知られざるトラックドライバー事情/知ることで優しくなりたい

女性ライターが語るトラックドライバーの過酷さ 眠気覚ましは喘ぎ声

宅配など市民の日常生活を支えるトラックは、運転の場面になると途端に邪魔な存在となってしまう。ノロノロ運転に路上駐車、そして大きな車体自体が恐怖でもある。

そんなトラックにまつわる“なぜ?”に答える『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)が発売された。かつて女性トラックドライバーとして鳴らしたフリーライターの橋本愛喜さんが、その体験をまとめた。

過酷な労働環境や、昨今の宅配便・再配達の問題をはじめ、トラックドライバーが一般車の運転手に分かってもらいたいこと。そして日常生活に役立つ眠気覚ましの方法とは。返ってきたのは“まさか!”といわざるを得ない回答だった。

ノロノロ運転の背景にある切実な事情

――トラックのノロノロ運転に苛立ってしまうという人は多いのではないでしょうか。

ノロノロ運転をしたくてしているわけではなく、速く走れない背景があることを理解していただければ。

大型トラックの法定速度は時速80キロ。さらに同車にはリミッターというものがついていて、どんなにアクセルを踏んでも時速90キロしか出ないようになっているんです。一方で一般車の実勢速度(実際に出されている速度)は、大体時速120キロといわれてます。なので、乗用車から見たら、大型トラックはどうしてもノロノロ運転になってしまう。まず、そんな背景があります。

高速道路だけではなく、一般道でもノロノロ運転をしなければならない理由として、荷物を守るためということがあります。突然急ブレーキをかけると、「荷崩れ」というのですが荷物が崩れてしまう。急ブレーキをかけないようにゆっくり走らないといけないので、ノロノロと走ることになる。

さらには、車間も取らなければならない。車間が開いているからといって、一般車がキュッと割り込んでしまうことが多いのですが、それがドキッとする。十分に前に出てウインカーを出して入るのであれば心の準備もできますが、急にすっと入られてしまうと、「お前ウインカー出してないだろ」とイライラ感 も出てしまうかもしれません。

破損させれば損害賠償は億単位 ドライバーが退職金で支払う例も

――荷物が精密機械などの場合、荷崩れして壊れでもしたら億単位の賠償になるそうですね。

運送業者が支払うべき対象になるのですが、トラックドライバー自身が損害を賠償しなければならない例も結構な率であるのが実情です。正しいマナーで 運転していても、急に割り込まれたりすると、「自分たちの状況分かってくれや」「あんな高額を払えるのか」とカッとなってしまうこともあります。

――ドライバーを高額な損害賠償から守る制度は十分とはいえない。

賠償金を給料ではとても払えないから、退職金を充てるドライバーも結構います。自分のせいじゃないのに支払いを免れない状況ですから、それは改善の余地があると思います。

オートマ車のトラックが増加 高齢者や女性の雇用目指し

――急ブレーキの話に関連して、トラックはやはりマニュアル車ばかりなのでしょうか。

実はオートマ車が増えています。半分まではいかないでしょうが、業界としてはオートマ社の導入を進めているのが現状です。その背景には人手不足があります。

マニュアルとオートマ車のどちらが運転しやすいかというとやはりオートマ車で、運転がそれほど得意じゃない高齢者や女性に雇用の幅を広げようという狙いがあるのです。

昨年4月に兵庫県神戸市の三ノ宮駅近くでバスの事故がありました。東京・池袋で高齢者の事故があった2日後です。あのバスはオートマ車なのですが、 マニュアル車であればあの事故は起きなかったと思います。特に停車している状況で踏み間違えて事故につながるというのはマニュアル車では考えにくい。今後、高齢化社会が進むことを考えると、個人的には業界のオートマ化を一概に賛成することは難しいです。

女性はわずか2.5% 女性に合う環境が必要

――女性の参画を目指すということですが、今もトラックドライバーはいわば“男社会”なのでしょうか。

女性ドライバーは2.5パーセントしかいません。著書では体を休める方法についても記しましたが、足がすごくむくむのです。むくみを治すために停車中はハンドル上に足を上げているのです。むくみ予防のために水を飲まない人もいます。

――著書からは想像を遥かに超える過酷さが伝わりました。

女性を増やすべきだとは思います。ただ業務の内容に合う、合わないというのはどうしても出てくる。私は金型を運んでいましたが、重くて危険な作業が多かったので女性の仕事としては向いているものではなかった。

例えば、重くない荷物ならば女性の負担にならず、問題ないかもしれません。しかし、長距離を寝る間も惜しんで走らなければならないとなると向かないでしょう。状況に応じて合う環境ならば、積極的に女性を増やすべきだと思います。

