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リスクを分散する以外に確実な手法はない。。。
■日本人の多くが考えていない有事の資産防衛
北朝鮮危機で起こる最悪事態を想定してみる
岩崎博充
経済ジャーナリスト
挑発するアメリカ、一歩も引かない北朝鮮
今年のゴールデンウイークほど、さまざまなリスクを抱えながらの大型連休は過去、記憶にない。その背景にあるのが、米国民が選んでしまったドナルド・トランプ大統領だろう。就任100日が経過するというのに成果といえばTPP(環太平洋経済連携協定)からの脱退ぐらいで、打ち出す政策がすべて世界を混乱に陥れている。国家運営と企業経営をいまだに混同し、裁判官よりも選挙で選ばれた自分が偉いと本気で思っている……。大統領でありながら三権分立を理解できていない。
そんな大統領がいきなり始めたのが「北朝鮮」に対する容赦ないプレッシャーだ。オバマ政権が採り続けてきた「戦略的忍耐」を具体的な根拠も示さずに破棄し、本来なら表面化しないはずの「地政学リスク」を顕在化させた。空母カール・ビンソンを2時間で攻撃できる位置にまで近づけて、すべての選択肢は机上にあると脅す……。
しかも、脅す相手があの金正恩だ。側近や肉親さえも、躊躇なく抹殺する残忍さを持つ北朝鮮のドンは、予測不能、計算不可の人物だ。もともと金正恩は、金日成、金正日も成し遂げられなかった「祖国統一」を実現させたいと思い続けている。そのためには、手段を選ばないことが当然だと思っている。
第2次世界大戦の悲劇も、わずか数人の政治家の狂気がもたらしたものだ。北朝鮮から日本にいつミサイルが飛んでくるのかわからない、と言われる状況の中で、安倍晋三首相は「北朝鮮のミサイルにはサリン搭載能力がある」と国民を脅したが、その対応策はといえば、自治体レベルで「地面に伏せろ」とか「窓のない部屋で待機」といった能天気な警告しかない。
北朝鮮からミサイルが飛んで来ればどんなことになるのか。韓国を中心に少なくとも400万人が死傷する、とも予測されているが、現実はそんなものではないかもしれない。ミサイルが飛んできても、生き延びられるサバイバル術を身に付けておくしか方法はない。
日本のメディアの大半は、記者クラブで配布された資料程度の方法しか報道しないが、実際の有事の際にはどうすればいいのか。21世紀になってから最大の地政学リスクに直面するいま、有事の際の身の振り方を考えてみるのもいいかもしれない。
「有事」に強い資産とは「現金」それとも「金」?
たとえば、有事の際には大きく分けて「戦争中」と「戦争後」に分けて考える必要がある。そもそも戦争中は通常使えたものが利用できるのか、という疑問がある。たとえば、考えたくもないがもし首都圏などが戦渦にまみえれば、銀行のATMやクレジットカードといった専用回線を使うものは利用できなくなる可能性もある。バックアップ体制はあると言われるが、通信インフラが壊滅状態になることも想定しておかなくてはならない。そういう意味では、次のような最悪の事態を想定しておく必要があるだろう。
●現金しか使えなくなる可能性がある?
●金融機関が閉鎖して現金が引き出せなくなる?
●あらゆるATMが使えなくなるリスクがある?
●クレジットカード、デビットカード、電子マネーが使えなくなる?
