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■ソ連崩壊から15年 募る郷愁 欧米と溝

 ■「残念だが復活無理」7割

 【モスクワ=内藤泰朗】70年以上続いたソ連が名実ともに解体してから8日でちょうど丸15年を迎えた。ロシア、ウクライナ、ベラルーシの各共和国首脳が、ソ連解体と独立国家共同体(CIS)の創設を決めた合意文書に調印したのが、1991年12月のこの日だった。

 同文書に署名したのは当時、ロシア共和国のエリツィン大統領、ウクライナのクラフチュク最高会議議長、ベラルーシのシュシケビッチ最高会議議長ら6氏。エリツィン氏らは、ベラルーシ西部、ミンスク郊外の「ベロベーシの森」に集い、同合意文書に調印し、ソ連崩壊を内外に宣言した。

 一方、全ロシア世論研究センターが今年11月下旬に行った調査結果によると、ソ連崩壊を残念だと思っている人はロシアで68%、ウクライナで59%、ベラルーシで52%にのぼった。

 しかし、ソ連の復活は可能かとの質問に対しては、ベラルーシでは76%、ウクライナで71%、ロシアでも68%が不可能だと答えた。「ソ連邦」は確実に過去のものとなったようだ。

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 【モスクワ=内藤泰朗】ソ連崩壊から15年が経ったロシアでは依然、超大国・ソ連への郷愁が強いことが、世論調査結果でも明らかになったが、エネルギー高騰に支えられた高い経済成長を背景に強権的姿勢を打ち出すプーチン政権に反発する欧米諸国との隔たりは広がるばかりだ。ソ連崩壊で芽生えたロシア流民主主義は行き詰まっているにもかかわらず、プーチン政権は強国を待望する国内世論をバックに、国家資本主義を中心とする大国建設へと、さらに進むものとみられる。

 ロシアの有力日刊紙ベドモスチは、世論の7割近くがソ連崩壊を悲劇と受け止めている主な原因として、苦しい生活や明日への不安が渦巻く中で、格差が少なく曲がりなりにも安定していた時代に郷愁を覚えていると説明。「一党独裁や異常な物資の不足など負の側面は忘れられている」と説明する。

 15年前に、ロシアとともにソ連崩壊の合意文書に署名したウクライナのクラフチュク元最高会議議長(のち大統領)はこれに関して、「核超大国のソ連は当時、内戦の危機に瀕していた。そのまま、放置してソ連が崩壊したら、数百万もの犠牲者を出しただろう」と述べ、ソ連を解体に導いたことは誤りではなかったとの姿勢を示した。

 しかし、プーチン大統領は、「偉大な国家、ソ連の崩壊は、20世紀最大の悲劇である」との評価を下す。来年末には下院選挙、再来年春には大統領選挙を控えるロシアでは、「政権が統制するメディアが過去の栄光を称え、その世論を政治的に利用しようとしている」(ベドモスチ紙)。

 ロシア国民共有の富であるエネルギーをソ連時代のように国家が統制・管理し、国家主導の国営企業が独占するのは当然というわけだ。

 一方で、人権違反や民主主義後退を批判する欧米諸国とは一線を画し、言論や集会の自由を制限するのも、「偉大な超大国・ソ連をさらに近代化させた大国を復活させるという目標のためにはいたしかたいない」との発想になってくる。

 ただ、ロシアでは、外国人殺害事件が多発し、外国の非政府組織(NGO)追放などにもみられるように「ロシアの敵」を力で排除しようという排他的な民族主義の高まりや、保安・警察権力の強化が進む。

 「ロシアは、ソ連ではなく、ロシア民族主義を旗印にした全体主義色の濃い国に向かい始めた」とみる専門家も出始めた。

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【用語解説】独立国家共同体(CIS)

 旧ソ連を構成した15共和国のうちバルト3国を除く12カ国が参加する地域組織。1991年12月、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ3共和国の首脳が年末でのソ連消滅とCIS創設を盛った協定に調印した。年2回以上の首脳会議が最高意思決定機関で6カ国がCIS集団安全保障条約に加盟する。経済統合などをめざす動きがある一方、域内の多様化が進み、地域組織としての機能不全や形骸化も指摘されている。

〔産経新聞〕

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Posted by nob : 2006年12月09日 13:58