トラックの駐車スペースはどこ? 過酷労働の遠因に

――長距離の運転は睡魔との闘いもあり、過酷です。路上駐車して仮眠を取るトラックの事情も紹介しています。

トラックが停車できる場所が無い点は深刻です。乗用車であればコインパーキングがありますが、大型トラックにはそれがありません。

加えて、トラックの業務的な背景もあります。約束の時間に遅れる“延着”が許されないことは当然ですが、早く着いてもいけない。これを“早着”といいます。遅れないために一生懸命に時間を調整して現場に到着するのですが、その現場近くに行った後は今度は残った時間が自分の睡眠時間や休憩時間になる。 その時間を目的地の敷地内で過ごせるかというと、そうではないのです。

荷主自体が営業を始めていないからそもそも入れないということと、荷主によってはスペースの問題もある。“ジャストインタイム”という物流の流れ方があるので、荷主としては、「必要な時に必要なものだけ必要なタイミング」でというのがあって、時に入構を分単位で決められてしまうこともある。

「工場に来るまでは構外で待機していてね。でも近所はご迷惑だからやめてね」ということになってしまい、ドライバーがなんとか探し求めた場所が、ゼブラゾーンであったり3車線ある左側だったりして、迷惑だといわれてしまうのです。

――高速道路のパーキングエリアが休憩中のトラックでごった返す背景に、ETCの深夜割引制度があるのですね。

ETC深夜割は0時から4時までの間に1秒でも高速道路内にいたら料金が3割引になる。これは彼らにとって非常に大きいのです。中には同サービスを利用し、毎月数百万円以上の高速代を浮かせる業者もいます。それならば、経営者もドライバーに対して「ちょっとパーキングエリアで休んでくれ」となりますよね。

サービスエリアでも数少ない大型トラック用の駐車スペースは先着順で埋まってしまうから、枠を確保できなかったドライバーがどこに行くかとなると、 サービスエリアから本線に戻る合流地点で邪魔にならないように過ごすことになるのです。他にも、自分が降りる予定の出口の手前ですごい数のドライバーが休んでいる。そして、午前0時を回った途端に高速を降りていくのです。

“トラック野郎”の時代は年収1千万円も今は・・・

――4時間働いたら30分の休憩を定めた「改善基準」がドライバーには不評だというのも皮肉な話です。

業界では通称“430”といわれています。経営者にとってはこれを守らせることで「ドライバーをしっかり休ませた」という証になって必要なものです が、ドライバーの立場としてはやはり疲れを感じたタイミングで休ませてほしい。実は4時間というのは運転する側からしたら、“のってくる”タイミングなの です。

ちょうど運転の疲れも越えて、「よし、いくぞ!」という時間。それなのに、4時間を迎える30分ほど前から停車する場所を考えなければならないプレッシャーに苛まれることになる。「ここら辺で停まった方がいいのかな、いや、もうちょっと行った方がいいかも」とあれこれ考えることになってしまう。4 時間走って30分休みという時間縛りはやめてほしいようです。

トラック業界をめぐる規制緩和は1990年のことです。その規制緩和がトラックドライバーを苦しめる元凶にもなっています。労働環境も悪くして、いわゆる“トラック野郎”最盛期の時代には1千万円ほどあった年収も低下しました。“ルール!ルール!”の縛りが環境を悪化させたのです。

――1千万円は今では考えられない。

現在では平均年収で450万ほどです。本来の運送業務以外に細々とした作業も任されるようになり、加えて過酷な労働環境。新しい人が来ないのも当然で、人手不足が加速している状況です。

――しかも駐車できるスペースが見つけられないなどしてフラストレーションもたまる。

本当にイラッとしますよ。せっかく見つけた大型トラック用のスペースに車が停まっていると、クラクションも鳴らしたくなります。実際、過去に鳴らしたこともあります。今は言葉も丁寧になりましたけど、昔はやんちゃだったんで。

やんちゃが多いドライバー 車中では何を?

――ドライバーはやんちゃな人が多いのでしょうか。

やんちゃというより、すごく熱い人が多い。自分なりの正義を持って働いていますね。今回の本を書くにあたって、TwitterやFacebookなどを使い現役のトラックドライバーさんたちから意見を伺いましたが、やはり熱い人が多いなあとしみじみと。

みんな初めからトラックドライバーになりたくてなった人が多くて、生涯“ガテン系”という人も多い。でも、最近はホワイトカラー出身の人も増えています。

――高速道路の運転は景色が変わらずつまらないと感じます。

私は色々と物を考えながら運転するタイプで、めちゃくちゃ好きでした。逆に、一般道を走っている時は怖いんです。周りに人がいたり、自転車が飛び出して来たりするかもしれないから。高速道路は余程のことがない限り、人が歩いていることはない。頭の中を整理する時間にしていました。

私だけではなくて、トラックドライバーには考えることが好きな人が結構多いんです。運転中に音楽系と語り系、どちらのラジオを聴いているか尋ねたら、群を抜いて語り系でした。人の話と自分の状況を比較しながら、人生を考えたりする。

