだ。それでは、肝臓の機能低下についてはどうだろうか。

「アルコールが肝臓で代謝されるとき、その過程で人体に有害なアセトアルデヒドが生成され、さらにそれが無害な酢酸に分解されます。大量の飲酒を続けていると、肝臓がアセトアルデヒドを分解しきれなくなり、今度はアセトアルデヒドによって肝臓の細胞が攻撃されてしまいます。これによって肝機能が低下し、免疫も落ちてしまうのです」(安部さん)

肝臓には、食事で得られた栄養を体が使いやすいように作り直し、必要に応じて供給する役割がある。この機能が低下すると、免疫細胞や抗体など、免疫システムに必要な要素が不足してしまう。また、アルコールや薬剤、体内で作られるアンモニアなどの有害物質を代謝するのも肝臓の役割だが、こうした働きが鈍って有害な物質がたまると、免疫細胞の機能に悪影響を及ぼすことも考えられるという。

免疫を低下させないためにも、病気のリスクを上げてしまうような飲み方は控えなければならない。しかし「まったく飲まない」というのは、酒好きにとってかえってストレスになってしまう。

「おっしゃる通り、お酒好きの方にとって、断酒はかえってストレスになりますよね。ストレスは免疫に悪影響を及ぼしますので、飲み方に工夫をされるとよいと思います。免疫の第1段階である自然バリアの粘膜を傷めないよう、のどがチリチリするようなアルコール度数の高いお酒は避けるか、炭酸水や水などで割って飲むことをお勧めします。また、生活習慣病やがんなどのリスクを上げないためには、飲み過ぎないようにしましょう。休肝日も取り入れてほしいですね」(安部さん)

安部さんの話をまとめると、酒は休肝日を取り入れつつ、適量を守る。それに加え、栄養バランスの取れた食事をとり、適度な運動をして、よく寝ることが大切だ。ごく当たり前のことと思われるかもしれないが、これが免疫のためにいい生活習慣なのである。

(図版制作:増田真一)

[日経Gooday]

健康の根幹は姿勢と歩行と呼吸、、、日々の小さな積み重ねが道を分ける。。。

腰を痛めない、体をゆがませない「かがみ方」のトリセツ

正しい“かがみ方”で体が変わるのを感じよう(正しい姿勢図鑑・前編)

日常のちょっとした動作も、姿勢が崩れた状態で行うと腰を痛めたり、姿勢をさらにゆがめたりする原因に。そこで、シーン別にそれぞれの動作を見直してみましょう。今回は日常シーンに多い、「かがむ」時の姿勢をチェック! 腰への負担を軽くするなら、ひざを使い、背筋を伸ばすのがポイントです。姿勢治療家の仲野孝明さんと柔道整復師でフットマスターの新保泰秀さんに聞きました。

【顔を洗う】シンクに顔を近づけるときは股関節から曲げる

朝起きて、顔を洗おうとして腰を大きく曲げた瞬間に、ぎっくり腰になる人が少なくない。腰だけで上半身を支えようとして、腰に負担が集中するからだ。ひざを曲げる動作を入れることによって、腰への負担を軽減できる

【顔を洗う】シンクに顔を近づけるときは股関節から曲げる
マル ひざを曲げてシンクに近づく
まず、脚を開いてひざを曲げよう。そうすることでシンクに近づく。両脚でしっかり体重を支えながら、股関節から上体を曲げる。蛇口から水を受けるときなどは、洗面台の端にひじをつくと、さらに腰への負担を減らすことができる。
バツ 背中が曲がっていて腰を痛める
脚をそろえてひざをぴんと伸ばした状態で顔を洗おうとすると、背中を大きく曲げることになる。股関節から曲げるならいいが、背中を丸めると、おなかに力が入らず、上半身の重みが腰に集中するため、腰痛を起こしやすくなる。

【歯を磨く】下を向かずに、背筋を伸ばすと負担がない

歯磨きをしているとき、歯磨き粉が垂れないようにと、洗面台に顔を近づけている習慣がある人は注意。背中を丸めた猫背姿勢になる上、不安定となった上半身を支えるために、腰に多大な負担がかかっている。

【歯を磨く】下を向かずに、背筋を伸ばすと負担がない
マル 背筋を伸ばし、手で支えて安定を
シンクに向かってかがまず、横から見たときに肩、股関節、ひざが一直線になるように立とう。不安定なら、洗面台に手を添えて体を支えるといい。手で支えながら、つま先立ちをすれば、歯磨きの時間がトレーニングタイムに。
バツ 「垂れないように」で失敗。腰に負担が
油断すると服に垂れて跡がつく歯磨き粉。そこで、垂れないようにしようと洗面台に顔を近づけると、背中を丸め、腰を曲げた姿勢になる。ぐらぐらと不安定な上半身を支えるために腰に大きな負担をかけて、腰痛を引き起こす原因に。

