心の病も身体の病。。。

「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由

■座りっぱなし、ストレス、睡眠不足、肥満が引き起こす炎症

さらに重要なのが、現在では炎症を起こす要因が昔と同じではないことだ。人間の歴史のほとんどの期間、炎症は細菌やウイルスによる感染や怪我で起きていた。それが今では現代的なライフスタイルが炎症を引き起こしている。

長いことじっと座っていると筋肉や脂肪組織の炎症につながることが判明しているし、長期的なストレス(日や数週間ではなく、数カ月や数年という期間)も全身の炎症の度合いを高めるようだ。睡眠不足や環境汚染物質にも同じ作用がある。加工食品は胃腸の炎症につながるし、肥満も脂肪組織の炎症につながり、喫煙は肺や気道の炎症を引き起こす。

歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある。体内のプロセスとして歴史的には短期的だった炎症が、今では進化で適応してきたよりも長く続くようになった。

■身体にとっては「炎症は炎症」

身体が炎症の原因を見分けられれば、免疫系を無駄に起動させなくてすむのだが、問題は身体が「炎症は炎症」と捉え、現代のライフスタイル要因を細菌やウイルスに攻撃されているのと同じように解釈してしまうことだ。

身体はつまり、炎症が感染によるものなのか現代のライフスタイル要因によるものなのかを見分けることができない。

同じことが脳についても言える。現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると──そして現代の炎症要因というのは長期的なものだから──脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。

結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってくるのだ。

■現代最大の炎症要因、ストレスと肥満

現代における最大の炎症要因、長期的なストレスと肥満を詳しく見てみよう。身体の最も重要なストレスホルモン、コルチゾールにはエネルギーを動員する役割がある。

例えば犬に激しく吠えられるとコルチゾールのレベルが上がり、尻尾を巻いて逃げられるように、筋肉にエネルギーが送られる。しかし危険が過ぎ去るとコルチゾールには別の役割がある。体内の炎症を鎮めるというものだ。つまりコルチゾールは炎症のスイッチを切るタイミングを制御している。

■身体が反応するのをやめてしまう

長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう。何度も「オオカミが来たぞ!」と叫ぶのと同じで、最後には誰にも気にしてもらえなくなるのだ。その結果、身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう。

なぜそれがそんなに重要なのかを説明しよう。身体では常に小さな炎症が起きている。肌についた小さな傷、筋肉の小さな亀裂、もしくは血管の内側の傷などだ。それ自体はごく自然なことだし、コルチゾールがそういった炎症を見守ってくれる。しかし身体がコルチゾールに反応するのをやめてしまうと、小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう。そういうことが長期的なストレスによって起きてしまうのだ。

しかしあらゆるストレスが危険だという結論には走らないでほしい。ストレスは生き延びるために重要な意味をもつ。ただし身体はストレスのシステムが常にオンになっているようにはできていないのだ。

■「回復」がエネルギー動員のスイッチを切る

つまりここでポイントになるのは「回復」だ。具体的に言うと、ストレスによって起きるエネルギー動員のスイッチを切ること。回復さえできれば、たいていのストレスには勝つことができる。

回復に必要な時間は個人差があるが、目安としては、労働負荷の軽い仕事ならシフトとシフトの間の休憩は16時間で足りる。仕事の負荷が重い場合は回復にもっと時間がかかり、週末および時には長期休暇も必要になる。回復の際には睡眠と休養を優先すること。リラックスし、色々な「やらなければいけないこと」を最低限に抑えることだ。

長期的なストレス以外には、確実に「肥満」が体内で炎症を起こす最大の要因だ。脂肪組織は単なるエネルギー備蓄ではなく、サイトキシンが全身にシグナルを送って免疫系を起動する。

自分の身体の一部を脅威と見なすなんて、身体はなぜ自分自身のエネルギー備蓄に対して免疫系を動員するのだろうか。確実な答えは誰にもわからないが、可能性としては、肥満が歴史的には存在しなかったからかもしれない。身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。

肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ。

■脳が私たちを引きこもらせる

ここまでの内容をまとめてみよう。あなたや私は狩猟採集をして暮らすよう進化した。しかし座っている時間が長く、恒常的にストレスを受け続ける現代のライフスタイルによって、体内で炎症の度合いが高くなっている。それを脳が「危険にさらされている」と解釈する。人間の歴史のほとんどの期間、脳にそれを伝えることが炎症の役割だったのだから。

