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愚かしい、、、日本の(世界の)進むべき道はただ一つ、、、核廃絶のためにあらゆる努力を重ねること、、、しかし光はまだほとんど見えない。。。

■特集:問われる「核の傘」 核軍縮へ動いた米国、日本の進むべき道は

 オバマ米大統領は、核テロが米国の安全保障に重大な脅威となっていることを踏まえ、安全保障上の核兵器の役割を見直す考えを示した。日米同盟下、安全保障の基本を米国に頼ってきた日本への影響は避けられない。これまで日本は「核の傘」の保証に安住し、自らの核政策を問うことを棚上げにしてきたからだ。しかし、核軍縮交渉に参加しない中国や核実験を繰り返す北朝鮮が存在するアジアで、米国の新しい核政策にどう対応するか迫られている。

 ◇先制不使用宣言は困る---日本政府の「本音」

 「日本が米国の(核兵器の)先制不使用宣言に懸念をもっていると伝えられていることが、米国の核軍縮政策に影響を与えている」--。7月30日、日本の反核、核軍縮NGO関係者が集まり、東京で開かれた会合で米国の軍縮NGO「憂慮する科学者同盟」のグレゴリー・カラキー氏はこう説明した。

 オバマ米大統領は4月のプラハ演説で「米国の安全保障戦略の中での核兵器の役割を減らす」と強調した。先制不使用宣言は「核兵器の役割を減らす」典型的な政策の一つとされるため、将来的に米国が先制不使用を宣言するのではないかという見方が出ている。

 米国が先制不使用を宣言した場合、日本にどう影響するのか。日本政府は「先制不使用宣言は検証困難で安全保障を弱体化させる」という立場だ。核攻撃以外にも核兵器で対抗してほしいという意味だ。

 念頭にあるのは中国の通常戦力と北朝鮮の生物化学兵器だ。中国の軍事費の伸びは毎年10%を超えている。北朝鮮は化学兵器禁止条約に加盟しておらず、実戦配備の可能性も指摘されている。

 日本が米国に対して堅持を求めている核の傘は「拡大抑止」とも呼ばれる。自国以外の同盟国にも核兵器の抑止効果を及ぼすという意味だ。日本が先制不使用宣言を支持しない意味は、米本国が攻撃されず、同盟国も核攻撃を受けていなくても、米国が核攻撃に踏み切るという想定を前提にしている。

 元外務事務次官で日本国際問題研究所の野上義二理事長は「米国の核使用のハードルは非常に高くなっている。核でなければ対抗できないような状況でなくては核は使えない。日米での情報の共有化や共同作戦の在り方など、もっと地道に具体的に進めなければいけないことがあるのではないか」と指摘した。

 ◇アジアに残る冷戦構造---「軍拡」続ける中国

 「冷戦後の世界で核問題が中心となるのはNATO(北大西洋条約機構)ではなくアジアだ」。7月28日、東京都内で行われた核軍縮に関する講演会で佐藤行雄元国連大使はこう強調した。

 米露は核軍縮交渉を進め、日本を含め、世界でも歓迎する雰囲気が広まっている。兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約は5月に交渉開始で合意した。

 しかし、外務省幹部によると、水面下ではアジアの核保有国である中国が交渉開始に難色を示しているという。米露に対抗して、中国がなお核兵器の増産を視野に入れている証拠だ。オバマ演説をうけて中曽根弘文外相が4月に行った核軍縮演説でも中国を名指しして核兵器開発凍結を求めた。

 核の傘の考え方は、もともと旧ソ連の強大な軍事力に西側諸国が陸続きで対峙(たいじ)していた欧州を中心に考えられてきた。通常戦力で劣る部分を核の傘で補うとの意味が含まれている。現在のロシアと欧州の戦力比が冷戦時代から劇的に変化したことが米露軍縮交渉の背景にある。この事情は中国と日本には当てはまらないとみられてきた。

 だが、核不拡散政策が専門のフランク・フォンヒッペル・プリンストン大教授は「米国で(核の傘を提供する)同盟国の重点が欧州からアジアに移っていることは確かだが、米国が中国との冷戦を考えているわけではない」と指摘する。オバマ大統領はプラハで同盟国への核の傘堅持を明言しつつも「冷戦思考に終止符を打つ」と強調した。核大国同士の核競争の勝利を目指す考え方の優先度は米国内で下がっている。

 日本は中国の軍備増強に対抗するため、最新鋭戦闘機のF22導入を米国に強く求めていたが、米国は「冷戦時代の発想」と批判された高価なF22の生産を打ち切り、日本への導入は絶望的になった。核戦略とは次元が異なるが、いつまでも米国が日本の都合を聞いてくれるとは限らない。

 ◇日本の意向どう伝える---「核の傘」協議開始

 7月18日朝、外務省で開かれた日米両政府の外交・防衛担当局長級による「日米安全保障高級事務レベル協議(SSC)」。日本側からは梅本和義外務省北米局長、高見沢将林(のぶしげ)防衛省防衛政策局長、米側からはキャンベル国務次官補、グレグソン国防次官補らが出席した。

