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すべては諸刃の剣、良薬も過ぎれば毒薬に、、、そして個人差、何よりまず自らの身体を知ることから。。。Vol.2
■ビジネスパーソンのコーヒー学 ~コーヒーと健康最前線~
カラダにいいコーヒーの淹れ方とは!?
煎り方によって成分が違う? 飲むベストタイミングは?
柳本操=ライター
みんなが毎日飲んでいる香り高いコーヒーは、カラダにいいことづくめだった!以前は「カラダに悪い」と言われていたコーヒーが、最新の研究により「カラダにいい」ことが続々と明らかになっている。日経グッデイでは、最新の「コーヒーの健康効果」を専門家の方々に直撃して話を聞いた。最終回となる今回は、実践的なコーヒーの「淹れ方」「飲み方」を紹介する。“カラダに効く”飲み方のノウハウを習得して、コーヒーのよさを余すことなく引き出そう。
これまで7回にわたってコーヒーの健康効果について紹介してきた。専門家の方々から話を伺い、糖尿病や痛風などの生活習慣病から、肝臓がん、血液サラサラ、シミ予防の可能性まで驚きのコーヒー効果が明らかになった。カフェインの摂り過ぎに気をつけつつ、成人なら1日3~5杯程度を目安に適量のコーヒーを楽しむことはカラダにいい影響を及ぼす。
最終回となる今回は、これまでインタビューでご登場いただいた専門家の方々直伝の、実践的なコーヒーの飲み方を紹介する。同じ1杯のコーヒーでも、コーヒー豆の煎り方によって成分は違ってくる。また、コーヒーをお湯で抽出する際、フィルターを使うかどうかによっても健康への影響は変わってくる。コーヒーの健康効果を引き出すには「淹れ方」がとても大切だ。さらに、「どのタイミング」で飲むかを意識することで、コーヒーパワーを最大限に取り込むことができる。
「浅煎り」と「深煎り」、カラダにいい成分はどう違う?
まず、コーヒーの“煎り方”による成分の変化から見ていこう。ご存じのように、コーヒーは、生豆を焙煎したものを挽いて、お湯で抽出する。この焙煎には、浅煎りのライト、シナモンなどから、深煎りのフレンチ、イタリアンまでさまざまな煎りの度合いがある。一般に、浅煎りは酸味が強く、深煎りになればなるほど苦味が強くなる。エスプレッソなどに使われるのは深煎りだ。
焙煎の度合いにより熱を加える時間が変わるため、コーヒー豆に含まれる成分も変化する。コーヒーの重要成分の一つであるカフェインは熱を受けてもほとんど変化しないが、コーヒーに含まれるポリフェノール「クロロゲン酸」は熱により変化するという。
深煎りにはクロロゲン酸はほとんど含まれていない
その変化について、第1回でご登場いただいた東京薬科大学名誉教授の岡希太郎さんが説明してくれた。
「コーヒーに含まれるポリフェノールであるクロロゲン酸は生豆に多く含まれています。焙煎して熱を加えることによって、その含有量は低くなります。私が行った実験では、焙煎を開始して最初のパチパチというハゼ音が終わった浅煎りの段階で、クロロゲン酸の含有量は半分程度になりました。クロロゲン酸を摂取するなら浅煎りで飲むのがおすすめです。フレンチロースト(深煎りの焙煎)やエスプレッソなどにはほとんどクロロゲン酸は含まれていません」
一方、焙煎することによって増える成分もあるという。
「生豆に含まれるトリゴネリンという成分は、焙煎する熱によって分解され、抗血栓作用を持つニコチン酸や、副交感神経を刺激してリラックス作用をもたらす NMP(N-メチルピリジニウムイオン)といった物質に変化します。特にNMPは焙煎するほどに含有量が増え、シティロースト(第2ハゼ音の始まりで浅めの深煎り)なら1杯あたり10mg程度。数杯飲めば、薬理学的に意味のある量に達します」
このような結果を踏まえ、岡さんは「浅煎りと深煎り、いずれにもいい成分が含まれています。ですから、過度に意識する必要はありません。可能なら1日の中で深煎りと浅煎りの両方を飲むと理想的ですね」と話す。