そして常に攻撃を受けているのだと認識する。だから脳は感情を使って私たちを引きこもらせる。感情というのは私たちの行動を制御するために存在するからだ。

脳は私たちのテンションを下げ、気分を落ち込ませ、精神状態を悪化させ、そのせいで私たちは引きこもる。炎症はつまり感情のサーモスタットなのだ。炎症が起きれば起きるほど、精神状態を悪くしなければいけない。私たちの中にはそのサーモスタットがとりわけ過敏な人もいて、それも部分的には遺伝子によるものなのだが、うつになる可能性を高めてしまう。

ということは、うつの人は全員体内で炎症が起きているのだろうか。そういうわけではない。炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。

うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる。ならばうつにも抗炎症剤が効くのではないかと思うだろう。そう、まさに効くことを示す点が多くある。炎症性サイトカインの産生をブロックする薬はうつにもある程度の効果がある。その薬だけでは充分な効果がないのだが、抗うつ薬の効果を高めるようだ。ただし、それはあくまでうつの原因が炎症だった場合で、そうでなければ効果はない。

■うつは「隠された防御メカニズム」

私が診たうつ患者の多くが、自分は何が原因でうつになったのだろうかと頭をひねっていた。

社会的な要因を疑う人は多い。人間関係、仕事や学校などだ。しかしその視点で見ている限り、うつにも役割があることを理解できないだろう。

先述のとおり、うつを生理現象として捉え、細菌やウイルスとの関係性も考慮しなくてはならない。つまり、今日私たちにふりかかる比較的軽度な脅威ではなく、私たちが地球に現れて99.9%の時間、2人に1人の命を奪ってきた要因を元にして考えるということだ。

うつとはつまり、私たちを様々な感染から救ってきた「隠された防御メカニズム」なのだ。しかし現代のライフスタイルがその防御メカニズムを暴走させてしまうことがある。

■うつは肺炎や糖尿病と変わらない

精神医学だけではなく、生理学的な見地からもうつを考えるうちに気づいた点がある。生物学上、うつは肺炎や糖尿病と何ら変わらない。肺炎も糖尿病もうつも、その人の性格に問題があるせいではない。だから、うつの人に「しっかりしろ」と声をかけるのは、肺炎や糖尿病の人に「しっかりしろ」とはっぱをかけるくらい馬鹿げている。病院で肺炎や糖尿病の治療を受けるのと同じで、うつも治療を受けるべき状態なのだ。

うつの生物学的な仕組み、そしてなぜうつが引き起こされるのかを学んだからといって、すぐに治るわけではない。だが、そこからスタートするのは悪くない。自分の脳や精神状態が免疫学的なプロセスに左右されるという知識をもつことで、私自身もライフスタイル関連のアドバイスを真剣に受け止めるようになった。

当然あなたも「運動はしたほうがいいし、しっかり睡眠を取って、予測不可能なストレスや長期的なストレスは減らしたほうがいい」というのはわかっているだろう。しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう。

■脳の“病気”というより“正常な反応”

だからと言って、炎症に抗う方法なら何でも──例えば特定の食事療法など──がうつに効くというわけではない。残念ながらそんなに単純な話ではないのだ。

起きている間ずっと予測不可能なストレスを受け続ける職業もある。そんな労働環境がなぜうつにつながるのか、それも理解できるようになる。

無気力になり引きこもりたくなるのは病気ではなく、健全な反応なのだ。つまり一番良いのは労働環境を変えること。もちろん言うは易しだが、ここでポイントになるのは、異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ。

アンデシュ・ハンセン
精神科医

[PRESIDENT Online]

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血糖値が気になるなら醸造酒はNG? 食後高血糖を抑える飲み方の鉄則

お酒と血糖値【後編】おつまみのポイントは、たんぱく質と油をしっかりとること

葉石かおり
エッセイスト・酒ジャーナリスト

 

多くの人が気にする「血糖値」。肥満が気になるのはもちろん、将来糖尿病になるのは何とかして避けたいものだ。前編は、「食事と一緒にお酒を飲むと血糖値の上昇は抑えられる」という酒飲みにうれしい報告をさせていただいた。今回は、食後血糖値を上げないための具体的な飲み方、おつまみの選び方などを、前編に引き続き「ロカボ」の提唱者・山田悟さんに聞いていこう。

食事と一緒にお酒を飲むと血糖値の上昇は抑えられる」――。

前編では最近の研究報告を基に、糖尿病専門医で、緩やかな糖質制限「ロカボ」の提唱者、北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長の山田悟さんから、「アルコールは血糖値にとって、敵ではない」というお墨付きをいただいた。

