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そもそも老後を他者に依存しようとすること自体が大間違い。。。

■本当にいいのは20ヵ所に1ヵ所!
間違えない老人ホームの選び方

上岡榮信・有料老人ホーム入居支援センター理事長に聞く

入所者3人が転落死をしたほか、虐待を受けていた例もあったとして大騒動になった有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」。国内1500ヵ所以上の老人ホームを訪問してきた上岡榮信氏に、「正しい老人ホームの選び方」について聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

「看取りに対応します」は本当か?
老人ホームで死ぬ、という現実

――川崎市の老人ホーム事件は、比較的大手が起こしただけに、業界内でも波紋を呼んだと聞いています。良いホームを選びたいというニーズは多いはずですが、日本の老人ホームは種類も複雑で、何をどう選んだらいいのか、分かりにくいですよね。

 公的施設である「特別養護老人ホーム」や民間の「有料老人ホーム」、最近増えている「サービス付き高齢者向け住宅」、「介護老人保健施設」など、さまざまなくくりがありますが、私はこんなカテゴリー分けはおかしいと思っています。消費者からしたら、何のことか、さっぱり理解できないでしょう。

劣悪な環境の「終の棲家」で苦しむ高齢者は少なくない。老人ホーム選びに失敗しないためには、どんなポイントに気をつけるべきなのだろうか?
 カテゴリーに惑わされるのではなく、「元気なうちに入るのか、それとも要介護状態になってから入るのか」、まず入居希望者は、ここを考える必要があります。

 そして、「死ぬまでいられるのか」、「どんな認知症の状態でも受け入れてもらえるのか」を確認すべきです。たとえば、認知症対応型共同生活介護、いわゆるグループホームはたいてい、認知症で徘徊する人は受け入れません。看取りもしません。

――「看取りに対応します」と掲げているホームも増えていますが。

 そこに惑わされてはいけません。看取りを1件でもしたら、「やれます」と答えるホームが多い。年に1人では、やっているうちに入りません。3~4人でも少ないかもしれない。また、ホーム側の体制だけでなく、老衰で静かに死なせてくれるような死生観を持つ、良質な訪問診療の医者と連携をしているかどうかも大切なポイントです。

 入居を希望する側も、自らの死生観を明らかにする必要がありますね。まずは、ホームへの入居のきっかけをどの段階にするのか。どこまでも家庭で、というのは現実問題として難しい。老夫婦2人だけで暮らしていて、気がついたときには1人が倒れ、もう1人が栄養不良でうずくまっていた、というようなケースは後を絶ちません。

 また、後見人を選ぶことも、元気なうちにやっておかなければなりません。最近、悪徳弁護士を後見人に選んでしまい、危うく認知症で精神病院に入れられそうになった方のご家族が相談に来られました。

ハードや現場だけを見てもダメ!
「良いホーム」に必須の条件とは?

――川崎の事件は比較的大手が起こしました。大手は信頼できそうだ、と考えがちだと思いますが、これは間違っているのでしょうか?

 大手の特徴は「最低限、押さえるべきポイントを押さえる」といったところでしょうか。逆に言うと、必要最低限以上の心の通ったサービスは、あまり期待できません。たとえば外出や外食。「居酒屋に行きたい」「夫のお墓参りをしたい」といった細かなニーズに、いちいち対応してくれないのです。しかし、良いホームは、こうした“ワガママ”にもちゃんと応えます。

 また、デイサービスや訪問介護をルーツに持つ大手は多いのですが、1日数時間のサービスと、老人ホーム業はまったく異なります。中には、大手の系列であっても良いサービスを提供しているホームもあるのですが、そうしたところは価格が高めですね。

――やはり現場を実際に訪問して決めるのがベストなんですね。

 もちろんそうです。一般の方々は「施設(ハード)の豪華さ」や「現場スタッフのサービス(ソフト)」あたりに視線が集中するのではないでしょうか?私はホームを評価する際、「ハード2割、ソフト8割」と考えます。特に男性は「ハードが立派だから」「上場している大手が運営しているから」といった理由でホームを決めたがりますが、これはまったく間違っています。

 ではソフトを重要視すればいいのでしょうか。確かに入居者の満足度を作るのは現場です。良いホームは入居者の満足度が高く、家族も安心して預けられる。そうした口コミが広がって行き、CMを打たずとも、いつもほぼ満室――というような好循環になっているものです。しかし、そのためには経営者の姿勢、理念が立派であることが必要不可欠です。

 たとえば、首都圏のあるホームは、経営者の姿勢はイマイチでしたが、現場の施設長がすばらしかったので、ある時期は非常に良い施設でした。しかし、こうしたケースは、転勤や転職などで施設長がいなくなると、途端にダメになるものです。経営者が優れていない限り、長期に渡って入居するに耐えうるレベルの施設にはなりません。

