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神経ガスとトマホーク、そもそも攻めても攻められてもそこで人が死ぬのは同じ、大国や時の権力者の思惑に翻弄され抑圧され犠牲になるのはいつも戦争など決して望まない一般国民。。。
■米国のシリア攻撃、一番得をするのは中国だ
北野幸伯:国際関係アナリスト
米軍は4月7日、シリアのシャイラト空軍基地をミサイル攻撃した。理由は、アサド軍が4日、イドリブ県ハンシャイフンを空爆した際、化学兵器を使用したとされること。唐突に感じる米軍のミサイル攻撃だが、これで世界はどう変わるのだろうか?(国際関係アナリスト・北野幸伯)
過去6年にわたって
内戦が続いてきたシリア
少し詳細に、何が起こったのかを見てみよう。シリアでは、2011年から内戦が続いている。「アサド派」と「反アサド派」の戦いだ。ロシアとイランはアサドを支援し、米国、欧州、サウジアラビア、トルコなどは、反アサド派を支援している。
13年8月、オバマは、「アサド軍が化学兵器を使った」ことを理由に、シリア攻撃を実行しようとした。しかし、翌9月、戦争をドタキャンして世界を仰天させた。
その後、反アサド派から分かれた「イスラム国」(IS)が勢力を拡大。14年8月、米国と有志連合はISへの空爆を開始した。さらに15年9月、有志連合とは別に、ロシアがIS空爆をはじめた。
つまり現在、シリアには、ロシア、イランが支援するアサド派、欧米、サウジ、トルコなどが支援する反アサド派、そしてIS、大きく分けて3つの勢力が存在している。
米国とロシアは、シリア問題での協力関係を深め、16年2月には、「停戦合意」がなされた。しかし、この合意は破棄され、現在は、ロシア、イラン、トルコがアサド派、反アサド派の仲介をしながら、停戦に向けた努力が続けられている(米国は、事実上このプロセスに関わっていない)。
アサド軍は4月4日、シリア北西部イドリブ県の反体制派支配地域を空爆。86人が死亡した。この時、化学兵器サリンが使われた疑惑が浮上している。
トランプ大統領は、「文明世界は、この事件を看過できない」とアサドを批判。英国のジョンソン外相は、「わたしが目にした全ての証拠は、アサド政権が自国民に対し違法な兵器を使用したことを示唆している」と語り、アサドの仕業と断定した。国連のグテレス事務総長は、「シリアで戦争犯罪が続いている」と化学兵器使用を非難。フランシスコ・ローマ法王は、「受け入れられない虐殺だ」と嘆いた。
鵜呑みにするのは危険
米国もウソをつくことはある
非常に苦しい立場に立たされたアサドだが、彼自身は化学兵器の使用を否定している。では、アサドを支持するロシアの主張は、どうだろうか?時事通信4月5日付を見てみよう。
<ロシア国防省はシリア軍が「テロリストの倉庫」を標的に空爆を実施し、倉庫に毒性物質が含まれていたと主張している。報道官は国連安保理の緊急会合で「われわれの国防省の資料を示す」と語った。>
つまり、アサド軍が空爆をしたのは事実だが、化学兵器は使っていない。反アサド派の倉庫に化学兵器があり、それが漏れたのだと。
このような2つの矛盾する情報に接すると、日本人はほとんど無条件に、「米国は本当のことを語っている」「プーチンとアサドは、ウソをついている」と信じがちだ。
しかし、実をいうと、米国もウソをつくことはある。
例をあげてみよう。米国は03年、フセインが「アルカイダを支援している」「大量破壊兵器を保有している」ことを根拠に、イラク戦争を開始した。しかし、この2つの理由が「大ウソ」だったことは、米国自身が認めている。読売新聞06年9月9日付には、以下のようにある(太線筆者、以下同じ)。
<米上院報告書、イラク開戦前の機密情報を全面否定
[ワシントン=貞広貴志]米上院情報特別委員会は八日、イラク戦争の開戦前に米政府が持っていたフセイン政権の大量破壊兵器計画や、国際テロ組織アル・カーイダとの関係についての情報を検証した報告書を発表した。>