私もそうだが、これまでは「アルコールは血糖値を上げるの? それとも下げるの? いったいどっち!?」とモヤモヤしていた酒好きもいたと思うが、前編を読んでだいぶホッとしたのではないだろうか。

私事ながら、自分自身が食後高血糖であることが判明したことは、卒倒しそうなほど驚いた(詳しくは前編をご参照ください)。こんな仕事をしているくせに血糖値180mg/dL(食後2時間後の値)ってどうよ…。なお、食後2時間の血糖値が140mg/dL以上の場合、食後高血糖と診断される(食後高血糖の怖さについては前編をご参照ください)。

糖尿病家系で、将来糖尿病のリスクが高い身としては、今後の食事、そしてお酒の飲み方には注意せねばなるまい。念のためお伝えしておくが、これは私だけの問題ではない。山田さんによると、日本人の半分近くは食後高血糖の可能性があるというのだから、人ごとではない! 特に昼食後に眠くなったり、集中力がなくなる人は要注意である。

では、食後高血糖を抑えるためには、どんな飲み方をするのがいいのだろうか。

いくらお酒が血糖値の上昇を抑えるといっても、糖質たっぷりのお酒を飲むとなると、「ホントに大丈夫?」とグラスを持つ手が止まってしまう。特に日本酒は、糖質を多く含むと言われているだけに、手を出すのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうのではないだろうか? 正直、私も食後高血糖が判明してからというもの、日本酒は恋しいものの、あえて糖質ゼロの本格焼酎ばっかり飲んでいる。

また、食後高血糖の恐ろしさを知ってからというもの、おつまみに関しても気になって仕方がない。前編で紹介したオーストラリアの研究(Am J Clin Nutr. 2007;85(6):1545-51.)から、実験で糖質の多いパンをアルコールと一緒に摂取すれば血糖値の上昇が抑えられるという結果が得られているものの、その抑制度合いにはおのずと限界があるだろう。糖質たっぷりの焼きそばやポテサラをガンガン食べたら、さすがにマズイだろう…。

どんなお酒を選べばいいか、そしておつまみは何にすればいいのかーー。ここはしっかり山田さんに確認しておかねばならない。

「糖質の少ないお酒を選ぶ」というのが鉄則だが…

山田さんは、血糖値を上げにくい、緩やかな糖質制限「ロカボ」を推奨していらっしゃいますが、アルコールを絡めた場合、どんな飲み方をすれば実現できるのでしょうか?

前回もお話ししたように、血糖値を上げるのは糖質です。ですから、糖質面から見たお酒選びの鉄則は、『糖質の少ないお酒を選ぶ』ということになります」と山田さんは話しつつ、次のようにフォローしてくれた。

「しかし、お酒には個人の好みがはっきりあります。極端に糖質が多いお酒は避ける(もしくは量を控える)にしても、苦手(嫌い)なお酒を選ぶことはありません。ぜひ好きなお酒を楽しんでください。ただし、食事(おつまみ)とお酒の糖質量を合計して、40g以内(1食当たり)に抑えるようにしてください。ここがポイントです」と山田さんは話す。

山田さんが提唱している緩やかな糖質制限「ロカボ」では、1食当たりの糖質量を20~40g以内に抑えることを推奨している(1日当たりでは間食10gも含めて70~130g以内に抑える)。これにより、食後高血糖になるリスクを抑えようというものだ。1食トータルで40g以内に抑えるためには、糖質が少ないお酒を選んだほうが有利。その分、おつまみの選択できる幅が広がるというわけだ。

糖質量が少ないお酒の代表は、本格焼酎、甲類焼酎、ウイスキー、ウオッカ、ジンなどの蒸留酒で、糖質ゼロ(またはほぼゼロ)です。一方、醸造酒は比較的糖質を多く含んでいます。中でも日本酒、ビール、紹興酒などは糖質を多く含んでいます」(山田さん)

主なお酒に含まれる糖質量(100g当たり)

主なお酒に含まれる糖質量(100g当たり)
※糖質量は「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」に掲載されている炭水化物から食物繊維を除いて算出

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血糖値の観点からは、糖質ゼロの蒸留酒がいいのはよーく分かる。しかし暑い日はビールをゴキュゴキュッと飲みたいし、和食には日本酒を合わせて楽しみたい。そしてイタリアンやフレンチならワイン(スパークリングワインも含む)と合わせたいと思うのが左党である。

先生、ロカボ的に醸造酒はNGなんでしょうか?

