堀江貴文「働き方改革が進んだ先に起こること」
テレワークであぶりだされる「いらない社員」
「仕事のフリ」ができなくなる
僕はずっと、「オフィスにいる社員の大半はいらない」といってきた。それが新型コロナウイルスによっていよいよ明確になってきている。わかりやすい 例が「GMO」だ。GMOインターネットグループのグループ代表である熊谷正寿さんがいち早く在宅勤務を表明した。約5000人の社員がいるグループなの で、かなり大規模な「テレワーク推進」だ。
興味深いのは、出社を停止して数週間経っても業績が下がらなかったというデータだ。僕としては想定内ではあるが、改めて実証されてしまった。
正直、最初から全社員を出勤停止するというのは少しやりすぎな印象もあったが、熊谷さんは「テレワークでも業績は下がらない」という仮説を検証したかったのかもしれない。コロナ禍だからこそできることだ。IT企業を中心に、追随する会社もすぐに増えた。
ツイッター社は全世界の従業員に在宅勤務を認め、ヤフージャパンもテレワーク体制を拡大しながら、2020年からほぼ全社員がテレワークを基本とする働き方に移行した。しかし、こうした動きだけでは終わらないと考えている。社員の勤務形態がどんどん効率化されていくのだ。
いろいろなことがオンライン化されると、勤務時間や成果なども可視化されやすくなる。その結果、出社してパソコンに向かうことで「仕事しているフリ」をしてきた社員はどんどんあぶり出されるだろう。
そもそも本当にパソコンが必要な職種は、技術系、クリエーティブ系、デザイナー系などの一部に限られている。営業担当などはスマホで十分だろう。僕自身もプログラムをしないようになってからは、スマホしか使っていない。
オフィスもパソコンもなくなれば、ますます「仕事のフリ」ができなくなる。僕は年に2〜3回くらいオールドエコノミーな非IT系企業の会議に出席することがあるが、こちらがせいぜいひとりかふたりなのに、相手の出席者は10〜15人くらい。しかも半分以上が居眠りしている状況だったりする。その人たちは必要なのだろうか?
パソコンに向かって仕事のフリをしている人、無駄な会議に出ているだけの人、休憩スペースや喫煙ルームで雑談ばかりしている人、ほかにもいろいろな手段でサボッている人はいるだろう。
さらに、そういう人たちを管理する担当者、そういう人のバックオフィス関連の担当者もいる。働いていない人や不要な社員が実はたくさんいるのだ。少し話は逸れるが、髪を切ってもらっている美容師に聞いた話がおもしろかった。
コロナ禍で怒っている「主婦」のお客さんが多いそうだ。何に怒っているかというと、テレワークで旦那さんが「ずっと家にいる」からだ。しかも、観察してみると大して仕事をしていない。1時間も仕事していない場合もあるとか。
今までは、「通勤して喫煙所で雑談して、大して仕事はせず、飲んできていただけなんじゃないか」と憤っているそうだ。家で仕事すれば「家庭内」からも働いていない人が明確にわかってしまうのだ。
僕は「ライブドア」の社長をしているときから、いらない社員が多いのをずっと気にしてきた。苦労しながら改善してきたからこそ、断言できる。オフィスにいる「ホワイトカラーの人たちの9割は必要ない」。
ちなみに「ホワイトカラー」とは、「頭脳労働者や事務職の人」のことだ。そういう人たちの仕事の多くは、これからAIなどで代替されていく。大きな コールセンターがあっても、その仕事の多くはチャットボットで自動化できる。すでに導入しているところは、半分以上のやり取りがチャットボットだ。人間しかできないことは意外と少ないので、積み重ねればかなりの作業が「無人化」していくだろう。
まずは電話で話すことをやめる
ただ、「いらない社員」が多いとしても、すぐに改革して人々の働き方を変えるのは難しい。時間がかかるという結論に達した。だから僕は、会社を作って大きくするのはもうやめたのだ。会社を持つことにはリスクもあるからだ。
時間がかかるとは考えていたが、何らかの事件やイベントがきっかけで「いらない社員」が一気に社会に放り出されることはあるかもしれないとも考えていた。まさかの「新型コロナ騒動」がそれに当てはまってしまった。
予言していたからこそ、放り出された人たちへ「暇つぶし」を提供するオンラインサロン「HIU」を作っていた。もちろん、遊びだけではなく「新しい仕事」も含めたアクティビティーをどんどん開発している。
「働き方改革」が進むと、「いらない社員」はどんどんあぶり出され、初期段階としては「2~3年で半分」のホワイトカラーがリストラされると予想している。働き方改革はここから一気に進んでいくので、そのために早く準備をするべきだ。
簡単にできることのひとつは「電話で話すのをやめる」こと。電話での通話はかなりの時間が奪われてしまうので「非効率」だからだ。僕自身、電話を使わないようになってから、作業効率がかなりアップしている。「仕事のフリ」や「無駄な仕事」はすぐにやめて、きちんと成果をあげよう。
[東洋経済ONLINE]