ポジティブはコンプレックスの先にある

「考えないようにする」ではなく「考え抜く」ことで得られるプラス思考

■「弱い自分」を許せるようになった
プロ15年目となる上田さんは、今季ツアー2勝、通算15勝目。長きに渡り女子ゴルフ界のトップを走り続けている。プレーや日常の一瞬を捉えたいくつかの 写真を渡され、「最も美学や信念が表現されている写真は?」と聞かれた上田さんは、狙いすましたアイアンショットの写真を選んだ。「ゴールに向かって常に 進んでいくことを自分の中で大事にしているので、これが一番自分らしく、未来を見ている感じがします」と迷わず即答。その決断力の速さについて触れられる と、「ゴルフのプレー中でも大事だったりするので、迷わないようにも努力しています。“直感で決まらなくてもすぐに決める”ことを普段から意識していて、 例えば、買いたいものが3つあって迷うくらいなら、3つとも買います」と笑う。
“決断力”は、上田さんに対するパブリックイメージに当てはまると言えそうだ。同様に、“負けん気が強い”という印象もある上田さんだが、前回の出演から 1年経ち、大きく変わった点は「許せるようになった」ことだという。「もともと自分の性格がイヤで、以前は人からどう見られているか、自分がどうあるべき かが先行し、自分がどうしたいか、どうありたいかは考えていなかった。我慢することもストレスに感じたり、ネガティブなイメージを持っていたりした」とい う。今では、“我慢している自分”、“弱い自分”を許せるようになったが、その変化は、上田さんがMCを務めるトーク番組、『全力!桃子チャンネル ~上田桃子が伝えたいコト~』(BS朝日、毎月第3土曜9:00~9:30)にゲスト出演する“その道のプロ”たちの影響によるものだった。中でも、最初 のきっかけは、海洋冒険家の白石康次郎さんとの出会いだと振り返る。「ポジティブな白石さんは、自分とは真逆の人だと思っていた。けれど、親しくなる中で 色々な話を聞いてみるとすごく繊細で、たくさん考え抜いた先でプラス思考に行き着いた、ということが分かった。白石さんのお陰で、“私はまだ考え抜くとこ ろまではいっていない”、“自分を好きになれなかった期間も必要な時間”と考えられるようになりました」。
■一度きりの人生は「自分らしく」
以前に出演した際は、24時間、寝ている間さえゴルフのことを考えてしまい、「料理をしている時だけゴルフを忘れられる」と語っていた上田さんだが、現在 は、ゴルフ場を出たら違うことを考えるようになったという。「例えば次の休みの予定やオフに行ってみたい海外のことを考えたりしています。そうやってオフ の時間が充実する分、スイッチがオンになった時により集中できるようになりました」。33歳の今、結婚や出産といった、女性としての幸せを望む気持ちがな いわけではない。しかし、「今の優先順位はゴルフ」ときっぱり。「ゴルフが楽しいと思っている間はチャレンジしたいので、今はゴルフを頑張りたい」と力強 く語った。
上田さんは、「コンプレックスだらけで、“こうなりたい”という欲望もいっぱいあるけれど、それも含めて自分なので、それでいいと思っている。良くも悪くも、誰でも人にないものを必ず何か持っているので、一度きりの人生、それをまず伸ばしていくことがとても大事ではないか」と語り、座右の銘は「自分らしく」であると述べた。そんな上田さんが自分らしいと感じる部分は“粘り強さ”だ。「どんなに差がついていても、最後に何か起こるかもしれない。そう思うこ とで来週につながると思っているので、一回も諦めたことはないです。若い時は本当に負けず嫌いな性格が自分を支えていたし、根本、諦めの悪さは染みついて いるので、これからも自分らしさとして大事にしたいです」と笑顔を見せた。
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ストレスマネージメント

■1万人の面談でわかった ストレスに悩まない人の「7つの習慣」

産業医として約1万人と面談してきて分かってきたのは、不安やストレスに悩まない人は7つの習慣を身に付けていること。

1つ目の習慣は「好きなことをする」だ。

「テニスをしているときに、ボールを追いかけながら仕事のことは考えにくい。バイクを運転中のときなども同様、仕事のストレスから解放されるときだと思い ます。このように趣味や娯楽など好きなことをやっているときは嫌になることや負担になることがあっても、それを忘れることができます。そして、心も体もリ ラックスできるのです」

2つ目は「構える」。

「人は想定外のことが起こったときにダメージを受けます。なので、想定外のことに対して構えること。最悪のシナリオを想定することがショックを和らげるこ とにつながります。例えば『急に病気になったら?』『突然、会社が倒産したら』など最悪のケースを想定する。これに構えておくとイザというときに必要以上 にインパクトを受けません。仕事、人間関係、お金、健康、住居など想定外を考えてみるといいでしょう」

3つ目の習慣は「区切る」。

「例えば旅行に行く、コンサートに行く、週末にバーベキューをするなどで職場との区切りをつくります。マラソン選手が喉が渇く前に給水所を決めているように、あらかじめ休暇の期間を確保し、それに合わせて仕事のスケジュールを組むことが望ましいですね」

4つ目は「捨てる」。

「やりたいことを決める前にやらないことを捨てる習慣を身に付けている。無駄なことをやらないだけでストレスは随分軽減されます。例えば職場での人間関係 のストレスです。大半の方は『相手を変えられる』と思ってイライラする。この考えを捨て、『他人は変えられない』と切り替えれば気持ちはスーッと楽になり ます」

5つ目は「体を動かす」。

「有酸素運動や一定のリズムを伴う運動をすると脳内でセロトニンが活性化するといわれています。セロトニンはうつ病患者に不足している脳内物質。体の緊張を和らげる働きもあり、不安やストレスにとって重要な役割を果たします」

6つ目は「書く・人に話す」。

「何が不安なのかを書き出し人に話すことでその原因がはっきりとし、対処方法が見えてきます。そして、うんうんと話を聞いてもらうだけで『理解してくれる人がいるんだ』となり、自己肯定感が高まります。そして孤独や不安が和らぎます」

最後の7つ目は「新しい出会いを求める」。

「いつもと違うルートで通勤してみる、新しくできた店に入ってみる、勉強会や交流会に参加してみるなど。新しい人との出会いや新しい学び、新しい習慣など非日常を楽しむ。ワンパターンになることを避け、脳に新しい刺激を与え、ストレスに悩む時間をリフレッシュしましょう」

1つでもできそうな習慣があれば、実践してみたい。

(武神健之/日本ストレスチェック協会代表理事 構成/中森勇人)

[日刊ゲンダイDIGITAL]