呑まないにこしたことはないにせよ、せめても最小限の酒量にとどめましょう。。。

ホントに飲酒で免疫力は下がるのか? コロナ禍の今こそ徹底検証

 コロナ禍は、個人の「飲酒」にも大きな影響を及ぼしています。自粛生活を強いられ、外でお酒を飲む機会が激減し、その結果、自宅で飲むお酒の量が増えてしまった人も少なくありません。

酒ジャーナリストの葉石かおりさんは、コロナ禍で自宅での飲酒量が増え、「5リットルの業務用ウイスキー」を買ってしまったこともあります。そんな状態から飲酒量を見直し、酒との付き合い方を変えるのに役立ったのは、これまでに「酒と健康」をテーマに取材した専門家たちの言葉でした。

最新刊『名医が教える飲酒の科学』では、そうした専門家への取材の成果をまとめたもの。その中から、飲酒と人の免疫の関係についてのパートをお届けします。アルコールは、さまざまな免疫機能に悪影響を及ぼすことが分かっています。

アルコールは免疫システムに直接的な悪影響を及ぼすだけでなく、より深刻な“2次的”影響を与えるという。(写真:PIXTA)
アルコールは免疫システムに直接的な悪影響を及ぼすだけでなく、より深刻な“2次的”影響を与えるという。(写真:PIXTA)

酒はやはり免疫に悪影響を及ぼす

テレビをつけていたら、こんな会話が聞こえてきた。

「お酒飲むと『免疫力』が下がりますからね」
「そうそう、だからコロナ禍では飲まないほうがいいんですよ」

昔から「アルコールは免疫力を下げる」という話はよく耳にしていたが、コロナ禍だからこそ、話題になっているようだ。

とはいえ、「これって事実なのだろうか?」と疑っていた。私事で恐縮だが、これだけ日々酒を飲んでいるにもかかわらず、ここ数年、風邪らしいものをひいたことがないし、50歳過ぎても大病、入院などは皆無。数値などで測定したわけではないが、免疫力は高いつもりでいる。そんなこともあって、「アルコールは免疫力を下げる」という説を今ひとつ信じたくなかった。

だがしかし、新型コロナウイルス感染症に関連して、酒を多く飲む人ほど肺炎にかかるリスクが高いという研究があると聞いた。飲酒量が増えると免疫に問題が起き、肺炎にかかりやすくなるというわけだ。

これが真実なのだとしたら、どのような仕組みでアルコールが免疫に悪影響を及ぼすのだろうか。免疫の仕組みを知らないまま、酒を飲み続けるのもちょっと怖い。

そこで、帝京大学先端総合研究機構の特任教授で、免疫学を専門とする安部良さんに話を聞いた。先生、アルコールは免疫に悪影響を及ぼすのでしょうか?

「はい。アルコールはヒトの免疫に対してさまざまな影響を与えます。ひとつ例を挙げると、ウォッカのようにのどがチリチリするようなアルコール度数の高いお酒は、のどの粘膜を傷つける恐れがあり、粘膜に傷がつくと免疫力は低下します」(安部さん)

なんと……。酒好きの中にはウイスキーやウォッカがもたらす、あのチリチリとした刺激がたまらないという方も少なくない。そのチリチリが粘膜を傷つけ、免疫にも問題を与えているとは知らなかった。

そして、のどの粘膜も免疫に関わっているとは。免疫とはよく聞く言葉だが、そもそもどのような仕組みなのかよく知らない。改めて免疫について基本的なことから教えてくれませんか。

「免疫の『疫』は病気のことを指します。疫から免れる、つまり免疫とは文字通り、病原体から体を守る防御システムということです」(安部さん)

免疫による防御反応は「3段階」

ありがたいことに、私たちにはこの免疫が備わっているおかげで、新型コロナウイルスをはじめとするさまざまな病原体が体の中に侵入するのを防ぐことができ、また侵入を許した場合でも退治できる。そして、免疫による防御反応は「3段階」あるという。

「ウイルスなどの病原体は、3段階で撃退されます。第1段階は『自然バリア』と呼ばれ、皮膚や粘膜などが病原体の侵入を防ぎます。そして、万が一、侵入を許した場合は、次の第2段階である『自然免疫』で、マクロファージなどの食細胞が病原体をパクパクと食べてくれます。それでも退治できない場合、最後の第3段階『獲得免疫』で、その病原体に適した攻撃を繰り出します」(安部さん)

免疫は3段階
免疫は3段階

免疫による体を守るシステムは、このように非常に高度な仕組みで構成されている。それでは、この3つの段階のうち、どこにアルコールが影響を与えるのだろうか?