「いえいえ、そんなことはありません。醸造酒だって飲んでもいいんです。先ほども触れたように、1食トータルで40g以内に抑えればOKです。醸造酒の中では、ワイン(スパークリングを含む)は糖質量が低いという特徴があります。もちろん銘柄にもよりますが、赤でも白でもスパークリングワインでも、3杯程度飲んでもおよそ5g程度です。飲み過ぎなければ、あまり気にせず楽しめると思います」(山田さん)

「ワインを選ぶ際には『辛口』と表示されているものを選ぶといいでしょう。スパークリングワインの場合は、『extra brut』『brut nature』などと表記があるものが安心です(いずれも極々辛口という意味)。ただしデザートワイン、貴腐ワイン、そしてアイスワインはいずれも甘口で、糖質がとても多いので、飲むなら少量に抑えましょう」(山田さん)

日本酒もOK! おつまみの糖質でコントロールすればいい

上のグラフを見ると、確かにワインは醸造酒の中では糖質が低めだ。それに比べ日本酒は100g当たり3.6~4.9gと赤ワインの3倍程度の糖質が含まれているではないか。食後血糖値を気にする人は、日本酒に手を出さないほうがいいのだろうか?(涙)

「糖質面から見れば、もちろん糖質が少ないお酒がいいに越したことはありません。でも好みや、食べ物との相性もあります。日本酒など糖質が多めのお酒を飲む際は、おつまみで糖質量を調整すればいいんです。糖質が多めの日本酒でも、1合に含まれる糖質は7~9g程度です。食事の糖質をうまくコントロールすれば、十分に楽しめますよ」(山田さん)

なるほど。寿司と日本酒の組み合わせなどとなると一気に糖質の制限量をオーバーしてしまいそうだが、他のおつまみであれば工夫次第で何とかなりそうだ。

このほか、低糖質あるいは糖質ゼロの発泡酒、カクテル・チューハイなども上手に活用してほしいと山田さんは話す。「酒造メーカーは現在、売れ筋商品である低糖質(もしくは糖質ゼロ)のお酒の開発に大きな力を注いでいます。味もどんどんおいしくなっています。合成甘味料を使っていると『体に悪いのでは…』と心配する方もいらっしゃいますが、日本で認められている合成甘味料は、安全性が確認されており、神経質になる必要はありません。血糖値も上げません」(山田さん)

お酒は食事と一緒に楽しむもの、お酒だけを飲むのはNG

左党の中には糖質を気にするあまり、おつまみを食べず、酒ばかり飲んでいる人が少なからずいる。実際、そういう人を見ると、みるみるうちに痩せていくのだが、健康面が心配である。

そう話すと、山田さんは「お酒は食事と一緒に楽しんでください!」と強く話す。

「お酒は、お酒だけで飲むのではなく、食事と一緒に楽しむものです。お酒だけを飲み、酔うことを目的にすると、健康を損なう飲み方になる可能性があります。一方で、食事とともにお酒を飲めば、血糖値の上昇を抑える『体にいい飲み方』になります」(山田さん)。フランスの食文化では、食事とワインとの組み合わせ(マリアージュ)を大切にするが、それは健康面でも理にかなったことなのだと山田さんは話す。

さらに、「前編でお話ししたように、それによって血糖値を下げることが分かっています。太ることを気にして、お酒単体で飲む方もいらっしゃいますが、これを続けていて、昏睡状態など重篤な症状を誘引するアルコール性低血糖を生じた方もいます。アルコール性低血糖を防ぐためにも、おつまみを一緒にとったほうがいいのです」(山田さん)

 

先ほど、蒸留酒は糖質がほぼゼロだと紹介したが、ウイスキーなどの強い酒を単体で飲み続けるのはお勧めできないと山田さんは話す。「12カ国の35~70歳の成人、約11万5000人を対象にした、アルコール消費と心血管疾患、がん、外傷、死亡率などとの関係性を調べたコホート研究(Lancet. 2015;386:1945–54.)から、強いお酒(高アルコールのお酒)を飲む人は、ワインやビールなどの醸造酒を飲む人よりも、死亡率、脳卒中、がん、外傷などのリスクが高いことが明らかになっています」(山田さん)

そういえば若い頃に泥酔し、転んで靭帯を痛めた際に飲んでいたのはウイスキー単体だったっけ…。しかもロックでガンガン。

山田さんは、「蒸留酒を飲むのなら、炭酸で割ったハイボール、または水割りにするといいでしょう」とアドバイスする。確かに、ウイスキーにしても、焼酎にしても炭酸で割るハイボールが人気だ。蒸留酒でも、割って飲めば食事とも合わせやすい。

さて、お酒については、“酒量”に触れないわけにはいかないだろう。前編で紹介したように、お酒が血糖値の上昇を抑える効果が期待できるとなると、ちょっと多めに飲んでもよさそうだが、先生どうなのでしょう?

