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私の会社の今後の取り組みの一側面でもあります。。。

■親の判断能力は十分でも…
身体が不自由になってしまったら

 親の判断能力は十分でも、何らかの理由で身体が不自由になり、日常生活に不便を来す場合もあります。こうした場合に備えるのが「財産管理等委任契約」です。

 これは、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選んで具体的な管理内容を決めて委任する契約です。任意代理契約とも呼ばれ、民法上の委任契約の規定に基づきます。財産管理等委任契約は、当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に定めることができます。

 第4回で取り上げた任意後見契約と財産管理等委任契約との違いは、任意後見契約は判断能力が不十分になった場合に利用できるものですが、財産管理等委任契約は本人の判断能力が十分で、「身体が不自由になった場合」に利用できる点です。

財産管理等委任契約が必要な理由

 たとえば、あなたの親が脳梗塞で倒れ、身体が不自由になり、車イス生活になったり、後遺症で言葉がうまく話せなくなったり、字が書けなくなったりすると、本人による財産管理は事実上できなくなります。こうした場合、身近に家族がいる場合、以前なら家族に頼んで銀行預金の引き下ろしなどができました。

 ところが、金融機関等では「本人確認法」施行以来、本人でなければ家族でも預貯金が簡単に引き出せなくなりつつあります。もちろん、ちゃんとした委任状があれば第三者でも金融機関での手続きはできます。しかし、預金を下ろすなどの日常の事務手続きのたびに、いちいち委任状を作成するのは大変面倒です。

 一方、任意後見契約を結んでいたとしても、判断能力が十分ある場合は、契約を発効させることができません。そこで、日常の事務手続きは信頼できる誰かが包括的に代行できるよう委任契約を結んでおくと便利です。それが財産管理等委任契約です。

 第4回で述べたとおり、任意後見契約とセットで契約を結び、移行型の契約とすることで、寝たきりや認知症が進行した場合にも継続して財産管理が支援されます。

契約では、何を委任するのか?

 財産管理等委任契約の内容は、財産管理(預貯金の管理、税金や公共料金、医療費等の支払い手続き等)が主体で療養看護も含みます。開始する時期や内容は、契約当事者間で自由に決めることができます。財産管理等委任契約は、特に次のような場合に有益です。

[1]急病による入院期間中の対応

 特に一人暮しの人が急病で入院をしたり、病気での療養期間が長引いたりした場合に、本人に代わって財産管理を行ないます。

[2]日常生活の金銭管理の代行

 預貯金を管理して、税金や公共料金、医療費等の支払い手続等を行ないます。療養看護については、定期的な本人安否・健康状態の確認、医療や介護に関する契約や手続き等になります。

財産管理等委任契約で注意すべき点はとは?

 財産管理等委任契約で注意すべき点は二つあります。一つは、弁護士を契約の受任者とすること。もう一つは、公正証書での作成は義務づけられてはいませんが、契約書は公正証書で作成することが望ましい点です。

 財産管理等委任契約は任意後見契約とは異なり、「任意後見契約に関する法律」のような法律はなく、根拠法は民法のみです。つまり、民法上の委任契約に過ぎません。

 財産管理等委任契約の内容は、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選んで具体的な管理内容を決めて委任する契約ですので、「法律事務」に該当します。法律事務を弁護士以外の人が行なうと、非弁護士の法律事務の取扱い等を禁じた弁護士法第72条に抵触することになります。

 また、財産管理等委任契約は、任意後見契約とは異なり、公正証書での作成が法律で義務づけられておらず、後見登記もされません。しかし、契約書の安全性を高めるためには、公正証書での作成が望まれます。

 さらに、任意後見監督人のような公的監督者がいないために、受任者が契約どおりに業務を遂行しているかどうかのチェックは、受任者から委任者への報告によります。この点からも信頼できる第三者の弁護士が契約の受任者となることが妥当です。

 なお、財産管理等委任契約は私的な委任契約ですので、有効に締結されるためには委任者本人に十分な判断能力が要求されます。自己の財産の内容が把握できること、管理を信頼のおける人にやってもらうことを理解できること、受任者からの管理報告書を読んで理解できることが必要です。作成においては、弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

終末期のトラブルを予防する「尊厳死宣言書」

 尊厳死とは、現時点の医学レベルで回復の見込みがない重篤な疾病のため末期状態にある人につき、生命維持装置等による延命のためだけの治療を中止し、人間としての尊厳のもと、生に終止符を打つことを言います。

「尊厳死宣言書」とは、本人が自らの考えで尊厳死を望み、延命措置を差し控え、中止してもらいたいという考えを書類で残すものです。ちなみに尊厳死という概念は、もともとアメリカで発展したものであり、尊厳死宣言書のことを英語で、リビング・ウィル(Living Will)と言います。

 尊厳死宣言書は、一般には形式は自由で誰にでも作成できるものですが、尊厳死の普及を目的とする日本尊厳死協会では、独自形式の尊厳死宣言書を用意し、会員が作成・捺印した尊厳死宣言書を登録・保管するサービスをしています。

 一方、本人が間違いなく書いた書類であることを公的に認めさせるには、遺言書や任意後見契約書と同様に、公正証書で作成する選択肢もあります。

なぜ、尊厳死宣言書が必要なのか?

 現代の医学は患者が生きている限り、最後まで治療を施すという考え方のもとに、少しでも長く生を保つための延命治療の技術を進歩させてきました。しかし、結果として、延命治療が患者を苦しめ、安らかな死を迎えることを阻害する場合があるのも事実です。

 近年、個人の自己決定権を尊重する考え方がいろいろな方面で正当と評価されるようになってきました。医学の分野においても、治療方針や手術のリスクなどについて十分な情報を提供し、これに基づく患者の選択を重視する考え方が主流となっています。

 患者本人としても、少しでも長生きしたいというのが、人間としての本能だと思いますが、もし自分が回復の見込みがない末期状態に陥ったときには、機械によって単に生かされているような状況を回避したい、また、過剰な延命治療による家族への経済的・精神的負担や公的医療保険などに与える社会的な損失を避けたい、という考えを持つ人が増えてきました。

 しかし、治療にあたる医師の立場としては、回復の可能性がゼロかどうかわからない患者の治療をやめてしまうのは医師としての倫理に反することや、どのような形であれ、現に生命を保っている患者に対し、死に直結する措置を取る行為は、殺人罪に問われる恐れがあります。

 尊厳死宣言書は、こうした医師の訴訟トラブルや家族への負担を避け、本人が人間らしく安らかに、自然な死を遂げるためのものです。

尊厳死宣言書作成の「5つのポイント」

 尊厳死宣言書には、必ず次の条項を盛り込みます。

(1)現代の医学で不治の状態に陥り、すでに死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合、延命措置を拒否すること
(2)本人の苦痛を和らげる処置は最大限の実施を希望すること
(3)尊厳死宣言書作成についてあらかじめ家族の同意を得ていること
(4)医師や家族に対して犯罪捜査や訴追の対象にしないでほしいと希望すること
(5)尊厳死宣言書は本人が健全な精神状態にあるときに作成したもので、本人が撤回しない限り、有効であること

 尊厳死宣言書を公に認められた書類とするには、前述のとおり、公正証書で作成します。この場合、「家族の了解書」、「家族それぞれの印鑑証明書」、「戸籍謄本」を添付する必要があります。

 ちなみに、日本尊厳死協会が、会員で亡くなった人の遺族に対して2009年に行なったアンケートによると、93パーセントの医師が「尊厳死宣言書」を受容したという結果が出ています。

[DIAMOND online]

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Posted by nob : 2011年05月11日 21:08