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■排ガスのすす微粒子 北京は東京の3倍 日本にも影響
車の排ガスなどに含まれる汚染物質のすす微粒子の濃度が、中国・北京市では年平均で東京の約3倍に達することが東京大や北京大などの共同研究でわかった。大気の汚染度は高度成長期の東京に近く、韓国や日本にも風で運ばれて、地方で大都市並みの高濃度が観測されている。東アジアは特に排出量が多く、気候変動や人体への悪影響も懸念される。
大気を汚す浮遊粒子状物質(SPM)の主な成分がディーゼル車の排ガスや石炭が燃えてでるすす微粒子。直径20~30ナノメートル(ナノは10億分の1)の炭素の微粒子が集まった形をしており、大きさはスギ花粉の数百分の1以下と極めて小さい。鼻の粘膜などをすり抜けて気管支や肺に達し、発がんなど人体に悪影響を及ぼすとされる。
また、すす微粒子は高度1~2キロの上空に舞い上がり、太陽光で加熱されて上空の空気を暖める。大気の熱循環に影響するほか、微粒子が核となって雨雲を増やす効果もあり、気候変動に大きく関与するとみられている。だが、これまで正確な測定法がなく、詳しい実態はわかっていない。
東京大学先端科学技術研究センターの近藤豊教授(地球大気環境科学)と竹川暢之准教授(同)たちの研究チームは、レーザーを活用するなどしてすす微粒子だけを高精度に測定する装置を開発。05年秋から北京市中心部に近い北京大で観測を続けてきた。
その結果、東京(目黒区)のすす濃度は年平均で1立方メートルあたり約2マイクログラム(マイクロは100万分の1)なのに対し、北京では同6.3~6.5マイクログラムに達していた。これらの観測結果などから研究チームは、現在の北京の大気は70年代前半の東京の汚染状況に近いとみている。北京では08年の北京五輪を控え、大気汚染対策が最重要課題の一つになっている。新車に欧州並みの排ガス規制を設けるなど対策も強化しているが、まだ効果は十分にあがっていないようだ。
中国の大気汚染の影響が、韓国や日本にも及ぶこともわかってきた。05年春に韓国南部の済州島で行った測定では、すす微粒子が東京並みの1立方メートルあたり平均約2マイクログラムを記録。気象条件などから、観測時の大気の6割は中国大陸から来ており、同島周辺の通常の5倍以上の微粒子が含まれていたとみられる。
02年に兵庫県沖約40キロの日本海上空で行った観測でも高濃度が観測された。この春も長崎県福江島で観測を行い、分析を進めている。
米アルゴンヌ国立研究所などの推計によると、中国は世界最大のすす微粒子の排出国で、排出量は全世界の約17%を占める年間120万トン。日本の同9万トンを含む東アジア全体の排出量は、インド(年間56万トン)、米国(同32万トン)を大きく上回る。
〔朝日新聞〕
Posted by nob : 2007年04月11日 23:41