「アルコールそのものは、発がん物質とされていますし、一定量以上飲むと正の相関をもって死亡リスクを上げていきます。やはり飲酒量は適量に抑えてください。具体的には、国が定める適量飲酒である純アルコールで20gが目安です(*1)。日本酒でいえば1合、ビールなら中ジョッキ1杯、ワインならグラス2~3杯程度です。ただし、アルコールの強さ(耐性)には個人差もあります、このデータはあくまで観察疫学研究から推定した目安と理解してください」(山田さん)

*1 純アルコール量=アルコール度数(%)×0.01 ×お酒の量(mL)×0.8 で計算できる。アルコール度数5%のビールを500mL飲酒するならば、純アルコール量=5×0.01×500×0.8=20g。

おつまみのポイントは、たんぱく質と油をしっかりとること

次は、お酒と組み合わせる「おつまみ」。食後高血糖を抑えるためには、具体的にどんなメニューを選べばいいのだろうか。

「食後高血糖を避けるためのポイントは、何と言っても糖質の少ないメニューを選ぶこと、そして鶏肉や豆腐などのたんぱく質を多く含む食品、オリーブオイル、ナッツ、魚に多く含まれるオメガ3(*2)、バターや生クリームなどの良質な油をしっかりとることです。たんぱく質や油を先に摂取しておくと、血糖値の上昇が抑えられます。晩酌時にたんぱく質をしっかりとっておけば、筋肉の合成スピードも上がって、ロコモ(*3)対策にもなりますよ」(山田さん)

*2 オメガ3とは、n-3系多価不飽和脂肪酸の通称。α-リノレン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などのこと。体にいいと言われる油の一例。
*3 ロコモティブシンドロームの略。骨、関節、神経、筋肉などに障害が起こり、立つ・歩くなどの日常生活を送る上で重要な機能が低下する状態。

先生、居酒屋メニューでいえば、具体的にはどんなおつまみがいいのですか?

「枝豆、唐揚げ、冷ややっこ、焼鳥(塩)、そして刺身、カルパッチョなどもお勧めです。どうです? 居酒屋の定番メニューでも選べるものはいっぱいありますよね。こうした糖質の少ないおつまみなら、お腹いっぱい食べてもいいんです」(山田さん)

たんぱく質と良質の油は満腹になるまで食べて大丈夫です。この2つを中心にした食生活をしている人は満腹感によってエネルギー摂取をコントロールできます。怖がらずとも、満腹になってもいいのです」(山田さん)

「お腹いっぱい食べてもいい」――。血糖値を気にする人は、常に「腹八分目にしなさい」と言われているので、この一言は暗闇にさす一筋の光のように見えるのではないだろうか? 山田さんによると、「たんぱく質や油を中心とした食生活をしている人は、満腹感を与える消化管ホルモン『ペプチドYY』がよく分泌され、さらにその状態が長く保たれる」そうだ。一方、「糖質中心の食生活をする人はペプチドYYが分泌されにくいため、特に肥満の人は食後2時間もすると空腹を感じる傾向にある」という。

確かに、肉や魚、そして大豆食品をはじめとするたんぱく質や油は腹持ちも良く、しっかり食べておくと間食を必要としなくなる。油もOKというのは、食べることが好きな左党にはありがたい。ただし、「古い油(酸化した油)、それにトランス脂肪酸(植物油を加工する際に生じる油の一種で、過剰摂取は健康に悪影響があることが指摘されている)は避けてください」と山田さんは話す。

そして、控えるべき糖質を多く含むメニューについては、「焼きそば、焼きおにぎり、パスタ、ピザなど、糖質が多いおつまみを食べたい場合はラストにしましょう。先にたんぱく質や油を十分にとっていると、血糖値上昇が若干でも抑えられます。そして、先にたんぱく質と油でお腹を満たしておけば、炭水化物メニューの量を食べ過ぎることもありませんよ」(山田さん)