【靴下をはく】片足立ちだと背中が曲がり、腰が痛む

片足立ちで靴下をはくことができるのが若さの証明とばかりに、ぐらぐら不安定な状態で靴下をはくのはとても危険。腰に負担をかけて、痛みを引き起こすもとになる。無理せず、椅子や台を使おう

【靴下をはく】片足立ちだと背中が曲がり、腰が痛む
マル 台を使うとき、股関節から曲げる
靴下をはく前に、姿勢良く立とう。さらに、靴下をはく側の片足を台にのせるときに、股関節から曲げ、顔は下げないようにする。この動作によって、猫背にならず、腰を痛めなくなる。
バツ 台に足をのせても、背中が曲がっている
体を安定させるために、片足を台にのせて靴下をはく人もいる。このとき顔を大きく下げて、背中を大きく曲げていると、腰への負担が大きいままなのでNGだ。
×「足腰の強さの証明」は、腰を痛めるもと
バツ 「足腰の強さの証明」は、腰を痛めるもと
片足立ちになり、背中を大きく曲げる。「これができなくなったら老化の証拠」とばかりに無理をして続けているのなら、今日からきっぱりやめよう。腰に負担をかけ、ぐらついた結果、足首や腰を痛める危険がある。
○椅子に座るときも、股関節から曲げる 、×足に近づき過ぎて、背中を曲げている
マル 椅子に座るときも、股関節から曲げる
椅子に座ったら、背筋を伸ばして、股関節から上体を曲げる。できるなら、足のほうを持ち上げて靴下をはくと、腰への負担が軽減される。足を持ち上げない場合も、顔を下げ過ぎないように意識しよう。
バツ 足に近づき過ぎて、背中を曲げている
椅子に座っているから「体を安定させられている」という油断は禁物。座った状態で靴下をはこうとすると、両手を足に近づけるために背中を大きく曲げることになる。この動作によって腰を痛める可能性あり。

【シャワーを浴びる】シャワーヘッドが低いと頭を下げ、背中が曲がる

シャワーを浴びながら髪を洗っているときも、ぎっくり腰を起こしやすい。これも、背中を曲げ過ぎたことによる腰への負担が原因。リラックスタイムにも気を抜かず、腰をいたわる体の使い方を意識しよう。

【シャワーを浴びる】シャワーヘッドが低いと頭を下げ、背中が曲がる
マル シャワーヘッドを上げ、背中は伸ばす
姿勢を変えるというより、シャワーヘッドの位置を変えることから始めたい。高い位置からシャワーが降ってくれば、頭を下げず、背中も曲げずに髪を流せる。環境に体を合わせるのではなく、環境を体に合わせる考え方が大事。
バツ 髪を流すときに、背中が曲がる
髪の毛を流すときも背中を丸めがち。腰に負担がかかっている。特にシャワーヘッドを低いところに設置していると、大きく腰を曲げることに。

次回は、立つときや立ち上がるとき、座るときのよい姿勢について紹介する。

(文:柳本 操/イラスト:二階堂ちはる)

[日経ヘルス]

呑まないにこしたことはないにせよ、個人差やそもそもの生活習慣、またほどよく酒を愉しむ心の糧も考慮したい。。。

酒を1日1合飲み続けるだけでも、がんのリスクは意外に上がる

 コロナ禍は、個人の「飲酒」にも大きな影響を及ぼしています。自粛生活を強いられ、外でお酒を飲む機会が激減し、その結果、自宅で飲むお酒の量が増えてしまった人も少なくありません。

酒ジャーナリストの葉石かおりさんは、コロナ禍で自宅での飲酒量が増え、「5リットルの業務用ウイスキー」を買ってしまったこともあります。そんな状態から飲酒量を見直し、酒との付き合い方を変えるのに役立ったのは、これまでに「酒と健康」をテーマに取材した専門家たちの言葉でした。

最新刊『名医が教える飲酒の科学』は、そうした専門家への取材の成果をまとめたもの。その中から、飲酒量とがんのリスクについてのパートをお届けします。実は、「ほどほど」に飲んでもがんのリスクは確実に上がってしまうことが最新の研究から分かったのです。

かつては、1日に飲む量として日本酒1合程度であれば「適量」だと考えられていたが、最近はそれでも病気のリスクが上がってしまうことが分かってきた。(写真:PIXTA)
かつては、1日に飲む量として日本酒1合程度であれば「適量」だと考えられていたが、最近はそれでも病気のリスクが上がってしまうことが分かってきた。(写真:PIXTA)

「ほどほど」に飲んでもがんのリスクは上がる

日本人の死因の第1位である「がん」。がんにかかりたくないのは誰もが同じだ。そのためにはどんな飲酒が望ましいのだろうか。

飲み過ぎればがんのリスクが上がるのは容易に想像できる。大量のアルコールを分解するために肝臓が酷使されるので、肝臓がんのリスクも上がるのだろう。そのほか、食道がんや大腸がん、乳がんなどのリスクも飲酒で上がるという話は聞いたことがある。

だがもっと気になるのは、「ほどほど」の飲酒でがんのリスクは上がるのか、ということだ。近年、少量の飲酒でも体に悪いと指摘されるようになった。であれば、「適量」とされる飲酒を続けた場合でも、がんのリスクは上がるのであろうか。もし上がるのであれば、それはどれぐらいなのか?

