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■東電原発不正、信頼の根幹揺らぐ 総点検でも見過ごす
故障隠しから放射能データの改ざんまで——。今回明るみに出た東京電力の不正は、原発を受け入れている地域住民が、電力会社に寄せる信頼を完全に裏切るものだった。昨秋以降、発覚が続くデータ改ざんは全国の電力会社に及んでおり、プルサーマル計画への影響も避けられそうにない。信頼回復に向けた業界の取り組みは、また振り出しに戻ってしまうのか。
「この4年間の努力が十分でなかったと言わざるを得ない。企業風土、組織体質の問題ととらえていく」。東京電力の築舘勝利副社長は31日、記者会見でこう陳謝した。放射線モニターや非常用炉心冷却装置は、いずれも原発の安全性や地域の安心を確保する上で欠かせない重要設備の一つ。国の検査をごまかしたり、外部への放射能の放出を示す観測データを勝手に書き換えたりしていたことは、原子力を扱う電力会社の信頼性の根幹に触れる問題だ。
これまでの改ざんについて、「詳しい説明をするのには労力がかかる」「検査をし直すと時間がかかる」などを理由にしていた。今回の原因調査はこれからだが、築舘副社長は「原発への社会的な関心から、現場に圧迫感や負担感があったようだ」と肩を落とした。
02年夏以降、同社の原発の重要機器でトラブル隠しが相次ぎ、国の指示で全社的な総点検を行った。報道陣からは「なぜ当時分からなかったのか」との質問が相次いだが、十分な回答はなく、築舘副社長は「これまで出ていなかった不正が出てきたことは、風土改革が前進していると受け止めたい」と話した。
データ改ざんは、ほかの電力会社でも相次いで発覚している。経済産業省原子力安全・保安院の幹部は「4年たって東電不祥事が風化しつつある。もう一度、うみを出し切るチャンスだと思って真剣に調査してほしい」と話す。
国は、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、燃料として使うプルサーマルを推進する考えだ。東電も柏崎刈羽原発と福島第一原発で実施を目指しているが、トラブル隠しの発覚後、一向に進展していない。
東電の原子力・立地本部の皷紀男副本部長らから報告を受けた新潟県の鶴巻嗣雄危機管理監は、故障中のまま原子炉を起動させたことについて、「法定検査に受かるための大変悪質な事例と言わざるを得ない。言語道断」と強く非難した。
泉田裕彦知事は記者団に「今回の報告は地域住民に信頼される会社作りを目指す一環と受け止めたい」とした上で、「うみを出し切り、組織運営までさかのぼって対応を考えてほしい」と語る。プルサーマルの実施に向け、新たな障害になることは、間違いなさそうだ。
〔朝日新聞〕
Posted by nob : 2007年02月01日 23:18