時空をつないでいく日々の創作

連載梶原しげるのプロのしゃべりのテクニック

「響30年」「山崎50年」を生んだ伝説のブレンダーが必ず守っている習慣

2018年11月11日

当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2014年9月4日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

サントリーを飛躍させた伝説のブレンダー輿水精一さん

ブレンデッド・ウイスキーの最高峰である「響30年」や、珠玉のシングルモルト・ウイスキー「山崎50年」「山崎35年」、そして「白州」など、今や世 界のウイスキーファンを魅了し続ける名酒を世に送り出し、そのブランドを不動のものにしたサントリーのチーフブレンダー輿水精一(こしみず・せいいち)さん。ラジオ局のスタジオに現れた輿水さんは、カリスマオーラをぷんぷん漂わせた「伝説のプロフェッショナル」という雰囲気は微塵もない。超一流といわれる 人は大抵そういうものなのだが。

ウイスキー通にはいまさらな話で恐縮だが、ブレンダーとは樽ごとに個性の異なる「モルト・ウイスキー」を利き分け、これをバランスよくヴァッティング (個性をもつモルト・ウイスキーを大桶に入れて混ぜ合わせること)をしたり、「モルト・ウイスキー」(大麦麦芽=モルトだけでつくられるウイスキー)と 「グレン・ウイスキー」(とうもろこしなどの穀物に大麦麦芽を加えて蒸溜したウイスキー)を混ぜ合わせてブレンディングをしたりすることで、新しいウイス キーを創り出す人と言われる。何十万樽ある「モルト原酒」のどれとどれを組み合わせれば狙った味ができるのか、ブレンダーは日々格闘している。

 7人のブレンダーがいるサントリーでも、輿水さんはウイスキーの品質を決める「最終評価者」=チーフブレンダーとしてその頂点にいらっしゃった。サントリーでは創業以来、4人のチーフブレンダーがその役割を継承してきたが、輿水さんは1999年より務めてきた3代目だ。

ヴァッティングとかブレンディングとは何か。何となくは分かる気もするが実際の所「何をどうなさっているのか」は分からない。

こういうときは恥も外聞もなく聞いてしまうのが一番だ。ただし中途半端な「エラそうに見せたがる人」には、こういう質問はやめたほうがいい。「それくらい事前に調べておけ!」と言わんがばかりに「ムッとされる」可能性がある。

ところが超一流の方というのは、こういう「素朴な質問」に丁寧に答えて下さることが多い。むしろネットで調べた半端な知識を、専門家を前にぺらぺらしゃべってしまうほうがよほど非礼だと私は思う。

80万樽のマッチングから新製品を編み出す

梶原:「そもそもブレンダーとはどういうお仕事なんですか?」

輿水:「分かりやすく言いますと、新製品を作るため、80万樽ほどある、どの樽とどの樽の原酒を組み合わせるか、そのマッチングを行う仕事とでもいいましょうか」

梶原:「80万樽!!!」

この一言でラジオを聞いている人たちにも「おびただしい樽がギッシリ並んだ巨大な蒸留工場のとんでもない広大さ」が目の前に広がってくるのではないだろ うか。それと同時に80万樽にも達する原酒の中から、相性のいいものをヴァッティングしたり、ブレンディングしたりする輿水さんたちブレンダーの仕事の困難さを知り、さらなる興味を募らせるはずだ。

 「一流の人」「その道の大家」は「インパクトのある数字」をさりげなく口にされる。話が上手下手の問題ではない。スゴイことをやっている方は気負わずごく自然にスゴイことをおっしゃるからつい引き込まれる。

輿水:「新製品とは別に、既に何年も前に発売しているおなじみの角瓶やオールドなどの味を正しく維持するための ブレンディングも重要な仕事です。一方で、当然ながら12年先、30年先、お客様に喜んでいただける12年もの、30年もののウイスキーも作ります。そう いう未来の味も、今の私たちが決めることになります。ブレンディングとは、現在・過去・未来という時空をつなぐ仕事なんだと責任を感じますね。こういうこ とができるのも、先輩たちが素晴らしい原酒を作り、貯蔵してくれた80万樽があればこそですが」