2019年12月、東京大学から、日本人を対象とした「低~中等度の飲酒のがんへの影響」を評価した論文が発表された(*1)。そこで、論文の発表者の1人である獨協医科大学医学部公衆衛生学講座准教授の財津將嘉さん(論文発表時は東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学助教)に話を聞いた。

先生、そもそもなぜこういった研究に取り組まれたのですか?

「2018年に海外の権威ある医学誌『Lancet』で発表された論文(*2)などにより、少量の飲酒でも病気のリスクが上がる危険性が示唆されるようになりました。Lancetの研究の対象者は195カ国(および地域)にも及びます。人種により体質が異なるのはもちろん、医療環境など社会的背景も異なります。そこで『体質や社会的背景が近い日本人を対象としたら少量飲酒のリスクはどうなるのだろう?』というところから私たちの研究はスタートしました」(財津さん)

なるほど。同じ人間であっても、欧米人などと日本人では体質が異なる。日本人は欧米人に比べてアルコールの分解能力が低い人が多いことはよく知られている。そして、日本人の最大の死因であるがんのリスクが少量の飲酒でどれぐらい上がるのかについては、酒飲みに限らず誰もが気になるところだ。

*1  Cancer. 2020;126(5):1031-1040.
*2  Lancet. 2018 Sep 22;392(10152):1015-1035.

財津さんたちは、全国33カ所の労災病院の入院患者病職歴データベースを用いて、「新規がん患者」の6万3232症例と「がんに罹患していない患者」の6万3232症例を比較することで、低~中等度の飲酒とがん罹患リスクを推計するという「症例対照研究」を実施した。ここでは、年齢、性別、診断年、診断病院などをそろえて比較している。

対象者の平均年齢は69歳で、男性は65%、女性は35%。病院に入院する際に、1日の平均酒量やこれまでの飲酒期間(年数)も調査している。「この飲酒期間を分析の対象に加えているところが、この論文のポイントの1つです」と財津さん。

確かに、「飲酒期間」という要素があると、「いつも飲んでいる量を、このままずっと続けていったらどうなるか」も見えてくる。これは酒飲みにとって、かなり気になるところだ。

この研究においては、純アルコールにして23g(日本酒1合相当)を1単位として、1日の平均飲酒量(単位)に飲酒期間(年数)をかけたものを飲酒指数(drink-year)と定義している。

例えば、1日当たり日本酒1合の飲酒を10年間続けたら「10drink-year」ということになる。1日当たり2合の飲酒を10年間続けたら「20drink-year」だし、またそれを20年間続けたら「40drink-year」というわけだ。

リスクの上昇は一見少ないように思えるが…

さて、いよいよ本題。研究結果では、少量の飲酒におけるがんのリスクの上昇はどのくらいなのだろうか。

「日本人を調査対象にした本研究において、少量から中等度の飲酒でも、がんのリスクは上昇するということが明確になりました。飲酒しなかった人が最もがん罹患のリスクが低く、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは、低~中等度の飲酒において飲酒量が増えるにつれ上昇しました」(財津さん)

そして、1日純アルコールにして23gの飲酒を10年間続けることで(10drink-year)、酒をまったく飲まない人に対し、何らかのがんにかかるリスクは「1.05倍」上がるという結果になったという。

1日純アルコ―ル23gというと、厚生労働省が定める「適量」である1日20gにかなり近い。つまり、健康を損ねないよう「ほどほど」に飲んでいても、何らかのがんにかかるリスクは確実に上がるというわけだ。

しかし、この1.05倍という数値はどう判断すればいいのだろうか。1.05倍とは、5%リスクが高くなるということ。リスクが上がるのは確かとはいえ、数字だけ見るとそんなに大きなリスクとも言えないような気もする。「思ったより低い」と感じる人もいるのではないだろうか。

「確かに、数値だけ見ると、その程度かと思われるかもしれません。しかし、この研究で導かれた1.05倍という結果は『1日純アルコールにして23gを10年間続けること』から算出されています。飲む量が2倍、3倍と増えていけば、10年よりも短い年数でがんのリスクが上昇するということになります。また、これは10年間飲み続けたケースの値ですから、20年、30年と飲み続ければ、その分リスクは上がります。決して軽視できる数値ではありません」(財津さん)

酒量が増えたり、飲酒期間が長くなったりして累積飲酒量(drink-year)が大きくなると、グラフのようにリスクは大きくなっていく。

累積飲酒量とがん全体の罹患リスクの関係
累積飲酒量とがん全体の罹患リスクの関係

横軸は1日の平均飲酒量(純アルコールで23gが1単位)に飲酒期間(年数)をかけたもの。縦軸は飲酒をしない人と比較した何らかのがんにかかるリスク(出典:Cancer. 2020; 126(5):1031-40.)

