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■第138話 ピルの服用ががんを予防する

 ピルを服用していた女性は服用したことのない女性に比べてがんになる危険性が12%減少するとの報告が英国から寄せられています。『ピルの邦ちゃん』としてはこのコラムの愛読者にすぐにもご報告したくて……。

 英国一般医協会から膨大なデータを元にした研究報告がBritish Medical Journalという有名な医学雑誌に掲載されています。それによれば、1968年5月に始まった調査には、英国全域における一般医(日本では開業医あるいは「かかりつけ医」)1400人が、ピルを服用している女性2万3000人、服用していない女性2万3000人を募集し、以降実に36年間にわたってがんになったかどうかの追跡調査が行われたのです。もちろん、出産を望むのでピルの服用を止めた人、医師が調査を中止した、転院した、閉経によってピルを服用する必要がなくなった、死亡したなどによって、調査から外れていった人もいるわけですが、これだけ多数のピル服用者と非服用者の追跡調査の結果が明らかになったのは世界でも初めてです。年齢、出産回数、喫煙、社会階層、ホルモン補充療法の有無などによってもがんになる危険が高まることがありますので、これらを補正しながら各種のがんの罹患(りかん)率を算出しています。

 その結果、ピルの非服用者に比べ、服用者では発がんのリスクが12%減少することが明らかになりました。特に低下したのは大腸または直腸がん、子宮体がん、卵巣がんなどです。逆に、わずかではありますが上昇したのは子宮頸(けい)部のがんでした。今までピルを服用すると乳がんになる確率が高まると言われていましたが、乳がんについては服用者と非服用者との間で統計的な差は認められませんでした。これらを合算しますと、主な婦人科癌のリスクはピル服用者の場合29%も減少していることがわかります。

 また、ピルの服用を中止した後、どれくらいの期間がたっているかについて調べてみますと、ピルの卵巣がん防止効果については、ピルの服用中止後少なくとも15年間は継続し、期間間隔が長くなるほど相対リスク(ピルの非服用者のリスクを1とした場合の服用者のリスクを数字で表したもの。1より低ければ危険性が少なく、1より大きければ高い)が低下することが明らかになりました。子宮体がんのリスクもすべて1を下回っていましたが、現在服用中の場合と(服用停止後5年以内に)最近服用を再開した場合のリスク推定値だけは統計上有意なものでした。その他のがんについては一貫性はありませんでした。ピルを現在服用している人と最近服用を再開した人との間では、子宮頸部癌のリスクが初期に上昇したものの、時間の経過とともに消滅しています。

 また、ピルを服用している女性の年齢とがん発症リスクとの関係をみますと、絶対リスクを低下させる率は30~39歳では10万対34、40~49歳では10万対24、40~59歳10万対90、60歳以上10万対47で若年女性よりもむしろ高齢女性の方に有利となっています。こうした結果は、少なくとも比較的健康な英国女性では、がんのリスクはピルの服用による利益の方がリスクよりも大きいことを示唆しています。

 ピル処方の臨床現場に限らず、日本の多くの女性が「ピルを飲むとがんになる」などを誤った情報に振り回されていることが少なくありません。子宮頸がんのようにHPV(ヒトパピローマウイルス)による感染が原因となっていることが明らかである以上、ピルでは予防できないわけで、コンドームの使用を怠れば罹患(りかん)率が高まるのは当然と言えます。今まで、がん予防のためにピルを服用するというようなことはありませんでしたが、月経痛を和らげる、月経血量を減らす、月経周期を調節するなどのピルの利点を考え合わせますと、「避妊のためにピルを」というよりも、「女性のQOL(生活の質)の向上のためにピルを」の時代がそう遠くない将来に訪れるかも知れません。

〔毎日新聞〕

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Posted by nob : 2007年10月09日 11:32