「実は、3段階いずれにも、アルコールが直接的な影響を与えます。ヒトの免疫にとって、お酒は好ましくないものなのです」(安部さん)

ショック……。誰か噓だと言ってほしい。

3段階について、それぞれの詳しいメカニズムを教えてもらおう。

「まず、第1段階の自然バリアは、体のさまざまな箇所にあり、大きく3つに分類されます。ひとつは涙、汗、唾液、尿などの『物理的障壁』です。また目には見えませんが、腸管にある柔毛(じゅうもう)、気道にある線毛(せんもう)もまた、体内へ侵入しようとする病原体を外へと押し出す運動を常にしています。風邪をひいて痰が出るのは、線毛の働きによるものです」(安部さん)

病原体の侵入を防ぐ「自然バリア」は3種類
病原体の侵入を防ぐ「自然バリア」は3種類

こう聞くと自分の汗や涙まですべて愛おしくなる。ほかにはどんなバリアがあるのだろう。

「2つ目のバリアは『化学的障壁』です。胃などの粘液に含まれる酵素や酸性物質、皮脂に含まれる脂肪酸や乳酸、また体の表面に存在する抗菌ペプチドがこれに当たります」(安部さん)

そして3つ目は「微生物学的障壁」。「これは、皮膚や腸などに存在する常在菌を指します。やたら顔を洗ったり、風邪をひいて少し具合が悪かったりすると抗生物質を飲んでしまう人がいますが、こうしたことを考えると『もったいない』と思いますよね」(安部さん)

風邪をひいて処方された抗生物質を飲んだのはいいが、下痢をしてしまうことがあるが、この現象により「ありがたい常在菌が減ってしまう」のだという。

「若い世代は自然バリアがしっかりしているため、病原体に強いのです。新型コロナを例にとっても分かるように、若い世代は感染しても重症化しにくいですよね。これは自然バリアがしっかり働いているためと考えられます。ただし個人差があるので、『若いから絶対に重症化しない』とは言い切れません」(安部さん)

汗や胃酸、常在菌などによって守備が固められている自然バリア。先ほど、ウォッカのようにアルコール度数の高い酒に注意したほうがいいと説明したのは、のどの粘膜にある自然バリアを壊してしまうからなのだ。

酒を飲むと「マクロファージ」が“混乱”

病原体が第1段階の「自然バリア」を突破してきたら、次はどうなるのだろうか。

「次の第2段階である『自然免疫』が病原体をやっつけます。そこで大活躍してくれるのは、『マクロファージ』と呼ばれる病原体をパクパクと食べてくれる食細胞です。マクロファージは自分の中に病原体を取り込んで死滅させるだけではなく、サイトカインという物質をまき散らします。サイトカインにより、血管内から好中球(白血球の一種)をはじめとする援軍が呼び込まれます」(安部さん)

そして、こうした自然免疫の働きにより、熱や腫れなどを伴う「炎症」が起きる。

「炎症が起きると、結果として病原体が弱ります。分かりやすく言うと、風邪をひくとのどが腫れたり、鼻水が出たりしますよね。あれはまさに、のどや鼻で炎症が起き、自然免疫の力によって病原体を退治しようとしているのです。ですから、既往症のある方や高齢者はさておき、若い方は自然免疫がせっかく働いているのですから、少しのどが痛いくらいで薬を飲んでしまうのは、もったいないと私は思いますね」(安部さん)

そして安部さんによると、アルコールはこの食細胞であるマクロファージにダメージを与えてしまうという。

「アルコールがマクロファージに直接働いて混乱させ、機能を低下させたり、働きを抑制させたりすると考えられています。特にだらだらと長い時間飲むほど、その作用は大きくなる傾向が強いと言われています」(安部さん)

では「最後の砦」ともいえる第3段階の免疫システムはどうなのだろう?

「自然免疫でも病原体が撃退できなかった場合に働くのが、免疫システムの最終兵器ともいえる『獲得免疫(適応免疫)』です。これはマクロファージのように常に体の中をパトロールしているものではありません。そのため、病原体の感染から数時間で自然免疫が活性化するのに対し、獲得免疫が活性化するのには数日間のタイムラグがあります」(安部さん)

最終兵器というだけあって、そのシステムは実に巧妙かつ強力だ。

「まず、自然免疫として働く樹状細胞が病原体の情報をつかみ、それをリンパ球の一種であるT細胞へと渡します。樹状細胞はいわば“スパイ”のようなものです。病原体の情報を受けとったT細胞はその病原体に適した攻撃をするよう、さまざまな細胞に働きかけます。その中でもB細胞は優秀で、病原体を攻撃する『抗体』を作り出します」(安部さん)

自然免疫との大きな違いは、獲得免疫には「免疫記憶」があることだ。「免疫記憶とは、簡単に言うと、一度かかった感染症にかかりにくくなる、またはかかっても軽症で済むというものです」(安部さん)