自宅で飲むときには、両方の煎り方の豆を用意して、組み合わせて飲むのも一つの方法だ。なお、深煎りと浅煎りの成分を同時に摂取できるように、両方をブレンドしたコーヒー豆も販売されている(愛知県豊橋市の会社ワルツが販売している「カラダ想いブレンド<爽><快>」)。
健康を意識するなら「フィルターで抽出」
自宅でコーヒーを楽しむ際に、健康に配慮するならぜひ気を配りたいのが「抽出する方法」について。フィルターを使うかどうかは実は大きなポイントなのだ。ペーパーフィルターやネルなどでドリップしている、という人は大正解だ。
東京薬科大学名誉教授の岡さんは、「コーヒー豆には、ジテルペン類(カウェオール、カフェストール)という精油成分が含まれていて、コレステロール値や中性脂肪値を高くする働きがあります。水やお湯には溶けませんがコーヒーの油分に溶けて液面に浮かびます。抽出する際にフィルターを使っていれば、この油分がフィルターに引っかかって除去されるので心配する必要はありません。抽出液に粉が混ざっていたり、沸騰させて強く煮出したコーヒーを飲むと高脂血症につながる可能性があります」と話す。
そもそも、1980年代前半まで「コーヒーはカラダに悪い」と思われていたのは、当時、北欧で、「コーヒーは心筋梗塞を引き起こしやすい」という報告があったためだ。北欧では挽いたコーヒー豆を鍋で煮出してして抽出する飲み方が行われており、精油成分を摂取していたのが原因だと考えられている。
日本ではコーヒー豆を鍋で煮出してして飲む習慣はないが、最近は、コーヒーの粉を容器に入れ、プランジャーという金属フィルターを押し下げて抽出する「フレンチプレス」という方式で楽しむ人も増えている。「フレンチプレスでは抽出された精油成分が十分に除去されません。蒸気で勢いよく抽出するエスプレッソにも精油成分は含まれるので、飲む頻度は控えめにしたほうがいい」と岡さん。
その点、ペーパーネルでドリップすれば安心してコーヒーを飲むことができる。コーヒーのさまざまな有効成分を余すことなく抽出するには、「蒸らし時間を長くとりながら、ゆっくり抽出するのがコツ」と岡さんはアドバイスする。
「カラダが弱っているときは、いつもより湯量を増やして薄めにして飲む」「苦くして飲みたいときは挽いた粉の量を多めにして湯温を熱めにする」など、自分で好みに調節できるのも、ハンドドリップの醍醐味だ。
飲むタイミングを考慮して、効果を最大に!
次に、コーヒーを飲むタイミングを見ていこう。第5回では運動の1時間前にコーヒーを摂取すると脂肪燃焼効果が高まるという話を紹介した。このように、目的に合ったタイミングでコーヒーを飲むと、その効果をより多く享受できる。我々ビジネスパーソンがコーヒーを飲むタイミングで意識するといいのは、以下の4つのタイミングだ。
* ベストタイミングその1:昼寝と組み合わせる
* ベストタイミングその2:運動と組み合わせる
* ベストタイミングその3:食後に飲む
* ベストタイミングその4:飲酒の後に飲む
昼寝前に飲んで、午後の集中力を高める
それでは順に見ていこう。まずは、「ベストタイミングその1 昼寝との組み合わせ」だ。
「朝食時にコーヒーを飲んでいる人は多いと思います。カフェインの覚醒作用で、寝起きの頭がスッキリします。この覚醒作用を朝だけしか使わないのはもったいないですね。“昼寝の前”に飲むことで、その後の集中力をぐっと高めることができます」とアドバイスするのは、ネスレ日本の福島洋一さん。
広島大学大学院総合科学研究科行動科学講座の林光緒教授らの研究では、10人の大学生が「昼寝なし」「昼寝あり」「昼寝+目覚めた直後に洗顔する」「昼寝+目覚めた直後に明るい光を浴びる」「コーヒーを飲んでから昼寝する」という5つの条件で実験が行われた。その結果、洗顔や光を浴びるなど、いかにも覚醒効果が高そうな方法よりも、「昼寝前にコーヒーを摂取」したときがもっとも昼寝後の眠気が抑えられ、作業ミスも減少することがわかったという。