仕事を「点で考えず線で考えろ」とはビジネスでしばしば言われるが、ブレンダーの仕事はまさにそれだ。一般のビジネスでも、「今のことでアップアップの イッパイイッパイ」ではいい仕事にはなりそうもない。仕事において「時空をつなぐ役割」という意識は大事なキーワードだ。

テイスティングで最も重要なのは集中力

輿水:「このブレンディングで重要なのは、皆さんはワインでご存じでしょうが、テイスティングです」

梶原:「グラスに入れた樽の原酒や原酒同士をブレンドしたものを、口に含むんですか?」

輿水:「はい、嗅覚・味覚・視覚を中心に全身の感覚器官を総動員して臨みます」

このテイスティングを、輿水さんはじめブレンダーの皆さんは毎日2時間かけてワイングラスで200杯分行うのだそうだ。言うまでもないが200杯のウイ スキーは口に含むだけで飲み込むわけではない。アルコールはある程度口腔内の皮膚から吸収されるが、それで「判定の軸が揺らいでしまう」などということは ないと断言なさる。

輿水:「テイスティングで最も重要なのは集中力です。テイスティングを始めてから終わるまで、感性の集中力に変 化があってはいけません。集中度合いが変わらず、同じ感覚でテイスティングし続けることが最低要件。感性に変化が起きないそのリミットが経験的に2時間以 内であり200回なのです」

ビジネスパーソンにとっても、「実際に自分の集中が途切れないのは何時間で、どの時間帯なのか」を知っておくことは大切だと思う。

仕事のできない人に限って「忙しい、寝てない」を自慢のように口にする。しかし、仕事のできる人は、結構涼しい顔で課題を達成して周囲を驚かせる。それは集中すべき時間、時間帯を心得て、24時間のメリハリを付ける賢い時間コントロールを心がけている証拠ではないか。

これといった仕事もないのに、「何だか、だらだら忙しい」といつもどこかで追い立てられる気分の私などは、「集中力のない典型だ」と大いに反省させられる。

「いい仕事」のために輿水さん心がけていること

輿水さんは、大事な2時間を1日のうち、どこに持っていくかもしっかり決めている。

輿水:「朝10時から正午までの2時間。私にとってはここが一番集中できる時間です。私は毎朝7時に工場に到着 します。そこで前日やり残した雑務や、この後のテイスティングの準備などにゆったり時間を使い、午前10時きっかりに始めます。そのためには心身の状態が 安定していることが大前提です。風邪を引いた、二日酔いなどが論外なのは言うまでもありません。肉体的な健康と同様、いや、それ以上に気をつけているのは 心の健康、つまりストレスをためないことです。テイスティングするとき、何かのストレスを感じたら、嗅覚も、味覚も、感性のすべてが効かなくなり使い物になりません」

梶原:「じゃあ、朝出がけに奥さんとケンカして気分が悪い、なんてのはアウトですね」

軽い冗談のつもりだったが、輿水さんは真剣だ。

輿水:「まるで駄目です。万一そういうことがあったとすれば、その人はテイスティングの仕事を始めることができません。やってはいけません。そもそもブレンダーとは、感情の起伏の激しい人には向かない仕事なんです」

毎日朝からウイスキーが味わえて、それが仕事になるなんてこんなにいい仕事ならやってみたい、と一瞬思っていたが、感情の起伏が激しく、ストレスを感じやすい私には最も不向きな仕事だということが分かった。

私に限らず、感情のふれ幅の大きい人にはどうやら丁寧で繊細な仕事は向いていないようだ。「いい仕事」のためには「集中力の維持」と「感性の軸がぶれない」、この2点が重要なのだと改めて知らされた。

 