運転中は自由にできるのが頭と口だけなのです。だから、喫煙率はすごく高い。そして、色々なことを考えることが多くてポエマーも結構いるんですよ。 ちゃんとした詩を考えてTwitterのDMで送ってくれる人もいます。あとは、色々な土地に行くので素敵な写真を撮って送ってくれる方もいますね。

定番の眠気対策はスルメとガム

――トラックドライバーにとってラジオは必要不可欠ではないでしょうか。

全然聴かない人とめちゃくちゃ聴く人で両極端です。ニッポン放送の吉田照美さんの大ファンだから全て聴くとか、吉田さんのイベントが大阪であるから「一緒に来てください」と誘われもしました。

――橋本さんはどうしていたのでしょうか。

私は語り系もすごく好きだったんですが、歌を歌っていたので音楽系もよく聞いていました。車内ではR & Bも歌ってました。運転しながら歌う人は多いです。あとは独り言をいう人とか。

それは眠気対策もあります。スルメの力は絶大ですね。世の中の物流を支えているのはスルメです。スルメを噛む人は多いです。眠気対策としては実は缶コーヒーはあまり評判は良くないです。あくまでも嗜好品の一つですね。

実はみんな聞いてた喘ぎ声 “ある!ある!!”と賛同の嵐

――スルメ以外にはガムとかですか。

スルメ、ガム以外では中にはティッシュを噛むと答えてくれた人もいます。あとは自分の体をつねるとか。私は女性なので気づきませんでしたが、喘ぎ声も効果絶大だそうです。

――実に興味深い。

スマホかポータブルDVDを使ってかは分かりませんが、大音量で聴いて3大欲求の一つである性欲を刺激すると。興奮すると眠気が吹っ飛ぶそうです。

これもTwitterで教えてもらったのですが、今回の本には絶対に盛り込もうって。Twitterで眠気覚ましの方法を聞いたら、喘ぎ声って答え が返ってきて、「ある!」「ある!!」「ある!!!」「ある!!!!!」とすごい反響でした。運転中なので動画は見られないはずですが、声だけでも眠気が 吹っ飛び運転に集中できるのではないでしょうか。

私自身は労働には男女の性差を入れるべきではないとの考えですが、これだけは仕方ないと思いました。喘ぎ声で命を守ってもらえるのですから。

見直すべき顧客至上主義

――喘ぎ声の次に話すべきことではないかもしれませんが、楽天市場の送料無料化の騒動など、物流の現状をどう見ていますか。

ドライバーが負担を強いられる背景には、顧客至上主義というものがベースにあると思います。「送料無料」と銘打っても必ず運賃は発生しているのです。

にもかかわらず、わざわざ送料無料としてしまうのは、顧客であるお客様が“無料”に食いつくからです。そこに、すごく過酷な環境にあるトラックドライバーの価値がないがしろにされていると思わざるを得ません。実際、「あんなに苦労しているのに、俺たちの存在価値はなんなのか」というメッセージをくれた人もいます。

――Amazonや楽天などに対し、何か提案はありますでしょうか。

置き配については、積極的にやるべきという人も多いですが、浸透しない原因の一つが日本の文化なのでしょう。地面に荷物を置いて帰ることに抵抗を持つ人が特に高齢者に多く、手から手に行き渡らなければならないというおもてなし文化みたいなものもあります。

他にも、盗難にあったらどうしようという不安も根強い。マンションなどでは、宅配ボックスの設置も進みましたが、どうしてもすぐ満杯になってしまう。

捨て去るべき“宅配は自宅で”の概念

――宅配の利用者としては何度も再配達に来てもらうのは申し訳ないです。

重い荷物、例えば水のペットボトルかなんかを届けに行って、1度目は不在。再配達で指定の日に行っても不在、そこに雨でも降っていようものなら「なんで約束の日時にいないんだ」とかちんともくるでしょう。

――ネットでの買い物が普及した中で、物流の課題に対して消費者が考えるべき視点とはなんでしょうか。

現状では、置き配が最も新しいサービスでしょう。駅の近くなどにロッカーを設置してそこで受け取るというサービスもありますが、いかんせんものを選びます。消費者にとっては重いものは不便だし、ナマモノは扱えない。

そんな中で、自宅の玄関で直接受け取るべきものという概念を捨てることが一番かと思います。それこそ、コンビニの負担については十分な検討が必要ですが、コンビニで受け取るだけでも大分変わるでしょう。

今、顧客至上主義を全体的に見直そうという風潮は確実に広がっています。例えば、スーパーのレジ袋は有料化して、コンビニの24時間営業も見直されている。“消費者はそんなに神様ではないよね”というと、「何いってんだ」という声が絶対に出てきます。でも、それをやらない限り、物流はいつか絶対破綻してしまう。“サービス=無料”という概念を払拭しなければならないと今は感じています。