例えば、50歳前後の人が、20歳くらいから飲み始めている場合、飲酒期間は30年になる。そして1日当たり日本酒で2合を飲んでいたら(=2単位)、60drink-yearということになり、がんの罹患リスクは1.2倍(=20%増)程度になることが分かる。

30年間の飲酒生活で2割もがんのリスクが上がってしまうのだから、財津さんが言う通り、これは決して無視していいものではない。ちりも積もれば山となる。酒もまた、少量でも日々重ねていけば、がんのリスクは確実に上がっていくのである。

リスクの上昇が大きいのは「酒の通り道」

一口にがんといっても、肺がん、胃がん、肝臓がんなど、さまざまな部位のがんがある。飲酒により影響を受けやすい部位と、受けにくい部位があるということは素人でも想像できる。果たしてどの部位のがんのリスクが高くなるのだろうか。

「部位別に見ると、最もリスクが高かったのは『食道がん』で、そのリスクは1.45倍になりました(10drink-yearの場合)。また、『口唇、口腔及び咽頭がん』も1.10倍という結果が出ています(咽頭は口腔と食道の間にある器官)。飲酒によってがんのリスクが上がるのは、食道より上部の器官、つまり『お酒の通り道』になるところだと昔から言われていますが、今回の結果でもその傾向が見られました」(財津さん)

なお、気管と咽頭をつなぐ器官である「喉頭」のリスクも1.22倍と高い。

各部位のがんの罹患リスク(10drink-yearの場合)
各部位のがんの罹患リスク(10drink-yearの場合)
縦軸は、飲酒をしない人と比較したがんにかかるリスク(オッズ比)。1日アルコール1単位(日本酒1合相当)の飲酒を10年間続けた時点(10drink-year)でのリスク

これらのリスクはいずれも、1日当たり日本酒1合(純アルコール23g)相当の飲酒を10年間続けた時点(10drink-year)におけるデータである。飲酒期間がより長くなり、飲酒量が多くなれば、ほとんどの部位でがんのリスクは着実に上昇する。最も顕著な食道がんの場合は、1日1合の飲酒を10年間(10drink-year)で1.45倍だったリスクが、1日2合で30年間(60drink-year)なら4倍を超える。

酒を口から飲んで胃に至るまでのルートのほかには、胃がん(1.06倍)、大腸がん(1.08倍)なども、がん全体と比べてリスクが若干高くなっている。女性の私としては、乳がんのリスクが1.08倍であるのも気になるところだ。このほか、子宮頸がん(1.12倍)、前立腺がん(1.07倍)などもリスクは高めとなっている。

「酒の総量」が問題であって「種類」はあまり関係ない

少量の飲酒であっても、がんの罹患リスクが上がることが明らかなのは分かった。だが、がんのリスクができるだけ上がらないような酒の飲み方はないのだろうか。

「最も着目すべきポイントは『お酒の総量』。お酒の種類はあまり関係ありません(*3)。アルコールそのものに発がん性があり、さらにアルコールの代謝副産物であるアセトアルデヒドもがんの原因となることが分かっています。私たち日本人は遺伝的にアセトアルデヒドの分解能力が低い人が一定数おり、少量でも影響を受けやすいのです。このことから、飲み始めた年数から今に至るまでどれだけアルコールを飲み、そのリスクにどれだけさらされてきたかが重要となるのです」(財津さん)

財津さんによると「お酒を飲む習慣を見直してほしい」という。確かに、酒好きの多くは、さして飲みたくもないのに、飲むことが「クセ」になっている人が多い。夕方になったら当たり前のようにカシュッとビールのプルトップを開ける、風呂あがりに水代わりにチューハイを飲む、仕事帰りにコンビニに寄って酒を買ってしまう……。

「まずはこうした『飲むクセ』を変えていくといいですね。最初は週に1日でいいので、休肝日を作ってみましょう。お酒をストレス発散の道具にしたり、睡眠導入剤の代わりに寝酒にしたりするのも避けましょう」(財津さん)

財津さんは、「一生で飲むお酒の量は決まっている」と考えて、休肝日で「飲まない日貯金」をして、「飲酒寿命」を延ばしましょう、と提案する。これには私も賛成だ。

*3  ただし、ウイスキーなどアルコール度数の高い酒は、食道がんなどのリスクをより高める傾向があるともいわれている

[日経ビジネス]

心身の健康管理による自己免疫力の強化と維持、、、そして無理のないサスティナブルな感染予防対策、、、それがすべて。。。

 

「オミクロン」出現、わたしたちのなすべきことは?

