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■百貨店サバイバル 大丸・松坂屋統合、月内にも判断
大手百貨店の大丸(大阪市)と松坂屋ホールディングス(名古屋市)が統合の月内の合意をめざしていることが明らかになり、百貨店業界で本格的な業界再編の動きが高まりそうだ。消費低迷や人口減少で市場は縮小しており、専門店やショッピングセンターなどとの競合激化で小売業界は「戦国時代」。半端な規模のままでは競争力が劣り、企業買収の標的となる恐れさえある。「我が道を行く」経営を進めてきた老舗(しにせ)デパートも合併・統合を仕掛けざるをえなくなっている。
●4強に集約の見方
「意外に早かった」。高島屋の鈴木弘治社長はそう評する。大丸の奥田務会長は業界でも有名な再編論者なので、業界再編の動きを予想しなかったわけではない。ただ、大丸や松坂屋が業績好調な中であえて急ぐとは読んでいなかった。「経営に強い危機感があったのだろう」(鈴木社長)
経営者の危機感を高めているのは「消費の弱さ」だ。06年の百貨店売上総額(日本百貨店協会調べ)は7兆7700億円で9年連続縮小。ピークだった91年から2兆円も減った。急成長したコンビニエンスストア、家電量販店の各市場規模とほぼ肩を並べる。減るパイを食い合う戦国時代が続いている。
主戦場は人口増が期待できる大都市圏だ。すでに「地域一番店」の座を巡って競争は激しい。最大市場の首都圏では、高島屋、三越、伊勢丹が主力店の大改装に取り組んでいる。大丸と松坂屋も東京駅と銀座で新店や店舗改装を仕掛ける。
経営者には「企業買収の標的」になる恐怖もある。松坂屋は昨年まで村上ファンドに約10%の株を買収されて、対策に苦しんだばかり。5月に海外企業が株式交換で日本企業を買収できる「三角合併」が解禁されれば、外資企業による日本企業買収の意欲が高まると見られている。業界大手でも売上高が1兆円に満たず、時価総額が低い百貨店各社は、買収防衛の面からも規模拡大を検討せざるを得ない状況だ。
これまでの百貨店再編は「負け組救済型」が主流だった。そごうと西武百貨店が統合して「ミレニアムリテイリング」になった例や、伊勢丹が地方百貨店の岩田屋(福岡市)や丸井今井(札幌市)をグループ化したケースだ。
大丸と松坂屋が統合すれば、これまでとは意味が違う。業界全体が勝ち残りのための再編に一気に動く可能性がある。大手百貨店の首脳は「将来、百貨店は4強グループに集約される」と見る。有力候補にあげられるのは、売上高1兆円規模の高島屋やミレニアム、ファッションに強く経営効率が高い伊勢丹だ。
スーパーやコンビニエンスストアを展開するセブン&アイ・ホールディングスが昨年、ミレニアムを統合し、業界再編の主役は百貨店だけとは限らないことを示した。流通大手イオンも「百貨店に興味を持っている」(関係者)とのうわさが絶えない。
●東京圏での競争力強化
大丸は17日、「何ら決定した事実はないが、資本提携、業務提携、経営統合について社内で研究している」(広報・IR部)と説明。松坂屋ホールディングスの茶村俊一社長も「何ら決定している事実はない」との談話を発表した。
ただ、松坂屋幹部は17日、「(再編の)流れをみんな模索している。その流れに乗るか乗らないかという話だ」と述べ、実際には統合交渉が最終局面にきていることを示唆した。
大丸は会長兼最高経営責任者の奥田務氏が社長に就任後の90年代後半から不採算店の閉鎖、売り場販売員の働き方の見直しなどの改革を進め、収益力は業界上位。弱みは最大市場の東京圏での店舗力の弱さだ。ここでは高島屋や伊勢丹に及ばず、その差をどう埋めるかが課題だった。
今年は東京新店の開店、横浜への食品専門店の出店を控え、攻勢に転じようとしている。松坂屋との統合は規模拡大だけでなく、松坂屋の好立地の店舗を生かした東京戦略を可能にする。
一方、松坂屋も不採算店舗の閉鎖、「村上ファンド」からの株買い戻しなどの懸案を処理し、本業強化の態勢づくりを急いでいる。名古屋圏での存在感は大きいが、大丸同様に東京圏での競争力強化が課題。再編はその有力手段であり、昨年9月の持ち株会社制への移行で「将来的に(他社との統合を)やりやすいようにした」という。
ただ、名古屋を代表する老舗百貨店のプライドもあり、統合実現には難しさも残る。松坂屋幹部が「時期の問題がある。まだ水面下での動きでしかない」と慎重なのは、規模が大きい大丸に単純にのみ込まれたくない、との思いもあるからだ。
[朝日新聞]
Posted by nob : 2007年02月18日 11:39