橋本愛喜(はしもと・あいき):大阪府生まれ。工場経営者、日本語教師などを経て、フリーライター。大型免許を取得後、トラックで200社以上のものづくりの現場を訪ねた。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などについて執筆や講演を続ける。

岸慶太

[BLOGOS]

効果大であることは日頃体感していますが。。。

「肩凝り」「首凝り」「目の疲れ」を足の指から解消する

リフレクソロジー式 不調別マッサージ

足裏は“体の調子を映し出す鏡”であることを知っている人は多いかもしれない。そこで、足裏をほぐす基本のケアから、肩や首の「凝り」や、頑固な脚の「むくみ」などに効果的なセルフマッサージを紹介。リフレクソロジー式の反射区を使って、足裏から体の不調をリセットしよう。今回は、「肩凝り」「首凝り」「目の疲れ」。肩が凝っている人は、首の凝りや目の疲れも抱えていることが多い。足の指に近い「反射区」をマッサー ジすると効果的。凝りと疲れを一気に取ろう。

頑固な「肩凝り」「首凝り」は 目の反射区も加えて一気に解消

現代人にはもはや“付き物”ともいえる、「肩凝り」「首凝り」「目の疲れ」──。こうした首から上に出る不調の解消も、足裏の反射区を知っていると便利だ。

もちろん、首、肩、目にはそれぞれに関連しているとされる「反射区」(イラスト)はあるが、リフレクソロジストの市野さおりさんによれば「肩や首の凝りには、目の反射区を加えてマッサージするのがお薦め」だという。

「首や肩の凝りは目の疲れが原因だったり、反対に肩凝りから頭部への血流が悪くなり、目の疲れを生むこともある」(市野さん)。

該当する反射区に触れてみて、コリコリとした所を見つけたら、重点的にマッサージをしてみよう。肩や首の凝りに加えて、手が届きにくい肩甲骨まわりの凝りが足裏の反射区からほぐせるのも、足裏マッサージならではの特徴だろう。

足裏の反射区は左と右で関連している器官が違う

しっかり押してもみほぐし「肩の凝り」を取る

肩凝りを感じている人は、肩と肩甲骨(けんこうこつ)の反射区を集中的にマッサージしよう。

肩凝りは、主に肩甲骨の周りや、大胸筋(だいきょうきん)といった胸にある筋肉などが固まり気味で、肩の血液循環が悪くなっている状態。凝りがひどければ、肩の反射区も硬くなり、コリコリとしたしこりが見つかるはず。

しこりや痛みのある所は、凝りのひどいところ。柔らかくなるまで、しっかり押してもみほぐす。

足の小指と第4指の付け根付近が肩甲骨の反射区。手の親指を使い、指元に向けて下から上に3方向を押し進めて1セット。これを3セット繰り返す。
肩の反射区は足指の付け根にある。手を使って足指全体を反らし、足指の下にある肩の反射区にもう一方の手指を当て、押しこむように10回もむ。

親指の根元から側面に向けて押し「首の凝り」を取る

「首周辺が凝ると、脳に送られる血液の流れも滞り、頭痛やめまいが起きることもある」(市野さん)。

首の凝り取りは、親指の付け根にある後頸部の反射区から側面にある頸椎にある反射区までの小さなエリアを押す。凝っているとかなり痛いことがあるので、時間をかけて十分にもみほぐそう。

親指の根元にある、少しくびれた部分を手の親指で押しさする。最低5~6回、付け根から側面まで満遍なくほぐそう。

第2指の側面と下側を4方向にこすり「目の疲れ」を取る

長時間のパソコン作業や携帯電話でのメールなど、目を酷使する場面の多い現代では、いつも眼精疲労に悩まされるもの。

足の第2指の親指側と第3指側の根元から関節までが目の反射区。「指の側面と下側を満遍なくマッサージしましょう」(市野さん)。

手の親指を滑らせるように押し進めると痛い場合は、付け根部分を押しこんでもよい。目の奥のどんよりした疲れや、重いまぶたもスッキリしてくる。

足の第2指の付け根から関節までが目の反射区。手の親指を付け根から指先に沿わせて滑らせる。指の下側と側面の4方向を、押しさするように満遍なくマッサージしよう。

(取材・文:船木麻里/写真:岡崎健志/モデル:小町あかり)

市野さおり
看護師 リフレクソロジスト
[日経Gooday]

柔軟な感性と発想。。。

 

星野リゾートの社内はなぜ風通しがいいのか

社員が自律的に動ける組織が持つ5つの特徴

前田 はるみ : ライター

いま、「ティール組織(進化型組織)」と呼ばれる次世代型組織モデルが、経営者や人事担当者たちの注目を集めている。組織には売り上げ目標や予算もなければ、上司からの指示もない。にもかかわらず、社員はモチベーションを高く持ち、自律的に仕事をする。ティール組織とは、働く人が主導するセルフマネジメント組織であるという。

