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何処で何をするかではなく、何処ででも何事にもどのように取り組むのかということ。。。

■阿部寛 現在の居場所で幸せを見つけることが肝心

 是枝監督最新作『海よりもまだ深く』で、阿部寛(51才)が“なりたかった大人”に“なれなかった自分”を演じ、感じたこととはどんなことか?

「みんな理想通りの人生を歩めるわけじゃない」…そう話す、阿部。今作では15年前に文学の新人賞を1度取ったという過去にしがみつき、“今”となかなか向き合えない主人公、良多を演じた阿部が、不器用な主人公と自分とを照らし合わせた。

 いつまでも夢を諦めきれない中年男の良多。15年前に文学賞を受賞したきりの自称作家だが、現実に向き合えずに「小説のための取材」と言い訳をして探偵事務所で働く、うだつがあがらない日々。

『海よりもまだ深く』は、“なりたかった大人”になれなかった大人たちの物語。主演の阿部寛は自身が扮する、大人になりきれない良多を「共感できる」と、語る。

「やっぱりどうしたって、人間は楽しかった時代のことをよく覚えている。不調な時は『昔はよかった』『なんでおれはだめなんだろう』なんて、過去の記憶を引きずりますよね。それが人だろうし、ぼく自身も不遇の時代が多かれ少なかれあったので。

 そういう時は何をしても空回りして、みじめな行動もしていましたよ。振り返ればとても貴重な経験ですが、当時は気持ちの切り替えができなかった」

 めざした未来を掴めなかった人生は、不幸なのだろうか。

「ぼくもかつて描いた“理想の人生”ではなかったですが、違う生き方をしてみて、こだわりを変えてみたら、今にすごく満足している。広い視野で考えれば日本人であることも幸せなことでしょうし、立場はどうであれ、現在自分が立っている居場所で“幸せ”をみつけることが肝心な気がします。そうして足元さえ見えれば、あとはもう先へと進むだけなのでね」

 6月には、52才になる。

「ぼくが幼い頃、実家の上に怖いおじさんが住んでいて、おじさんの持ち物の木に勝手に登っていると『コラァッ!』と、叱られた。50代というと、その怖いおじさんのイメージです。でも、そうやって社会の大人がしつけをするのは大切なこと。自分もああなりたいけど、都会ではなかなかね」

 不遇時代も乗り越え、がむしゃらに走ってきた30~40代。

「30代は必死に走り抜け、40代は結果を出そうともがいた。ようやく少しだけ気持ちの余裕ができた50代は、人生でいちばん勉強する時代になるような予感がしています。まだまだギラギラしながら、60~70代で芝居を、そして人生を円熟させるための努力をしたい」

 21日の公開を控えて、11日に開幕した第回カンヌ映画祭では、独自の視点の作品を集めた「ある視点」部門に選出された。

「いつかカンヌ国際映画祭で上映される作品に出演できたら――と願った、ぼく自身の夢が叶った」

 と、喜びをにじませた阿部。「なりたかった自分」へのこだわりを捨てたことで、いつしか「なりたい自分」への道を歩んでいた。

【映画情報】『海よりもまだ深く』
5月21日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー

【プロフィール】
あべ・ひろし
1964年6月22日、神奈川県出身。モデルを経て、1987年に映画デビュー。是枝裕和監督作品には2008年の『歩いても 歩いても』を皮切りに4作目の参加。昨年はドラマ『下町ロケット』(TBS)が2015年民放連ドラ最高視聴率を記録し、大ヒット。待機作に『疾風ロンド』(11月26日公開)、『恋妻家宮本』(2017年公開)がある。

※女性セブン2016年5月26日号

[NEWSポストセブン]

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Posted by nob : 2016年05月25日 11:10