<報告書は『フセイン政権が(アル・カーイダ指導者)ウサマ・ビンラーディンと関係を築こうとした証拠はない』と断定、大量破壊兵器計画についても、少なくとも一九九六年以降、存在しなかったと結論付けた。>
もう1つ例を。既述のように、オバマは13年8月、アサド軍が「化学兵器を使った」ことを理由に、「シリアを攻撃する」と宣言した。今回と同じパターンだ。ところが、国連調査委員会は、「化学兵器を使ったのは、アサド軍ではなく、反アサド軍」と報告していた。
<シリア反体制派がサリン使用か、国連調査官
AFP=時事5月5日(月)配信
[AFP=時事]シリア問題に関する国連(UN)調査委員会のカーラ・デルポンテ調査官は5日夜、シリアの反体制派が致死性の神経ガス「サリン」を使った可能性があると述べた。
スイスのラジオ番組のインタビューでデルポンテ氏は、「われわれが収集した証言によると、反体制派が化学兵器を、サリンガスを使用した」とし、「新たな目撃証言を通じて調査をさらに掘り下げ、検証し、確証をえる必要があるが、これまでに確立されたところによれば、サリンガスを使っているのは反体制派だ」と述べた。>
国際機関の調査を待たずに
トランプは空爆に踏み切った
もちろんこの報告書は、「アサド軍が化学兵器を使っていない証拠」にはならない。しかし、アサド派も反アサド派も化学兵器を使っているとすれば、米国は、なぜアサド派を責め、(同じく化学兵器を使う)反アサド派の支援を続けるのか?米国の論理は、非常に矛盾している。
筆者も、「米国は常にウソをつく」とか「アサドやロシアは正直だ」と主張するつもりは、全くない。ただ、米国は、過去にイラクやシリアの件で、はっきりとウソをついたのだから、「即座に米国の主張を妄信するのは危険」と言いたいのだ。
では、どうすればいいのか?常識的に考えれば、化学兵器禁止機関(OPCW)の調査結果を待つべきだろう。実際、OPCWは、すでに調査を開始している。
<シリア化学兵器疑惑、調査を開始 OPCW
朝日新聞デジタル 4/7(金) 18:03配信
シリアの反体制派が拠点とする北西部イドリブ県で化学兵器が使用されたとされる問題で、オランダ・ハーグの化学兵器禁止機関(OPCW)は6日、調査に着手したと発表した。すでに情報の収集や分析を開始。シリア当局とも連絡をとり、情報提供を求めているという。>
しかしトランプは、調査結果を待たず攻撃することを選択した。トランプは4月7日、シリア攻撃に関する演説を行った。曰く、
<火曜日(4日)、シリアのアサド大統領は恐ろしい神経ガスを使って、罪のない市民に恐ろしい化学兵器を発射した。>
<シリアが禁止された化学兵器を使用し、化学兵器禁止条約に違反し、国連安全保障理事会の説得を無視したことは疑いの余地がない。>
トランプはOPCWの調査結果を待たず、アサドの仕業と断定した。
<かわいい赤ん坊までもが、この非常に野蛮な攻撃によって無情にも殺害された。どんな神の子も、このような恐怖に苦しんではならない。>
キリスト教徒が大部分の米国民は、この部分を聞いて同意したことだろう。そしてトランプは、「シリア攻撃」を指令したことを明かした。
<今夜、化学兵器による攻撃をしたシリアの航空施設に標的を定めた軍事攻撃を命じた。>
<多くの困難を抱える世界の挑戦に直面する我々に、神の英知を求める。負傷者や、亡くなった人々の魂のために祈る。米国が正義と平和、調和の側に立つ限り、最終的に勝利を得ることを望んでいる。米国と世界全体に神のご加護を。>
米国が、正義と平和、調和の側に立つというのは、大いに疑問のあるところだが、大部分の米国民は、トランプを支持するだろう。
こうして、米軍によるシリア攻撃が実施された。巡行ミサイル「トマホーク」59発が、シャイラト空軍基地に向けて発射された。この基地は、アサド派が化学兵器を使った空爆を実施したとされる戦闘機の拠点である。
米軍のシリア攻撃で
世界はどう変わるか?
