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これからの若者たちによる、成長の時代を経た成熟の時代に則した新たなビジネスモデルに大きな期待をしています。。。
■今の起業家は松下さんや盛田さんに似ている
田原総一朗が目にした、スタートアップの最前線
渡辺 拓未
東洋経済編集局記者
LINE、テラモーターズ、ユーグレナ・・・。2006年の「ホリエモンショック」でいったん冷え込んだかに見えたベンチャー市場。だが、火は消えてはいなかった。リーマンショックでも消えるどころか、今や、新たな主役たちが次々と台頭。再び熱気に包まれている。
「行儀が良くて堅実、そして『社会を変えたい』という理念で動いている」。田原総一朗氏は新著『起業のリアル』(プレジデント社刊)で、現代の起業家16人に取材し、こう批評してみせる。彼らの特徴は「ホリエモン」こと、堀江貴文氏の世代の起業家とは少し毛色が違うという。 松下幸之助から盛田昭夫、孫正義、堀江貴文に至るまで、昭和・平成の名起業家を取材してきた田原氏の目に、現代のスタートアップの最前線はどう映ったのかを聞いた。
ホリエモン世代との決定的な違いとは?
――今の若手起業家は、これまでの起業家と何が違うのですか。
共通するのは、事業の興し方が乱暴でないことだ。言葉遣いも割合丁寧だし、服装も普通の格好をしている起業家が多い。ここは堀江貴文の世代とは毛色が違う。
また大学を卒業して、いきなりベンチャーを作るのではなく、まず手頃な企業に就職しているのも、私が出会った起業家たちの特徴だ。そこで生きるノウハウをまず習得し、その後、自分の好きなビジネスを立ち上げている。
彼らが大事にしているのは、金儲けよりもソーシャルインパクトだ。本当はボランティアでやりたいが、それでは長続きしないからと、ソーシャルビジネスという形態で行っている。
――なぜ、そうした変化が生まれたのでしょうか。
フローレンス代表の駒崎弘樹氏が興味深いことを言っていた。「自分たちの親の世代である全共闘世代は、体制を倒して新しい世の中を作るために、「ゲバ棒」や「火炎瓶」を手に戦った。ところが、自分たちにはそういう“敵”がいない。総理大臣は1年ごとに代わった。企業も不況でリストラばかり。言ってしまえば、総理大臣も大企業の社長も、隣のおじさんの延長に過ぎない」と。
つまり総理大臣も企業の社長も頼りにできない。ならば自分でやるしかない、ということのが、彼らが起業する理由だということだ。
彼らは高度成長時代もバブル時代も知らない。物心ついたときはすでに不況。だから「高度成長やバブル時代が再来してほしい」という発想がない。ゼロからどう作ればいいのかをつねに考えている。そういう意味では、戦後同じくゼロから事業を興したソニーの盛田昭夫さんや、松下電器産業の松下幸之助さんと似ている。
堀江貴文氏の世代との違いも、その過ちを目にした教訓から来ているのだろう。堀江さんはニッポン放送に敵対的買収を仕掛けるなど、荒々しい方法で新時代を切り拓こうとした。しかしその結果、旧世代から妬まれてしまった。それを見た駒崎さんをはじめ、今の起業家たちは、堀江貴文氏の過ちを繰り返すまいとしているのだろう。
――金儲けに対しても、考え方が違うようです。
おカネについてのスタンスも、松下幸之助さんや盛田昭夫さんと共通している。「カネは儲けようと思ったら儲からない。新しい事業を展開すれば、カネはあとからついてくる」という考え方だ。
LINEの森川亮社長がこんなことを言っていた。「『収益を求めているな』と気づいた途端、ユーザーは逃げていく。むしろより面白いこと、より意味があることを夢中に作っているときこそ、ユーザーがついてくる。カネはその結果として儲かる」と。
――ただ、ソニーもパナソニックも近年、経営危機に陥りました。
ソニーについては、出井伸之氏が社長の時代、マスコミにウケすぎたのが凋落の原因ではないか。マスコミにもてはやされることは怖い。出井氏は「複雑系の経営」などと難解な言葉を並べて、社員も何のことかわからなくなってしまったのではないか。そこでソニーがどこで勝負したかというと、値段で勝負した。つまり新しいことをしなくなった。それが凋落の原因だと感じている。
孫正義社長が、田原氏に語ったこと
――今の起業家に対して、ネガティブな見方をする人も少なくありません。
マスコミには、ネガティブな見方をすることが良心的だと思っている人もまだ多い。最近では集団的自衛権に対してのスタンスがそうだ。ただ、ネガティブ情報がウケる時代は終わったと思う。高度成長の頃はネガティブ情報がウケた。みんながネガティブ情報を見たり聞いたりする余裕があった。今はそうした余裕がなくなっている。
――田原さんが、将来的に注目しているビジネスはありますか。
たくさんある。「日本の成長は終わった」と言う人も多いけど、それは違う。古い産業が成長しないだけだ。ネットなどの新しい世界では、今も世界がどんどん広がっていると取材を通して実感した。
注目分野の一つはロボットだ。3年前にソフトバンクの孫正義社長がこう私に言っていた。「携帯電話の先はしれている。田原さん、これからはロボットの時代だ」と。実際に先日、ソフトバンクは新型ロボット発売を発表した。
あのロボットの特徴は、接客ロボットということだ。今までのロボットは作業用ロボットだった。だから単純労働や力の要る作業がメインだった。しかし、これからのロボットは、人間の相談相手になるものだと思う。
ロボットの記憶力は、人間とはケタ違いだ。あと、非常に理論的に物事を判断できる。ロボットが人間の相棒になる。そういう新しい世界が近く訪れるだろう。
20年後の未来を予測できるか
――ロボット以外には、どんなビジネスに期待していますか。
カギになるのはコンピュータチップのさらなる進化だ。孫社長は高校生の時に米国に渡った。そこである写真を目の当たりにした。同時にその写真を目にしたのが、ビル・ゲイツ氏とスティーブ・ジョブズ氏だ。
その写真に写っていたのは、コンピュータチップだったという。彼らはその写真を見て、これからの30年間は、コンピュータチップの進化がカギになると考え、IT時代の到来を予言した。
この先もコンピュータチップの進化は続く。10年くらい経つと、容量が人間の脳細胞のを超えるだろう。するとどうなるか。腕時計のようなコンピュータを身につけると、テレビで喋っている政治家が、本当に頭の中で何を考えているのか、そうした脳細胞の動きまで全部わかるようになる。そういう時代が訪れる。
勝負は、20年後の未来を予測できるかということだ。孫社長は「ロボットの時代が訪れ、コンピュータチップが脳細胞の容量を超える時代が来る」と私に言った。
そういう未来には、ビジネスチャンスはいくらでもあると思う。
[東洋経済ONLINE]
Posted by nob : 2014年07月28日 13:40