樹状細胞はスパイで、T細胞は司令官で、B細胞が攻撃するミサイルを作り出す。目に見えないところで、私たちの体を守ってくれている高度なシステムがあるのだ。これだけ複雑で高度なのだから、「アルコールくらいへっちゃらなのでは?」と思いきや、そうもいかないらしい。

「自然免疫の段階で、マクロファージなどの働きがアルコールによって抑制されてしまうと、スパイ役の樹状細胞の働きが鈍ると言われています。またT細胞やB細胞をはじめとするリンパ球に対し、アルコールが何らかの影響を及ぼすという動物実験のデータもあります」(安部さん)

なるほど、T細胞やB細胞などが働く高度なメカニズムの免疫も、アルコールの影響を逃れられないのだ。

アルコールによる「2次的な影響」とは?

アルコールは人の免疫にさまざまな悪影響を及ぼすことが分かった。だが恐ろしいことに、安部さんは、「アルコールはさまざまな疾病につながり、それによる2次的な免疫への影響のほうが、これまで解説してきた直接的な影響より深刻である可能性もある」と言う。いったいどういうことなのだろう?

「2次的な弊害とは、分かりやすく言うと、アルコールの慢性的な飲み過ぎ、おつまみの食べ過ぎによって、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の罹患リスクが上がったり、肝機能が低下したりすることが、免疫にも悪影響を及ぼすということです」(安部さん)

確かに、酒を飲み過ぎたとき、アルコールが免疫システムに直接的に悪影響を及ぼしたとしても、それは一時的なもので、二日酔いがよくなっていくように、免疫システムのほうも次第に回復していくのかもしれない。それに対して、長年の飲酒により生活習慣病になってしまったら、今度は慢性的に免疫力を低下させることにつながる。

アルコールが免疫に及ぼす“2次的”な影響
アルコールが免疫に及ぼす“2次的”な影響

アルコールの飲み過ぎは糖尿病、高血圧、動脈硬化、肝臓の機能低下、がんなどを誘発する。こうした病気に罹患している人は免疫機能が低下していて、新型コロナウイルス感染症が拡大する状況においてリスクに直面していると言われている。ではいったい、どのような仕組みでこうした病気が免疫に影響を及ぼすのだろう?

「考えられるのは、『血流』です。糖尿病では高血糖により血液がドロドロになることで、また動脈硬化では血管が硬くなることで、血流が悪くなります。血流が悪いと、必要な免疫細胞が、体の必要な場所へと届かなくなってしまうのです」(安部さん)

どんなに高度な免疫システムがあっても、「血流」という弱点があったとは……。近年、血管年齢の重要性が叫ばれているが、血管の状態や血流は免疫にも大きく影響しているようだ。それでは、肝臓の機能低下についてはどうだろうか。

「アルコールが肝臓で代謝されるとき、その過程で人体に有害なアセトアルデヒドが生成され、さらにそれが無害な酢酸に分解されます。大量の飲酒を続けていると、肝臓がアセトアルデヒドを分解しきれなくなり、今度はアセトアルデヒドによって肝臓の細胞が攻撃されてしまいます。これによって肝機能が低下し、免疫も落ちてしまうのです」(安部さん)

肝臓には、食事で得られた栄養を体が使いやすいように作り直し、必要に応じて供給する役割がある。この機能が低下すると、免疫細胞や抗体など、免疫システムに必要な要素が不足してしまう。また、アルコールや薬剤、体内で作られるアンモニアなどの有害物質を代謝するのも肝臓の役割だが、こうした働きが鈍って有害な物質がたまると、免疫細胞の機能に悪影響を及ぼすことも考えられるという。

免疫を低下させないためにも、病気のリスクを上げてしまうような飲み方は控えなければならない。しかし「まったく飲まない」というのは、酒好きにとってかえってストレスになってしまう。

「おっしゃる通り、お酒好きの方にとって、断酒はかえってストレスになりますよね。ストレスは免疫に悪影響を及ぼしますので、飲み方に工夫をされるとよいと思います。免疫の第1段階である自然バリアの粘膜を傷めないよう、のどがチリチリするようなアルコール度数の高いお酒は避けるか、炭酸水や水などで割って飲むことをお勧めします。また、生活習慣病やがんなどのリスクを上げないためには、飲み過ぎないようにしましょう。休肝日も取り入れてほしいですね」(安部さん)

安部さんの話をまとめると、酒は休肝日を取り入れつつ、適量を守る。それに加え、栄養バランスの取れた食事をとり、適度な運動をして、よく寝ることが大切だ。ごく当たり前のことと思われるかもしれないが、これが免疫のためにいい生活習慣なのである。