効率重視と合理主義がもたらした弊害

どうすれば社員1人ひとりの主体性を引き出し、限られた人材で生産性を最大化できる組織をつくることができるのか――。これは多くの経営者や管理職、チームリーダーが抱える共通の課題ではないだろうか。今年はじめに日本語訳が発売された『ティール組織』(フレデリック・ラルー著)によると、現代の資本主義社会においては、徹底した目標設定と目標管理のもと、競争に勝つことで利益を拡大し、成長を目指す達成型組織が主流だという。従来型のピラミッド構造をもつこの組織モデルで、これまで多くの企業が業績を上げてきた。

一方で、過度の効率重視と合理主義が働く人たちを機械の歯車のように扱い、人々のやる気を奪い、仕事をつまらなく苦しいものに変えてしまった。そこで、達成型組織に代わる新たな組織モデルとして生まれたのが、ティール組織というわけだ。海外では20年ほど前から登場し、ティール組織の条件に合致する企業もいくつかあるようだが、「完成型」はいまのところない。

日本ではどうか。じつは、ティール組織に極めて近い組織をつくりあげてきた企業がある。国内外で旅館やホテルを展開する「星野リゾート」だ。

1914年に軽井沢で創業した星野リゾートは、4代目経営者・星野佳路代表が運営に特化した経営方針を打ち出し、全国展開するリゾート運営会社へと成長を遂げた。

ラグジュアリーリゾート「星のや」や、温泉旅館ブランド「界」など、国内外にさまざまな業態の旅館を出店。今年4月に都市観光ホテル「星野リゾート OMO7 旭川」を開業、5月に「星野リゾート OMO5 東京大塚」をオープンした。

この躍進を支えているのが、今や星野リゾートの代名詞ともいえる「フラットな組織文化」である。上司と部下の間の主従関係は存在せず、ピラミッド型 組織にありがちなポジション争いや足の引っ張り合いもない。ホテルや旅館の総支配人などの管理職は立候補によって決まり、人事評価は業績ではなくプロセス重視で公平に行われる。現場はトップに“お伺い”を立てなくても、自分たちで意思決定することができる。社員が自分の能力を存分に発揮し、生き生きと働ける環境があるのだ。

筆者は過去数年間にわたり、星野リゾートの競争力の源泉であるフラットな組織と、そこで働く社員の活躍を取材してきた。社員の主体性とやる気を引き出し、企業の競争力につなげられる組織とはどのようなものなのか。拙著『トップも知らない星野リゾート~「フラットな組織文化」で社員が勝手に動き出す』 でも詳しく解説している、日本版ティール組織ともいえる星野リゾートの「フラットな組織文化」の一端を紹介したい。

自由に発想したことを提案し、行動に移せる

1.上からの指示に頼らない

世界のホテルチェーンと星野リゾートの決定的な違いは、前者が本社や本部主導による均一のサービス品質を保証しているのに対し、後者は現場主導で各 地域の魅力を反映させたサービスを提供していることだ。そのため、同じ星野リゾートの施設であっても、コンセプトやサービス内容、滞在の楽しさはさまざまである。現地主導のスタイルを採用するのは、地域の魅力はそこに暮らすスタッフがもっともよく知っていると考えるからだ。

現場に多くの自由が与えられているだけではない。現場レベルでも、スタッフは上司の指示を待つことなく、自由に発想したことを提案し、行動に移せる。実際に現場スタッフの自由な発想から生まれた人気プログラムには、奥入瀬渓流ホテルの「苔さんぽ」やトマムの「雲海テラス」、軽井沢ホテルブレストンコートの「マイ・マルシェ・ウエディング」などがある。その土地でしか体験できないユニークなサービスの数々が、星野リゾートの競争力を高めている。

「誰かの言うことや、誰かの指示に頼らないのが私たちの組織です。トップの言うとおりにすれば評価されるのではなく、顧客満足が高まることに取り組まなければ自分たちの評価にはつながらない。顧客の満足につながると自分たちが信じることをやるしかないのです」(星野代表)

2.安心して言いたいことが言える

意思決定プロセスがトップダウンではないなら、ボトムアップかというと、そうではない。役職に関係なく同じテーブルで議論ができ、誰が発言したかに 関係なく、説得力のある意見が採用される――。これが真にフラットであるということだ。各施設で毎月開かれる戦略会議では、総支配人の意見にスタッフが反 論することもあれば、総支配人の反対にもかかわらず、スタッフの意見が採用されることもある。

言いたい相手に自由に言えるためには、普段から人間関係がフラットであることが求められるが、「これは制度を導入すれば達成できるものではなく、文 化そのものを変えていく必要がある。だからこそ、会社のトップの覚悟とコミットメントが欠かせません」と星野代表。役職にかかわらず皆が同じデスクで仕事 をしたり、互いに役職名で呼ばず、誰に対しても「〇〇さん」と「さん付け」で呼ぶことを徹底したりするなど、フラットな組織文化の阻害要因となる「偉い人 信号」を1つずつ排除していったという。

