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■米大統領選:オバマ氏勝利 国際協調路線へ転換 「対テロ戦」試金石

 ◇内政では福祉重視

 【ワシントン及川正也】4日の米大統領選で民主党のオバマ上院議員が勝利したことで、民主党は8年ぶりに政権を奪還する。上下両院選挙でも躍進が予想され、16年ぶりにホワイトハウス・上下両院の「3冠」を達成し、オバマ氏は安定した政権運営ができる環境下で米国のかじ取りに臨むことになりそうだ。

 外交では米国一極主義に偏ったブッシュ政権から転換し、国際協調へとシフトする。オバマ政権は日米同盟重視を踏襲する方針だが、中国との関係強化も目指しており、北朝鮮核問題などでギクシャクする日米関係への対応は未知数だ。

 民主党の「単独支配」により、政権と議会多数派がねじれる「分裂政府」の状態は解消される。民主党は上院(定数100、改選35)で、本会議への議案上程を妨害する議事妨害を阻止できる60議席確保を目指す勢いで、過半数ギリギリの51議席を維持する現状に比べて議会運営が安定するのは確実だ。

 オバマ氏、上院を率いるリード院内総務、下院トップのペロシ下院議長は「福祉型国家」の構築を目指すリベラル派だ。大統領選の最大の争点になった経済問題では、政府主導の大型公共事業を導入して雇用を確保するほか、政府が提供する医療保険制度の旗振り役で「新ニューディール」型の政策を推進するとみられる。

 オバマ氏の外交手法は対話重視だ。ブッシュ政権の強硬路線から「孤立化政策が核保有に走らせる」との教訓を引き出し、イラン指導部との「前提条件なし」の直接対話も辞さない構えだ。オバマ氏の国際協調姿勢は世界から基本的に歓迎されているが、北朝鮮を含めた核問題の進展をどう図るかの道筋は見えていない。

 米国にとって外交・安全保障上の最大の課題はイラク戦争と対テロ戦争だ。フロリダ州立大のウィリアム・クラゲット准教授は「イラクからの米軍撤退とグアンタナモ収容所の閉鎖問題で試されることになる」と指摘する。テロの容疑者らを収容するグアンタナモは対テロ戦争での米国の人権侵害の象徴となっている。

 オバマ氏は「就任後16カ月以内の戦闘部隊撤退」を公約にしているが、新たな民主党議会は「保守・中道派が増える」(党関係者)とみられ、安易な撤退論は党内の反発を招くおそれもある。米軍撤退が進まなければ、オバマ氏が重視するアフガニスタンへの米軍投入も立ち行かなくなるのは確実だ。

 一方、東アジア政策では日米同盟重視派だが、関心は「同盟関係を超えたアジアでの安全保障の枠組み」に向いている。民主党内では北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議(議長国・中国)を米中基軸で北東アジアの安全保障機構に格上げする構想も浮上している。

 日本のアジア近隣外交への懸念は強く、「関係改善に米国も手を貸すべきだ」(キャンベル元国防次官補代理)など「介入論」さえ出ており、日本に対応を委ねてきたブッシュ政権とは一線を画すことも想定される。「同盟再構築」へ向かうかどうかが今後の焦点となる。

[毎日新聞]

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Posted by nob : 2008年11月05日 22:47