得意先の接待など、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎが続くと体調を崩しがちだ。気がついたら“体重増”一直線の憂き目を見ないためにはどうすればいい? 不快な胃もたれ・胸焼け、はたまた二日酔いから即効で立ち直るには? つい食べ過ぎ・飲み過ぎをしてしまった後でも、それをなかったかのようにカラダを復活させてくれる即効リセット術を3回連載でお届けしよう。

 本人が望む望まずにかかわらず、食べ過ぎ飲み過ぎが避けられない時がある。“サイズ増量”一直線をご心配の方も多いのではないだろうか? 果たして、「食べ過ぎた」ものをなかったことにできる夢のような即席ダイエット法はないのだろうか?

「食べ過ぎた糖分が体脂肪に変わり、体重が増えるのは約2週間後。1食くらいドカ食いしても、緊急対策として1~2日の間に食事の摂取制限と体に溜まった糖分の“消費”を行えば大丈夫です」

ダイエット法に詳しい管理栄養士の伊達友美さんは、きっぱりと言い切る。

その訳はこういうことだ。

食べ過ぎによる余剰カロリー分は、まず糖として肝臓に蓄えられる。その量はだいたい1食分程度。肝臓に入りきらなくなった分が脂肪細胞に運ばれ、徐々に体脂肪となる。なお、暴飲暴食の翌日、体重が増えたように感じても、実はそのほとんどが取り過ぎた食事に含まれていた水分の蓄積による「むくみ」が原因だ。

肝臓に蓄えきれなくなった糖分が徐々に蓄積されて、2週間後に太ってくるのなら、その前に使い切ってしまえばいい。その策を伝授しよう。

食べ過ぎたら18時間は食事を控える

「これ以上糖分を溜めないように、食べ過ぎてしまってから約18時間は、水分以外は何も口にしないようにしましょう」というのが伊達さんの最初のアドバイス。夜の10時まで食べた場合は翌日の夕方4時まで、午前様になった場合は夕方の6時過ぎまでは、基本的に通常の食事を控えたほうがよい。

つまり、朝食と昼食は基本的には抜く形になる。こうすれば、前夜のオーバーカロリー分は十分に相殺できる。同時に、18時間の絶食には胃のサイズを元に戻す効果もある。

胃は伸縮性に富んだ臓器で、食べれば食べるほど膨らんでいく。よって、食べ過ぎた翌日の胃は膨張している。この状態で食べ続けてしまうと、胃が膨らんだ状態が日常となってしまい、容量の増えた胃には普段より多くの食べ物が入ることになる。この結果として食べ過ぎ体質になり、糖分を消費するどころかさらに蓄積されることで、ぽっこりお腹まっしぐらとなってしまうのだ。そこで、胃の大きさを元に戻すことが重要になる。

とは言っても、朝食、昼食を抜くのは我慢できない人も多いだろう。そういった場合は液体のものならOKという。例えば野菜ジュース。また、みそ汁、わかめスープなどでもいい。どうしても固形物が食べたいという方には果物がお勧めだ。果物は成分の多くが水分で、含まれる酵素の働きによって消化がいいので、胃にたまりにくい。カリウムも豊富なので、むくみの改善にも役立ち、必要最小限の糖分やビタミンなども補給できる。

節制後は和食がオススメ

18時間の節制を行おうとすると、食べ過ぎの翌日の昼頃になって胃がグーグーと鳴ってくる。「この、グーグーという音は実は空腹のために鳴っている音ではなく、前日の食べ過ぎによって膨らんだ胃が縮む時に出る音です。この段階では胃が元に戻ろうとしている途中で、戻りきってはいませんので、まだ食べてはいけません」(伊達さん)。

18時間を経過したら、待ちに待った食事を取ることができるが、その内容には注意が必要だ。いきなりコテコテの肉を食べることは避けたい。例えば、魚がメインの和食などがお勧めだ。「魚の脂に含まれるオメガ3脂肪酸には、脂肪の代謝を促す働きがあります」と伊達さん。青魚に多く含まれているが、苦手な場合は旬の魚を選ぶといい。

「このタイミングで食べる食材としては、前の日に食べた食材が含む添加物などの有害物質の排出を促進してくれるものもお勧めです。例えば、葉物では苦みが少しあるヨモギや春菊、三つ葉など、根菜では食物繊維の多いゴボウやレンコン。粘り気のあるものもお勧めで、納豆や山芋、おくら、めかぶなどもいいですね。特にブロッコリースプラウトは排出作用が強く、私のお気に入りです」(伊達さん)。有害物質を排出することで、体の代謝が良くなり、脂肪の蓄積を防いでくれる。

食べ過ぎ・飲み過ぎの翌日はこのように食事に気をつけることに加え、午前中に水分をきちんと取らなければいけない。朝一番に口に入れる水は味も色も香りもない真水、もしくは白湯がよい。飲み過ぎによる脱水状態からの回復に加えて、食べ過ぎで溜まった有害物質の排出や、むくみの解消を促してくれる。コーヒーやお茶はカフェインが入っているので、朝一番に飲むには刺激が少し強すぎる。スポーツ飲料も、実は糖分が多く、一気に吸収されて血糖値が上がってしまうためNGだ。

体内の糖分はNEAT生活で消費

胃の調子を整えるだけでなく、脂肪の蓄積を防ぐには、食べ過ぎで一時的に体内に貯蔵されている糖分を消費しなければならない。そこで伊達さんが勧めてくれたのは、「NEAT」(Non-Exercise Activity Thermogenesis:非運動性活動熱発生)と呼ばれる活動を増やすライフスタイルだ。働かない若者を意味する“NEET”ではない。

具体的には、食べ過ぎた翌日は、エレベータを使わないで階段を使う、電車では立つ、家事を積極的に行うなど、日常生活での活動量を高めるよう少し気をつける。これだけで、肝臓に一時的に溜まっている糖分を消費することができ、体脂肪に変わるのを事前に止めることができるという。

何も特別な運動は必要ない。ファッションモデルのように、立ったり、歩いたり、座ったりする際に良い姿勢を保つこともNEATに含まれ、相当なエネルギー消費になるのだという。このほか、四股を10回踏むだけでもいいし、肺を大きく動かす深呼吸を何回かするだけでもNEATとなる。

このNEATが広く知られるようになったのは、1990年代後半に米メイヨークリニックの研究グループが関連の研究発表を行ってからだ。私たちは毎日、当然のごとく体を動かしているが、ちょっとした身体活動で使われるエネルギー熱量(NEAT)は、1日に使うエネルギー量の60%にもなるとされている。

さらに、NEATの値が高い人は、呼吸をしたり、臓器を動かしたりする基礎代謝量も高いことがわかっている。基礎代謝とNEATを合わせれば、1日に使うエネルギー量の70%にもなるのだ。

最後に、今回紹介した緊急2日間ダイエット法を以下にまとめた。宴席が続いた際の体型維持のお役に立てれば幸いである。

緊急! 2日間ダイエット法
  1. 食べ過ぎた後、18時間は何も食べない。ただし水分補給は必要。水か白湯、ほかには野菜ジュースやみそ汁などでもいい。
  2. どうしても固形物を取りたい場合は果物。
  3. 18時間経過した後はお腹にやさしい和食がお勧め。
  4. 18時間後の他のおすすめ食材は有害物質を排出してくれるもの。
  5. 「NEAT」(非運動性活動熱発生)を意識して、余分な糖分を燃焼させる。

[日経ビジネス]