どんなに多額の現金が銀行にあったとしても、銀行から引き出せなければ何の意味もない。銀行の決済システムに影響が出ればあらゆる取り引きがストップし、金融不安が拡大する可能性も出て来る。
また、戦争には「預金封鎖」といった金融機関の「モラトリアム(支払い猶予)」がつきものだが、日本が戦争に巻き込まれればそういった事態も覚悟しなければならない。
2016年11月にインドで起きた高額紙幣廃止、預金封鎖のケースでは、預金封鎖解除後も銀行のATMから現金が引き出せるようになるには相当の日数がかかったと言われる。銀行が閉鎖されていれば送金などもできない。専用回線で結ばれているはずの銀行も、通信網がダメージを受ければ弱い。高度に発展した情報化社会も、戦争には弱いはずだ。
というのも、東日本大震災のような自然災害の時は、被災地以外のスタッフがバックアップに奔走してくれるが、戦争の場合どうなるのか不透明だ。実際にそういう事態になってから考える、という方法しかないのだが、事前に準備できることはしておいたほうが良いだろう。
ちなみに、クレジットカードもかつてはカード自体が認証ツールになっていたのだが、現在では専用回線による認証を行っているために使えなくなる可能性もある。そもそも戦争中に現金以外の小切手やカード類が使えるのか。ネットが利用できても、物流が遮断されては意味がない。ビットコインなどもどんな値動きになるのか、まだ誰も知らない。
やはり戦争中は「現金」がいちばんということになるのか……。
あるいは、紙幣すら信用がなくなって、最終的には貴金属になる可能性もある。そう考えると、現金だけではちょっと不安かもしれない。
内戦状態のシリアのケースを見てもわかるように、戦争は市民生活に壊滅的なダメージを与える。日常生活に不可欠なものが役に立たなくなる可能性があることを覚悟すべきだ。
ちなみに、金融庁はこの4月に発表した「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の中で「自然災害」や「テロ・戦争」への危機管理マニュアルを策定するように明記しているが、どの程度まで各金融機関が対応しているのか、はっきりした内容はわからない。
たとえば、りそなホールディングスは自然災害などの非常時に際して「東西相互バックアップ」体制を整備しており、グループ各社の本社、システムセンターを首都圏と近畿圏に分散設置している。金融機関の中には、首都圏だけに分散しているケースもあり、気になる人は確認しておくといいかもしれない。
戦争後の「預金封鎖」や「超インフレ」に警戒?
一方、メディアなどで盛んに報道されているのが、戦争への備えというのではなく「戦後への備え」だ。自分の資産をどう守ればいいのか。北朝鮮と米韓との戦いを考えたときに、敗戦は考えられないが無傷での勝利はありえないだろう。日本も無傷では済まないはずだ。
戦後の混乱による物価上昇、社会保障制度の停止や停滞、防衛費の増大による財政逼迫などなど、あらゆる影響が出て来る。その結果、有事の際の資産防衛法としては、インフレによる資産の目減りを恐れて「米ドル投資」や「金の現物購入」を進める方法が指摘されている。
実際に、戦争状態に突入した時に、米ドルは買われるだろうが、同時に円も買われるケースを考えるべきだ。いったんは円安になるが、東日本大震災のように世界中に投資されていた日本のマネーが還流されるのではないか、という思惑から円が買われて円高になった。
金価格は徐々に値を上げているが、円高になれば日本国内での価格は下落する。金も一本調子で上がるとは考えにくい。
そもそも、金はなぜ有事に強いのか。持ち運びに便利なために、宝石類や金、プラチナなど貴金属全般が有事=戦争には強いと思われがちだ。難民となって逃げ惑う場合、不安定な紙幣よりも機能的に便利だという考えがあった。
しかし、現在この「有事の金買い」が通用するかといえば、近年の戦争や紛争時の金価格の推移を見ると、大して関連性がないことがわかる。その背景には、米国の軍事力が強大になりすぎたこと、そして被害が大きすぎて使えなくなった大量破壊兵器などの浸透によって、簡単に勝敗がわかる戦争ごときでは金価格は動かなくなった、と言って良いかもしれない。
実際に、米国同時多発テロ事件や米軍がイラク侵攻したイラク戦争では、瞬間的に金は買われたものの、金を手放す投資家も大量に現れて、有事=金価格の高騰、という図式は真実味がなくなってきている。