(図版制作:増田真一)

[日経Gooday]

健康の根幹は姿勢と歩行と呼吸、、、日々の小さな積み重ねが道を分ける。。。

腰を痛めない、体をゆがませない「かがみ方」のトリセツ

正しい“かがみ方”で体が変わるのを感じよう(正しい姿勢図鑑・前編)

日常のちょっとした動作も、姿勢が崩れた状態で行うと腰を痛めたり、姿勢をさらにゆがめたりする原因に。そこで、シーン別にそれぞれの動作を見直してみましょう。今回は日常シーンに多い、「かがむ」時の姿勢をチェック! 腰への負担を軽くするなら、ひざを使い、背筋を伸ばすのがポイントです。姿勢治療家の仲野孝明さんと柔道整復師でフットマスターの新保泰秀さんに聞きました。

【顔を洗う】シンクに顔を近づけるときは股関節から曲げる

朝起きて、顔を洗おうとして腰を大きく曲げた瞬間に、ぎっくり腰になる人が少なくない。腰だけで上半身を支えようとして、腰に負担が集中するからだ。ひざを曲げる動作を入れることによって、腰への負担を軽減できる

【顔を洗う】シンクに顔を近づけるときは股関節から曲げる
マル ひざを曲げてシンクに近づく
まず、脚を開いてひざを曲げよう。そうすることでシンクに近づく。両脚でしっかり体重を支えながら、股関節から上体を曲げる。蛇口から水を受けるときなどは、洗面台の端にひじをつくと、さらに腰への負担を減らすことができる。
バツ 背中が曲がっていて腰を痛める
脚をそろえてひざをぴんと伸ばした状態で顔を洗おうとすると、背中を大きく曲げることになる。股関節から曲げるならいいが、背中を丸めると、おなかに力が入らず、上半身の重みが腰に集中するため、腰痛を起こしやすくなる。

【歯を磨く】下を向かずに、背筋を伸ばすと負担がない

歯磨きをしているとき、歯磨き粉が垂れないようにと、洗面台に顔を近づけている習慣がある人は注意。背中を丸めた猫背姿勢になる上、不安定となった上半身を支えるために、腰に多大な負担がかかっている。

【歯を磨く】下を向かずに、背筋を伸ばすと負担がない
マル 背筋を伸ばし、手で支えて安定を
シンクに向かってかがまず、横から見たときに肩、股関節、ひざが一直線になるように立とう。不安定なら、洗面台に手を添えて体を支えるといい。手で支えながら、つま先立ちをすれば、歯磨きの時間がトレーニングタイムに。
バツ 「垂れないように」で失敗。腰に負担が
油断すると服に垂れて跡がつく歯磨き粉。そこで、垂れないようにしようと洗面台に顔を近づけると、背中を丸め、腰を曲げた姿勢になる。ぐらぐらと不安定な上半身を支えるために腰に大きな負担をかけて、腰痛を引き起こす原因に。

【靴下をはく】片足立ちだと背中が曲がり、腰が痛む

片足立ちで靴下をはくことができるのが若さの証明とばかりに、ぐらぐら不安定な状態で靴下をはくのはとても危険。腰に負担をかけて、痛みを引き起こすもとになる。無理せず、椅子や台を使おう

【靴下をはく】片足立ちだと背中が曲がり、腰が痛む
マル 台を使うとき、股関節から曲げる
靴下をはく前に、姿勢良く立とう。さらに、靴下をはく側の片足を台にのせるときに、股関節から曲げ、顔は下げないようにする。この動作によって、猫背にならず、腰を痛めなくなる。
バツ 台に足をのせても、背中が曲がっている
体を安定させるために、片足を台にのせて靴下をはく人もいる。このとき顔を大きく下げて、背中を大きく曲げていると、腰への負担が大きいままなのでNGだ。
×「足腰の強さの証明」は、腰を痛めるもと
バツ 「足腰の強さの証明」は、腰を痛めるもと
片足立ちになり、背中を大きく曲げる。「これができなくなったら老化の証拠」とばかりに無理をして続けているのなら、今日からきっぱりやめよう。腰に負担をかけ、ぐらついた結果、足首や腰を痛める危険がある。
○椅子に座るときも、股関節から曲げる 、×足に近づき過ぎて、背中を曲げている
マル 椅子に座るときも、股関節から曲げる
椅子に座ったら、背筋を伸ばして、股関節から上体を曲げる。できるなら、足のほうを持ち上げて靴下をはくと、腰への負担が軽減される。足を持ち上げない場合も、顔を下げ過ぎないように意識しよう。
バツ 足に近づき過ぎて、背中を曲げている
椅子に座っているから「体を安定させられている」という油断は禁物。座った状態で靴下をはこうとすると、両手を足に近づけるために背中を大きく曲げることになる。この動作によって腰を痛める可能性あり。