また、マネジメント層と現場スタッフに与えられる情報量の均一化にも取り組んできた。星野リゾートでは、社員なら誰でも、自分たちの施設の売り上げ や顧客満足度など業績に関する情報にアクセスすることができる。上層部が経営判断に使うのと同じ情報を現場とタイムリーに共有することで、現場スタッフに 正しい議論や判断を促し、自分の仕事に責任を持ち、主体的に取り組める環境を整えているのだ。

管理職にとっても心地よい環境

3.リーダーはつねに正しくなくていい

誰もが経営情報にアクセスでき、しかも言いたいことを自由に発言できる環境では、管理職はこれまでのように「一般社員が知らない情報を持っている」 とか、「部長だから偉い」といった特権や優位性にあぐらをかくことができなくなる。部下からの反論を受けて議論を有利に進めるには、論理的思考が必要になるし、会議で皆の意見をまとめるには、より高度なファシリテーション能力が求められる。リーダーとしての真の実力が問われるという意味で、管理職は試練に直面することになるのだ。

その一方で、「『管理職はつねに正しい発言をしなければならない』というプレッシャーから解き放たれる」という側面もあるようだ。「組織がフラット であるということは、管理職も議論に参加する1人であるということ。思いつきをどんどん発言し、妥当性のある批判を受けたら直ちにそちらに乗り換えればいいのです」(星野代表)。管理職にも自由に発想し発言する機会が与えられるフラットな組織文化は、慣れれば管理職にとっても心地よい環境になるはずだとい う。

4.将来のキャリアパスを自由に描ける

星野リゾートでは、総支配人やユニットディレクターなどの管理職は、立候補によって決まる。やる気のある人がマネジメントに挑戦できる仕組みが整えられているのである。一方で、マネジメントから降りることも自由だ。マネジメントを経験した人が、興味関心の変化や、個人や家庭の事情などでマネジメント から離れ、重責の伴わない現場に戻る選択も可能なのである。星野リゾートでは、役職に就くことを「出世」ではなく「発散」、役職から外れることを「降格」 ではなく「充電」と呼ぶ。

社員がライフステージに合わせて自由にキャリアを設計できるのは、年功序列によらない給与体系であることも理由の1つだと星野代表は話す。「私たちが採用するのは、仕事に見合った給料を支払う給与体系です。勤続年数に関係なく、仕事の価値に対して給料を支払うので、会社として採算が合わないということがありません」。立候補制度の導入により、社員にキャリア設計の自由が与えられるのみならず、マネジメント層の入れ替わりを促し、組織の活性化にもつながっているのである。

社員を放ったらかしにはしない

5.自律するためのスキル習得の機会がある

発言したり行動したりする自由や、マネジメントに挑戦できる自由が与えられていても、それを実行するためのスキルが不足していれば、自由を謳歌できない。結局、上司に頼らざるをえないか、むしろ上司の指示に従っていたほうが楽だろう。フラットな組織文化で主体的に動くためには、相手を説得できるだけ の論理的思考、プレゼンテーション能力、意思疎通のためのコミュニケーション能力、議論を導くファシリテーション能力など、さまざまなスキルが求められるのだ。

社員が好きに動ける環境はあっても、個人の努力や能力に任せきりにする企業が多いなか、星野リゾートでは社員を放ったらかしにはしない。社内ビジネススクール「麓村塾」を通して、上司の指示に頼らず主体的に動くためのスキル習得の機会を社員に提供している。社員1人ひとりに発言や行動の自由を与えると同時に、学びの場を通して社員の自律的な働き方をサポートする。これも社員が自分の能力を存分に発揮し、生き生きと楽しく働くためには大切なことである。

上記に挙げた「フラットな組織文化」の5つの特徴は、「生命体的組織」「個人の自律分散型組織」とも呼ばれるティール組織の条件と近しい。

社員のモチベーションや能力を企業の原動力として機能している点も一緒だ。

先述した新業態「星野リゾート OMO」では、ホテルスタッフが「ご近所専隊 OMOレンジャー」と名付けた案内役を務める。色違いのユニホームを着用し、徒歩圏内でガイド本に載ってないような穴場の飲食店や、名物ママのいるスナッ ク、エンターテインメントなどを案内するという。社員が自ら考えて動く会社でなければ、思いつきもしないサービスであろう。

[東洋経済ONLINE]

ペットの健康管理の第一歩。。。

 

猫のがん原因に飼い主のたばこも、5〜6才以降は発症率高まる

たばこの煙にさらされた猫や犬は、がんの発症リスクが高くなる――。2015年、イギリス・グラスゴー大学の獣医学者らが、受動喫 煙によるペットの健康被害についての研究結果を発表した。それによると、飼い主の喫煙本数が1日10本以下でも、たばこの煙に触れている猫の血液中のニコチンレベルは、非喫煙家庭の猫に比べて明らかに高かったという。