外国観光客が日本のウイスキーを買って帰るのが当たり前に

輿水さんたちブレンダーや素晴らしい原酒を仕込んだ人たちのおかげで、日本のウイスキーは今や世界的な評価を受けている。

梶原:「サントリーの響、山崎、白州や、ニッカの竹鶴、余市をはじめ、日本のウイスキーは世界のトップレベルに到達したと言えますか?」

ずっと謙虚な姿勢を崩さなかった輿水さんが、このときばかりは「その通りです!」と即答なさった。

輿水:「世界を凌駕(りょうが)したと言うと言い過ぎですが、ウイスキーの世界的なコンペティションで3年続け て金メダルを取ったのは日本です。スコットランドのブレンダーをよく知っていますが、お世辞抜きで評価してくれています。私が入社した40年前には考えも 及びませんでした」

ここで輿水さんとちょっと懐かしい話で盛り上がった。

梶原:「僕は新入社員のころ、お金もなくてもっぱら“白”(安価なブランドのサントリーホワイト)を飲んでいま した。給料がちょっと上がるころから角瓶を飲みながら、上司がボトルキープしている“だるま”(サントリーオールド)を見ては、いつかは自分もオールドを、なんて思っていました」

輿水:「私も全く同じです。あのころは生活の向上に合わせてウイスキーの値段の高いものを選んでいくという、<いつかはオールド>って時代でした」

梶原:「車だって、<いつかはクラウン>でしたもんね」

輿水:「しかし今の若い方にはそういうこともなく、いきなりシングルモルトの白州から飲み始めるというスタイルが当たり前のようになっていますね」

梶原:「変わりましたねえ。変わったといえば、昔は外国旅行から帰って来る日本人がスコッチウイスキーをぶら下げて税関を出てきましたねえ。私もそうでしたが」

輿水:「憧れの外国産高級ウイスキーやブランディーが3本まで免税価格で安く買えましたからね。でも今では羽田でも成田でも、外国の観光客が日本のウイスキーを買って帰るというのが当たり前になっています。お土産でもとても喜ばれる」

輿水さんは心からうれしそうに語った。

家では角瓶を飲むんです!

梶原:「ところで、輿水さんは家では何を飲んでいるんですか?」

輿水:「晩酌ですか? 私はですねえ、角瓶なんですよ」

梶原:「えー? 響とか、山崎、白州じゃないんですか?」

輿水:「仕事柄そういうお酒、シングルモルトなんかもいろいろ家にありますよ。でも毎晩疲れずに飲むなら角瓶が 最高ですね。夏はハイボール、冬はお湯割り。特別に何かいいことのあったハレの日は響とか山崎、白州を飲みますよ。でも毎日っていうと疲れますね。それぞ れ主張が強いから」

午前10時から正午まで、感性の集中力を途切れさすことなく、200杯のウイスキーを鼻で嗅ぎ、口に含んでは吐き出し、データをノートに書き続ける伝説 のブレンダー。その輿水さんが、帰宅してゆったりくつろぐ夕飯の食卓。奥様とのんびり味わう晩酌に「角瓶」のお湯割りを楽しむ姿を想像し、何だか気持ちが ほっこりしてきた。

[UPGRADE LIFE/Nikkei TRENDY NET]

道は示せど、後押ししない、引きあげない。。。

樹木希林さんと山本KIDさんの言葉にあった共通点

 女優の樹木希林さんと格闘家の山本KID徳郁さんが、お二人ともにガンでご逝去されました。才能のある素敵な人や、まだ若くてこれからという人が亡くなると、本当に惜しいと思いますし、つい自分の健康のことも考えてしまいます。

そんな中、たまたま読んだそれぞれ別の記事に、こんな話がありました。一つは樹木希林さんが、亡くなる2か月ほど前の取材でお話されたコメントで、「あんまり頑張らないで、でもへこたれないで」という言葉が紹介されていました。もう一つは、山本KIDさんが、同じ格闘家の妹に残したメッセージとして紹介されていた、「心配すんな、でも安心すんな」という言葉でした。

お二人は年令も仕事も違いますが、たまたま同じ時期に同じガンという病気で亡くなり、そのお二人の言葉のニュアンスがよく似ていて、しかも自分が共感できるものだったので、つい注目してしまいました。お二人の言葉から、私は物事には良いことも良くないこともどちらもあるのだから、極端に舞い上がったり落ち込んだり一喜一憂したりせずに、平常心を保ちなさいという意味だと捉えましたが、この言葉を発したお二人の心情は、どういうことだったとかを少し考えました。

