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■都民の税金を石原慎太郎家臣団が食い漁る
豪華視察、度を過ぎた身内登用と公費出張——。剛腕、石原慎太郎知事の足元がざわついている。「無駄遣い許さず」の言葉は誰に向けていたのか。国のせいではない。事務方のせいでもない。家臣団を束ねる知事の自覚こそ問われている。(編集部・藤生明)
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東京都庁7階の会議室に、石原慎太郎知事の四男延啓氏が描いた曼陀羅模様の絵が飾られている。知事はもともと画家志望で、息子の絵を前に誇らしげだという。その知事が、よもや「私のトップダウン」とみえを切って始めた文化事業「トーキョーワンダーサイト」(TWS)で、しかも自分の夢を叶えてくれた息子をめぐってケチがつくとは、思いもよらなかったに違いない。
「適正な手続きを経て旅費の費用弁償を受けたもので、違法性も問題もない」
12月7日夕の都議会本会議場。四男の公費出張を執拗に追及する野党議員に、知事は不機嫌極まりない様子で、そう答えた。
●憶測呼ぶ「指示」メール
TWS事業は、若手芸術家の育成を目的に2001年度から始まった知事肝いりの事業。本郷、渋谷、青山の3カ所に施設がオープンし、発表や制作の場として内外の芸術家に提供されている。
この事業に当初から深く関わってきた四男をめぐって、二つの公費出張が発覚した。一つは、TWSのアドバイザリー委員に1カ月就任し、その間にドイツとフランスへTWS館長夫妻らと一緒に渡航した一件。もう一つは、ダボス会議(04年)で都が催したパーティーをめぐり、事前調査と合わせて2度現地を訪ねていた一件だ。
特にダボスの一件では、四男の旅費約130万円が、パーティーで太鼓公演をした演奏者への会場装飾委託費に組み込まれていたことから、様々な憶測を呼んでいる。それというのも、公演の舞台背景「鏡板」を制作した四男の旅費支払いについて記した「指示文書」ともいえそうなメールが存在するからだ。
そのメールは、荒川満文化振興部長(当時)が、公演に関わっていた都参与の今村有策TWS館長に送った業務連絡で、03年11月26日発信の文面には、こうある。
《都と○○さん(太鼓演奏者)とで公演委託契約を結びます。その契約の中に鏡板制作費を盛り込まさせていただきます。この鏡板は、○○さんから延啓さんに制作発注してもらいます。延啓さんの旅費も含めて》
当の荒川氏は、
「太鼓演奏者が四男を芸術家として指名したもので、公費の迂回支出では決してない」
と言うのだが、編集部が独自に手に入れた領収書や見積書と重ね合わせると、この説明はいかにも不自然にみえる。
●芸術家仲間招くサロン
たとえば、渡航滞在費。「事前調査時@61万7440円*2、公演時@63万8940円*2」と記された見積書は、メールから20日も後の12月17日付。都側がおぜん立てし、見積書に延啓氏を含めた2人分の渡航費を盛り込ませた、と読み取るのが自然だろう。
事情をよく知る都職員は言う。
「四男のドイツ・フランス公費出張が問題になった後ですから、ダボスにも行っていたとは、とても言えない。しかし、共産党や新聞社が噂を聞きつけ、情報公開を仕かけてきた。『メールも明細もなかったことにしよう』と信じられない議論までされたようです」
かつて、薬害エイズ問題で厚生省がないと言っていた文書が大臣の一喝でロッカーから「発見」されたことがあったが、存在する文書を「ない」と言えば、都民を裏切る行為だ。メールの写しが出回っていたため観念したようだが、現物が外部に漏れていなかったら「公費出張」は闇に葬られてしまったのではないか。
別の都関係者は、こう解説する。
「そもそも、知事は家族がすべて。四男の活躍する場を自分がつくったとはさすがに言いませんが、本郷のTWSに、息子の芸術家仲間を招いてブランデーを傾ける、そんなサロン化した様子は庁内で知られていました。画家になりたかった知事にとって、この事業は特別な思いがあるんですよ」
●日テレ氏家氏が諫言
そもそも、延啓氏とはどんな人物なのだろうか。次男の良純氏が書いた『石原家の人びと』(新潮文庫)には、こんな一文がある。
《弟はそのまま画家の道を選んでしまった。そんな弟の選択に親父が反対しようはずもない。自分のやりたかったことを子供にやらせる、親父の深遠なる計画にまんまと引っかかったとも解釈できる》
慶大2年の時、水球部をやめ、画家で生きることを宣言した。大学卒業後、ニューヨークへ。そこで留学仲間として知り合ったのが、知事特別秘書の高井英樹氏と今村氏だった。高井氏は石原氏の秘書になり、知事当選とともに都庁に乗り込んだ。その2年半後、今村氏も参与に抜擢された。