【シャワーを浴びる】シャワーヘッドが低いと頭を下げ、背中が曲がる

シャワーを浴びながら髪を洗っているときも、ぎっくり腰を起こしやすい。これも、背中を曲げ過ぎたことによる腰への負担が原因。リラックスタイムにも気を抜かず、腰をいたわる体の使い方を意識しよう。

【シャワーを浴びる】シャワーヘッドが低いと頭を下げ、背中が曲がる
マル シャワーヘッドを上げ、背中は伸ばす
姿勢を変えるというより、シャワーヘッドの位置を変えることから始めたい。高い位置からシャワーが降ってくれば、頭を下げず、背中も曲げずに髪を流せる。環境に体を合わせるのではなく、環境を体に合わせる考え方が大事。
バツ 髪を流すときに、背中が曲がる
髪の毛を流すときも背中を丸めがち。腰に負担がかかっている。特にシャワーヘッドを低いところに設置していると、大きく腰を曲げることに。

次回は、立つときや立ち上がるとき、座るときのよい姿勢について紹介する。

(文:柳本 操/イラスト:二階堂ちはる)

[日経ヘルス]

呑まないにこしたことはないにせよ、個人差やそもそもの生活習慣、またほどよく酒を愉しむ心の糧も考慮したい。。。

酒を1日1合飲み続けるだけでも、がんのリスクは意外に上がる

 コロナ禍は、個人の「飲酒」にも大きな影響を及ぼしています。自粛生活を強いられ、外でお酒を飲む機会が激減し、その結果、自宅で飲むお酒の量が増えてしまった人も少なくありません。

酒ジャーナリストの葉石かおりさんは、コロナ禍で自宅での飲酒量が増え、「5リットルの業務用ウイスキー」を買ってしまったこともあります。そんな状態から飲酒量を見直し、酒との付き合い方を変えるのに役立ったのは、これまでに「酒と健康」をテーマに取材した専門家たちの言葉でした。

最新刊『名医が教える飲酒の科学』は、そうした専門家への取材の成果をまとめたもの。その中から、飲酒量とがんのリスクについてのパートをお届けします。実は、「ほどほど」に飲んでもがんのリスクは確実に上がってしまうことが最新の研究から分かったのです。

かつては、1日に飲む量として日本酒1合程度であれば「適量」だと考えられていたが、最近はそれでも病気のリスクが上がってしまうことが分かってきた。(写真:PIXTA)
かつては、1日に飲む量として日本酒1合程度であれば「適量」だと考えられていたが、最近はそれでも病気のリスクが上がってしまうことが分かってきた。(写真:PIXTA)

「ほどほど」に飲んでもがんのリスクは上がる

日本人の死因の第1位である「がん」。がんにかかりたくないのは誰もが同じだ。そのためにはどんな飲酒が望ましいのだろうか。

飲み過ぎればがんのリスクが上がるのは容易に想像できる。大量のアルコールを分解するために肝臓が酷使されるので、肝臓がんのリスクも上がるのだろう。そのほか、食道がんや大腸がん、乳がんなどのリスクも飲酒で上がるという話は聞いたことがある。

だがもっと気になるのは、「ほどほど」の飲酒でがんのリスクは上がるのか、ということだ。近年、少量の飲酒でも体に悪いと指摘されるようになった。であれば、「適量」とされる飲酒を続けた場合でも、がんのリスクは上がるのであろうか。もし上がるのであれば、それはどれぐらいなのか?

2019年12月、東京大学から、日本人を対象とした「低~中等度の飲酒のがんへの影響」を評価した論文が発表された(*1)。そこで、論文の発表者の1人である獨協医科大学医学部公衆衛生学講座准教授の財津將嘉さん(論文発表時は東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学助教)に話を聞いた。

先生、そもそもなぜこういった研究に取り組まれたのですか?

「2018年に海外の権威ある医学誌『Lancet』で発表された論文(*2)などにより、少量の飲酒でも病気のリスクが上がる危険性が示唆されるようになりました。Lancetの研究の対象者は195カ国(および地域)にも及びます。人種により体質が異なるのはもちろん、医療環境など社会的背景も異なります。そこで『体質や社会的背景が近い日本人を対象としたら少量飲酒のリスクはどうなるのだろう?』というところから私たちの研究はスタートしました」(財津さん)

なるほど。同じ人間であっても、欧米人などと日本人では体質が異なる。日本人は欧米人に比べてアルコールの分解能力が低い人が多いことはよく知られている。そして、日本人の最大の死因であるがんのリスクが少量の飲酒でどれぐらい上がるのかについては、酒飲みに限らず誰もが気になるところだ。

*1  Cancer. 2020;126(5):1031-1040.
*2  Lancet. 2018 Sep 22;392(10152):1015-1035.

