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原発問題の根幹。。。
■「原発の後始末」
脱原発してもゴミは存在
山根 小雪、大竹 剛
日本に存在する放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」は、福島第1原発事故に由来するものだけではない。深刻なのが、この40年間に原発で燃やした使用済み燃料から生じる高レベル放射性廃棄物だ。今日も、日経ビジネス2012年1月30日号の特集『原発の後始末』の内容を再録し、核のゴミの問題に迫る。
日本は、使用済み燃料を再処理して、燃料中に残ったウランや、核分裂によって生成したプルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」を進める立場を取る。高レベル放射性廃棄物は、言ってみれば燃料の燃えかすだ。再処理の過程で、高レベル放射性廃棄物を分離。ガラスで固めた「ガラス固化体」として最終処分する。ただし、再処理しても最終的なゴミの量は大して減らない。
だが、六ケ所村の再処理工場は相次ぐトラブルで、既に稼働時期を18回延期。本格稼働には至っていない。2008年にトラブルで中断していた最終試験は、1月10日に再開に向けた作業を開始したところだ。まだ稼働には時間を要する。
日本原燃(六ケ所村)の低レベル廃棄物処分施設
海外から返還されたガラス固化体の貯蔵施設
使用済み燃料プール
ちなみに、出力100万キロワットの原発1基で1年間に生じる使用済み燃料は30トン。再処理待ちの使用済み燃料は、原発内の使用済み燃料プールや青森県六ケ所村の日本原燃の敷地内に保管している。その総量は、2011年3月末時点で1万6800トンに上る。
一部はフランスや英国に再処理を委託しており、返還されたガラス固化体も六ケ所村にある。
今、この瞬間に脱原発を果たしたとしても、使用済み燃料から生じた核のゴミの処理から逃れることはできない。反対派が原発を「トイレのないマンション」と揶揄するのは、最終処分の道筋が見通せないためだ。
現時点で最善の処分方法は、地下数百mに埋設して放射線を閉じ込める「地層処分」というのが国際的な共通認識。地上で半永久的に管理する方法や、深海や宇宙への投棄を検討したが、飛散リスクなどを考慮し選択肢から外れた。
日本が地層処分の研究開発を始めたのは1970年代、99年に政府は地層処分研究に関する第2次取りまとめを公表。これをもって「国内でも地層処分は可能」との判断を下した。2000年に地層処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)を設立。2002年、候補地の公募が始まった。
それから10年。いまだに候補地は決まっていない。2007年に高知県東洋町が名乗りを上げたものの、推進派の町長が選挙に敗れて白紙撤回した。この10年、受け入れに関心を示す自治体が現れては、反対の声が上がり、かき消されてきた。
現在の公募制度は、首長が政治生命を賭けることになりがちで、自治体側の負担が大きい。政府は2010年に直接、複数の候補地に申し入れする方針を明らかにしていた。福島第1原発事故が起きなければ、今頃には申し入れされていた可能性が高い。だが、事故が起き、その雰囲気はなくなった。
現在の計画は、2028年までに調査を終えて処分地を決定し、2030年代後半までに処分を開始、その後、50年をかけて高レベル廃棄物を埋設するというものだ。だが、調査だけでも最低20年を要するため、既に遅れている。
見えない不安がつきまとう
最終処分場の設置に住民が反対するのは自然なことだ。目に見えない地下深くとはいえ、住まいのそばに何万年も核のゴミが存在する。しかも日本は地震大国。地下の安全性に、不安を覚える人がいても不思議はない。
地層処分に懐疑的な立場を取るNPO法人(特定非営利活動法人)原子力資料情報室の西尾漠・共同代表は、「本当に地震などのリスクがないのかどうか現時点の知見だけでは判断できない。政治的に急いで結論を出すことだけは避けてもらいたい」と主張する。
これに対して、日本原子力研究開発機構(JAEA)地層処分研究開発部門自然事象研究グループの梅田浩司グループリーダーは、「地上よりも地下の方が地震のリスクはずっと小さい」と反論する。地上で巨大地震が起きても、炭坑の作業者は気づいていなかったという報告例もあるほどだ。
深刻な事態を招く可能性があるのは、地震よりも処分場に隆起が直撃するケース。ただし、「隆起の発生場所や確率は数万年先まで予測できる。最悪のシナリオが起きた時に、どれだけの被曝影響が地上へ及ぶかをシミュレーションしたうえで場所を決めればいい」(梅田グループリーダー)。JAEAの試算によれば、日本の国土の約半分の地域で地層処分が可能だという。
人類が地下の核のゴミを数万年間、管理できるのかという疑問もわく。JAEAによると管理は最初の300年間だけ。1000年後にガラス固化体を覆った鉄の容器が腐食して、放射性廃棄物が漏れ出すことを前提にしている。地下に閉じ込めておけば、地上での被曝を最小限に抑えられるというわけだ。
「地層処分でなければ、後世に負担をかける。100%の安全はこの世に存在しないが、相当高い確率で影響は回避できる」とJAEA地層処分研究開発部門の清水和彦・副部門長は話す。
日本は今、核燃料サイクルの是非を巡って揺れている。コストや安全保障が争点だが、最終処分も関係する。核燃料サイクルをやめるのは、大量の使用済み燃料を再利用が可能な「資産」ではなく、捨てなければならない「核のゴミ」と認定することと同じ。「いつかは使うから」と処分を先延ばしする論理は通用しなくなり、最終処分場の建設への圧力が高まるのは自明だ。
日本の処分場問題は身動きが取れない状況に陥っている。しかも、福島第1原発事故は、原子力の安全神話を崩し、「ほかにも隠している情報があるのではないか」という懐疑的な気持ちを国民に植えつけてしまった。膠着状態を脱却し、社会的な合意を形成するにはどうすればいいのか。先行する海外のケースを追う。
[日経ビジネス]
Posted by nob : 2013年03月13日 17:07