(驚)(汗)

肛門科医が教えるトイレの「正しい使い方」

「お尻の洗いすぎ」で引き起こされるトラブル

「お尻の洗いすぎ」になっていないかチェック

私の診療所では、患者さんの問診票に必ず衛生習慣に関する質問項目を入れています。次のようなものです。

1.温水洗浄便座機能について
・排便に関係なくトイレに入るたびに使っている
・自宅以外のトイレでも使っている
・温水で刺激しながら排便している
・15秒以上、洗浄している
2.入浴について
・肛門にシャワーを直接当てている
・肛門や外陰部をこすって洗っている
・せっけんやボディーソープで肛門や外陰部を洗っている
3.衛生習慣について
・お尻拭きやウエットティッシュなどで肛門を拭いている
・マキロンなどの消毒液で肛門を消毒している

多くの患者さんは、ほとんどの項目に丸をつけます。この記事を読んでいるみなさんの中にも、たくさん丸がつく方がいるかもしれません。実は、1つでも丸がついたら、お尻の洗いすぎ、ケアのしすぎです。

少し前までは病院でも「お尻はキレイに洗って清潔に!」と指導していました。しかし、弊害が出始めたのです。それは15年以上前のことですが、日本大腸肛門病学会で黒川彰夫医師によって「温水便座症候群」という病名が提唱されました。

これを受けて、医療の現場でも「お尻は洗いすぎないように」という指導方針に変わっています。お尻を洗えば洗うほど、ケアすればケアするほど、自ら病気を引き起こしてしまう可能性があるのです。

トイレに行けば必ず温水洗浄便座の洗浄機能を使い、お風呂ではせっけんをつけたボディタオルなどでしっかりこすり洗いをする人や、中にはアルコール消毒をする人までいます。

そうした行動をするのは「何回拭いても、紙に便がついている」「下着に便がつくから洗わなければいけない」という理由が多いのではないでしょうか。 お尻、とくに肛門は便の通り道でもあるため、“汚い”というイメージがあるため、「キレイにしておきたい」「清潔にしておきたい」という意識が高いようで す。

しかし、「洗いすぎ」はお尻のトラブルを引き起こす原因となります。それは、「皮脂膜」がなくなってしまうからです。皮脂膜は、皮膚の表面を潤している天然の油分であり、とても重要な皮膚のバリア機能を担っています。

皮脂膜は外部から有害な物質を侵入するのを防ぐだけでなく、弱酸性のためバイ菌の増殖を防ぎ、皮脂膜の中にいる常在菌が肌を守ります。また、皮膚の 表面が皮脂膜という油分で覆われているので、皮膚内部の水分が蒸発せずにすんでいます。肌を守り、水分の蒸発を防ぐ皮脂膜は、洗いすぎると簡単になくなってしまいます。そのため、洗いすぎたお尻は免疫力が低下して、さまざまなトラブルを引き起こすのです。

トイレの「正しい使い方」

会社ではなかなかトイレに長時間こもることができませんが、テレワークだとあまり時間を気にせずトイレに入りやすいものです。便がスッキリ出ないか ら出るまで待ってみたり、スマホや本を持ち込んで排便している間に数十分経っていたり……。どれくらい1日にトイレに滞在しているか思い浮かべてみてください。

トイレで読書するとはかどるという患者さんもいますが、そんなことは言語道断です。トイレでは、椅子に座るのと違い、肛門が座面よりも下になります。

ただ座っているだけでもお尻がうっ血し、無意識にいきんでしまっていることもあり、お尻に負担がかかります。そのため、痔などのお尻のトラブルを引き起こす可能性が高くなるのです。

お尻のトラブルを引き起こすトイレ習慣が定着している人は、まずはトイレでの過ごし方や温水洗浄便座の使い方を見直す必要があります。

はじめは洗わないと気持ち悪いと感じたり、物足りなさを感じたりするかもしれませんが、「正しいトイレの入り方」や「洗わないこと」が、お尻のトラブル防止につながるのです。

[東洋経済ONLINE]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です