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「わがまま」とか「不道徳なこと」、、、それは私のことです。。。

■日本に起業家が少ない理由
しばしば耳にする「なぜ日本には起業家が少ないのか」という話。ちきりんさんはその理由について、「起業家は日本の大組織では耐えられない人がなるものというコンセプトがあるからではないか」と主張します。
[ちきりん,Chikirinの日記]

 よく耳にする「日本は起業する人が少ない」という話。

 理由として「シリコンバレーには起業家を支えるさまざまな仕組みがあるが、日本にはない」とも言われますが、では、なぜそういう仕組みが彼の地にはあって、日本にはないのでしょう?

 そんなことを考えていて、思いついたのが次の図です。

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「社会適応スキル」とは、受験や就活スキルなどの“さまざまな関門を要領よく切り抜けるスキル”です。そして「自己抑制キャパシティ」は、「どの程度くだらないことに耐えられるか」という能力(?)です。

 例えば、23歳から64歳まで40年間、毎日地下鉄のラッシュでもまれる人生に耐えられ、「こんな資料、誰も読み直さないだろう」と分かっている会議の議事録を何時間もかけて作り、課長に“てにをは”を直されては素直に修正し、部長に印刷がずれてると言われてはインデントの設定をやり直す、そんな仕事に耐えられる人は「自己抑制キャパシティ」が大きいといえます。

 この2つの基準の組み合わせで4種類の人が定義されますが、まず社会適応力があってくだらないことにも耐えられる人(ピンク領域)は、たいてい大企業の社員や公務員になっています。社会適応力があるから受験も就活も乗り切ってそういう組織に入り、そこで行われる超くだらないことにも「何十年でも耐えられる」のでドロップアウトしません。

 次に、我慢強いけれどもテストや面接を巧みに乗り切るスキルを持っていない人(黄色領域)がいます。彼らは社会適応力が低く“余裕のある企業や組織”に入れないため、低賃金でスキル蓄積につながらない仕事をやらされています。それでも我慢強く、どんな悪環境でもワープアと呼ばれるような給与でひたすら我慢して頑張ります。

 3番目にどちらのスキルも低いと(右下、黄緑の領域)、居心地のよい大組織に潜り込むことができず、かといって搾取されつつ働き続けることにも「我慢できない!」ので、ニートやフリーターになります。

 最後に左下の水色の領域の人たちは社会適応力はあるが、我慢強くありません。彼らの一部は最初は大企業に所属するかもしれません。とりあえず、そうできてしまうからです。

 けれど彼らは「我慢」できず、「ありえんだろ、こんな人生!?」と飛び出してしまいます。それでも社会適応力はあるから何とか食べていける。フリーになったり、起業したりする人もいます。

 ちなみに彼らは“つらいこと”に耐えられないわけではなく、“くだらないこと”に耐えられないだけです。なので働く時間が長くても、仕事の中身は「自分が面白いと思えること」と「意味があると思えること」だけです。

 一般的に起業家は、この水色の領域から生まれます。「社会適応スキルは高いけど、あほらしいことには耐えられない。自分の人生の時間は組織のためじゃなく、自分のやりたいことに使いたい!」という人たちが起業家になるのです。

起業家は日本の大組織では耐えられない人がなるもの?

 ところが、「日本はこの水色の領域に入っている人口(比率)がそもそも少ないのではないか?」というのが、今回思いついたことです。

 なぜでしょう?

 それは、日本ではこの横軸と縦軸に“だぶり”があるからではないでしょうか。今の日本では“求められてる社会適応スキル”の1つに、“くだらないことでも長期間じっと我慢できるスキル”というものが含まれているように思えるのです。

 もしそうだとすると、「社会適応スキルの高い人は必ず自己抑制キャパも大きい」という関係になり、左下の水色領域に入る人がほとんどいなくなるのです。

 そして、日本でフリーで働くプロフェッショナルや起業家らは、その多くが右下の黄緑の領域でフリーターやニートと混在しています。日本では起業家もニートも「いわゆる日本的大組織ではやっていけない人」であり、両者とも「社会適応性を欠いている人」として扱われるのです。

 それはポジティブに言えば、「日本の大組織では収まりきれない器の人」が起業家になる、となります。堀江貴文氏も柳井正氏も孫正義氏も、普通の大企業の勤め人なんてできなさそうですよね。そんな生活にはきっと耐えられないでしょう。

 この、「起業家は日本の大組織では耐えられない人がなるもの」というコンセプトのために、日本では大企業の社員や公務員が起業家をうらやむことがありません。人はわざわざ「社会不適応な人」に憧れたりしないのです。ピンク領域にいる人たちは「自分のいる場所が一番いい場所だ」と確信しているわけですから、一生そこから動かないのは合理的な判断なのです。

 でも、もしこの2軸が独立していて水色の領域にもっと多くの人がいれば、ピンク領域の人から見て彼らは、「能力は自分たちと変わらないけれど、自分のやりたいことを我慢せず、自由に生きている人たち」に見えます。そうすると憧憬の対象や目標になりえ、ピンク領域から水色領域へ「人の移動」が起こるでしょう。優秀な人たちがどんどん起業家を目指し始めるのです。

「やりたいことだけをやる」生き方は「わがまま」?

 多くの国では、「好きなことだけをやって生きていけたらすばらしい!」というのが一般的な感覚です。ところが日本には、「やりたいことだけをやる」生き方を「わがまま」とか「不道徳なこと」とネガティブにとらえる社会通念があるのです。そして「人間は我慢が大事」とか、「好きなことしかやらないような奴は、人間ができてない」とさえ言われます。

 こんな考えがあるかぎり、日本がシリコンバレーみたいになることはありえないでしょう。「嫌なことでも我慢すること」が「社会的に優れた資質」と見なされるような社会では、「自由に好きなことを追求しよう!」「くだらないことに耐え忍ぶのは人生の無駄だ!」という価値観を持つ人はアウトローであり、時には反逆者扱いされてしまうのですから。

 そんじゃーね。

「Business Media 誠」

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Posted by nob : 2011年07月02日 02:11