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結局は誰も助けてはくれない、、、自分を救えるのは自身だけ。。。Vol.2
■香山リカ:被災者同士が妬み合い「格差絶望」を超えるには ——311被災者は「ハネムーン期」から「幻滅期」に
被災地で始まった「格差絶望」
震災から早くも半年以上が経過し、気づいてみたら2011年も残り3か月あまり。
書店に並び始めたカレンダーを見ながら、「次こそはよい年にしたい」と、早くも心が来年に向かっている人も多いだろう。
しかし、被災地の人たちの多くは、「来年の計画」どころか震災以来、時が止まったままであったり、目の前の現実への取り組みで手いっぱい、という状況なはず。
また最近になり「被災地とそれ以外」だけでなく、「被災地内部」でのいろいろな格差が目立ち、それが人間関係の軋轢やトラブルにつながっているという話を、ときどき耳にする。
沿岸部と内陸部。津波で家屋が流された人となんとか残った人。家族を失った人と全員、無事だった人。仕事をなくしたままの人と新しい仕事を見つけた人。
——そこには、とても同じ被災者とひとくくりでは呼べないほどの、心理的、経済的、物理的格差が存在しても不思議でない。
大災害直後の「ハネムーン期」とは?
頭では誰もが「それぞれで置かれた状況は異なる」とわかってはいても、感情的につい誰かと自分を比べてしまい、妬みや孤独感、焦燥感といった複雑な感情にとらわれる。同じコミュニティーにいる同士ですら、「前のようには話せなくなった」「自然に離ればなれになってしまった」とぎくしゃくすることも割とあるという。
最近の災害心理学では、災害発生後の数日後から6か月あたりまでを「ハネムーン期」と呼んでいる。
「ハネムーン」とは、災害とはかけ離れたロマンティックな言葉で違和感を感じる方も多いだろう。
この時期には、劇的な災害体験を共有し生き延びたことで、被災者同士が強い連帯感で結ばれている。被災地は全体として温かいムードに包まれる場合が多いことから、この名が付けられている。
「ハネムーン期」には、多くの被災者が支援や再建に希望や夢を託す。「負けずにこれまでよりもっと幸せになろう」と高揚感を感じることが多い。
このため、この時期に被災地を訪れた人は、「被災地の人たちはみんな前向きで明るかったですよ。私のほうが逆に元気をもらいました」などと言ったりするわけだ。
「ハネムーン期」から「幻滅期」に
しかし、この「ハネムーン期」は、いつまでも続かない。
だいたい半年くらい経過すると、次第に高揚感や連帯感が薄れてゆく。当初の「希望や夢」も、到底実現不可能だとわかってくる。
そこで初めて目の前の現実に直面し、格差が明らかになって、大きく気持ちが落ち込む「幻滅期」がやって来る。
この先どうなるか。
人によって違ってくるのだが、「幻滅期」から本当の意味で地に足を着けて「心の再スタート」を切る「再建期」までは、相当に長い月日を要する場合があると言われる。
つまり、今まさに被災地の人々は「幻滅期」に突入しているわけだ。
これまで、多少の格差があっても「辛いのはみんないっしょ」という連帯感が上回り、目立つことはなかった。しかし「幻滅期」でそのムードが退潮したため、さまざまな格差が一気に目に付くようになってきたのだろう。
この時期はさらに「みんなで力を合わせなければ」といった意思の力も弱まってくるため、「自分と違う立場の人にはわかってもらえない」と一気に人と人とのつながりが切れ、それぞれがバラバラになる危険性がある。
「幻滅期」を乗り越える「力」
しかし、この「幻滅期」を乗り越えなければ、次の「再建期」もやって来ない。
ここで再び「すばらしい未来が待っている」と気休めを言って「ハネムーン期」に戻そうとしても、それは無理。辛くとも「幻滅期」に向き合い、そこで最悪の心理状態に陥らないよう、それぞれが注意するしかないのかもしれない。
さらに書けば、「幻滅期」に入っているのは、被災地の人ばかりとは限らない。
「なんとか復興を」と張り切っていた人たちの中にも、蓄積した疲労と、いっこうに変わらない現実への失望から、「もうなにをやっても無駄」などと「幻滅期」を感じさせる発言が聞こえてくる。
——ではどうやって被災地や日本全体で「幻滅期」を乗り越えていけばいいのか。
それについては次回、考えてみたい。
[復興ニッホン]
Posted by nob : 2011年10月05日 14:22