 第5波が収束し、誰もがおずおずと「これで終わるのか?」と思ったまさにそのタイミングでやってきた変異ウイルス「オミクロン」。11月末には成田空港の検疫で感染者が見つかりました。

オミクロンがどの程度の脅威になるのかはまだ分かりませんが、今後もさらなる変異ウイルス、あるいは新型コロナウイルス以外の病原体が世界に現れることは、残念ながら間違いなさそうです。子どもの頃、特撮番組に週替わりで登場する怪獣のカタカナ名前に胸をときめかせたこともありますけれど、実際にその世界に生きていたら、「またか……」と、さぞうんざりするのだろう、とか想像してしまいます。

怪獣ならぬウイルスといやおうなく共存する世界で、わたしたちはここまで正しく行動してきたのか。そして、この先、「『科学』が十分に確実な答えを出せない」課題に対して、どのような考え方で生きていけばいいのか。そんなことを米国研究機関在籍のウイルス免疫学者、峰宗太郎先生と話し合って本を作っていました。オミクロンをきっかけに、正体不明の変異ウイルスに対して「わたしたちが正しく行動する」とはどういうことなのか考えてみたいと思います。お付き合いください。(担当編集Y)

オミクロンであろうが、考え方と対応策は変わらない

―― このタイミングで、WHOによって名前が付けられる(=懸念される変異体、などとされる)変異ウイルスが現れるとは。そして、根っから小市民の私としては「本のセールスにどう影響するだろう」と、まっさきに考えてしまうのです。情けない。

峰 宗太郎先生(以下、峰):Yさん、そんなに素直な物言いをしていいんですか(笑)。まあ、ちょっとそういうところはありますよね。本当にいろんなことが起こりますし、「次々と状況が変わる」という事態そのものが、長く続いているわけです。

―― ですよね。年末に向けて第5波が収束して「もう新型コロナの本とか、いいよ」というふうになるのかと思っていたら、何か緩んだ気持ちにビンタをかますようなタイミングでオミクロンが出てきたという。これはこの本には吉か凶か……すみません、不謹慎で。

:いや、いや、確かに様々なビジネスに影響はすると思いますね。仮にオミクロンが大流行になると、社会の雰囲気ががらっと変わる可能性もゼロではありませんよね。

―― そうですよね。とはいえ、峰先生のお話を聞いていただけの私が偉そうに言うのも何ですけれど、やっぱり、この本を作ってよかったと改めて思います。特に変異ウイルスのところ、たっぷり語っていただいたじゃないですか、今、実は読み返していたんですけれど……。

:どうですか。

―― 「オミクロン」が出てきたのが校了の直後で言葉としては入れられませんでしたが、変異ウイルスへの考え方そのものはまさに今読むと役に立つものが入っているのではないか、と、実は内心ほっとしています(笑)。

:なぜオミクロンについてもそう言えるかと言いいますと、Yさんと初めてお会いした2020年の春から、新型コロナに対する基本的な考え方って特に変わっていないからなんですよね。わたしたちが感染症に対してできることって、実は決まっていて、感染対策も大きくは変わらない、変えようがないということがまずあります。そして、もちろん「懸念される変異体」レベルの変異ウイルスの登場は大きなトピックなのですが、そこでアクションを起こすべき人は、まずは国や自治体の公衆衛生担当部門のプロなど、そしてウイルス学者。そのあたりが騒いでいればいい話なんですよ。

―― それはなぜかと言えば?

:専門家、研究者にとっては考えるべき、悩むべきことが多々あったとしても、そうでない人にとっては、悩んだとしてもあまり意味がないからです。どうして意味がないかと言えば、まだ分かっていることがあまりに少なくて、ほぼ仮説や予想でしかないから、というのが1つ。

―― 専門家はあらゆる可能性を考えておく必要があるけれど、普通の人がそこまでやっても意味はないと。

:そして、「現在のところ、対策は特に変わらないから」というのが、より重要なポイントです。変異ウイルスについて知るべきことは、約1年前にYさんにお話しした記事に、大事なことは書いてあるんですよね。

―― そんなこと言うと本が売れなくなるんですが(笑)。ああ、もちろんこの記事よりもアップデートして大幅に加筆してますので。

:少し専門的になりますが、ウイルス学的な観点からみますと、今回のオミクロンについては、とにかく気になるのは伝播性(うつりやすさ)の上昇の可能性と、変異がちょっと多いかなということ。多いと言っても3万もある塩基のうちの50カ所程度なんですけれどね。そして、50カ所のうちの32カ所がスパイクタンパク質(Sタンパク)に集中している。