財津さんたちは、全国33カ所の労災病院の入院患者病職歴データベースを用いて、「新規がん患者」の6万3232症例と「がんに罹患していない患者」の6万3232症例を比較することで、低~中等度の飲酒とがん罹患リスクを推計するという「症例対照研究」を実施した。ここでは、年齢、性別、診断年、診断病院などをそろえて比較している。

対象者の平均年齢は69歳で、男性は65%、女性は35%。病院に入院する際に、1日の平均酒量やこれまでの飲酒期間(年数)も調査している。「この飲酒期間を分析の対象に加えているところが、この論文のポイントの1つです」と財津さん。

確かに、「飲酒期間」という要素があると、「いつも飲んでいる量を、このままずっと続けていったらどうなるか」も見えてくる。これは酒飲みにとって、かなり気になるところだ。

この研究においては、純アルコールにして23g(日本酒1合相当)を1単位として、1日の平均飲酒量(単位)に飲酒期間(年数)をかけたものを飲酒指数(drink-year)と定義している。

例えば、1日当たり日本酒1合の飲酒を10年間続けたら「10drink-year」ということになる。1日当たり2合の飲酒を10年間続けたら「20drink-year」だし、またそれを20年間続けたら「40drink-year」というわけだ。

リスクの上昇は一見少ないように思えるが…

さて、いよいよ本題。研究結果では、少量の飲酒におけるがんのリスクの上昇はどのくらいなのだろうか。

「日本人を調査対象にした本研究において、少量から中等度の飲酒でも、がんのリスクは上昇するということが明確になりました。飲酒しなかった人が最もがん罹患のリスクが低く、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは、低~中等度の飲酒において飲酒量が増えるにつれ上昇しました」(財津さん)

そして、1日純アルコールにして23gの飲酒を10年間続けることで(10drink-year)、酒をまったく飲まない人に対し、何らかのがんにかかるリスクは「1.05倍」上がるという結果になったという。

1日純アルコ―ル23gというと、厚生労働省が定める「適量」である1日20gにかなり近い。つまり、健康を損ねないよう「ほどほど」に飲んでいても、何らかのがんにかかるリスクは確実に上がるというわけだ。

しかし、この1.05倍という数値はどう判断すればいいのだろうか。1.05倍とは、5%リスクが高くなるということ。リスクが上がるのは確かとはいえ、数字だけ見るとそんなに大きなリスクとも言えないような気もする。「思ったより低い」と感じる人もいるのではないだろうか。

「確かに、数値だけ見ると、その程度かと思われるかもしれません。しかし、この研究で導かれた1.05倍という結果は『1日純アルコールにして23gを10年間続けること』から算出されています。飲む量が2倍、3倍と増えていけば、10年よりも短い年数でがんのリスクが上昇するということになります。また、これは10年間飲み続けたケースの値ですから、20年、30年と飲み続ければ、その分リスクは上がります。決して軽視できる数値ではありません」(財津さん)

酒量が増えたり、飲酒期間が長くなったりして累積飲酒量(drink-year)が大きくなると、グラフのようにリスクは大きくなっていく。

累積飲酒量とがん全体の罹患リスクの関係
累積飲酒量とがん全体の罹患リスクの関係

横軸は1日の平均飲酒量(純アルコールで23gが1単位)に飲酒期間(年数)をかけたもの。縦軸は飲酒をしない人と比較した何らかのがんにかかるリスク(出典:Cancer. 2020; 126(5):1031-40.)

例えば、50歳前後の人が、20歳くらいから飲み始めている場合、飲酒期間は30年になる。そして1日当たり日本酒で2合を飲んでいたら(=2単位)、60drink-yearということになり、がんの罹患リスクは1.2倍(=20%増)程度になることが分かる。

30年間の飲酒生活で2割もがんのリスクが上がってしまうのだから、財津さんが言う通り、これは決して無視していいものではない。ちりも積もれば山となる。酒もまた、少量でも日々重ねていけば、がんのリスクは確実に上がっていくのである。

リスクの上昇が大きいのは「酒の通り道」

一口にがんといっても、肺がん、胃がん、肝臓がんなど、さまざまな部位のがんがある。飲酒により影響を受けやすい部位と、受けにくい部位があるということは素人でも想像できる。果たしてどの部位のがんのリスクが高くなるのだろうか。