メディアなどを通じての情報しかないので、ここ から先はあくまで想像ですが、お二人ともとても愛情豊かで周囲の人にも優しく、面倒見がよく、人間的にも素晴らしい方だったと聞きます。そんな他人に対する「真の心の優しさ」を持った人というのは、決して相手を罵倒したりけなしたりせず、だからといって甘い言葉ばかりをかけたり、一方的に手助けすることもせず、その人にとって本当に必要なことは何か、自分がどう振る舞えばその人のためになるのかをいつも考えています。

こういう人は、「励ましながら油断させない」「手助けしながら依存させない」「責めないが甘やかさない」など、かかわり方の距離感、バランスが素晴らしいです。そして、これが大事なのは、企業の人材育成をはじめとした人間関係においても同じです。

企業の中で意外によく見られるのは、「言っても無駄だから言わない」「誘っても来ないからもう声をかけない」といった一方的なあきらめや、反対に「無理にでもやらせる」「辛くても我慢させる」といった一方的な強制です。

ただこれも、「あきらめが肝心」と言いながらも「継続は力なり」ですし、「早い者勝ち」といったかと思えば「残りものには福がある」といいます。「石の上 にも三年」で我慢が大事と言ったり、「案ずるより産むが易し」とまず行動を促したりします。すべてのことがどちらか一方だけで終わることはありません。

人間関係の中で、相手とは近すぎても離れすぎても良くありません。いい距離感を持った組織やチームは、みんな心地よく仕事をしています。 お二人のご冥福 をお祈りするとともに、偶然目にしたそれぞれの言葉の共通点から、あらためて大事なことを思い出させてくれたと感謝しています。

小笠原隆夫
ユニティ・サポート代表

[財経新聞]

食と酒はそれぞれ固有の文化と世界交流の礎、、、足らず過ぎずに適度な距離感を保ちつつ。。。

「若者の酒離れ」、本当の理由とは?

 

「お酒は健康によくない」「赤い顔で酔っ払うのはカッコ悪い」──。さまざまな理由から、若者の“酒離れ”が進んでいる。厚生労働省の調査によると、飲酒習慣のある男性は「20〜29歳」ではわずか10.9%しかない。酒離れする理由を探ってみたら、意外な事実が……。

*  *  *

 

デザイン会社で非正規社員として働く男性(26)はこう語る。

「月収は20万円足らずで、家賃5万円、光熱費とスマホ代で4万円くらい。これらを差し引いたら、とても飲みに行くような余裕なんかありません。以前はコンビニで弁当と一緒に缶ビールを買うこともありましたが、それもやめました。飲酒習慣が身につく前だったせいか、いまは飲みたいとも思いません」

厚生労働省が2016年に実施した「国民健康・栄養調査」の「飲酒の状況」を見ると、若年層になるほど酒を飲まない実態が浮き彫りになる。飲酒習慣のある人が最も多いのは、男性では「50〜59歳」の46.1%。以下、「40〜49歳」は37.9%、「30〜39歳」は29.0%と一貫して減り続け、 「20〜29歳」ではわずか10.9%しかない。女性も男性ほど顕著ではないが、やはり減少傾向にある。

階級・階層社会論の専門家ながら、『居酒屋の戦後史』など酒文化に関する著書がある橋本健二・早稲田大学教授がこう分析する。

「非正規で働く若者が増えて低所得のため、酒を飲むだけの余裕がないというのが最大の要因です。酒は飲まなければ生きていけないというものではない。あくまで嗜好品ですから、酒代は真っ先に削られるのです」

いま、派遣社員やアルバイトなど非正規で働き、極端に生活水準が低い“アンダークラス”と呼ばれる階級が増加の一途をたどっている。橋本氏の試算によれば、15年時点でアンダークラスは929万人。労働者の3人に1人が非正規というのが現状で、所得の減少はフリーター化する若年層で著しい。

