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いずれにせよ私は朝晩ゆったり美味しくいただく毎日です。。。

■コーヒーは結局、カラダに良い? 悪い?

 食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
 全日本コーヒー協会が発表したデータ(出所:ICO統計/2014年7月)によれば、日本のコーヒー消費量は世界でも第3位に入るほど、コーヒー愛好国になっています。
 一方で、気になるのがコーヒーが健康に与えるという“うわさ”の数々。はたして真相はどうなっているのでしょうか?

 コーヒー愛好家のみなさんの中には、“悪いうわさ”──不眠になる、情緒不安定になる、発がん性があるなど──から、「控えている」という人も多いかもしれません。でも、真相はどうなっているのでしょう?

 ハーバード公衆衛生大学院は、科学的根拠に基づいたダイエット&栄養の情報を、臨床医など医療従事者、メディアや一般の人向けに提供しています。その中で、「コーヒーと健康」に関するいくつかの疑問に、同大学栄養学科のロブ・ヴァン・ダム教授が、自身の研究から答えているものがあります。さっそく、見ていきましょう。
■参考文献
Harvard School of Public Health「Ask the Expert: Coffee and Health」

[1]ダム教授の研究結果による、コーヒー愛好家の良いニュースとは?

 ダム教授らハーバード大学の研究者は、約13万人の健康な男性と女性のボランティアを対象に、コーヒーの摂取と死亡率の関係を調査しました。

 研究開始当時、対象者は40〜50代で、その後18〜24年間の追跡調査を行いました。期間中に、コーヒーの消費量を含め、対象者の食生活やライフスタイルの習慣を追跡し、さらに死亡した人を記録。コーヒーが、がんや心血管疾患などあらゆる原因による死亡のリスクには関係がないという結果が出ました。

 さらに、1日にコーヒー6杯まで飲んだ人でも、死亡のリスクは増加しませんでした。つまり、一般の人にとってはコーヒーが、深刻で有害な健康への影響がないことを示しています。
■参考文献
American College of Physicians.「The Relationship of Coffee Consumption with Mortality」
 
[2]コーヒーが有害ではないことが、どうして重要な研究結果?

 コーヒーは、喫煙や飲酒などと同じように、不健康な習慣というイメージがあります。そのため、コーヒーが好きなのに、飲む回数を減らしたり、やめるための努力をしている人も多いでしょう。ですから、コーヒーが有害ではないという結果が重要なのです。

[3]毎日飲む、コーヒーの量の上限は?

 もしコーヒーを飲んで、振せん(意思とは無関係に起きる、細かいふるえ)、不眠、ストレスや不快を感じているなら、明らかに飲み過ぎです。ダム教授らの研究によれば、コーヒーを1日6杯まで飲んでも、死亡率やその他の健康への負の影響は、特にありませんでした。

 ただし、注意が必要なのは、ほとんどの研究のコーヒー1杯の定義は、カフェイン100mgを含む、8オンス(=約240ml)のカップで行われていること。例えば、ティーカップであれば150ml程度、マグカップだと250〜300ml程度のものが一般的なので、マグカップで6杯だと、多くなってしまう可能性が高いですね。

 もう一つ、これらの研究で飲まれるコーヒーは、ブラックか、入れても砂糖やクリームを少量だということも、注意が必要です。コーヒーにポイップクリームを浮かべたウインナーコーヒーや甘いカフェオレを飲み過ぎれば、肥満や糖尿病の原因になりますので、ご注意ください。

[4]それでは、コーヒーの利点を示す研究はありますか?

 ここ数年の研究で、コーヒーの摂取で、2型糖尿病、パーキンソン病、肝臓がんや肝硬変が予防されるのではないかとの発表がされてきています。また、ダム教授らの研究では、めったにコーヒーを飲まない人に比べて、定期的にコーヒーを飲む人は、心血管疾患による死亡のリスクがやや低くなりました。

 ただし、この分野の研究は、議論が非常に活発で、まだまだ賛否両論。今の段階では、コーヒーが好きではない人に対して、健康に良いからと無理にコーヒーを飲むことを薦められません。

 ただし一般的に、妊娠中や、血糖や血圧のコントロールに悩む方以外は、コーヒーは、ヘルシーな飲み物の1つと言えます(もちろんブラックや砂糖、ミルクが少量のコーヒーに関してです)。

[5]どうして科学者たちの間で意見が対立するのですか?