良いホームは経営者が違う!
刑務所のようなホームは経営者も最悪

――では見学訪問の際には、経営者にも面会した方がいいんですね。

 大手では難しいでしょうが、私は基本的には経営者に会うことをお勧めします。私が訪問する際には、2~3時間ほど、みっちり話を聞きます。ビジネスへの情熱や展望はもちろんですが、老人ホーム運営に欠かせない死生観や使命感、加齢への理解と共感、そして宗教観や倫理観、さらには哲学や思想などを評価の対象にして、A~Fまで6段階で格付けをしています。

 もちろん、ホームの施設長の能力や職員(現場)の評価、そしてハード面といった、現場施設評価も行い、点数化します。面白いことに、経営者格付けがA~Bの高評価だった会社は、現場施設の評価もだいたいにおいて高いのです。逆に、経営者格付けがC以下と低いのに、現場施設の点数が高い場合は、先ほども触れたように、「たまたま、今の施設長の能力が高い」だけ。現在の高レベルが永続する可能性は低いでしょう。

 結局、経営者が高い理念と能力を持っていてはじめて、職員にきちんと給料を払い、教育研修を充実させ、さらには公正な人事評価や、やりがいのあるキャリアパス作りが可能になります。介護職は過酷な現場だという認識が広がっていますが、優れた経営者は、生涯働ける環境をきちんと整えているものなのです。

――そんなホームはどのくらいの割合であるのでしょう?

 決して多くありません。だいたい20ヵ所に1ヵ所くらいでしょうか。経営者格付けがCやDの会社のホームの入居者の方に、Aのホームをご紹介して一緒に訪問すると、ご家族よりもまず、入居者ご本人の顔がパッと輝き「私、ここならいいわ」などとおっしゃいます。辛いホームで我慢してこられた方ほど、良いホームは直感で分かるようです。

 経営者格付けがEやFともなると、まるで刑務所のような雰囲気です。こちらもある意味、分かりやすいですね(笑)。判断が難しいのはCあたりでしょうか。見た目は良くて、入居してみて初めて酷いと分かる、といった感じです。

90歳以上の割合が高いと良いホーム!
優良施設の意外な条件

――良いホームには、ほかにどんな特徴があるでしょうか。

 私が多くのホームを訪問して発見したのは、良いホームは「90歳以上の入居者が3割を超える」という事実です。

 というのも、数百万円、数千万円の入居一時金を取るタイプでは、償却し切った頃に「もう85歳にもなられて、病気も増えたから、24時間看護師が常駐していないウチよりも、もっと良い施設を探した方が安心では…」といった具合に、相手の不安感をあおりながら親切を装って、退居・転居を勧めるホームも結構あるのです。

 年を取れば、病気が幾つもあるのは当たり前です。「終身ケア」を謳っているはずなのに、このやり方はおかしいのですが、ここで納得してしまう入居者は意外に多い。

 一方、良いホームは、こんなやり方はしません。もちろん、退去してもらって新しい入居者を募集した方が、ホームは儲かるでしょう。しかし、良いホームは口コミで常にほぼ満室ですから、そんなことをせずともソロバンが合うのです。

 また、介護事故への対応も、良いホームは特徴的です。「なるべく事故のないホーム」を望むのは当然の心理ですが、残念ながら経営者格付けがAであっても、「つまづいて転んでしまった」「職員がほんの少し目を離した隙に、認知症の入居者が、隣の入居者の薬を勝手に飲んだ」というような事故は、やはり起きます。

 しかし、良いホームは、その後が違う。きちんと病院に連れて行って、家族にも報告・謝罪をすることはもちろんですが、家族の方も、「あのホームはいつも、とても良くしてくれている」と分かっていますから、ちょっとやそっとでは訴訟は起きません。

 良いホームは事故やトラブルを隠しません。きちんと記録も取っています。入居前に数回訪問して顔なじみになれば、こちらが求めれば記録をちゃんと見せてくれますから、ぜひトラブル対応についてもヒアリングしてみてください。

うえおか・しげのぶ
1949年愛媛県生まれ。通訳を経て83年から27年間、厚生労働省や全国有料老人ホーム協会、高齢者住宅財団、民間企業などとともに、国内外の高齢者施設を多数訪問した。2010年、一般社団法人・有料老人ホーム入居支援センターを設立。依頼者の「終の棲家」選びを支援している。東京大学市民後見人養成講座の講師を務めるほか、「老人ホーム診断士」資格の立ち上げを準備中。著書に「絶対に失敗しない優良老人ホームの選び方」(河出書房新社)

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Posted by nob : 2015年12月11日 13:28