「非正規労働者だから、正社員のように同期や上司との強いつながりがなく、会社関係で飲むこともない。シフト制の職場だと労働時間もまちまちなので、みんなが 一斉に仕事が終わって帰りに飲むという機会もない。かつて『1億総中流』と呼ばれたころは、日本人の大多数はビールと日本酒を中心とする『酒文化』を共有してきたわけですが、それが崩壊の危機にあるのです」(橋本氏)

日本の歪んだ酒税法も、若者の酒離れを助長する要因となっている。特に ビールの税率が突出して高く、1リットル当たり220円だ。350ミリリットル缶で77円もかかっていることになる。一方、富裕層が飲むワイン(果実酒) は安く抑えられており、1リットル当たり80円だ。

「750ミリリットル瓶で何万円もする高級ワインでも税額はわずか60円です。金持ち優遇税制と言うほかありません。大衆的な酒であるビールや焼酎の酒税を大幅に下げるべきです」(同)

世代論からの分析もある。アルコール飲料に限らず、クルマやAV機器への関心が低下し、買わない世代が登場した。1980年前後以降に生まれた「バブル後世代」だ。マーケティングコンサルタントで、JMR生活総合研究所の松田久一社長がこう指摘する。

「バブル後世代は収入に見合った支出をしない“嫌消費”層です。就職氷河期に就職活動をして社会に翻弄された世代です。常に将来に不安を持っているから消費を控える。それまで組織や阿吽(あうん)の呼吸で仲間意識を重視してきた会社は、個人の実力主義賃金体系に移行した。仕事が終わったら、みんなでとりあえず ビールというサラリーマン文化が消滅した。この世代は超個人主義だから、上司に誘われても平気で断ります」

上司が無理強いなどしようものなら、パワハラ、アルハラと指弾される時世だ。不況の長期化で交際費が使えなくなり、ますますサラリーマンたちの足は酒場から遠のいた。従来の“飲みニ ケーション”はもはや過去の遺物なのか。加えて、居酒屋やビアホールの倒産件数も急増している。

「酒文化・居酒屋文化」の危機が懸念されるなか、一筋の光明も差している。若者を中心とする静かな日本酒ブームが起きているのだ。日本酒の消費額の推移を見ると、各年代とも減少を続けてきたが、 10年に底を打つと、「20〜29歳」「30〜39歳」などの若年層で上昇に転じている。

日本酒造組合中央会が運営する「日本の酒情報 館」の今田周三館長によると、転機となったのは11年3月の東日本大震災という。花見シーズンを目前にしていたが、全国で自粛ムードが広がった。しかし、 岩手県の「南部美人」という蔵元がユーチューブでメッセージを発信。「日本酒を飲んで頂くことで、われわれ東北を応援して頂きたい」「われわれにとって は、自粛よりもお花見して頂くことのほうがありがたい」などと呼び掛けた。

今田氏がこう語る。

「この発言で明らかに世 の中のムードが変わりました。いままでお酒を飲まなかった若い人が日本酒を飲むようになりました。当初は東北各県のお酒を中心に売り上げが伸びましたが、 やがて全国に波及していった。さらに、90年ごろから蔵元の世代交代が進んで、造り手が若返って新しい日本酒が次々と生まれました」

先駆けとなったのは、山形県の高木酒造の「十四代」。その影響を受けた若い蔵元たちが、続々と新たな日本酒造りに挑み始めた。

「従来は和食に合う淡麗辛口の酒が好まれてきましたが、やや甘い芳醇な味が若い人たちの間で支持されるようになった。ローストビーフにも合うワインのような日本酒です」(今田氏)

実際に、日本酒やクラフトビールの試飲会などのイベントには多くの若者が集う。お洒落なバルも、日本酒のメニューを取りそろえるようになっている。

前出の松田氏は“嫌消費”の世代にピリオドが打たれ、90年代半ばから00年代初頭生まれで、現在20代に差し掛かる若者たちから消費行動が様変わりすると見る。

「本 当の意味でのミレニアム世代です。若いころにバブルを謳歌して消費好きだった新人類のジュニアたちで、親の影響を受けて趣味に消費を惜しみません。テレビ ドラマ『チア☆ダン』に共感したように、チームプレーで頑張ってみんなで達成感を味わいたいという感覚も持っている。彼ら彼女らはおいしい食を求めて、そ のついでにお酒を飲むというのが消費パターンです」