「だから、知事に忠誠を示すためにも、みんなで延啓さんをもり立てる、彼らの中では至極当然の行動原理なんですよ」(都関係者)
知事は今村氏について「単に延啓氏の友人だから選んだのではない」と最近の記者会見でも説明している。だが、外野からは、息子の友人ゆえに公職に就いたように見えるから皮肉だ。その上、知事の厚い信頼に反して今村氏の評判が内外で芳しくないことが、皮肉な見方を助長してもいる。
04年の都監査報告は、TWSのずさんな運営の改善を求めている。
《事業計画の決定と決算の認定が審議されないまま、補助金の申請と精算書を提出している》
《事業経費配分、事業内容の変更、中止や廃止には、都の承認が必要なのに手続きがされていない》
税金の使い道が厳しく問われるこのご時世に、知事肝いりの事業が手続きを無視して運営されてきたとは驚きなのだが、ある関係者は、TWS事業が都歴史文化財団(理事長・氏家齊一郎日本テレビ取締役会議長)に統合されてもなお常勤21人態勢が整わず、派遣の事務方2人が切り盛りしている、と嘆く。
「今村で大丈夫なのか。四男をかわいがりすぎるのもどうか」
11月上旬にあったTWS青山の開所式の際、氏家氏が知事に、そう諌言した。氏家氏は、今村氏が03年に主導した「能オペラ」が頓挫したことで、今村氏に懲りたと言われている。知事は一言も返さずに黙っていたが、見るからに不機嫌な様子になったという。
一目も二目も置く氏家氏の一言。肝に銘じたのかと思いきや、その後の追及にも、こう反論し続けている。
「違法なんですか、違法だったら指摘してほしい」
●知事名代で浜渦氏訪欧
長野県政策アドバイザーを務めた青山貞一武蔵工大教授(公共政策論)は、こう批判する。
「李下に冠を正さずのたとえどおり、政治家は、身内なり側近を説明責任が十分果たせないような形で重用・登用することには慎重であるべきです。違法でなければ何をしてもいいなんてことは、政治家にはありえません」
この秋、都庁で、もう一つの欧州旅行が噂になっていた。その主は、昨年自民党との暗闘の末に辞職した浜渦武生前副知事。知事も同氏の専横を認めたはずが、今年7月末に参与として都庁に返り咲いた。9月、ベネチアの国際建築展に参加し、ウィーン、プラハと訪ね歩いたというのだ。
知事の推薦文には、こうある。
《浜渦参与は都市計画行政分野を担当していた前副知事、(中略)私の代わりに赴く人物として最適であると考えております》
かくして浜渦氏は、都市整備局技監ら4人を引き連れて欧州3カ国を歴訪したのだが、元都最高幹部の一人は首をかしげる。
「知事名代は副知事の役割です。前副知事といっても、今は参与。問責決議もされた人をなぜ」
ところが、浜渦氏は厚遇されたようだ。
まず、航空運賃。「8時間以上のフライトで体力的に厳しい」などとして、往復ともエコノミークラスからビジネスクラス(計92万2200円)へとアップグレード。さらにベネチアのホテルでは、参与の条例規定額1泊1万8800円をはるかに超える6万1000円(食卓料6700円含む)に切り替えた。
「出張が急だった」「秋の観光シーズンと重なった」が増額の理由で、一行の予定経費は約835万円に膨らんだ。そもそも訪欧の約10日前になって名代を立て、高額の出張を組む必要があったのだろうか。
●高額な知事交際費
騒動の中、知事の新刊『もう、税金の無駄遣いは許さない!』(WAC刊)が出された。都が今春導入した新会計方式をつづった内容で、知事はこう書いている。
《無駄遣いを許さないこの上なく強力な方法を編み出した》
高らかに宣言した知事に期待したいところだが、一連の知事発言を聞く限り、にわかには信じられない。
市民の知る権利擁護を目的に活動している情報公開クリアリングハウスの三木由希子室長は、高額な公費出張や知事の豪華出張に関する報道からこんな感想をもった。
「自分では説明がついていると思っている節があるのですが、客観的にみて、あれで説明がついていると思っている人は少ないんじゃないでしょうか」
そして、目を通したことがある都知事交際費の開示資料を例に、こう付け加えた。
「あれは『知事の交際費』ではなくて、『政治家個人の交際費』といった中身でした。友達の有名人など、都の支出基準から考えると信じられない金額。いまどきの他県の知事交際費は儀礼的なものですが、石原知事は質が違うんですよ」
知事が率いた政策集団「黎明の会」で事務局長だった大貫悦司氏は、知事の心中を、こう忖度する。
「『オレはこれだけ東京のために成果をあげている。だから、そんな小さなことで何を言っているんだ』と石原さんは思っているのかもしれませんね。古い政治家にはそうした傾向がありましたが、今の時代、手続きが重要。もう通用しないんですけれどね」
[朝日新聞/AERA]
Posted by nob : 2007年06月16日 02:11