 約1時間半の協議は北朝鮮問題や米軍再編など日米間の課題を総ざらえしたものだったが、「核の傘」協議についての話は5、6分で終わった。協議に出席した外務省幹部は「キャンベル氏は一度もnuclear(核)という単語を口にしなかった」と言うが、日米両国は今後、SSCの場で「核の傘」協議をすることでは合意した。

 外務省幹部は「日本はずっと米国に核の傘についての協議を求めてきたが、これまでは『大人になってからこい』と言われて拒否されてきた」と話す。NATOには有事の核運用について協議する「核計画グループ」(NPG)が設置されている。しかし、米国の意向以前に核兵器について協議する態勢が日本に十分にあるとは言えない。

 米国が曲がりなりにも日本との「核の傘」協議を受け入れたのは、年末に8年ぶりに米国の核戦略の基本文書である「核態勢見直し」(NPR)が更新される予定になっているためだ。NPRに向けて今年5月に出された米議会の超党派の「戦略態勢委員会」(委員長・ペリー元国防長官)の報告書は、同盟国、特に日本と核の傘の信頼性について話し合うべきだとしている。

 報告書では名指しこそ避けているが、「北東アジアに潜在的な核保有国が米国の友好国や同盟国にある」と指摘しており、北朝鮮の核実験の影響で日韓が核武装するという核拡散の危険を抑えるために話し合いが必要との観点に立っている。

 今年末に概要が公表される予定のNPRの主な内容は、10月にも固まるという見方もある。しかし、設置が決まった公式協議の第1回は未定で、実際に日本政府の意向がNPRにどれほど反映されるかは不透明だ。

 ◆米の狙い「核テロ防止」

 ◇オバマ大統領「核管理」戦略、国際社会の賛同求め

 プラハ演説で「核兵器のない世界」を掲げたオバマ米大統領だが、究極の目的は、米国への核テロ防止だ。米国が核軍縮を率先することで、他国には核不拡散での協力を求め、テロ組織に核物質が渡るリスクを減らす、というのが基本戦略だ。

 最初の課題が、12月5日で失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約だ。7月の米露首脳会談では両国の戦略核弾頭の上限を1500~1675個にすることで合意、年内の交渉妥結を目指す。

 同時期には、今後5~10年の核政策を決める「核態勢見直し」が米議会に報告される。安全保障戦略上の核兵器の役割は低下する一方、核抑止や、日本など同盟国に核の傘を保証する拡大抑止の必要性が盛り込まれるとみられる。

 来年3月には30カ国近くの首脳をワシントンに招待、核セキュリティーサミットを開催する。テロリストへの核物質流出防止策を協議し、共同宣言を採択する見通し。非核保有国も参加させることで、核テロ防止が国際社会のトレンドであることを印象付ける。

 START1後継条約と、核サミットで弾みをつけて迎える最大の山場が、同年5月の核拡散防止条約(NPT)の再検討会議だ。北朝鮮やイランの核開発を踏まえ、IAEAの査察権限の強化などを図りたい考えだ。

 大統領は、核実験全面禁止条約(CTBT)の米議会批准、カットオフ条約も求めている。任期中に現実的に目指すのは、核軍縮・不拡散を通じた「厳格な核管理」の構築ともいえる。

 ◆NPT---揺らぐ核不拡散

 ◇特権譲らぬ5大国 日本の「核武装」米がけん制

 「被爆体験のある日本は核拡散に対して非常に強い立場で臨んできた」。7月16日、外務省で記者会見した天野之弥(ゆきや)国際原子力機関(IAEA)次期事務局長は胸を張った。

 オバマ米大統領はNPTとIAEAの強化を明言しており、核不拡散体制の中心に位置づける。天野氏の事務局長当選は、NPT優等生の日本が米国と歩みをそろえた姿だ。だが、実際にはNPT体制に対する日本の過去の態度は複雑だ。批准に署名から6年かかり、参加国となったのは97番目という遅さだった。

 NPTはもともと、1964年の中国の核実験がきっかけとなって交渉が開始された。条約が認める最後の核保有国が中国で、核保有国をそれ以上増やさないことが目的だ。だが、米露英仏中という5カ国だけに核保有を正当化しているため、当初から不平等条約と指摘された。

 67年12月、当時の下田武三駐米大使は「日本が核保有国になるかどうかの最終的選択は、将来の世代に任せるべきだ」と発言。日本は70年に署名するものの、自民党には「核オプション」を放棄すべきではないという声が残り、批准は76年にずれこんだ。

 NPTは95年に無期限延長されるが、93年の東京サミットでは、当時の主要国(G7)のなかで日本だけが無期限延長を明確に支持しなかった。日本軍縮学会会長の黒澤満大阪女学院大学教授は「無期限延長では白紙委任になり、核軍縮をチェックできなくなる。しかしこの時は米国から『日本が反対するのは核武装しようとしているからだ』という論調が出て強い圧力をかけられた」と説明する。