また、イギリスの研究でも、ドライバーの眠気対策として、「コーヒーを飲んで15分までの昼寝をすると、コーヒーを飲まなかった場合よりも眠気が低減された」という報告がされている(Psychophysiol,33(3),306-9,1996)。
「コーヒーに含まれるカフェインが脳に届くまでには20~30分かかるといわれます。眠気を感じたときにコーヒーを飲んでも、すぐには覚醒効果は表れません。そこで、昼寝前にコーヒーを飲み、すぐさま短時間眠るのです。すると、起きるころにカフェインが効きはじめるので、しゃきっと起きられるのです。このコーヒーの活用法は、 “コーヒーナップ”(ナップとは昼寝の意味)」として世界的な話題になっています」と福島さん。
運動の1時間前に飲んでダイエット効果を高める
次に、押さえておきたいタイミングは「運動前」だ。第5回で紹介したように、コーヒーは、クロロゲン酸とカフェインという2つの脂肪燃焼効果がある成分を含んでいる。運動習慣がある人や、今日は出先でたくさん歩くぞ、というようなときにはぜひ、運動前にコーヒーを1杯飲んでおこう。
「運動する1時間前ぐらいにコーヒーを飲んでおくと、運動することによって脂肪が燃焼し始めるころに、カフェインも血中でピークになり、脂肪燃焼効果を高められます」と、日本ポリフェノール学会の理事長で、品川イーストワンメディカルクリニック理事長の板倉弘重医師は話す。
コーヒーの抗酸化物質であるクロロゲン酸は、肝臓での脂質の代謝を活発にし、脂肪燃焼によるエネルギー消費を増加させる。カフェインも、脂肪細胞にあるリパーゼという酵素を活性化することによって脂肪をエネルギーとして活用しやすくする。
食事と合わせて血液サラサラ
コーヒーを食事と組み合わせるのも有効だ。東京薬科大学名誉教授の岡さんは、「食事と一緒にコーヒー」をおすすめしている。
「コーヒーには血液サラサラ効果があります。クロロゲン酸などのコーヒーポリフェノールは体内に入ると肝臓で代謝され、フェルラ酸という成分などに変わります。これが血管内で血小板が固まるのを阻止し、血液をサラサラにする作用があると考えられています」
飲酒の後もコーヒーを飲むといい。国立健康・栄養研究所所長の古野純典さんがおすすめするのが、「お酒の後はラーメンで〆ずに、コーヒーで〆る」方法だ。
「コーヒーには肝機能を保護する効果があります。その効果は飲酒量が多い人ほど高くなります。そこで、お酒の後はラーメンで〆ずに、カフェイン抜きのデカフェのコーヒーで〆てはどうでしょうか。また、翌朝、コーヒーを飲めばアルコールの代謝で疲れた肝臓を元気づけることができますよ」
飲酒時はカフェインに注意、クスリはコーヒーで飲まない
覚えておきたいのは、飲酒時のカフェインの摂取には注意が必要だということ。ネスレ日本の福島さんは、「アルコールと同時にカフェインを摂取すると、カフェインの覚醒作用により酔っている実感を得にくくなります。つまり、酔っているのにそれが自覚できず、ハイペースでアルコールを摂取しかねないので、飲み過ぎに注意しましょう」とアドバイスしてくれた。
また、薬とコーヒーの同時摂取についても注意が必要なことも覚えておきたい。コーヒーのカフェインは肝臓で代謝されるが、同じく肝臓で代謝される薬の成分の効果を邪魔する可能性があるからだ。またカフェインが入った薬もいろいろとある。コーヒーをたくさん飲んでいる人は、いつも通りコーヒーを飲んでよいか、処方してくれる医師や薬剤師に確認したほうがよいだろう。
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2016年1月から8回に渡ってお届けしてきたコーヒー特集も、今回でひとまず終了します。1日3~5杯という適量を意識しながら、コーヒーを楽しんでいただければ幸いです。なお、コーヒーの健康効果はまだまだあります。日経グッデイでは今後も引き続きコーヒーを取り上げていきます。ご期待ください!
[日経Gooday]
Posted by nob : 2017年10月02日 15:13