―― Sタンパクは、新型コロナウイルスがヒトの細胞にくっつくところでしたね。そこに取り付いて妨害するのが、ワクチンで免疫系が作る「中和抗体」で。そのSタンパクに変異がたくさん起きると、ワクチンの効きが悪くなるのではないか、という。

:そう。オミクロンには他にも今まで見つかった変異ウイルスに見られるものを含む、いろいろな変異が入っていて、それがワクチンの効果にある程度影響する可能性がある、まぁ「程度」を入れて言えば、その可能性が高い、とか、伝播性・病毒性にも関係するんじゃないか、ということで心配されているわけですね。

不安につけ込む「トンデモ」報道がすでに発生

―― そう聞くとやっぱり心配ですよね。

:でも、一方で、感染を防止するための考え方は変わらないわけですよ。まずは基本的対策を徹底すること。

―― 3密(密閉・密集・密接)回避に換気、マスクに手洗いうがい、栄養と睡眠。そしてワクチンですか。

:そう。まず、どんなに感染しやすくなっていようが、基本的に新型コロナの感染経路は、従来言われるところの「空気感染(飛沫核感染)」をメインにするわけではないので、飛沫や滞留する飛沫を防ぐために、狭くて空気がよどんでいて人がたくさんいる空間を避けてマスクをしていれば感染リスクは大きく下げられる。手洗いで接触感染のリスクも減らせる。栄養と睡眠は、自分の身体の免疫系の機能を正常に保つために重要です。ワクチンも、引き続き接種率を上げていくことが重要ですね。

でも、すでに「閉じられた向かいの部屋にいた人から感染」だからこれは空気感染だ、とか、「感染力」が大幅に上昇しているんだ、とか、わけの分からないことを言い出す大手メディアが登場しているんですよね。

―― 見ました。本当だとしたらとんでもないことですね。

:いや、変異ウイルス・デルタが出てきたときも「すれ違っただけで感染」って、散々騒いだ放送局なので、まったく成長しないなとむしろ感心しました。学び、成長することよりも、自分を変えず意固地になるあたりに、ですけれどもね……。

―― 騒ぐのがお好きなんですかね。で、ワクチンですが。効きが悪くなる可能性があるのは心配ですね。

:これは本でも、というか前からずっと言っていますけれど、変異ウイルスに対して、今あるワクチンの効果が下がるとしても、0%になることはまずないでしょう。ワクチン接種で作られる抗体による中和能が数十パーセントとか下がるということはあると思います。けれど、とりあえず「だから何だ」なんですよね。それでも抗体の量はワクチンを打つ前とは比較にならないくらい……というか打つ前は「ない」と考えてよいぐらいなので、ずっと増えているし、ワクチンは抗体以外の免疫系もしっかり刺激しています。ヒトの身体はそこまで単純なものじゃありません。

―― おかしな言い方ですが、峰先生のお話をずっと聞いていて分かったのが、例えば抗体の量にしても「どのくらい抗体が増えればかからない、これ以下になるとかかる」という明確な基準が分かっているわけじゃないんですよね。ヒトを対象とするの研究結果は個人個人、つまり個体によって違いが大きすぎて、断言できる一般則的な言質はとりずらい。身体そのものもそうだけど、そもそも背景となる条件などにも影響されたデータなのかもしれないし。

:そう。ヒトの身体や個体のばらつきのほうが複雑すぎるので、ウイルスの変異の個所だとか、ワクチンで得られた抗体の実験結果だけ見ていても実は、大事な効果までは分からない。そして、なによりそこで研究者以外の方が一喜一憂するのはあまり意味がない。

そもそも、分からないことが多すぎるんです。今回のオミクロンも、変異の箇所が多く、Sタンパクに集中しているところまでは判明しましたが、感染しやすさや病毒性、免疫回避にかかわる性質の変化などは今時点では何も分かっていないに等しい。ここで、これはものすごく怖いぞ、大変だ、大変だ、と煽る人は、いわゆるアラーミストと言われても仕方ないでしょう。

オミクロンがどういう性質を持っているのかが分かってくるまでは、我々個々人の考え方も体制も変わらない。ただし、検疫、検査、監視は強化しておくことは重要だと思いますね、これは「最悪に備える」という意味で、です。もちろん、ある程度広報して、緩んでいるところがあるならば引き締めを図るということもすごく重要だと思います。

―― それは「怖いぞ怖いぞ」と騒ぐこととは違うと。

:もちろんです。そしてその点、今の日本は新型コロナに対する「レジリエンス」がある程度ですが、高くなっていると思うんです。

―― レジリエンス。

:危機への対応能力、しなやかさ、ものごとに臨む際の能力・状態の適切さ、ということですけど、この2年間の間に日本はやっぱり大きくみれば成長したのではと思いますね。多くの方が3密回避やマスクになじんでいますし、デルタで医療体制などが危ないところまでいったということも覚えていますから、もし、オミクロンが思ったよりも脅威だと判明したときも、ちゃんと対応するのじゃないでしょうか。