「部位別に見ると、最もリスクが高かったのは『食道がん』で、そのリスクは1.45倍になりました(10drink-yearの場合)。また、『口唇、口腔及び咽頭がん』も1.10倍という結果が出ています(咽頭は口腔と食道の間にある器官)。飲酒によってがんのリスクが上がるのは、食道より上部の器官、つまり『お酒の通り道』になるところだと昔から言われていますが、今回の結果でもその傾向が見られました」(財津さん)

なお、気管と咽頭をつなぐ器官である「喉頭」のリスクも1.22倍と高い。

各部位のがんの罹患リスク(10drink-yearの場合)
各部位のがんの罹患リスク(10drink-yearの場合)
縦軸は、飲酒をしない人と比較したがんにかかるリスク(オッズ比)。1日アルコール1単位(日本酒1合相当)の飲酒を10年間続けた時点(10drink-year)でのリスク

これらのリスクはいずれも、1日当たり日本酒1合(純アルコール23g)相当の飲酒を10年間続けた時点(10drink-year)におけるデータである。飲酒期間がより長くなり、飲酒量が多くなれば、ほとんどの部位でがんのリスクは着実に上昇する。最も顕著な食道がんの場合は、1日1合の飲酒を10年間(10drink-year)で1.45倍だったリスクが、1日2合で30年間(60drink-year)なら4倍を超える。

酒を口から飲んで胃に至るまでのルートのほかには、胃がん(1.06倍)、大腸がん(1.08倍)なども、がん全体と比べてリスクが若干高くなっている。女性の私としては、乳がんのリスクが1.08倍であるのも気になるところだ。このほか、子宮頸がん(1.12倍)、前立腺がん(1.07倍)などもリスクは高めとなっている。

「酒の総量」が問題であって「種類」はあまり関係ない

少量の飲酒であっても、がんの罹患リスクが上がることが明らかなのは分かった。だが、がんのリスクができるだけ上がらないような酒の飲み方はないのだろうか。

「最も着目すべきポイントは『お酒の総量』。お酒の種類はあまり関係ありません(*3)。アルコールそのものに発がん性があり、さらにアルコールの代謝副産物であるアセトアルデヒドもがんの原因となることが分かっています。私たち日本人は遺伝的にアセトアルデヒドの分解能力が低い人が一定数おり、少量でも影響を受けやすいのです。このことから、飲み始めた年数から今に至るまでどれだけアルコールを飲み、そのリスクにどれだけさらされてきたかが重要となるのです」(財津さん)

財津さんによると「お酒を飲む習慣を見直してほしい」という。確かに、酒好きの多くは、さして飲みたくもないのに、飲むことが「クセ」になっている人が多い。夕方になったら当たり前のようにカシュッとビールのプルトップを開ける、風呂あがりに水代わりにチューハイを飲む、仕事帰りにコンビニに寄って酒を買ってしまう……。

「まずはこうした『飲むクセ』を変えていくといいですね。最初は週に1日でいいので、休肝日を作ってみましょう。お酒をストレス発散の道具にしたり、睡眠導入剤の代わりに寝酒にしたりするのも避けましょう」(財津さん)

財津さんは、「一生で飲むお酒の量は決まっている」と考えて、休肝日で「飲まない日貯金」をして、「飲酒寿命」を延ばしましょう、と提案する。これには私も賛成だ。

*3  ただし、ウイスキーなどアルコール度数の高い酒は、食道がんなどのリスクをより高める傾向があるともいわれている

[日経ビジネス]

私も父の介護をプロのお世話になっています(謝)

体の介護はプロに任せよう 家族はむしろ「心の介護」を

 前回は「自分が介護をしてあげたい」という気持ちが生み出してしまう課題について考えました。愛されて育ったから、その恩返しとして、親の介護は自分がしてあげたい。親には迷惑をかけたから、介護くらいはやってあげたい。そうした気持ちが、かえって、介護の品質を下げてしまうとするなら、問題です。

何事もそうですが、品質を担保するのは知識と経験に裏付けされた専門性です。介護の世界にも多数のプロフェッショナルがいて、それぞれに、日々、知識と経験を積み上げています。「自分が介護してあげたい」という気持ちだけで、素人が直接、介護の中身に手を出してしまうことによるリスクについて、認識しておくことが大事です。

「自分が介護をしてあげたい」という気持ちの功罪を見つめつつ、介護の品質について考える必要があるわけです。今回は、そうした前回の記事に対して頂戴した様々なコメントをベースとして、さらに、この問題と対処法について考察してみたいと思います。

家族で介護をすることに対する喜びもある?

