雨の前の不調「天気痛」かも マッサージや漢方で緩和
台風などが近づくにつれ体調不良が始まるという人は多い。「台風や梅雨の時期にはなんとなく頭や節々が痛む」という程度に認識されてきたが、近年では「天気痛」などとして認知が広がってきた。専門の外来でアドバイスを受けつつ、漢方やマッサージなどによる対応が可能だ。
「天気が崩れる前日になんとなく頭が痛く、めまいもしていた。一時期は会社を休んで入院するほどだった」。愛知県岡崎市に住む男性(50)は振り返る。
数年前から突発性難聴やめまい、頭痛に悩み、2カ月間入院したこともある。原因が分からず、はり治療などを試みたものの改善しなかった。
ある日、妻がインターネットで見つけたクリニックが天気痛の外来を開いていた。よく考えると台風や気温変化が訪れる前日に頭や首が痛むことが多かった。
天気痛外来で処方してもらった漢方薬を服用し、ストレッチの指導に従うといった対策の結果、症状は大幅に緩和したという。
天候の変化で起きる頭痛などは「天気痛」や「天気頭痛」、「気象病」などと呼ばれる。正式な病名ではなく片頭痛や肩こり、関節リウマチなどの慢性痛が気圧の変化を受けて悪化した状態を指す。
天気痛に悩む人は全国で1000万人以上いるとされ、いまは医療機関の情報発信で認知も広まりつつある。ウェザーニューズとロート製薬が6月に1万6482人を対象に実施した調査では、回答者の約6割が天気痛の自覚があると答えた。
天気痛に詳しく、調査を監修した佐藤純医師によると、体調変化の一因が、自律神経の乱れだ。気圧が変わると自律神経のうち交感神経が興奮し、血管が縮んで血行が悪化。そうすると体内の酸素や栄養素が不足し、痛みを引き起こす物質が出る。
症状をどう緩和すればいいのか。佐藤医師によると、気圧の変化を捉える内耳のケアが一助となる。耳周りをマッサージすると血液やリンパ液の循環がよくなり、頭痛を抑えられる。内耳の循環が悪くリンパ液がたまってむくむと、気圧の変化に敏感になり頭痛につながりやすいという。
天気予報を確かめ、事前に薬を飲むのも一手だ。漢方の五苓散(ごれいさん)には体内の無駄な水分を取り除く作用があり、内耳のむくみ解消を期待できるとされる。運動などで汗をかいてもいい。
精神面を整えることも予防や症状緩和につながる。ストレスも自律神経の働きを狂わせ、頭痛を誘発するからだ。自らの頭痛が天気痛と自覚すれば、「原因不明の頭痛」におびえる場合と比べて精神的な負荷は変わる。
佐藤医師は「天気が悪化すると頭痛がする、という漠然とした恐怖が頭痛の悪化につながる」と指摘。日記を付け、天候の変化と頭痛の関係を調べることが天気痛に気づく第一歩だという。
天気痛は女性に多いことも特徴的だ。大阪医科大学健康科学クリニックの後山尚久名誉所長によると、生理周期に従ってホルモンバランスが変わり自律神経の働きが過敏になる。そこに天気の変化が加わると、天気痛が発生しやすくなる。特にホルモンバランスが乱れやすい更年期の女性に多く発症するという。
もっとも原因不明の頭痛をすべて天気痛に結びつけると重大な疾患を見落としかねない。佐藤医師は、日記につけ天気痛と思っても医師の診断を受けたほうがいいという。
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「予測」使い備えを
「天気痛」の認知の広がりにより、発症リスクを「予測」するサービスも登場している。
ウェザーニューズはスマートフォンアプリやウェブサイト上の天気予報サービス「ウェザーニュース」で、気圧や気温などの気象情報をもとに「天気痛予報」を公開している。地域ごとに発症リスクを「安心」「注意」「警戒」など4段階で表示し、天気痛への備えを促す。
コンテンツ制作のポッケ(東京・渋谷)は頭痛の原因となる気圧の変動などを予測して警告するアプリ「頭痛ーる」を配信している。アプリには頭痛の傾向を気象情報と合わせて記録できる機能もある。
こうしたサービスを上手に使えば、事前に痛みに備えたり、薬を飲んだりといった対策も取りやすくなる。
(茂野新太)
[日経Gooday]