むしろ、金価格が大きく動いたのは2008年のリーマンショック時だった。100年に1度の恐慌といわれたリーマンショックでは、金価格まで下落。その後になって、米ドル下落、金価格高騰となった。
金価格には国際価格と国内価格がある。ドル安円高になると金の国内価格は下落するのだが、リーマンショック時には国際価格を追いかける形で国内価格も上昇してきた。
簡単に言うと、戦争のような有事では金価格は動かないが、金融危機に対しては効果的と考えていいのかもしれない。金が有事に強いのは、あくまでも社会インフラがガタガタになって、食料品や武器と交換できるのが現金や金ぐらいしかなくなるような状況の時であり、物流が高度に発達し、機能している社会では資産防衛として役立つかどうかわからない。
そもそも金は、保有しているだけでは1円も利息が付かない。ただし、金は今も昔も一定の価値を持つ「貨幣」であり、紙幣と違って紙くずにはならない。ハイパーインフレのような事態には強い。
国債市場が暴落する事態も頭に入れておくべき
今回の北朝鮮をめぐる地政学リスクで考えたいことは、日本本土に対して攻撃があるかどうかが大きな問題だ。北朝鮮の軍事力は、すでに米国と対等に戦えるほど成長しているという意見もあれば、瞬時に終結するという考えもある。
日本は、第2次大戦で敗戦した時に、物価が500倍に跳ね上がるハイパーインフレを経験しているが、その際には預金封鎖も実施された。
今回の北朝鮮にまつわる地政学リスクから、いきなり預金封鎖というシナリオはありえないだろうが、万一北朝鮮からのミサイルが日本本土を直撃した時には、円や株式、国債市場が暴落する事態も念頭に入れておくべきだろう。
そのためには、やはり5%程度、最大限でも10%程度の資産は「いざという時のための金投資」が必要なのかもしれない。
いずれにしても、実際に戦争が起きたときには、現金にせよ、地金や地金型金貨にせよ、そうそう多額の資金は持ち運びできない。銀行や証券会社に預金や有価証券という形で保管してもらう方法がいちばん安全と言って良いだろう。そういう意味では、タンス預金は向いていない。あくまでも平時の資産管理法だ。
もっとも戦争が終わるまでは、キロ単位の金の延べ板などを持っていても換金してくれる業者や人がいるかどうかが心配だ。地金型金貨なら10分の1オンスから4分の1オンス、2分の1オンス、1オンスといった単位の金貨を持って移動できる。資産を装飾品として身に付けることができるのも金やプラチナの強みだ。
海外の口座へ資産を移しておく方法も
この他、自分の財産を戦争の起きないような安全な地域に移しておきたい、という人もいるだろう。全財産というわけではないが、4分の1とか3分の1 程度の資産であれば、海外の口座に移しておく、という方法もある。最近では、すべて日本語で対応してくれる日系銀行が香港に誕生している。
ただし、海外口座の場合は、世界情勢の変化にも要注目だ。北朝鮮と米韓が全面戦争になった時に中国がどんなスタンスを取るのかで、世界情勢はまたがらりと変わる可能性がある。
戦後のインフレを見越して、不動産投資を考える人がいるかもしれないが、不動産投資はあくまでも投資する地域や国が戦場にならないことが重要だ。第 2次世界大戦終了直後、ホテルや旅館といったインカムゲインが期待できる物件を買い漁って、財産を築いた新興富豪がいたと言われるが、その手がいまも通用するかどうかは不透明だ。
トランプ米大統領は、アメリカファーストというよりも「トランプファースト」と考えればわかりやすい。自分の支持率を上げるためなら、戦争でも何でもする可能性が高い。覚悟だけはしておいたほうが良いのかもしれない。いまこのタイミングで何ができるのか……。簡単にまとめておこう。
1.いつ何があるかわからない状況になった時は現金を多めに手元に置く
2.金やプラチナなど、換金性の高いモノを保管しておく
3.万一の金融機関閉鎖、預金封鎖に備えをしておく
3.株式、債券は市場暴落の可能性を考えてポジションを減らす
4.戦後インフレに警戒して金(モノ)や米ドル(外貨)に分散投資する
5.余裕があれば海外口座を開設しておく
[東洋経済ONLINE]
Posted by nob : 2017年05月10日 09:37