 NPTは非核国が不拡散に協力する(核兵器を放棄する)代わりに核保有国が核軍縮を行う取引が建前になっているが、核軍縮が実行される保証はない。

 05年のNPT再検討会議が失敗に終わったのは、当時のブッシュ米政権が核軍縮の姿勢を全く見せなかったためだ。オバマ大統領は核不拡散への協力を求めるために核軍縮を唱道しているが、NPTの特権を背景にしていることに変わりはない。

 ◇非核三原則、見直す必要ない--元駐米大使・斉藤邦彦氏

 日本は戦後一貫して核廃絶を唱えてきた。米国の大統領が「核兵器のない世界」と言ったことは日本として歓迎すべきことだ。しかし、一方で北東アジアでは中国が核兵器も含めた軍備を拡張し、北朝鮮の核実験という新しい要素がある。日本に対する米国の拡大抑止力、核の傘はますます重要になっているので、そこのところは調整をつけなければいけない。

 米国に対し、日本は決して核を持たないということを改めて伝えるべきだ。北東アジアの緊張は高まっており、米国の核の傘にこれからも依存し続けることになろう。

 日本はこれまでも毎年、国連に核軍縮決議を提出しながら、一方で米国の核の傘に依存し、守ってほしいと言ってきた。オバマ米大統領の新しい核政策に対しても、日本はこの従来の形を変える必要はない。非核三原則も見直す必要はない。「持たず」「作らず」は当然として「持ち込ませず」も見直す必要はない。そのことで刺激を受けるのは北朝鮮だけではない。中国や韓国、東南アジアの国々に対して間違ったメッセージになる。マイナスの部分が多い。

 ◇核軍縮へ向け、積極的貢献を--立教大兼任講師・黒崎輝氏

 オバマ米大統領の新しい核政策は日本にとってリスクもある。もし米国が核兵器の役割を他国の核攻撃を抑止するものだけに限ると、米国の日本に対する核の傘の有効性が低下する危険がある。現在は、米国は核以外の攻撃に対しても核を使うかもしれないという脅しをかけているが、その脅しは効かなくなるかもしれない。

 しかし、その一方で、オバマ氏の政策には核不拡散と核軍縮を進めて核兵器の脅威を世界的な規模で減らしていくメリットがある。そのメリットは日本にも及ぶ。

 どんな政策にもリスクとメリットはある。それを比較考量して日本としての立場を明確にしていくことが必要だ。日本はこれまでは、核軍縮より米国の核の傘への依存のほうが優先度が高かった。当面は日本も「米国の核の傘」が必要だとしても、日本自身としての核兵器への依存はできるだけ減らしていくという姿勢を示す必要がある。

 今の国際社会の安全保障関係は非常に複雑になっている。核不拡散も米国のような大国でも一国だけでは対応できない。非核国も巻き込んでグローバルな核不拡散体制を作り、しかもそのなかで核軍縮も同時に進めていくことが必要だという構図がうまれている。

 日本は「米国の核の傘」に依存している同盟国であると同時に非核国でもある。現在は、日本が核軍縮で何ができるのかということを積極的に打ち出すことができる状況にもある。

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 この特集は須藤孝(政治部)、草野和彦(北米総局)が担当しました。

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 ■ことば

 ◇核実験全面禁止条約(CTBT)

 地下を含めすべての核実験を禁止する。核兵器開発と改良に必要とされる核実験を禁止することで核不拡散と核軍縮につなげる目的がある。96年に国連総会で採択された。日本は97年に批准。発効には核兵器を持っているか、持つ能力があるとみなされる特定の44カ国の批准が必要だが、米、中、インドネシア、エジプト、イラン、イスラエル、北朝鮮、インド、パキスタンの9カ国が批准しておらず、未発効。オバマ米大統領は批准する意向を表明している。

 ◇先制不使用宣言

 核保有国が先に核兵器を使わないことを約束すること。核兵器の役目を他国の核兵器の脅威を抑止することに限定する。すべての国が対象だが、核保有国同士の約束の側面が強い。核を使用するハードルが高くなるため、核軍縮への理念的な一歩と見なされる。中国はすでに宣言している。

 ◇核拡散防止条約(NPT)

 68年成立、70年発効。核兵器保有については、67年1月1日以前に核実験を行った米露英仏中の5カ国に限り、それ以外の国の核保有を禁止した。参加国に対し、4条で原子力平和利用の権利を定め、6条で核軍縮交渉義務を課している。国連加盟国のほとんどが加盟しているがインド、パキスタン、イスラエルの3カ国が未加盟。北朝鮮は03年に脱退を宣言した。95年に無期限延長された。

[毎日新聞]

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Posted by nob : 2009年08月06日 23:35