 多くの人は、「コーヒー=単なるカフェイン入りの飲み物」と考えています。ところが実際には、非常に多くの異なる成分を含む、とても複雑な飲料です。ですから、コーヒーを飲むと、健康に多様な影響をおよぼします。でもそもそも、どんな食品もさまざまな成分を含むわけで、コーヒーに限らず、単純な食品はほとんどありません。

 そんななか、現在、コーヒーが健康に与える影響に関して、具体的な研究が行われています。例えば、コーヒーが糖尿病のリスクになるかなどですね。一方で、ダム教授らの研究は、長期間にわたるコーヒー摂取と死亡率を見て、全体的な健康への影響を調査したものでした。

 もともとコーヒーの研究は、ほかの食品よりも少し複雑でした。背景にはコーヒーを飲む人の中に喫煙者、運動不足の人、栄養のバランスが欠けている人が多く、特に初期段階の研究では、それらのライフスタイルの因子を除外することが難しかったことが影響しています。結果、数十年にわたり、実際には、ほかの因子が関係している可能性があるにもかかわらず、コーヒーがある種のがんや心臓病のリスクを増加させると報告されていました。

 ダム教授らの調査のように、すべてのライフスタイル要因についての多くの情報を含む大規模な研究では、それらのリスクは見つかりませんでした。

[6]妊娠中のコーヒーやカフェインのリスクに関する最新の研究結果は?

 妊娠中の女性のコーヒーやカフェインの大量摂取が、流産のリスクを高める可能性についての論争があります。まだ結論はついていません。ただし、カフェインは胎盤を通過し、胎児に到達し、胎児はカフェインに非常に敏感です。ですから、妊娠中の女性は1日1杯程度に控えるべきだと考えられます。

[7]高血圧や糖尿病の人は、コーヒーやカフェインの摂取量を減らすべき?

 カフェインをまったく摂取していない人がカフェインを摂取すると血圧が上昇しますが、摂取後1週間以内に、血圧の上昇は顕著に表れなくなります。

 ただし、数週間、継続的にカフェインを摂取した場合、血圧の上昇が少し残る場合があります。

 もともと高血圧でなければ、カフェインは血圧に影響しません。ただ、高血圧の人で、血圧のコントロールに悩んでいる場合は、カフェインなしのコーヒーを試して、血圧に良い影響があるかどうか確認してみると良いでしょう。

 糖尿病に関しては、パラドックス(逆説的)といえます。多くの研究で、カフェイン入り、カフェインなし、どちらのコーヒーを多く飲む人も、2型糖尿病のリスクが低いと報告されています。ところが急性期(症状が比較的激しい時期)は、カフェイン入り/なし、どちらかのコーヒーを飲んだあとにブドウ糖を多く含む食品を摂取すると、インスリンの感受性(インスリンの効き具合)が下がり、血糖が予想以上に上がります。

 これまでに、コーヒーの摂取と、血糖のコントロールに関する長期経過を観察したデータはありません。ただし、糖尿病の人で、血糖のコントロールに悩んでいる場合、カフェインなしのコーヒーを試してみて、血糖によい影響があるか確認してみてください。カフェインあり/なしの両方を同時に止めるより、カフェインありからなしにスイッチしてみてください。カフェインなしのコーヒーが血糖の反応を抑えたという報告もありますから。

[8]コーヒーでパラドックスが起きる理由は?

 カフェインそのものが健康に与える影響と、カフェイン入りコーヒーとが同様に語られるケースが多いことも要因でしょう。カフェイン入りのコーヒーでも、一般的にはカフェイン含有量に基づいて健康への影響が予想されていることが多いわけです。

 例えば、運動のパフォーマンスを上げる点から考えると、カフェイン摂取はある程度有益と考えられています。ただし、この場合のカフェインは、カフェイン入りのコーヒーを想定していません。

 またカフェインと、カフェイン入りコーヒーの効果を比較した場合、カフェイン入りコーヒーは血圧の上昇を引き起こしますが、含まれているカフェインの量から想定されるよりは、弱いものです。食後のコーヒーとカフェインが、血糖値に与える影響についても同様のことが言えます。

 コーヒーには、カフェインの効果を打ち消す化合物が含まれている可能性があるのです。今後、より多くの研究が必要なポイントです。

[9]ペーパーフィルターでコーヒーを淹れるとヘルシー?

 コーヒーはLDL(悪玉)コレステロール値をあげるカフェストールと呼ばれる物質が含まれています。カフェストールはコーヒーの油性成分(油性画分)に含まれます。

 ペーパーフィルターでコーヒーを淹れると、カフェストールは、フィルターに残ります。一般的に、フレンチプレスコーヒー、トルココーヒーなど未ろ過のコーヒーは、カフェストールの量がはるかに高くなります。コレステロール値が高いなどで気になる人は、ペーパーフィルターで淹れたコーヒーやインスタントコーヒーを選んだほうが良いでしょう。

 エスプレッソは、フレンチプレスコーヒー、トルココーヒーなどよりも、カフェストールが少なく、ペーパーフィルターで淹れたコーヒーよりも高くなります。

 ということで、全般的に見れば、コーヒーはヘルシーな飲み物といえますね。愛好家の人も、安心して、コーヒーを楽しんでください。また、妊娠中の女性、血圧や血糖のコンロトールに悩んでいる人は、コーヒーを控える、カフェインなしのコーヒーに切り替えることを検討してください。

 これからも、コーヒーのさまざまな成分の解析が進むのが楽しみですね。

大西睦子(おおにし・むつこ)
医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな——本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。

[日経トレンディネット]

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Posted by nob : 2014年11月22日 23:25