世代は変わっても階級社会は今後も続く。富裕層と貧困層の格差はますます拡大し、二 極化は急速に進んでいく。いまの日本酒人気を支えているのは、比較的リッチな若者たちだろう。純米吟醸などの高い酒は、やはり非正規労働者には手が届きに くい価格だ。前出・橋本氏はこう話す。

「酒文化を守るためには、やはり若者の貧困化を防ぐことが基本です。いまは、80年代の酎ハイブームのように、お洒落だけど安く飲めるお酒が見当たりません。アルコール飲料メーカーには、貧困層の若者のニーズにも応えるような企業努力が求められます」

人々の精神に癒やしを与えてきた「酒文化・居酒屋文化」を衰退させないためにも、すべての階層の若者に支持される酒が必要なのだ。(本誌・亀井洋志)

[週刊朝日]

自らの生を救えるのは自分自身だけ。。。

人間を「自分の生きがい」にしては絶対にダメ その理由に「深い」「納得」の声が続出

人間を「自分の生きがい」にしてはいけないとの言葉をつづったツイッター投稿が話題に。

週末の趣味や、自分の好きなものを楽しむ時間を生きがいにしている人がいる。中には「子供が生きがい」という親や、「恋人が生きがい」という人もいるだろう。しかし、人を生きがいにすることで不幸になってしまうことも。

このことについて、とあるツイッターユーザーの投稿が話題になっている。

■人間を「自分の生きがい」にしてはいけない?

投稿者の「櫛 海月」さん(@kusikurage)は、人生の師匠から言われた一言をツイート。

「自分を支える核を持ちなさい、仕事でも趣味でも。ただしその『核』は人間であってはいけない。人間は裏切るし変わるし、何より『核』にされた人間が気の毒だ」

この言葉に感銘を受けた櫛 海月さんは、夫や子供であろうが人間を「自分の生きがい」にするのはやめようと肝に銘じているとつづった。

 

■「深い」「本当に大事」と共感が相次ぐ

人間を自分の生きがいにしてはならない、という言葉を受け、「ハッと気が付きました」「母に聞かせたい」など多くの共感の声があがった。ツイッター上で拡散され、31日時点で約6万9,000件のリツイートや、約18万件の「いいね」が寄せられている。

・わたしはまだ子供を産みたくない。周りの人にはいい母親になると言われるが、子供が生まれたらきっと私は子供を生き甲斐にしてしまう。私は自分の人生を自分で生きれるようになるまで子供を産みたくない

・ありがとう。2人の息子を核にしようとするから苦しいんだと気づかせてもらいました

・本当に大事だと思います。人に依存すること程怖いものはありません。自分という存在に価値を感じて欲しいですね

・深いね。その通りやと思う。人は、他人に甘え、他人のせいにもする。寄り添われたり、寄り添ったりするのは大切やけど。自分の義や核は、自分自身で確立してなきゃいけない

 

■定年後にも生きがいがある人は…

しらべぇ編集部が全国140名の60代男女に「定年後の人生」について調査したところ、6割が「生きがいがある」と回答。定年後の新たなチャレンジや趣味に没頭している人が多いようだ。もしかすると、中には孫などを生きがいにしている人もいるかもしれない。

しかし、残りの3割以上は生きがいを見つけられていないようだ。

何をもって自らの「核」とするかは難しいところだが、それによって「ブレない自分」があれば精神的にも余裕をもてる。もしも「核」を見つけられないでいる人は、他人を核にすることを避けて考えてみるのもいいのかもしれない。

 

(文/しらべぇ編集部・鳩麦エスプレッソ)

何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。。。

 