居酒屋では、最初からポテトサラダ(すぐ出ることが多い)を頼む人もいるが、これはNG。「『ポテトサラダは野菜だから』などと言う人もいますが、血糖値の面からは避ける(もしくは量を控える)べきです。ポテトサラダのじゃがいもは、1個(100g)で糖質が17gにもなります。同様にコーンサラダもNGです。芋類やとうもろこしは主食と同じと考えてください」と山田さん。

なお、野菜に多く含まれる食物繊維には、糖の吸収を穏やかにする効果があるため積極的にとりたい。野菜の多くは糖質量が少ないが、ゆり根、かぼちゃ、レンコンは糖質量が多いので注意が必要。また、たまねぎ、にんじん、パプリカなども比較的多い。これらのとり過ぎには注意しよう。

知らず知らずのうちに糖質過多になっているおつまみを見直し、たんぱく質と良質な油中心のおつまみに変えることで、さまざまな病気を引き起こす食後高血糖を改善できる。また、昼食の内容などを見直せば、仕事の生産性を上げることも期待できそうだ。

ビジネスパーソンとして仕事のパフォーマンスを上げるため、そしてまた恐ろしい病気を誘引する食後高血糖を改善するためにも、今一度、飲んでいる酒の種類と食事の内容を一考しておきたい。

先生のアドバイス通りに食事を変えてみた結果は…

前回も紹介したが、以前の私の食後血糖値は軽く180mg/dL超え。「糖尿病と診断されてないもーん♪」(空腹時血糖値は基準値内)ということもあり、糖質への意識が甘かったが、この結果を踏まえ「これはまずい…」と食事改善に着手した。

山田さんのアドバイスを基に1食当たりの糖質を40gに抑える食生活を1カ月したところ、何と食後血糖値が97mg/dLという好成績を得ることができた。

具体的にどうしたかというと、糖質量を簡単に測れるスマホのアプリ( 「糖質カウンター」というアプリ)を活用して、1日の食事を管理するようにしたのである。このアプリを使って食事を管理すると、前述したように、レンコンやにんじんといった意外なものにも糖質が多いことが分かり、摂取量を抑えるようになる。こうして、日常の食事に気を付けることにより、食後高血糖がだいぶ改善されてきた。

正直、大好きなチョコレートはやめられないのだが、山田さんも「間食(スイーツ)もしっかり楽しんでください(ただし糖質10g以内)」と話していたので、量を抑えつつ安心して食べている。

普段に飲む酒は、日本酒メインから糖質ゼロの本格焼酎(水割りかハイボール)に切り替え、外飲みの際には、日本酒やワインなどの醸造酒を楽しむようにメリハリをつけたところ、ストレスもたまらず、リバウンドもしていない。もう少しがんばって、体重もあと3キロ減らしたいところである。

ちなみに、糖質を食べても、食後に運動さえすれば血糖値は上がらない、などと言う人もいるが、それはどうなのだろう? せっかくの機会なので山田さんに聞いてみた。

すると、「食後に、運動することは、もちろん悪いことではありませんので、ぜひ実践してください。ただし、血糖値については、運動より食事の影響の方が圧倒的に大きいのです。ですから、食後に慌てて運動するより、食事で糖質をコントロールしたほうが効果的といえます」(山田さん)というお返事をいただいた。やはり食事面での取り組みが最優先なのだ。

◇        ◇        ◇

ここまでの山田さんの話をまとめると、アルコールが血糖値を上がりにくくしてくれることは確実ではあるものの、適量はあくまで純アルコール換算で20g。選ぶ酒は、糖質量が少ない酒が望ましい。糖質量が多い酒を飲む際は、おつまみで調整して、1食当たりの糖質量はトータル(酒込みで)40g以内に収める。おつまみは、糖質量を考慮し、たんぱく質&良質な油を主体としたものを選ぶのが理想ということだ。糖質を多く含むメニューは食事の最後(カーボラスト)にする。

改めて見直すと、これといって難しいことはなく、意識さえすればすぐにでも実践できることばかりである。これで血糖値がコントロールでき、将来の糖尿病のリスクが減る。さらには食後の眠気を抑え、集中力も維持できるならお安いもんではないだろうか。

左党はおいしいおつまみを食べながら、酒を飲むことを何よりの幸せと感じる人が多く、そのため気づかぬうちに糖質過多になっていることがある。この機会に今現在の自分の食後血糖値を把握し、糖質の摂取を上手にコントロールしながら、長―く、健康的に飲み続けたいものである。

(図版:増田真一)

山田 悟(やまだ さとる)さん
食・楽・健康協会代表理事 北里大学北里研究所病院糖尿病センター長[日経Gooday]