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彼の真意がどこにあれども、、、脱原発への影響力に期待。。。Vol.19
■小泉「即原発ゼロ」発言の“挑発”に困惑する自民党
田原総一朗
あらためて大胆な「挑発発言」だという印象を持った。
小泉純一郎元首相が11月12日に日本記者クラブで行った会見で、「安倍晋三首相が今、原発ゼロを決断するのに、こんな恵まれた環境はない」「即ゼロではないか」と明言したことである。
最初に感じたのは「直感力の天才」
小泉さんは今年8月にフィンランドで使用済み核燃料の処分施設「オンカロ」を視察し、地下420メートルに使用済み核燃料を保管する計画を知った。使用済み核燃料を無害化するには10万年かかると聞き、「原発はダメだ」と言い出した。
最初に「脱原発」発言を聞いたときは、「直感力の天才である小泉さんらしい」と思ったものである。
以前にも書いたが「直感力」といえば、小泉さんは自民党総裁選に3回立候補して2回落選したものの、3度目に「自民党をぶっ壊す」と言って当選したことを思い出す。「自民党をぶっ壊す」という言い回しは小泉さんならではのものだ。
2005年の郵政民営化問題のときも同様だった。全野党が反対し、自民党内にも反対の声が強く、「参議院で否決されたらおしまい。継続審議にすべきだ」と森喜朗元首相らが言っていたにもかかわらず、審議を進め、結果は参議院で否決。何と衆議院を解散し、誰もが自民党は惨敗すると見ていたのに、「命をかける」と威勢よく言い放って見事に大勝した。
「脱原発」から「即ゼロ」へ
こうした出来事から、私は「小泉さんは直感力の天才」と思い、その直感力で「原発はダメ」と言い出したのだろうと思っていた。「脱原発」と言っても、今後20〜30年は原発との共存を小泉さんも考えているのではないかと受け止めていた。
だが、様子が変わってきた。しつこいくらいに繰り返して「脱原発」と言う。そして、今回の日本記者クラブの会見では、さらに踏み込んで、「即ゼロ」を言い出したからだ。それを聞き、私は「これは挑発だ」と思ったのである。
小泉さんは代替エネルギーをどう考えているのか。「代替案を言わないのは無責任だ」という批判に対して、会見の冒頭でこう反論した。
「政治で一番大事なのは方針を示すこと。原発ゼロという方針を出せば、専門家や官僚が必ずいい案を作ってくれる」
こんなことは他の政治家なら絶対に言わない。責任ある政治家が「即原発ゼロ」を言うとしたら、あらかじめ専門家を集めて委員会などで検討し、ある程度の見通しを立ててから慎重に発言するだろう。
ところが、そんなものは専門家や官僚に任せておけばいい、政治家は方針を示して決断することだ、と言う。まさに小泉流である。
最終処分場のメドを付けられると思う方が「楽天的で無責任」
フィンランドで稼働中の原発は4基しかない。それに比べ、日本には福島第一原発事故前は54基あった。その分のおびただしい量の使用済み核燃料がある。それを最終処分する場所を探さなければいけないのは「原発ゼロ」を目指すにしても同じことだ。
最終処分場の問題について、小泉さんは次のように発言する。
「(原発必要論者である)彼らは『(処分場選定の)メドを付けるのが政治の責任だ』と言う。付けられると思う方が楽天的で無責任だ。東京電力福島第一原発事故の前に見つけることのできなかったものを、事故後に見つけ出せるというのが必要論者の主張だ」
今までずっと見つけられなかったのだから将来も見つかるわけがない。それをできると考える方こそ無責任。そう小泉さんは言っているのである。
高レベル放射性廃棄物の地層処分をめざす機関として、「原子力発電環境整備機構(NUMO)」がある。2000年10月に経済産業大臣の認可法人として設立されているが、それは小泉内閣発足(2001年4月)のわずか半年前のことだ。
小泉流発言に威力のあることは確か
日本で最初の原子力発電が行われたのは1963年である。それ以来、2000年まで高レベル放射性廃棄物の処分については本腰を入れてやってこなかった。NUMOによる最終処分もまったくメドが立っていない。
小泉さんの発言は、最終処分場を見つけようとしたが見つからなかったと言っているように聞こえるが、しかし実際にはその努力を本気でしてこなかったのはないか。それこそ政治家の責任が問われる。
小泉発言には間違っていると思うところがいくつかある。だからこそ「挑発」と感じるのだが、小泉流発言に威力のあることは確かだ。
小泉さんは安倍晋三首相に「原発をやめろ」と迫っている。
「私が首相在任中の郵政解散は『追い込まれ解散』だった。野党も反対、与党も反対。(中略)比べて今、どうか。野党は全部、原発ゼロに賛成。反対は自民党だけではないか」
「自民議員も賛否は半々だと思っている」から、自分から見れば、安倍首相にはチャンスがある。だから「原発ゼロ」を決断すべきだ、と言っているのである。
自民党内からの原発反対の声を恐れる
小泉さんの「挑発」に対して、自民党はとても困惑している。なぜか。
もし、まともに小泉さんと論戦すれば、国民の多くが「小泉支持」に回ってしまうかもしれない。そう感じているからだ。さらに、論争によって自民党内から原発反対の声が上がるのを最も恐れているのである。
自民党は当初、小泉さんが「脱原発」と言っても、そのうちに何も言わなくなるだろうと高をくくっていたのではないか。ところが、繰り返し発言することで逆に勢いを増している。そこが小泉さんのすごいところである。
自民党は原発政策を曖昧にしている。経済産業省がエネルギー基本計画の議論を進めているが、そこにはまだ数字が入っていない。原発をどう位置付けたらいいか決まらないからだ。自民党は国民の反原発の声が次第に静まってくるのを待って、原発政策を打ち出そうとしているのだろう。
そこへ、小泉「即ゼロ」発言が行われたのである。好意的にとらえれば、小泉さんは自民党に揺さぶりをかけ、自民党が原発政策をきちんとするように仕向けたのだろう。
しかし私は今、小泉さんの「挑発」の思惑がわからないことに困惑している。小泉さんの狙いはどこにあるのか。
[復興ニッポン]
Posted by nob : 2013年11月20日 21:21