「糖質オフの酒なら太らない」は大ウソだ

「糖類ゼロ」や「糖質オフ」と書かれたアルコールであれば太らずにすむ――。そういう思い込みは大間違いだ。『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)の著者・奥田昌子医師は「アルコールは肝臓で分解されるときに、飲んだ量に比例して中性脂肪の合成が進む。さらに健康増進法の基準は甘く、『糖質オ フ』などと書かれていても炭水化物が含まれていることがあり、注意が必要だ」と指摘する――。

■「糖質オフ」「糖類ゼロ」なら安心か

「内臓脂肪を落とすには、脂肪はもちろんだけど、炭水化物も摂り過ぎたらいけないんだな。 なるほど、だから、最近はビールにも『糖類ゼロ』とか『糖質オフ』とか書いてあるのか。こういう製品なら太らないってことだ」……つい手が伸びそうになり ますが、安心して飲んでよいものでしょうか。表示が「糖質オフ」「糖類ゼロ」となっていても、炭水化物が入っている製品はたくさんあります。

栄養に関する表示について定めているのは健康増進法という法律で、炭水化物を食物繊維と「糖質」に分けたうえで、糖質から多糖類や糖アルコールなど を除いた残りを「糖類」に分類しています。しかし、この法律はちょっと基準が甘く、飲料100ミリリットルあたり、糖類や糖質が2.5g未満なら「オ フ」、0.5g未満なら「ゼロ」と表示してかまわないことになっています。

それだけではありません。基準では糖類を「単糖類と二糖類」と定めているため、これに当てはまらないでんぷんやオリゴ糖などの多糖類、キシリトール を含む糖アルコールなどについては、いくら入っていても「糖類ゼロ」「無糖」と表示できます。言葉のイメージを過信せず、製品裏面の栄養成分表示を自分の 目で確認すべきでしょう。

■ビール中びん1本のカロリーは、ほぼヒレカツ一皿分

ただし、アルコール飲料についていうと、入っている糖の量より、アルコール そのものの影響が重要です。アルコールにもカロリーがあり、飲み過ぎれば内臓脂肪がしっかり付きます。たとえばビール中びん1本のカロリーはなんと200 キロカロリー。ご飯お茶碗一杯、ヒレカツ一皿に迫ります。

少し補足すると、アルコールのカロリーは食べもののカロリーと少し性質が違います。アルコールは胃からすみやかに吸収されて肝臓に運ばれ、分解され ます。そのため、アルコールに含まれるカロリーがそのまま体にたくわえられることはなく、このカロリーを使って運動することもできません。

お酒を飲むと体が熱くなることもあって、「アルコールのカロリーは体に付かないし、余分のカロリーは熱になって逃げてしまうから大丈夫」という説明を見かけることがあります。でも、これは誤解です。

アルコールは食欲を高め、内臓脂肪の蓄積を促すホルモンを分泌させます。そして肝臓で分解されるときに、飲んだ量に比例して中性脂肪の合成が進むこ ともわかっています。実際に、健康診断で中性脂肪の数値が高い人は、男性はたいてい飲み過ぎ、女性は果物とお菓子の摂り過ぎが原因であることが多いもので す。そのくらいアルコールは中性脂肪の増加を招き、これが内臓脂肪に変わります。ちょっとがっかりですね。

■内臓脂肪が付きにくい酒はあるのか

では、アルコール飲料による違いはあるのでしょうか。ビールやワインは飲み過ぎがちだから、焼酎のほうが体にいいという意見があるかと思えば、いや、ワインは内臓脂肪が付きにくいと聞いたよ、と真顔で反論する人もいます。本当のところはどうでしょう。

はい、アルコール飲料による違いはありません。アルコールの影響は、それぞれのアルコール飲料に含まれる純粋なアルコール、正確にいうとエチルアルコールという成分をどれだけ摂取するかで決まるからです。

エチルアルコールの量にもとづいて換算すると、日本酒1合がビール中びん1本、焼酎0.6合、ワイン4分の1本、缶チューハイ1.5缶に相当します。ビールと焼酎のどちらが安全かではなく、何をどれだけ飲むかが問題なのです。

