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地に足が着いている国家。。。
■ドイツ政府、財政均衡化を2年前倒しで実現へ
ドイツ政府は21日、財政均衡化を2年前倒しで実現する計画を明らかにした。ザイベルト政府報道官は記者会見で、財政緊縮が経済成長の妨げにはならないことをこの計画は証明していると語った。
[THE WALL STREET JOURNAL]
■ドイツ経済はなぜ絶好調なのか
ユーロ危機をものともせず、絶好調に推移する独経済
2011年度の成長率は3%でユーロ圏平均の2倍に
熊谷 徹
「ドイツの輸出産業は、2012年も好調なスタートを切った。わが国の企業は、世界経済が直面する困難な状況に対し、果敢に立ち向かっている」。ドイツ連邦経済技術省のフィリップ・レスラー大臣は、3月9日にベルリンでこう語った。彼がコメントしたきっかけは、連邦統計庁が発表した名目輸出額である。 2012年1月の輸出額は、前年の1月に比べて9.3%増加した。興味深いことに、輸出だけではなく内需も好調で、2012年1月の輸入額は同6.3%増えている。
日本では昨年以来、ユーロ危機に関するニュースが頻繁に報じられている。多くの日本人が「ヨーロッパは大変な状況になっている」と認識している。だがその陰で、ドイツ経済が絶好調であることは意外と知られていない。
ドイツは2009年、リーマンショック後の世界同時不況に直撃され、マイナス5.1%という戦後最悪の景気後退を体験した。しかし2010年にはGDPを3.7%増やして、不況の後遺症から急速に立ち直った。
2011年の成長率は前年にやや劣るものの、EU主要国の中では最高の水準である。そのテンポは、ユーロ危機もどこ吹く風と言わんばかりである。
欧州統計局によると、2011年のドイツの国内総生産(GDP)は2010年に比べて3%増加し、ユーロ圏の平均成長率(1.5%)を大幅に上回った。フランス、英国、スペイン、イタリアなど他の西欧諸国は、ドイツに大きく水を開けられている。
2011年の第4四半期だけを見ても、ユーロ圏全体のGDP成長率が前年同期比で0.7%であるのに対して、ドイツは2%で群を抜いている。
輸出が経済成長を推進〜過去最高の1兆601億ユーロに
ドイツの力強い経済成長の原動力は輸出だ。連邦統計局によると、2011年のドイツの輸出額は前年比で11.4%増えて、過去最高の1兆601億ユーロ(116兆4000億円)に達した。貿易黒字も2%増加して1581億ユーロ(17兆4000億 円)に拡大。フランスが、700億ユーロ(7兆7000円)という、同国の歴史で最悪の貿易赤字を記録したのとは、対照的である。
輸出増に大きく貢献したのが、この国の産業の屋台骨である機械メーカー。この国では輸出額の85%が機械製品である。ドイツ工作機械工業会(VDW)によると、この業界の2011年の生産額は前年比で33%も増えて、131億ユーロ(1兆4000億円)を記録。輸出額も中国と米国向けを中心に33%増加した。
自動車業界の輸出も、大きく拡大した。ドイツ自動車工業会(VDA)によると、2011年の乗用車の輸出台数は、前年比6.6%増えて約452万台となった。2010年の前年比23.7%という驚異的な伸び率には及ばないものの大きな伸びである。
EU以外の地域向けの輸出台数が伸びた。アジアへの輸出台数は21.9%も増加。そのうち中国向けは22.5%、台湾向けは44.9%、インド向けは 60.8%も増えている。VDAのマティアス・ヴィスマン会長は、2012年1月16日にベルリンで開いた新年祝賀パーティーで、600人の参加者を前にこう語った。「2011年は我々にとって素晴らしい年だった。西欧で新しく認可された乗用車の2台に1台は、ドイツ製だった。中国におけるドイツ車のマーケット・シェアは20%になった。『メイド・イン・ジャーマニー』は、多くの国で高品質の代名詞となっている」。
ドイツ最大の自動車メーカー・フォルクスワーゲン(VW)社は2011年、当期利益を前年の2倍に増やして158億ユーロ(1兆7000億円)を計上。これは、ドイツ株式指数(DAX)市場に株式を公開している企業が計上した利益の額としては過去最高である。
株主たちも満足しているに違いない。VW社が2月24日に発表したところによると、取締役は、優先株の配当を2.26ユーロから3.06ユーロに引き上げることを提案している。この提案が4月の株主総会で承認されれば、配当額が実に35.3%増えることになる。BMWグループの取締役会も、優先株の配当を75.8%引き上げることを提案している。
収益を増やした多くのメーカーの取締役たちのポケットには、業績に連動する特別ボーナスがころがりこむだろう。実際、VW社のマルティン・ヴィンターコルン社長は、2011年に1660万ユーロ(18億2000万円)の報酬を手にした。これは、2011年の社長の年収の中で最高額である。ドイツ銀行など金融機関の業績が、ユーロ危機の影響でふるわなかったのに対し、物づくり企業は中国など新興国からの需要急増で、破竹の進撃を続けている。
失業率を過去20年間で最低に
好景気は2011年の雇用状況を大幅に改善した。ドイツ連邦統計局によると、2011年のドイツの勤労者数は4100万人を突破し、史上最高の水準に達した。ウルズラ・フォン・ライエン労働大臣によると、2011年に約70万人分の新しい雇用が創出されている。2011年の平均失業者数は298万人。失業率は7.9%で、過去20年間で最低の水準を記録した。
この国が深刻な不況に襲われていた2005年には、486万人が路頭に迷い、失業率は13%という高水準だった。このことを考えると、雇用状況は過去7 年間でめざましく改善したことになる。人材不足の兆候すら出ている。機械製造やIT、化学工業などの分野では、高いノウハウを持った技術者を見つけるのが非常に難しくなっている。
レスラー経済大臣は、2011年を振り返って「ドイツ経済の状態は健全で、活力に満ちている。ヨーロッパの状況は厳しいものの、国内経済が成長率を下支えするようになってきている」。
2009年から経済専門家会議の座長を務める、マンハイム大学のヴォルフガング・フランツ教授も、経済大臣の楽観的な見方に同意する。「私は、ドイツ経済の2012年の成長率が0.5%前後にとどまると思います。しかし、勤労者の数が戦後最も多くなっているほか、産業界の設備稼働率も平均を上回っています。また多くの企業が将来について明るい見通しを持っています。このため、GDPが5%も減った2009年ほどひどい不況にはならないと思います」。経済専門家会議は、経済問題に関する連邦政府の諮問機関で、ドイツのトップクラスの経済学者で構成する。
ドイツ経済は、ユーロ危機の逆風にもかかわらず、なぜ好調なのか。次回からその背景についてお伝えしよう。(続く)
[日経ビジネス]
Posted by nob : 2012年03月22日 07:03