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■「無罪の心証」袴田事件の元裁判官、39年後の告白
静岡県清水市(現静岡市清水区)で1966年、みそ会社専務一家4人が殺害された「袴田事件」で、元プロボクサー袴田巌死刑囚(70)(再審請求で特別抗告中)に死刑を言い渡した1審・静岡地裁の判決文を起案したとされる元裁判官が「無罪の心証を持っていた」と、再審支援に協力を申し出ていることがわかった。
袴田死刑囚の支援団体が2日、公表した。
裁判官には、判決に至る議論の過程や内容を明かしてはならない「評議の秘密」が裁判所法で規定されており、判決から39年後の告白は議論を呼びそうだ。
「袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会」によると、元裁判官と名乗り出たのは、熊本典道氏(69)。事件の第2回公判から陪席裁判官を務め、68年の地裁判決で、3人の合議で主任裁判官として判決文を起案したという。翌69年4月に退官した後、弁護士活動を続けていた。
今年1~2月、熊本氏が住む九州で、同会のメンバーらが3回面会した。袴田死刑囚の姉秀子さん(74)も立ち会った。メンバーによると、熊本氏は「有罪にするには証明がなされていない」と無罪の心証を持ち、無罪の判決文を書き始めていたことを明かした。裁判官3人の合議で、熊本氏は無罪を主張したが、裁判長ら2人が有罪を支持、多数決で死刑と決まり、裁判長から判決文の起案を命じられた。熊本氏は「裁判長を説得できず、裁判長が有罪の決定をした。裁判長は最後まで迷っていたと思う」とも話した。
熊本氏は「袴田君の年齢も考えると、この時期にはっきり私の意見を述べておかなくてはならないと思った」と語り、秀子さんには「私の力が及ばず袴田君をこんな目にあわせて申し訳ありませんでした」と涙ながらに述べたという。
1審判決は、犯行を自白したとされる供述調書45通のうち44通を任意性が疑わしいとして証拠から排除、「自白の獲得に汲々(きゅうきゅう)として物的証拠に関する捜査を怠った」と捜査を批判する付言をした。熊本氏は「付言を入れたのは、私なりの精いっぱいの主張だった」と説明した。
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最高裁関係者によると、裁判官や元裁判官が、自身が関与した裁判の「評議の秘密」と称する内容を明かすのは極めて異例。「評議の秘密」を規定した裁判所法には、現職か元職かの規定はないが、「秘密は終生守るのが常識」という。罰則はないが、現職であれば、裁判官分限法による処分や裁判官弾劾法に基づき罷免される可能性があるという。
〔読売新聞〕
Posted by nob : 2007年03月02日 15:31