移住の現実

 

■広がるテレワーク移住 ほど良い田舎暮らしのシビアな現実

 

広がるテレワーク移住 ほど良い田舎暮らしのシビアな現実

 

新型コロナウイルス禍のテレワーク普及によって、郊外型の一戸建て住宅が見直されている。さらに“田舎暮らし”を真剣に考える人も増えているようだ。

ネット環境さえ整っていれば仕事ができる職種の人にとっては、感染者が増え続ける密集した都会よりも地方の方が安心して暮らせるし、生活コストを下げられるメリットもある。

そこで、都会からそれほど離れていない長野県、山梨県、静岡県といった“程よい田舎”が注目を集めているという。しかし、勢いに任せて移住すると、とんでもない目に遭う恐れもあるから注意が必要だ。移住に詳しい経済ジャーナリストの中村知空氏が言う。

「田舎暮らしはよそ者に冷たいとか、逆に近所付き合いが濃厚過ぎるといった人間関係の問題が指摘されます。ただ、見ず知らずの土地に行く場合、最も注意していただきたいのが立地です。昨秋の台風の被災地の中には旧河道だったところもありました。

私もテレワークにメリットを感じ、2011年から12年にかけて長野県小谷村の建坪80坪の一軒家を借りて暮らしたことがあります。移住した時期が春で、当初は広々した空間がうれしく、きれいな景色に酔いしれていましたが、冬場になると状況が一変。記録的な大豪雪の年と重なったこともあり、連日、2時間近く雪かきをしていました。こうなるともう仕事どころではありません。広い家は光熱費がかさむため、生活コストを下げることもかないませんでした」

中村氏は“お試し”で賃貸にしたため、別の場所に引っ越すことができたが、これが購入物件だとそうもいかない。新潟・越後湯沢駅から近い格安リゾートマンションでも売却に数年間かかることもあるという。

「そもそも、このままテレワークが定着するかも不透明です。日本の働き方はプロセス重視でテレワークと相性が良くありません。09年の新型インフルエンザの流行時や11年の東日本大震災後も普及すると思われたのに、いつの間にか戻っています。パソコン導入時にペーパーレス化が進むといわれながら、いまだに企業の会議で紙資料を使うことが多いのと同じです。たとえ交通アクセスが便利な“程よい田舎”であっても、テレワーク態勢が終わって通常勤務に戻った時に苦労することになるでしょう」(中村知空氏)

緊急事態宣言解除後、すでにテレワークと出社を交互に織り交ぜた“なし崩し出社”も増えている。移住を検討している人は、いま一度、胸に手を当ててじっくり考えるべきだろう。

日刊ゲンダイDIGITAL

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