もしも神様に聞けるなら

―― 素朴な疑問なのですが、オミクロンは変異の数が多いという言い方がよくされています。これは、多い少ないの比較はウイルスの近しいもの同士、それこそ同じ新型コロナウイルスとか、RNAウイルスとかで比べて、ということですか。もしくは、ウイルスとして一般的に、このくらいは多い、少ない、ってあるものでしょうか。

:「一般的」な指標というものはないですよね。新型コロナ、「SARSコロナウイルス2」の中での比較でものがいえるぐらいです。今まで注目されていた、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタとか、ラムダ、イプシロンとかを見ると、Sタンパクには数としてはたしかにオミクロンと比較すると変異は少ないんですよね。まあ、20カ所未満だったんです。オミクロンの32カ所は多いなという感じはします。新型コロナの場合、ゲノム全体において年に22~28カ所の変異が起きるぐらいの変異速度とみられているのですが、それより多い数がSタンパクに集中しているということで、研究者が注目している。

ただし「感染しやすい、ワクチンが効かない」かどうかは変異数だけみていても「分からない」んです。それは別の問題で、別に実証する必要があります。

―― なるほど。これも本の中で書いていることなんですけれど、ウイルスは増殖するときに変異する。すなわち、感染者の細胞内で増えるときにゲノムを載せたRNAのあちこち書き換えが起こるわけですよね。となると、感染者が多いところほど変異ウイルスが現れやすい、ということになるんでしょうか。

:それもまた難しいところなんです。確かに流行が続いていると変異が出てくる素地がありますよね。ただ、その流行が続いていること「だけ」が影響しているかどうかは、分からないわけです。例えば中途半端にワクチンを打った状態で感染したとか、2回感染した人が多いとか、ほかにも免疫抑制状態の人がたくさんいるとか、変異ウイルスの出現や選択の頻度にかかわる要素って、いろいろなことが考えられるんですよね。

―― 「もっともだ」と思える理由があると、それ以外の真の原因に目が行かないことも起こるわけか。

:単純に真の原因が一つとも限りませんしね。変異自体は基本的にはランダムに起こってくるので、これはある意味、運です。流行が激しい、つまり感染者数の多いところのほうが変異ウイルスは出てきやすい、とは思うんですけれど、必ずそうなるわけでもないし、流行が沈静化していれば変異ウイルスは現れないかというと、感染者がいる以上は、そんなことはないわけです。

―― まだ手探りの状態で、分からないことが多いわけですよね。なんかもう、神様に聞いてみたくなったりしませんか。正解を教えてよ、みたいな。

:えっ(笑)、変異がたくさん入った、じゃあ、これ、ワクチンは効くの? とか、感染しやすさが変わるの? とか、伝播性が変わるの? とかですか? たしかに、そういったことに興味は沸くんですけど、神様を持ち出すほどクリティカルかというと、そこまででもないような気がしますね。

あえて神様に聞かなきゃいけないことがあるとしたら、我々には絶対に分からない過去のことですよね。どうしてこんな変異が蓄積したんだろう、とか……、ただ、それは推測ができるわけです、我々でも。いろいろな試験管内の実験をすることによって。

例えば今回の変異の入り方って、まったく不規則というわけではないかもしれないんですよ。ヒトの免疫系による攻撃という「選択圧」から逃れるようにして、残ってきた変異の可能性もあるのですから、何らかの方向性がある場合もありえるわけです。そういう考察も、まぁ仮説ですけど、すでに専門家によって行われています。

何が言いたいかというと、変異ウイルスの出現、これは「運」と言いましたし、現状そうとしか言いようがないんですが、でもきっと必然的な「何か」という要素はたくさん考えられるんですよ。抗体を含む免疫機構から逃れやすいとか、より伝播性が上がるとウイルスの生存に有利であるとか、選択圧から潜り抜けてきやすい素地があるとかね、そういうことを踏まえてたぶん変異として残ってきているので、その原理が知りたいといえば知りたいですけど、おそらく推測もできるし、手にある材料でしっかりやっていけばいい、そう思いますね。

―― 別に神様はいりませんか。

:というか、科学者は自分で解明するところを自分のなりわいとしているので、答えを教えてあげると言われても、あんまり興奮しない人が多いんじゃないかと。

―― なるほど(笑)。

:そこが自分たちの情熱を注いでいることですし、まぁ、仕事がなくなっちゃいますからね。もちろん、人によって興味の方向って違うので、いろいろな答えがあると思います。これはあくまで自分の考えですので。