自分で介護をすることは、介護を必要とする人に対して、素人の品質を押し付けることにもなりかねません。品質の低い介護は、介護を必要とする人の状態を悪化させることにつながります。結果として、金銭的、肉体的、精神的、時間的に、介護の負担が上がってしまうことが多くなるわけです。それだけでなく、自分で介護をすると、家族との適度な距離が失われてしまうというのは、Makitaさんのコメントにもある通りです。

Makita
 家族が介護をすると、適切な介護をする以上の感情にのまれてしまいます。外科手術医が自分の家族の手術は基本行わないのと同じで、適度な距離を良い意味でキープできるプロに任せるほうがいいのでしょうね。

だからといって、いざ、プロに介護をお願いしようとすると、私たちは罪悪感を持ってしまうのです。愛する相手が介護を必要としているなら、なんとか自分で介護してあげたいという気持ちは、とても自然な感情です。介護を必要とする人もまた、家族による介護を希望するケースもあるでしょう。

家族での介護を継続している人の意識調査の結果を以下に示します。この意識調査では、昭和大学保健医療学部看護学科が、プロによる介護への介入に消極的な家族へのヒアリングを行っています。この意識調査から見えてくるのは、介護を継続することが、ある意味で、家族の幸福感にもつながっているということです。

プロによる介護に消極的な理由を調べてみると…
プロによる介護に消極的な理由を調べてみると…
出所:日本赤十字看護学会誌(J.Jpn.Red Cross Soc.Nurs.Sci Vol.8,No.1,pp.60-67,2008)
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プロにお願いすることによる罪悪感をどうするのか

様々な理由から、家族で介護をしたいという気持ちになるのは、仕方のないことです。それが幸福感にもつながっているとするなら、なおさらでしょう。しかし、そうした介護の結果は負担の増加であり、介護を必要とする人の状態の悪化にもつながってしまうのです。くまくまさんのコメントは、ここにヒントを与えてくれています。

くまくま
 10年以上前に実母を介護施設にお願いし見送りました。母にも介護施設の方にも介護を丸投げしているようで大変心苦しく思っていました。介護を丸投げしているという心理的な引け目から、訪問回数が減ってしまいました。ある日、介護のスタッフさんから「体の介護は私たちがしますから。ご家族でなくてはできないことがあります。訪ねてきてあげてください」と言われました。プロの方にできることは任せて少しでも母の気持ちに寄り添うことができて良かったです。

これは、介護をプロにお願いすることによる罪悪感は、家族にしかできない「心の介護」を担うことで楽になるという経験談です。「体の介護」はプロに任せつつ、お互いが家族であることを喜び合えるような「心の介護」は、家族にしかできないものでしょう。ある意味で、介護をする家族もまた、プロによるケアを必要としているとも言えるかもしれません。

にゃおん
 私の両親は今は自宅で最期をと希望しています。もちろんこれから変わるかもしれません。でも、たとえ自宅でもできるだけプロの手を借りようと思います。そのためにしっかり長く働いて稼ごう!と思いました……

にゃおんさんのように、介護に対する親の希望を理解しつつ、将来の「体の介護」はプロにお願いするための財源を確保するというのが鉄則ではないでしょうか。その上で、自分は「心の介護」を担っていくことに集中すれば、罪悪感は減らせるはずです。そもそも自分に余裕がなければ「心の介護」は難しくなることと合わせて考えると、こうした考え方の重要性が認識されます。

みんながプロに頼っているという事実を武器にしたい

実際に、どれだけの人が、介護をプロに頼っているのでしょう。よく「親が地方に暮らしていると、介護はプロにお願いしにくい」と聞きます。それは本当なのでしょうか。福島県いわき市が、介護方法に関する調査をしていますので、それを見てみましょう。

要介護者がいる場合の介護方法
要介護者がいる場合の介護方法
出所:いわき市(平成26年度 男女共同参画に関する市民意識調査)
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色々な角度から考察できるデータですが、まず注目してもらいたいのは、行政や外部のサービスに頼らず自宅で介護をしているケースは、全体の14.3%にすぎない(全体の8割以上がプロに頼っている)という事実です。そして、男女の格差があるところは見過ごせません。女性だと、家族から介護を押し付けられることが多い実態も見えてきます。私たちは、この点を特に意識して、女性が不利にならないようにしなければなりません。

M
 「人生100年こわくない」や老後についての記事や本を読みあさっていて、どういうことが起こるかを想定し、それに備えるための資金計画表を作りました。先立つものがあまりないのはつらいのですが、自分に介護が必要になったときには、できるだけ自宅で訪問診療やサービスを使い、それでも難しくなったら施設へ入り、状態が悪化したら病院で緩和ケアを受けたいと思っています。

Mさんのように自らの老後について準備をしてくれている親は多くはないと思われます。だからこそ、行政や外部のサービスに頼らず自宅で介護をするのは少数派であるという事実を家族で共有することが、負担の少ない、品質の高い介護を実現するための第一歩となるのではないでしょうか。

[日経ビジネス]

そのとおりです(賛)

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