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彼の真意がどこにあれども、、、脱原発への影響力に期待。。。Vol.15

■希代のケンカ師・小泉元総理の「原発即ゼロ」発言
原発ゼロ、電力自由化、東電解体の根は一つ
高橋洋一 [嘉悦大学教授]

 筆者は電力の自由化をきっちりやれば、エネルギーの最適な組み合わせは自ずと達成できると考えている。原発事故が現実に起きて、そのコストが一企業でまかなえないほどに莫大になった以上、イデオロギーとは無関係に市場原理から考えると原発ゼロは自ずと出てくる最適解になる。だから電力自由化を全力で行えば、東電解体を経て、自ずとスムーズに脱原発も達成できる。

 この意味で、原発ゼロへの責任ある具体的なプロセスとは、電力自由化、その結果としての東電解体に他ならない。統制経済の考え方で、長期間の工程表を作ってみても、それはかえって無責任になってしまう。長期にわたる変化をうまく行うのは市場原理しかありえない。原発ゼロへの具体的なプロセスは、電力自由化、東電解体を示せば、それが必要かつ十分な解答になる。

決断し制度設計は任せる小泉流

 こうした観点から、今話題になっている小泉純一郎元総理大臣の意見をみてみよう。かつて、郵政民営化でお仕えしたことがある筆者にとって、相変わらず勘が冴えているといえよう。

 小泉氏は、12日、日本記者クラブで記者会見し、今後のエネルギー政策について、原発は「即ゼロの方がよいと思う」と発言し、各方面に波紋を広げている。朝日新聞が実施した世論調査では、小泉氏の原発ゼロの主張について、支持するが60%、支持しないが25%となっている。

 小泉氏の脱原発論は、いわゆる「トイレのないマンション」論だ。日本に最終処分場は作りようがないのだから原発ゼロというシンプルで説得的な考え方だ。これに対して、「楽観的で無責任」とか反論しても、小泉氏の「最終処分場もないのに原発に依存するほうがよほど無責任」で一蹴されてしまう。

 自民党の石破幹事長は、11日の記者会見で「自民党の目指す方向と違わない」とやや軌道修正してきている。ただし、「小泉氏は、いつまでに、どのようにして、誰の責任で『原発ゼロ』を実現するのかまでは踏み込んでいない。単に理想を掲げるだけではなく、答えを出すのが責任政党だ」と述べ、具体的なプロセスにこだわった。

 これに対して、小泉氏は、しばしば自民党内で議論すればいいという。知恵者が必ず現れる、と。これは、野党が小泉氏を利用して政治的な動きにしようとするが、野党と組むことはないと釘を刺している。12日の記者会見でも、野党に対して「1人でもやるという気持ちでやらないと駄目だ」といったという。

 と同時に、自民党が責任政党だということを逆手にとって、責任政党だからできるはずと切り返している。しかも、石破氏の「方向は同じ」に対し、「即ゼロの方がよいと思う」と踏み込んでいる。このあたりが、希代のケンカ師との異名をとる小泉氏らしいところだ。

 具体的なプロセスについては、小泉氏は、政治は決断だけすればいいと割り切る。たしかに、郵政民営化の時も、方向性だけを言い、制度設計は竹中平蔵経済財政相に任せた。筆者はその下で詳細制度設計を任されたわけだ、

 小泉氏は、そうした制度設計にこだわらないが、原発ゼロに向けての制度設計となれば、冒頭に述べた電力自由化、さらに東電の解体なくしてできない。

東電の対応は実質的な「債務不履行」

 電力自由化はいざしらず、なぜ、東電の解体が関係してくるのか。それは、原発コストにも大いに関係している。

 まず、最近の除染費用からはじめよう。

 除染費用の支払いを拒んでいる東電が、改めて環境省から支払いを求められた。しかし、東電の石崎副社長は「支払えない」と回答。東電は請求されているもののうち、未だ300億円以上を支払っていない。これは、通常でいう「債務不履行」ではないのか。除染費用は、放射性物質汚染対処特措法によって、東電負担と定めている。国がいったん肩代わりした上で東電に請求している。

 もちろん、東電の言い分として、国がいったん肩代わりした分が本当に除染費用なのかどうかをチェックしなければいけないから、少し待ってくれというものなら、まだ理解はできる。ところが、石崎副社長は「事務作業に時間を要している上、経営状況が思わしくない」と、経営まで持ち出してくる。これではやはり、東電は破綻ではないか。

 そもそも、除染費用は300億円では済まない。今国や地方自治体が計画している除染費用は3兆円。これももちろん東電負担になる。

 この費用を直ちに東電が負担すれば、もちろん破綻だ。というのは、東電の今年3月末連結決算で資産14兆9891億円、負債13兆8513億円、資産超過額1兆1378億円なので、除染費用3兆円を直ちに負担すれば、即債務超過になるからだ。しかし、除染費用は今後徐々に発生していくが、その間に電気料金値上げをしていくから、破綻しないというロジックのようだ。いずれにしても、除染費用の負担に東電が悩んでいるのは明らかで、東電は、放射性物質汚染対処特措法を改正して全額国費での対応を自民党に要請している。