日本、まるで「一人勝ち」。その理由は

―― なるほど。それにしても、一息ついたタイミングでの変異ウイルスの登場というのは、イヤですよねえ。

:あー、何て言ったらいいのかな、その通りなんですけど、日本と世界の状況は全然、違うんですよね……。現在、日本は一人勝ちに近い状態なので。台湾やニュージーランドもそうかもしれませんけれど。

―― おおっ。

:日本にいると「ああ、また出てきちゃったな」とか、「引き締め直しだ、まいったな」という感じがまずはするんだと思いますけれど、欧州、米国などは流行再拡大や流行が延々と継続している最中ですから、「泣きっ面に蜂」ですよ。踏んだり蹴ったりです。

―― そうなんだ。

:外国と日本の状況は全然違うわけですよね、そこは知っておいて損はないかなと思います。

―― この本の中でも欧米と比較して「日本はそこそこうまくやったんじゃない?」と検証していますが、今のところはそれで正しいんですね。

:はい、今のところ、日本はうまくやっているんですよ。そうでなけれ第5波はおさまらなかったでしょうしね。そして、第5波を抑えるために何か画期的な新しい対策とかが取られた、まぁ言い換えれば「神風が吹いた」わけでもないのにこの状況というのは……。

―― 先生、あまりそのあたりは触れずに、できれば本を買って読んでいただきたいんですが……まあいいか(笑)。

:(笑)じゃ、ごく簡単に言えば、個人で行う対策が変わらない以上は、考えるべきことって、もうマインドセットの問題なんですよね、これは。浮足立たないとか、騒がないとか、冷静に情報と向き合うとか、本や連載で散々話した、そういうことの重要さが今、試されているのだと思います。さっきも言った、ちょうど去年の12月に出した記事がありましたよね。

―― こちらですね。「新型コロナの変異は『当たり前』の話、騒げば騒ぐだけ損」(2020年12月28日掲載)。

:あれで言っていたことが、1年かけてじわじわ理解が広がってきて、今の日本社会は比較的冷静な対応、マインドセットになっているのじゃないかな、という話です。

―― なるほど。何度でも「大変だ大変だ」と同じパニックが起こるんだけど、繰り返しているうちに、「これ、騒ぎ過ぎなんじゃない?」という人が、それこそワクチンの接種で感染しないように、じりじり増えている……ことを期待したいですね。楽観的すぎると読者の方はおっしゃるかもしれませんけど。あ、さっきおっしゃったレジリエンスってまさにそういうことなのかもしれないですね。

:はい、レジリエンスって、マインドセットも重要な要素なんですよ、きっと。危機感を煽って騒ぎたい人は残念ながら減らない、というか変わらないのです。誰がどう言っても毎回騒ぐわけです。前に騒いだことの検証とか反省とかそういったことはせずに、毎回なにか話題があると騒ぐ。

だけどそれに引っ張られたり、振り回されたりする人が少しずつでも減っていくこと、これが、社会全体のレジリエンスが上がっているということを意味しているように思うんですよね。これは間違いないと。

―― 煽るツイートをリツイートしない人が増えていく、みたいな。

わたしたちのレジリエンスはどれほどのものか

:リツイートもそうですし、そういうツイートを読んでも心を動かされないということが大事ですよね。覚めた目で、「ふーん、だから何なの」というか、「一番大事なことはそこではないよね」という。

―― なるほど。「一番大事なことはそこではない」か、それもいいタイトルになりそうですね。

:情報がそろってない状態で、議論・論評すること自体が、多くはムダな行為という面もあるわけです。ただ、最悪に備えておくというのは、これは合理的行為なんですよね。自分たちのできることをこの機に見直しておこうとか、次の段階がこうだったら、こう動こうと想定をしておく、備える、これは重要なわけです。ただ、論じてもどうしようもないことを延々と論じてもどうしようもないわけです。言葉を定義せずに、言葉がカバーできないことを論じようとしたらヴィトゲンシュタインに怒られるわけですよ。

―― えっと。

(「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』)

:その考え方のアナロジーですよね、同じことですよ。データのないものを語ろうとしたって語り得ないものなんですから、それはもう道端で小学生なんかが口げんかしているようなのと大差ないわけです。

そう考えたら、今回のオミクロンは、もちろん「備える」ことはした上で、わたしたちがどれくらい冷静に対応できるかで、この1年間でどれほどレジリエンスを高めたかを見極める機会になる、と言ってもいいんでしょうね。

結局、冷静に、なにがわかっていて、なにがわかっていないか、を見極める。出てきた情報がどこまで外挿・演繹できるか、つまり一般的な話になるのかも考える。

そういった情報へむかう態度をとっていただきながら、基本予防策の確認をして、最悪には備える、そういうマインドセットを整えておくことが、今は求められているんだろうと感じています。

―― はい。この本がすこしでもそのお役に立てることを祈っております。

[日経ビジネス]