次に、米軍のシリア攻撃で何が変わるかを見てみよう。
1.シリア情勢は、あまり変わらない
「米国が決意したのだから、アサドは終わりだ」と考える人も多いだろう。 しかし現時点では、米国がアフガン、イラク戦争並みの兵力をシリアに投入してアサドを倒すという話にはなっていない。
シリア内戦は、始まってからすでに6年が経っている。そして、今後もダラダラと続いて行く可能性が高い。哀れなのは、犠牲者になるシリア国民だ。
2.トランプ人気は上がる
一方、トランプの人気は上がる可能性が高い。前述した、13年のオバマのシリア戦争ドタキャンは、「オバマ最大の失態」とされ、彼は「史上最弱の大統領」と呼ばれることになった。トランプは、オバマの失敗を繰り返さないために、シリア攻撃を即決したのだろう。
これまでトランプは、政権基盤が非常に脆弱だった。民主党は全部敵。共和党の「反ロシア派」も敵。ことあるごとに「フェイクニュース」と批判するので、マスコミも概して敵。特に、CNN、ABC、ニューヨーク・タイムズなどは、はっきりと反トランプである。
しかし、「シリア攻撃」でトランプは救われるかもしれない。「化学兵器を使った」という衝撃的な事件ゆえ、マスコミもトランプを強く批判できないだろう。
とはいえ、リスクもある。OPCWの調査で、「化学兵器を使ったのはアサド軍ではなかった」との結果が出れば、今度は逆に厳しい批判にさらされることになる。支持率は、一転急降下することになるだろう。
3.米ロ関係は悪化する
アサドを支援し続けるロシア。アサドを攻撃する米国。当然、米ロ関係は悪化する。
プーチンは7日、米軍のシリア攻撃について、「主権国家に対する侵略だ!」と強く非難した。大統領選挙戦中、トランプは「プーチン愛」を語り続けてきたが、就任後わずかな期間で米ロ関係はボロボロになってきている。
早くも米ロ関係はボロボロ
漁夫の利を得る中国
4.一番得をするのは、また中国
元「世界の警察官」米国は、世界3つの地域で問題を抱えている。
中東では、イラン、シリア問題。
欧州では、ウクライナ、ロシア問題。
アジアでは、中国、北朝鮮問題。
オバマは、シリア、ウクライナ問題に深入りし、中国を放置した。彼が、シリア、ウクライナで、ロシアと「代理戦争」を戦っている間、中国は着々と南シナ海を埋め立て、軍事拠点化していたのだ。
オバマは、15年3月のAIIB事件でようやく目覚め、中国へのバッシングを強めた。そして、彼はロシアと和解し、ウクライナ、イラン、シリア問題解決への道筋を作った。
「ロシア好き、中国嫌い」のトランプ大統領が誕生し、「ようやく米国が中国の暴走を止めてくれる」との期待が高まった。しかし、蓋を開けてみればトランプは、15年以前のオバマと同じ過ちを繰り返している。すなわち、シリア問題でロシアと激しく対立しているのだ。
米軍がシリア軍基地を攻撃したその日、トランプは習近平と会談している。「シリア攻撃」の命令を出し、夕食中にそのことを習近平に伝えた。習はトランプの説明に謝意を示し、攻撃に理解を示したという。
このタイミングでシリアを攻撃したのは偶然ではないだろう。
米国は、「間もなく米本土に届く大陸間弾道ミサイルを完成させる」と宣言している金正恩を放置するだけでなく、支援し続けている中国に憤っている。今回のシリア攻撃は、「もし中国が北を放置するなら、米国はシリア同様、北朝鮮攻撃を開始するぞ!さっさと金正恩をなんとかしろ!」というメッセージだったのではないだろうか。
それにしても、米国のシリア攻撃を「侵略だ!」と強く非難したプーチンと、「理解を示した」習の反応はずいぶん違う。(習の場合は、唐突に切り出され、アドリブで適切な反応ができなかっただけかもしれないが)
ロシアは米国の行動に「敵対的」であり、中国は米国に「融和的」である。シリア攻撃で米ロ関係は悪化するが、米中関係は、これまでと変わらない。
中国の「理想的な戦略」は、「2頭のトラの戦いを、山頂で眺めること」といわれる。つまり、「米国とロシアを戦わせ、中国が漁夫の利を得ること」。中国は、またもや理想的なポジションを確保しつつある。
[DIAMOND online]
Posted by nob : 2017年04月12日 08:31