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どんな結果も次の結果への一時の経過、、、思い通りに進めようとする過程のいたるところに幸せがある。。。
■自分の思い通りにいかなくても
「うまくいってない」とは限らない
物事が計画通り進まなくても
計画がうまくいかなかったとは限らない
多くの人は、自分の人生は自分でコントロールできると考えています。
だからこそ、仕事や勉強、趣味や恋愛など人生のあらゆる場面において綿密な計画を立て、それを実現しようとします。
私は、人間が生きていくうえで、自分でコントロールできる部分は限られているのではないかと考えています。もちろん自分の思い通りにいくこともありますが、多くのことは実は自分の力で何とも変えがたいものです。
必ずしも自分でコントロールできないのが人生だと認識しておけば、仮に計画したことが予想通りに進展しなくても、こころにストレスを感じることが少なくなるはずです。
そもそも「計画通りに進まないこと」と、「うまくいかないこと」は別の次元の問題であるように思います。
あることが、計画通りに進まなかったとします。計画通りに進まなかったのは事実かもしれませんが、果たして本当にそれがうまくいかなかったのでしょうか。
多くの人は、計画がうまくいかなかったと判断するのが早すぎるような気がしてなりません。本当にその計画がうまくいかなかったのか、その答えはすぐにはわからないのではないかと思うのです。
私の診察室を訪れていたある女性が、旦那さんと離婚すると言い出しました。
聞くと、その女性の症状が一向に改善しないため、旦那さんとしては一緒に暮らすことに疲れてしまったというのです。
確かに、女性の病状は一進一退を繰り返していました。
ただ、ほとんど家庭内別居に近いかたちで、もう少し協力してくれてもいいのではないかと私が感じてしまうほど、旦那さんの対応は冷たいものだったといいます。
とはいえ、女性には自分の病状が改善しないことに対する負い目があるので、離婚はやむを得ないと諦めていました。
予測とは正反対のことが起こり
結果的にそれが良かったと思えることもある
主治医といえども、私の立場では離婚について口を挟むことはできません。
あくまでも患者さん個人の問題なので、「思いとどまったほうがいい」とも「ぜひそうすべきだ」とも言えません。
ところが、すぐに家を出て行くことを要求されるなど、離婚に関する条件はあまりに理不尽なものでした。彼女の当面の生活を守れないかと考え「日本司法支援センター(法テラス)」を紹介しました。
法テラスは、国が設立した法的トラブルを解決するための相談窓口です。最近では、診察室で受ける悩みも複合的になってきているので、精神科としての診療を超えてしまう部分については、専門窓口を紹介することが増えているのです。
法テラスから「きちんと離婚調停にかけて財産分与を受けたほうがいい」と助言された女性は、私の診察室でも「気は進まないけれども、調停に踏み切ることにしました」と語っていました。
調停の日から最初に訪れた診察日、女性に調停の顛末を尋ねると、女性は思いがけないことを口にしたのです。
「お恥ずかしい話ですが、向こうが離婚を取り消してほしいと言ってきたのです。私としてもそのほうがありがたいので、離婚はやめることにしました」
よくよく聞くと、離婚調停に関する書類を目にした旦那さんは、ふと我に返ったといいます。事の重大さに気づき、女性に謝罪したそうです。
私としては、離婚して人生をリセットすることは、女性にとって悪くない選択だと考えていました。ところが、現実は水際で大逆転劇が起こったのです。逆転するどころか、離婚話が持ち上がる前の冷えた関係も改善し、家庭内別居も解消されたそうです。
長く診察室に通っていた患者さんだったため、私も気心が知れていました。そんなこともあって、ついこんなことを口走ってしまいました。
「へえ~、それは良かったですね。でも私も一生懸命やってきたから、ちょっと拍子抜けしちゃったなあ」
「へへへ、すいません」
もちろん、離婚そのものは計画外だったことでしょう。
しかし、離婚を決意してからの展開は、まったく計画したことと違う展開でしたが、この女性にとっては歓迎すべき結果になったのです。
計画が思い通りにならなかったことで
手に入れられる幸せもある
別の患者さんから聞いた話です。
この患者さんの親友は、音楽関係で生計を立てることを目指していました。ところが、すべてがうまくいかず、挫折した末、音楽を職業にすることを諦めざるをえませんでした。
ただこの男性は、音楽からは離れたくない。せめて趣味でいいから続けていこうと考えました。しかし、プロを目指して頑張っていた楽器を続けるのは悲しすぎるので、男性は、別の楽器にチャレンジしようと決意しました。
どんな楽器をやろうかいろいろ探したものの、なかなか決められません。新たに就いた仕事の都合で、通うことができる教室も限られてしまいます。そんななか、たまたま男性はある特殊な楽器に出会います。
それほどやりたい楽器だとも思わなかったそうです。ただ、今までやってきた楽器とはまったく異なるうえ、習うのに都合がいいことから、仕事の傍らその楽器を習い始めました。
ところが、この男性は、その楽器を習うための教室で結婚相手と巡り合いました。まさに自分の伴侶にぴったりと思えるような人だったそうです。
音楽でプロを目指した人が挫折して、趣味ではじめた楽器が縁で、たまたまかもしれませんが、人生の伴侶を得たのでした。
とはいえ、夢に見ていた通りプロの音楽家になっていたら、このような女性とは出会えなかったかもしれません。
計画通りに進まないことが必ずしも「うまくいかない」ことではないのです。逆に計画通り進んでも、うまくいかないこともあるのではないでしょうか。
計画が思い通りにならなくてもすぐに負の評価を下さず
もう少し長いスパンで考えたほうがいい
精神科の診療でも、計画を立てて治癒に導いていくことが一般的です。
しかし、その患者さんの生活に予想外のことが起こり、医者として計画したスケジュールにずれが生じてしまうことがあります。
こちらとしても、聞いた瞬間は「ええ? だって今週からそろそろリハビリに入る予定だったのに」と思ってしまうものです。
しかし、あとになって考えると「それで良かった」「必要なことだった」「無駄じゃなかった」と思えることはいくらでもあります。
そう考えると、計画が予定通り進まなくても、すぐに「足止めを食った」とか「マイナスになった」という負の評価を下す必要はないのです。
過剰に考えるとオカルトっぽくなってしまうのですが、計画通りに進まない事態に直面したとき「変わり目」「チャンス」ととらえることも悪くないと思います。
うつ病で診察室を訪れる患者さんのうち、初期の人ほど完治までのロードマップを気にされます。そんな人に私は、こんな言葉をかけるようにしています。
「計画にとらわれているということは、あなたが休めていない証拠です。完治までの期間は人それぞれです。こだわりすぎていると、回復が遅くなることもあるのですよ」
私の経験では、不思議と症状が落ち着いてきた患者さんほどロードマップを気にしなくなっていきます。
現在進行中の計画がすべて思い通りにいくことはありません。計画通りに進まないこと、思い通りにいかないことがあっても、即座にマイナスの評価を下すのではなく、もう少しだけ長いスパンで考えてみてはいかがでしょうか。
[DIAMOMD ONLINE/香山リカの「ほどほど論」のススメ]
Posted by nob : 2011年11月15日 10:44