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■地球温暖化:IPCC第1作業部会の報告書(要旨)

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第1作業部会が採択した政策決定者向けの報告書要旨は次の通り。

 ◆はじめに

 (省略)

 ◆気候変動の人為的要因と自然要因

 <温室効果ガス>

 現在の二酸化炭素とメタンの大気中濃度は、65万年に及ぶ氷床コアの分析から算出された産業革命前の値をはるかに上回っている。1750年以降のこれら温室効果ガスの増加は化石燃料の使用、農業、土地利用の変化が主因になっている。

 1750年以降の人間活動が温暖化をもたらしているとの可能性はかなり高い。

 二酸化炭素は最も重要な人為起源の温室効果ガスで、大気中の濃度は産業革命前の約280ppm(ppmは100万分の1)から2005年には379ppmに増加した。化石燃料からの排出量は1990年代の年平均64億トンから2000〜05年には年平均72億トンに増加した。

 メタン濃度は産業革命前の約715ppb(ppbは10億分の1)から2005年には1774ppbに上昇した。増加率は90年代初め以降低下している。

 亜酸化窒素濃度は産業革命前の約270ppbから2005年には319ppbに上昇した。上昇率は1980年以降、ほぼ横ばいで、全排出量の3分の1以上は農業を中心とした人間活動に由来する。

 ◆気候変動の観測結果

 大気や海洋の平均気温の上昇、雪氷の融解、海水面上昇から、温暖化は明白である。

 <気温>

 地球の平均気温は1906〜2005年の100年間で0・74度上昇した。これは、2001年の前回報告書の1901〜2000年の0・6度より大きい。

 最近50年間の10年当たりの温度上昇幅は0・13度で、過去100年のほぼ2倍である。

 ヒートアイランド現象は都市でみられるが、局地的でその影響は無視できる。

 寒い日と霜の降りる日が減少し、暑い日、熱波の頻度が増えた。

 <海水>

 20世紀を通した平均海水面の上昇量は0・17メートルになる。1961〜2003年にかけての年平均上昇は1・8ミリ。1993〜2003年の年平均上昇はこれを上回る3・1ミリだった。

 少なくとも水深3000メートルまで海水温は上昇した。温暖化による熱の大半を海が吸収していることを示している。熱による海水の膨張のために、1961〜2003年にかけ海水面が年平均0・42ミリ上昇し、1993年から2003年にはそれを上回る年平均1・6ミリ上昇したと推定される。

 山岳の氷河と積雪は両半球で平均して減少した。氷河と氷冠の減少は、1961〜2003年で年平均0・50ミリ、1993〜2003年で年平均0・77ミリの海水面の上昇をもたらした。

 グリーンランドと南極大陸の氷床が縮小し、1993〜2003年の海面上昇に大きく寄与している。

 <積雪・海氷>

 北極の平均気温はこの100年で地球の平均の2倍の早さで上昇した。

 1978年以降、北極海の平均海氷面積が10年当たり2・7%縮小した。特に夏季で著しく、10年当たり7・4%。

 北極に広がる永久凍土の温度は、1980年代以降3度上昇した。

 <降水>

 1900〜2005年にかけ、北南米の東部、北欧、アジア北部・中部で降水量の長期変化傾向がみられた。一方、サヘル(サハラ砂漠南縁部)、地中海、南アフリカ、南アジアの一部では乾燥化した。

 1970年代以降、熱帯と亜熱帯で、厳しく長期間の干ばつが起こる地帯が拡大した。

 <熱帯低気圧>

 1970年ごろから強度が増大する傾向がみられる。

 <有意な変化のみられない現象>

 気温の日較差(1日の最高気温と最低気温の差)は1979〜2004年まで変化がない。

 南極海の海氷面積には明らかな年変動はみられない。同様に南極大陸の平均気温の上昇もみられない。

 竜巻、雷、砂じんといった現象に変化があるかどうか十分な証拠はない。

 ◆過去の気候

 20世紀後半の北半球の平均気温は、過去1300年間でも最も高かったとみられる。最近12年(1995〜2006年)のうち96年を除く11年の気温は1850年以降最も温暖な12年の中に入る。

 最後の間氷期(12万5000年前)の平均海水面は20世紀より4〜6メートル高かった可能性が高い。地球軌道にも起因して、当時の極域の平均気温は20世紀より3〜5度高いとみられる。

 ◆気候変動の理解と原因の特定

 人間活動に伴う温室効果ガスの増加によって20世紀半ば以降の地球の平均気温が上昇した確率は90%以上。

 過去50年間に南極を除く大陸で温暖化が起きている可能性が高い。

 二酸化炭素濃度が(産業革命前の)2倍になるならば、地球の平均気温は2〜4・5度高くなる可能性がある。

 少なくとも1950年以前の7世紀間、北半球で起こった気候変動は、火山噴火と太陽活動の変化が原因である可能性がかなり高い。

 ◆将来予測

 <気温>

 21世紀末(2090〜99年)に予測される地球の平均気温の上昇幅は、温室効果ガス排出量により大きな影響を受ける。

 6種類のシナリオによる20世紀末(1980〜99年)と比べた温度上昇は別表の通り(かっこ内は幅)。

 気温上昇幅は陸域と北半球高緯度で最大となり、南極海と北大西洋で最小になる。

 <海洋>

 海水面の上昇幅は別表の通り。

 <積雪・海氷>

 南北両極で海氷の縮小が予測される。

 北極の晩夏の海氷は21世紀後半までにほとんど消失するという予測もある。

 ほとんどの永久凍土地域では、凍る深さが今までよりも浅くなる。

 <降水>

 低気圧の進路は極地方向に移動し、その結果熱帯地方以外の風、降水、気温が高緯度側に移動すると予測される。

 <熱帯低気圧>

 台風やハリケーンの年間発生数は減少するとの予測は信頼性に欠けるが、大型化し、豪雨が増えるとみられる。

 <その他>

 猛暑や熱波、豪雨の頻度は増える可能性がかなり高い。

 二酸化炭素濃度の上昇で海洋の酸性化が進む。現在の海洋のpHは産業革命前と比べて0・1低く、21世紀には0・14〜0・35下がる(酸性度が高まる)。

 大西洋の深層循環は21世紀に弱まる可能性がかなり高い。

 2100年の放射強制力(地球に出入りするエネルギーを変化させる影響力のこと)を別表シナリオのB1またはA1Bの水準で安定化しても、次の世紀中にさらに0・5度上昇することが予想される。

 2100年の放射強制力をA1Bで安定化させた場合、熱膨張のために2300年まで0・3〜0・8メートル、海面が上昇する。熱が深海に届くのに時間がかかるため、膨張率は速度を落としながらも海水面上昇は数世紀続くだろう。

 グリーンランドの氷床の縮小は、2100年以降も引き続き海面水位の上昇を引き起こすと予測される。

 地球の平均気温が産業革命前と比べて1・9〜4・6度上昇し、それが数千年間続くと、グリーンランドの氷床はほぼ完全に消失し、海水面が約7メートル上昇する。

 現行の予測では、南極は今後も寒冷で、広範な氷床の融解は起こらないと予測している。

 二酸化炭素の除去には時間がかかり、人間が排出する二酸化炭素は1000年以上、温暖化と海水面の上昇を引き起こす。

[毎日新聞]

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Posted by nob : 2007年02月03日 20:12