 もちろん、がんの原因はたばこの煙だけではない。近年、ペットの高齢化が進んでいるが、その分“ペットのがん”も増えていると、白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問の獣医師・佐藤貴紀さんは言う。

そもそもがんとは、突然変異を起こした細胞(がん細胞)が増殖し、体に悪影響を及ぼす病気のこと。がん細胞が増殖しすぎると体の組織や臓器が機能しなくなり、最終的に死に至る。

「がんが発生する部位は、人間と同じでほぼ全身。5〜6才(人間の年齢で換算すると36〜40才)以降、急激に発症率が高まることもわかっています」(佐藤さん・以下同)

がんに侵されていても、初期は症状がわかりづらく、発見が遅れることも多いという。

「皮膚がんや乳腺腫瘍の場合、しこりで気づくこともあります。しこり=がんではありませんが、しこりを見つけたらなるべく早く動物病院を受診してください」

動揺してしまうだろうが、まずは落ち着くことが大切。そして「がんの進行具合」「年齢に応じた治療法の相談」「治療費」などを整理しよう。判断が遅くなるほど、がんは進行する。医師から要点を聞いたら、なるべく早く今後について決断すること。

治療法は主に、【1】手術【2】抗がん剤治療【3】放射線治療の3つ。それぞれの治療法のメリット・デメリットは次の通り。

【1】手術
すべてのがん病巣を取り除き、他の部位への転移もなければ完全治癒できるため、がん治療として最も効果が期待できる。一方で、麻酔のリスクと免疫力低下による二次的な障害が懸念される。

【2】抗がん剤治療
麻酔などのリスクを伴わず病気の治癒が見込めるが、体への負担が大きく、耐えられないこともある。

【3】放射線治療
手術で切除できない部分のがんにも効果があり、諦めなければいけなかったがんにもアプローチできる。しかし、全身麻酔が必要になることがほとんどで、治療回数も月2回程度と、体力面・経済面の負担が大きい。

がんの治療は、主にこれら3つの治療法を、進行度や体力などを考慮しながら組み合わせて行う。

また獣医学も日々進歩しており、治療の選択肢は増えているという。では、がんを防ぐにはどうしたらいいのか?

「乳腺腫瘍に関しては、避妊手術を受けることでできにくくはなりますが、現段階でがんを100%予防する方法はありません」

がんの治療には、早期発見・早期治療が大事となる。そのためにも、日々の健康状態のチェックや定期的な健康診断、そして猫と同じ空間でたばこは吸わないなどの配慮を忘れてはいけない。

愛猫の健康を守れるのは飼い主しかいないのだから。

[NEWSボストセブン]

昨今のトレンド、シングルグレーンウィスキー

 

知ったかぶりは恥をかく…「グレーンウイスキーはモルトを薄めた安酒」にあらず【ビジネスマンのための一目おかれる酒知識】

ビジネスマンのための一目おかれる酒知識 第9回ウイスキー編その3~

ビジネスマンであれば、酒好きでなくても接待や会食で酒に親しむ機会は多いです。そして多くの人は「それなりに酒に詳しい」と思っているはず。しかし、生半可な知識、思い込みや勘違いは危険。飲み会の席で得意げに披露した知識が間違っていたら、評価はガタ落ちです。酒をビジネスマンのたしなみとして正しく楽しむために「なんとなく知っているけどモヤモヤしていた」疑問を、世界中の酒を飲み歩いた「酔っぱライター」江口まゆみがわかりやすく解説します。

通常ウイスキーは、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしてつくられています。これを「ブレンデッドウイスキー」といいます。
モルトウイスキーとは、大麦麦芽を原料とし、ポットスチルと呼ばれる単式蒸留器でつくられます。一方、グレーンウイスキーは、トウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀類に、糖化のための麦芽を15~25%程度加えたものが原料で、連続式蒸留機でつくられます。

ウイスキー愛好家であれば、モルトウイスキーについてはよくご存じですよね? もしかしたら、お気に入りのシングルモルトも1つや2つではないかもしれません。では、グレーンウイスキーについてはどうでしょうか。

ウイスキーの入門書を読むと、モルトウイスキーのつくり方は詳しく解説されていますが、グレーンウイスキーについてはあまり書かれていません。

しかも、ブレンデッドウイスキーに何パーセントグレーンウイスキーが含まれているかは、世界的に規定はなく、メーカーから公表もされていません。

そこでなかには、 「グレーンウイスキーは安価な原料で機械的に蒸溜された混ぜ物ではないか?」 と考える人がいます。

安いウイスキーにはモルトはあまり含まれておらず、ほとんどがグレーンではないかと言う人もいます。安いウイスキーほど飲みやすく味がシンプルなので、そう思うのかもしれません。

