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休煙という禁煙のすすめ、休んでいるだけと思えば止められる。。。ホントに美味しく呑めば、自ずと飲酒量も減らしていける。。。

■飲み続けたいならまず禁煙 がんのリスクたばこが助長

  2020年の東京オリンピックを控え、喫煙問題が改めて注目されている。喫煙が、がんをはじめとした様々な病気の原因になることは広く知られている。一方で、お酒の飲み過ぎが体に悪いことも繰り返し紹介してきた。では、タバコと飲酒の2つが重なるとどうなるのだろうか。がんになる危険性が一層高まるといったことはないのだろうか。酒ジャーナリストの葉石かおりが、日本のがん研究の総本山である国立がん研究センターに取材して話を聞いた。

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■タバコと酒、ダブルになったときのリスクは?

 昔と比べ、今はだいぶ少なくなったものの、左党には喫煙者が案外多い。現に新橋あたりの渋い居酒屋に行くと、タバコの煙で視界が曇るほどである。実際、「お酒を飲むときはタバコも吸わずにはいられない」という左党の読者も少なくないだろう。

 私的なことだが、実父は喫煙が主な原因のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)で他界していることもあって、個人的にはタバコの煙がもくもくの中での飲酒は苦手である。タバコはアルコール同様、嗜好品なので、個々が楽しむ分には問題ないと思っている。しかし以前から問題視されている受動喫煙の被害を考えると、クリーンな空気の中で心おきなく酒をおいしく飲みたいと思う。国でも2020年の東京オリンピックを前に、受動喫煙防止の法整備の議論が交わされている。国レベルでの対策となると、気にせずにはいられない。

 タバコが体に悪影響をもたらし、がんをはじめとした様々な病気の原因になることは、論をまたないところだと思う。また、飲酒も適量以内ならいい影響もあるとはいえ、飲み過ぎが体に悪いことは、これまで記事で幾度となく紹介してきた。では、タバコと飲酒の2つが重なるとどうなるのだろうか。

 実際、私の周囲の左党で、かつ喫煙する人の中には、がんに罹患した人が何人かいる。このため、私はかねがねタバコと飲酒の因果関係を疑っていた。それぞれ単独ではよくないことは分かっているが、ダブルになるとリスクがより高まるのではないだろうか。具体的には、タバコががんの原因になることは周知の事実だが、飲酒によってその危険性がより高まるのではないだろうか。

 そこで今回は、国内におけるがん研究の総本山ともいえる国立がん研究センターで、がんや慢性疾患の疫学研究や大規模コホート研究[特定の集団(コホート)を対象として長期的に経過を追跡する調査手法のこと]を手がけてきた、社会と健康研究センター コホート連携研究部部長の井上真奈美さんに、タバコと飲酒のコンビによるリスクについて話を伺った。

■タバコは百害あって一利なし

 まずは、タバコのがんへの影響を改めて井上さんに確認してみた。

 「タバコにはニトロソアミン、ヒ素、カドミウムといった発がん物質が約70種類含まれています。このため、肺がん、咽頭・喉頭がん、胃がん、食道がんなど、さまざまな部位のがんの発症リスクを確実に高めます」(井上さん)

 国立がん研究センターでは、日本人のがんと生活習慣との因果関係の評価を行っている。国内外の最新の研究結果を基に、全体および個々の部位のがんについてリスク評価を「がんのリスク・予防要因 評価一覧」としてホームページで公開している。最も信頼性が高い評価から順に「確実」→「ほぼ確実」→「可能性あり」→「データ不十分」となっている。

 「タバコとがんの罹患については、全がん、肺がん、肝がん、胃がん、食道がん、膵臓がん、子宮頸がん、頭頸部がん、膀胱がんの発症リスクの信頼性が、最も高い『確実』と評価されています。他の部位のがんについても、乳がんや大腸がんが『可能性あり』となっており、リスクがあると考えられます。そう、タバコは百害あって一利なしなのです」(井上さん)

 百害あって一利なし――。

 ある程度予測できたこととはいえ、ここまでハッキリ断言されると、改めてその怖さがよく分かる。実際、上のがんのリスク評価の表を見ても、信頼性が「確実」である濃い茶色の欄が、圧倒的に多いのが「喫煙」であることがよく分かる。さらに井上さんはこう続ける。

 「世界的には、今は、タバコにはどういった健康への害があるかを研究する段階を脱し、『どうやってタバコのない環境を実現するか?』という『対策』のフェーズにあるといえます。言い換えれば、それほどタバコによる健康被害は甚大で、確実に体に影響があるということです」(井上さん)

 喫煙リスクをはっきり示されると、周囲の愛煙家に禁煙を勧めたくなる。では、ここに飲酒によるリスクが加わると、どうなるのだろうか。

■飲酒とタバコを同時進行させると、がんのリスクが2倍以上に!

