股関節ストレッチ2

骨盤の柔軟性を高める「骨盤歩き」「かかと突き出し」で、効率の良い歩行技術を高めよう!

理論がわかれば山の歩き方が変わる!

身体の柔軟性が怪我の予防に繋がるのはご存じと思うが、身体のパフォーマンスも高める効果も期待できる。登山では、骨盤の柔軟性を高めることで垂直方向への重心移動がスムーズになり、効率の良い歩き方へと繋がる。今回は、そのトレーニング方法を紹介する。

 

こんにちは。登山ガイドの野中です。これまでに、心肺機能や筋力以外に重要となる、登山に必要な身体機能として「柔軟性」について多く解説してきました。

日本人は正座が出来るために、膝関節の柔軟性が高い傾向があります。その一方で、比較すると足関節と股関節の柔軟性が不足しがちです。そのため、日ごろの講習会でも足関節と股関節の柔軟性に重点を置いて指導を行っており、これまでの連載でも解説を行ってきました。

中でも股関節は、下肢の根元の部分に位置するため、股関節の柔軟性は歩行姿勢や歩行動作に大きな影響を与えています。加えて、股関節の動きと連動している骨盤(腰)の柔軟性も重要となってきます。

そこで今回は、骨盤周囲の筋肉の柔軟性と可動域を増やすトレーニング、特に日常の中で取り組めるトレーニング法についてご紹介したいと思います。日々取り組んでおくことで、効率の良い歩行動作が出来るようになっていきます。

 

骨盤の動きを司るのは体幹部の筋肉

骨盤を回旋させる(前後に振る)動きを司るのは殿筋群ですが、骨盤を挙上・下制させる(上下に振る)動きを司っているのが、腹斜筋(腹筋の両脇の筋肉)や腰方形筋です(下図参照)。

これらの筋力が不足していたり、日ごろ動かさないことで硬くなっていたりすると、骨盤の動きが悪くなります。そこで、骨盤の回旋と挙上・下制への意識です。

骨盤を回旋(前後に振る)させる動きと、骨盤を挙上・下制(上下に振る)させる動き

骨盤が動くことで脚が動きやすくなるため、下肢の筋肉の負担が減り、重心移動がしやすい安定した歩行が出来ます。

逆に考えると、骨盤の動きが悪いと脚が動きにくく、下肢の筋肉への負担は増して重心移動がしにくい不安定な歩行となります。特に段差が多い登山道や 登り下り共に垂直方向への重心移動が多くなる登り下りでは、骨盤を動かしながら歩けているかどうかが、効率の良い歩行の鍵になってくるのです。

つまり段差が連続する道が苦手だという方は、この骨盤の動きが少ない可能性が高いと言えます。自分が該当すると考える人は、今回ご紹介するトレーニングに早速取り組んでみてください。

 

おすすめトレーニング法:かかと突き出しと骨盤歩き

骨盤を動かすトレーニングとして長座の姿勢からお尻を使って歩く「お尻歩き」というのが一般的に知られています。

お尻歩きの様子。骨盤を立てて、左右の脚を交互に動かして、文字通りお尻で歩いていく

お尻歩きの動作は、股関節を大きく屈曲させた状態で運動するため、登山での姿勢・動きとは大きく異なります。そこで勧めるのが「かかと突き出し」になりま す。かかと突き出しでは、登山に近い、身体が直立している歩行時に近い体勢となり、骨盤の動きを向上させることが出来ます。

就寝時など仰向けに寝転がった時に出来る運動なので、毎日寝る前に行うことをオススメします。

あお向けに床に寝転び、骨盤からかかとを押すように突き出す

 

この「かかと突き出し」で骨盤を動かす感覚を掴んだら、次は実際に歩きながら行う「骨盤歩き」にも挑戦してみましょう。骨盤の動きを中心として歩くように するため、あえて「ロボット歩き」のようになるべく膝関節を曲げないようにしながら歩きます。骨盤を挙上・回旋させる動きだけで前進していく運動です。

街中でこの歩きをしていると怪しい人だと思われるはずですので、誰も見ていない場所や、室内などで時間を見つけて取り組むようにしてください。

デスクワークなど同じ姿勢を長時間とり続ける生活が多い現代人にとって、骨盤周囲の体幹部の筋力が衰えたり、硬直が起こりやすくなったりします。

不安定な歩き方による身体への影響は、舗装路を短時間歩く分には問題は生じにくいですが、長時間の登山歩行には大きく出てきます。効率のより登山歩行を実現するために、脚だけでなく、骨盤、上半身と全身が上手く連動して動かすことが出来る状態を目指しましょう。特に、骨盤は上半身と下半身を繋げる重 要な部分です。意識的にトレーニングすることをオススメしたいと思います。

なお、私が主催している「山の歩き方講習会」「登山歩行技術講習2Days」は主に10-5月に定期的に開催しています。詳しくはホームページをご覧ください

野中径隆(のなか みちたか)
Nature Guide LIS代表

[YAMAKEI ONLINE]

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