たしかに、グレーンウイスキーの成り立ちをひもとくと、はじめは税金逃れのコストダウンが目的だったようです。麦芽に比べて安価な穀類を大量に使用し、19世紀前半に連続蒸留機が発明される前は、単式蒸留器で3回蒸溜してつくられていました。

こうしてつくられたウイスキーの品質は雑味が多かったので、そのまま飲用されることはほとんどなく、スコットランドからロンドンに送られてジンの原料になっていたそうです。ロンドンではグレーンウイスキーをゆっくり精溜して不純物を取り除き、純度の高いスピリッツにしてからジュニパーベリーの実やハーブ類を加え、ジンとして生まれ変わらせていました。

グレーンウイスキーというと、カフェ式とかカフェスチルという連続蒸留機の名前が出てきますが、これは1830年にこの蒸留機を発明したイーニアス・カフェの名前に由来します。それ以前にも連続式蒸留機はいくつか開発されていましたが、カフェ式蒸留機は、縦型の蒸溜塔を何段にも仕切り、もろみが上段から下段に流れながら分溜を繰り返すことによって、アルコール度数を高めていくという革新的なものでした。この設計は、今でも連続蒸留機の基礎になっています。

連続式蒸留機が発明されたことで、グレーンウイスキーの品質は向上し、ジンの原料から、徐々にモルトウイスキーとブレンドするための原料に
なりました。グレーンウイスキーの軽やかさや穏やかさは、重厚なモルトウイスキーとは異なる個性を持っていたので、ブレンデッドウイスキーのベースとして最適だったからです。こうしてブレンデッドウイスキーの軽い味わいは市場で高く評価され、ウイスキーの主流になっていきました。

グレーンウイスキーもモルトウイスキーと同じように、蒸留後は樽に入れて熟成
させます。そしてたとえば12年もののウイスキーであれば、モルト同様12年以上熟成されたグレーンが使われています。

また、モルトウイスキーと同じように、グレーンウイスキーも様々な個性を持っています。モルトウイスキーを蒸溜するポットスチルにはストレート型、ランタン型、バルジ型、オニオン型、ローモンド型などがあり、それぞれ違う個性の原酒をつくり出していますが、グレーンウイスキーの蒸留機にもいろいろな種類があります。

私はキリンディスティラリーの富士御殿場蒸留所でグレーンの蒸留機を見たことがありますが、そこでは3種類の蒸留機を使ってグレーン原酒をつくり分けていました。

五塔式のマルチカラムという連続式蒸留機では、味や香り成分の少ないライトタイプの原酒を、ケトルという単式蒸留機では味や香りが残るミディアムタイプの原酒を、バーボンに使われるダブラーという連続式蒸留機では、ヘビータイプの原酒をつくっているのです。

また、実際に見たことはありませんが、ニッカウヰスキーではカフェ式の連続蒸留機を使っています。創業者である竹鶴政孝氏がこの蒸留機を導入した1963年当時でも、すでにきわめて旧式の蒸留機でしたが、新型の連続蒸留機に比べて原料由来の香味成分がしっかりと残るからと、カフェ式にしたそうです。

世界的にはシングルグレーンウイスキーの商品は珍しいのですが、モルトもグレーンも同じ蒸留所でつくっている日本では、各社からシングルグレーンウイスキーが商品化
されています。

サントリーの「知多」はスッキリと軽やかで、ひじょうに飲みやすい
シングルグレーンウイスキーです。グレーンとは何かを知るのに、最適のウイスキーではないでしょうか。

一方、ニッカの「カフェグレーン」は、飲みやすさのなかに旨味が凝縮されていて、驚きの旨さ。竹鶴政孝がこだわった、カフェ式連続式蒸留機の実力のほどがうかがえます。

キリンディスティラリーの「富士御殿場蒸溜所シングルグレーンウイスキーAGED 25 YEARS SMALL BATCH」は、昨年のワールド・ウイスキー・アワード(WWA)で「ワールド・ベスト・グレーンウイスキー」を受賞しました。3万円以上する高価なグレーンウイスキーですが、富士御殿場蒸溜所へ行けば試飲できるそうです。

こうしたシングルグレーンウイスキーは、単独で飲むためにつくられたものですが、一般的なグレーンウイスキーは、ブレンデッドウイスキーの味わいのベースとなり、モルトの個性を引き出してくれる存在になります。

サントリーの名誉チーフブレンダー輿水精一さんは、著書の中でこのように言っています。 「ブレンディングの世界は、交響楽団の指揮者にたとえられます。ブレンダー(指揮者)は、多彩なタイプの原酒(楽団員)を統率し、妙なる香味のブレンデッドウイスキーを響かせるというわけです」 つまりグレーンウイスキーは、けしてウイスキーを水増しするための安価なアルコールではなく、ブレンデッドウイスキーという交響楽を奏でる楽団の一員なのです。

[日刊SPA]