 「コホート研究の結果から、飲酒量が多くなると、将来がんになりやすいことが明らかになっています。飲酒量が1日2~3合の男性は、時々飲む人に比べて、がん発生率が1.4倍に、1日3合以上の人は1.6倍になっています。そして、ここに喫煙が加わると、がんに罹患するリスクがさらに高まるのです」(井上さん)

 「ああ、やっぱり……」という声が聞こえてきそう。予想通り、喫煙と飲酒のセットは最悪のリスクなのだ。それはデータにも明確に表れている。

 「喫煙習慣別に飲酒とがんの発生率のデータを見てみると、非喫煙者と喫煙者とでは大きな差があります。『時々飲む』人を1としたときの相対リスクは、適量といわれる『1日1合未満』では非喫煙者が0.87であるのに対し、喫煙者は1.69と、この段階でも倍近い差が出ています。1日3合以上の多量飲酒の場合、非喫煙者は1.02に対し、喫煙者では2.32と倍以上のリスクがあります。非喫煙者は、飲酒量が増えてもがんの発生率はそう高くならないのに対し、喫煙がプラスされると確実に高くなっていきます。つまり飲酒によるがんのリスクは、喫煙によって助長されるのです」(井上さん)

 バブル時代のトレンディードラマ(既に死語?)では、主人公が酒を飲みながらタバコをふかすシーンが当たり前だったが、それはもはや過去のこと。飲酒と喫煙のセットは超危険なのだ。

■セットにすると、なぜがんのリスクが上がるのか?

 では、喫煙と飲酒をセットにした際、がんの発生率が上がる原因は何なのだろうか?

 「詳しいメカニズムは分かっていませんが、現時点で示唆されているのが、アルコールの慢性摂取によって酵素誘導[酵素の合成が誘導され、酵素量が増加すること]される薬物代謝酵素CYP(チトクロームP450)の影響です。アルコールを飲むと、特にCYP2E1の酵素誘導が進みます。CYPは、ニトロソアミンをはじめとする、タバコ中のがん原物質を活性化する作用があると考えられています」(井上さん)

 また、アルコールが体内で代謝される際に生じるアセトアルデヒドにも発がん性があることが知られている。酒を飲んで顔が赤くなる、いわゆる酒に弱い人は、アセトアルデヒドの分解能力が弱いため、アセトアルデヒドが残りやすい。つまり、発がん性のあるアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなるわけだ。井上さんは、「このように酒を飲んで赤くなる人は、喫煙とセットにするとがんになる危険性がさらに上がる可能性があります」と話す。

 以前「お酒で赤くなる人、ならない人 がんのリスクも違う」という記事でも紹介したように、日本人は、黒人や白人に比べて、顔が赤くなる人(アセトアルデヒドの分解能力が低い人)の割合が多いので、より気をつけたほうがよさそうだ。しかし、こうなると、もうタバコをやめる以外に対策はないということだろうか……?

 「そうですね、やはりタバコをやめる以外に選択肢はありません。先ほどのデータからも明らかなように、アルコールとタバコのセットは厳禁。酒とタバコのどちらをやめたほうがいいかと言われれば、間違いなくタバコです」(井上さん)

 読者の中にも、酒とタバコを両方とも愛してやまない人は少なからずいると思う。もし、酒を飲み続けたいなら、やはりタバコはやめたほうがよさそうだ。

■受動喫煙による肺がんの発症リスクも「確実」に

 ここで受動喫煙についても触れておきたい。日本の居酒屋や喫茶店では、いまだ喫煙可の店が目立つ。国民健康・栄養調査(2013年)によると、受動喫煙が月に1回以上ある人の割合は家庭で16.4%、飲食店で46.8%、職場で33.1%と、ダントツで飲食店での受動喫煙率が高い。私のように非喫煙者であっても、タバコの煙もくもくの居酒屋で飲んでいたら、どんなリスクがあるのだろうか?

 「受動喫煙による肺がんの発症リスクの信頼性も昨年の8月に『ほぼ確実』から『確実』へと格上げされました。他のがんの発症リスクについてはデータがまだ不十分ではありますが、副流煙のほうが主流煙より有害物質が多いので、安心とは言い切れません。配偶者が喫煙者だと、家族に喫煙者がいない人の1.3倍も肺がんの発症率が上がるという報告もあります」(井上さん)

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 飲酒は「適量(1日1合)を守ろう」という救いの言葉があるが、喫煙の場合、残念ながら卒煙または禁煙以外、手立てがない。現在、日本において男性のがんの30~40%、女性のがんの3~5%がタバコが原因のがんだという。酒を長~く、おいしく飲むためにも、タバコとの付き合い方をちょっと考えてみてはいかがだろうか?

(エッセイスト・酒ジャーナリスト 葉石かおり)

[日経Gooday]

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Posted by nob : 2017年09月09日 11:14