ワインは内臓脂肪が付きにくいという話が出てきたのは、ある論文がきっかけでした。魚を二つのグループに分けて、一方のグループにだけ、赤ワインに 含まれるポリフェノールを与えたところ、内臓脂肪の蓄積がおさえられたのです。これだけ聞いて、おっ! と色めき立った皆さん。ちょっと待ってください。

この実験では、魚の体重1キログラムあたり、ポリフェノールを毎日40ミリグラムずつ与えました。これを体重60キログラムの人間に当てはめるとどうなるでしょうか。

60(キログラム)×40(ミリグラム)=2400ミリグラム

2400ミリグラムは2.4グラムのことですから、ポリフェノールを1日に2.4グラム摂取する必要があるということです。

さて、一般的な赤ワイン100ミリリットルには、ポリフェノールが101ミリグラム含まれています。ということは、ポリフェノールを2.4グラム摂 取するには、赤ワインを毎日約2.4リットル、なんとボトル3本以上飲まなくてはなりません。ここに含まれるエチルアルコールの量をもとに換算すると、日 本酒にして約13合です。これを毎日です。

これで本当に内臓脂肪の蓄積がおさえられるとしても、体はめちゃくちゃになりますね。ポリフェノールを摂取したいなら、ワインにこだわる必要はあり ません。果物ならブルーベリーやイチゴに多く、コーヒーにも赤ワインと同じくらい入っています。緑黄色野菜や大豆、魚、緑茶など、ありとあらゆる食材に含 まれているので、普通に食べていれば不足することはないはずです。

■なぜ「締めのラーメン」が食べたくなるのか?

晩酌メニューについても気をつけることはあるでしょうか。飲むときは、ご飯を食べないことにしているよ、という話をよく聞きます。そうすれば、ご飯の分だけ摂取カロリーが減るため、何となくよさそうな気がしますね。

しかし、思い出してください。ご飯を食べようがどうしようが、飲んだアルコールは同じように中性脂肪になります。そのうえアルコールの影響で食欲が 高まって、脂っこい唐揚げ、チーズ、バターピーナツなどを次々に食べてしまったら、ご飯をやめた効果などあっというまに帳消しです。

締めはラーメン、という言葉がありますが、なぜ、ラーメンが食べたくなるかわかりますか? ご飯を食べていないからです。炭水化物を食べると血糖値 が上がり、脳に満腹シグナルが送られます。炭水化物には水と結びつく性質もあるので、これによって胃がふくれ、さらに満足できます。

逆にいうと、炭水化物を食べないと、どんなにカロリーの高いものを食べても満腹感が得られにくいのです。

これにはもう少し複雑な理由もあります。アルコールが肝臓で分解されるときに特殊な物質が作られます。ブドウ糖は細胞に取り込まれてエネルギー源に なりますが、この物質が、ブドウ糖からエネルギーを取り出す反応のじゃまをするのです。それと同時に、体内の材料からブドウ糖を合成する反応もおさえてし まうため、飲酒によってエネルギーが不足し、血糖値が下がる傾向が見られます。

■「飲む前のおにぎり1個」がドカ食いを防ぐ

とくに糖尿病を治療している人は飲酒によって血糖値が下がりやすいため、食事をしながら飲むよう指導されます。健康な人であれば血糖値の低下はごくわずかですが、10人に1人か2人くらいの割合で、このせいで空腹を感じることがあるようです。

ご飯にもカロリーがあるとはいえ、飲む前に少しだけ、たとえばおにぎり1個くらい食べておくと、脂っこい肴を次々に注文せずにすみます。その代わり に、脂肪が少なくビタミン豊富な温野菜、おひたし、ピクルスなどでお酒を楽しみましょう。キノコにキャベツ、白菜、水菜、オクラ、豆腐など、おすすめの食 材はたくさんあります。

そしてもう一つ。飲酒の前後には水やお茶など水分をしっかり摂ってください。アルコールは水に溶けるので、こうすると尿と一緒に体から早く出ていきます。二日酔い防止にも有効です。

 

奥田昌子(おくだ・まさこ)
内科医

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