電力自由化と東電温存は矛盾

 自民党も、東電にこれまで世話になってきたためか、法改正に前向きである。10月31日、自民党の東日本大震災復興加速化本部がまとめた方針では、これまでに計画された除染費用3兆円は東電負担とするが、中間貯蔵施設の建設1兆円は、東電負担から国費投入に変更し、さらに生活再建に向けたインフラ整備も国費投入とする。

 この自民党方針が通れば、東電負担は3兆円になるが、それを電気料金値上げでカバーするから破綻でないというロジックはそもそもあやしい。

 東電が電力料金値上げで対処できるとは、競争がない独占企業であることを宣言したものだ。逆に言えば、政府がいう電力自由化がまやかしになる。今国会で、電気事業法改正案が成立するだろうが、そこでの電力改革で、大手電力による地域独占体制を見直して新規事業者の参入を促し競争を通じて電気料金の値下げをもくろむが、東電を温存すれば、これらは絵に描いた餅になってしまう。

 政策論としては、東電を解体し、発送電分離を先行させるほうが、電力自由化の早道になる。となれば、今の東電の持株会社による見かけ上の「発送電分離」より、はるかにはやく電力自由化できることなる。

 なお、東電はすでに破綻しているのだから、法的整理によって解体すべきという意見もある。たしかに法的整理は正論で、筆者も原発事故直後から主張していた。ただし、今となっては、逆に不公平なるかもしれない。というのは、法的整理で損失負担するのは金融機関であるが、すぐに法的整理されなかったために、債権保全という名目で借り入れを社債化(法律で電力債は保護されている)するなど金融機関による悪辣な債権確保がすでに行われているからだ。いずれにしても、早く東電を解体するほうがいいことはいうまでもない。

電力自由化すれば自ずと原発はゼロに

 電力自由化の流れさえできれば、後は自ずと原発ゼロになる。そのカギは原発コストの高さだ。

 原発のコストであるが、内閣府国家戦略室のコスト検証委員会が発表した各エネルギー源による発電コスト(円/kW時)はつぎのとおりとしている。

原子力発電   8.9以上
石炭火力発電 9.5
LNG火力発電 10.7
石油火力発電 38.9
陸上風力発電 9.9~17.3
洋上風力発電 9.4~23.1
地熱発電   8.3~10.4
太陽光発電  33.4~38.3
ガスコジェネ 10.6~19.7

 コスト検証委は再処理・廃棄物処理費などの「バックエンド・コスト」を最終的に20兆円程度と見積もり、kW時1.0円程度のコストとはじいているが、かなり甘い計算だ。そのコストは3~4倍以上になるので、それだけで2.0~3.0円以上のアップとなる。

 次に、技術開発への補助金が含まれていない。これは1.6円程度だが、国民にとっては立派なコスト。また、従来の政府の試算では、送電費用がコストに含まれていない。発送電分離をしていないのでドンブリ勘定だが、分離したらコストになる。これが2.0~4.0円程度。

 最後に、深刻な事故を起こしたので、事故のための保険に入る必要がある。政府の保険があるが、これはワークしておらず、結局、電力料金値上げという形で国民負担にはね返ってくる。これは本来、負担を平準化する保険で対応すべきものだ。

 現段階でこうした保険を引き受けてくれる再保険会社はないが、500年に1度の重大事故だとすれば、標準的な原子炉1機の被害額1兆円に対して保険料は0.3円程度と計算できる。今回のように福島原発事故で40兆円程度の被害額とすれば、それをカバーするための保険料で3.0円程度は必要だ。

 これらを全て合算すると、コスト検証委員会の数字に8.6~11.6円を上乗せして、原発の真の発電コストは17.5~20.5円となる。石油火力や太陽光を除くと、ほとんどの発電方式よりコスト高の数字だ。

 つまり、政府が出している資料には、再処理・廃棄・保険・技術開発コストが書かれておらず、これらを含めて見ると、原発は、太陽光や石油火力を除くと、コストの高いエネルギー源になる。このことは、市場原理(発送電分離)を使えば原子力は自ずと価格競争力がなくなり、次第にフェードアウトしていくはずだという意味になる。

 また、単純な比較はできないが、米国エネルギー省資料(図)でも同じような傾向になっている。このため、あえて原発を続けようとすれば、政府からの特別な支援が必要になっている。

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 はたして安倍政権はどのように対応するのだろうか。自民党内で議論することさえ拒否し続けると、小泉氏はますます血気盛んになる。

 来年4月からの消費税増税、それによる景気ダウンがある。それに、原発再稼働がからみ、汚染水管理もままならず、除染費用もまかなえない東電に対する国民の不満が、脱原発の動きと結びついたら、安倍政権の致命傷になりかねない。

 はやく、原発について、ゼロと推進の両者の意見を党内・政府内で議論したほうがいいのではないか。原発ゼロは電力自由化、東電解体と三位一体であるが、原発推進はなんちゃって電力自由化、東電温存なので、国民にわかりやすい対立軸になるはずだ。

[DIAMOND online]

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Posted by nob : 2013年11月14日 08:49