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私の周囲にも目立つ軽視しずらい問題かと。。。

■管理職のためのセクハラ・パワハラ対処法 【第10回】胸の大きく開いた服装を注意したいが… 

田中 早苗(たなか・さなえ)
弁護士。1962年生まれ、慶應大学法学部卒業。“嫌ポルノ権”を提唱し、女性と人権、報道と人権などの問題に取り組む。内閣府男女共同参画社会の将来像検討会委員、日本弁護士連合会人権擁護委員会副委員長などを務める。『離婚入門そのプロセスと解決金額』(共著、ラビット出版(星雲社))、『企業のセクハラ対策最前線』(共著、ジャパン・ミックス)、『スクール・セクハラ防止マニュアル』(明石書店)、『図解別れたあとで後悔しない離婚と手続き』(主婦と生活社)など著書多数(写真:皆木 優子)。

相談

 部下の女性が露出度の高い服を着てくるが、どう注意すべきか

 メーカーで課長をしております。私の部署の女性の1人が、胸元が大きく開いたりした服装をすることが多く、(最近は流行なのかもしれませんが)冬でもジャケットの下はノースリーブで出社したりしています。

 スタイルもいい彼女は、こうした服装が似合っているのですが、取引先に行って何か問題が起きるのではないかと心配です。

 何気なく注意したいのですが、女性の服装に注意するとセクハラだと思われるのではないかと、こちらからは言い出しにくいのです。女性上司などに代わりに注意してもらえればいいのですが、わが社には適任の女性もいません。どうしたらいいでしょうか。(49歳、男性)

回答

 相手に不快感を持たせないように注意する。ドレスコード作成も一策

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 相手の服装を注意する際には、「胸元が開きすぎている」「肌を露出しすぎ」などのようにセクシャルな部分に焦点を合わせたり、「“夜の仕事”のような服だ」「私は、そういう服装は好きではない」と主観的な判断をしたり、「今夜はデート?」とプライバシーに関わるような発言をすると、相手に不快な思いをさせたり反感を抱かれる可能性は高いと言えます。

 仮にこのような注意の仕方をしてしまっても、直ちに違法なセクシュアル・ハラスメントとは言えませんが、できれば部下との軋轢を生じないようにあなたの真意を伝え、服装を改めてもらうのが望ましいでしょう。

 そのためには、次のような工夫が必要です。

相手の服装に特定した指摘の仕方ではなく、一般的に社会人としての服装についての注意を与える

からだの特定の部分(胸、腕、脚など)を指摘しない

服装に関する主観的な判断を加えない

会社の品位やイメージを考えた服装が望ましい、と伝える

 取引先から彼女の服装を揶揄されたり、クレームがつけられるなどの「実害」が生じているならばその事実を彼女自身に直接伝え、一般的な注意にとどまらず服装を改めてもらうように言いましょう。

 過去の裁判例を見ると、企業が服装、頭髪、ひげなどについて合理的な規則を定めた場合、社員はこれに従う義務を負うと判断しています。したがって、ドレスコードを作成し、周知徹底することも1つの方法です。管理職としても、服装全般について注意しやすいというメリットがあります。

 ドレスコードを決める際には、担当部署を決めるか、各部署・各年齢層から委員を選出してマナー向上委員会をつくるなどして、規則を決めていく方法があります。また、できれば管理職だけではなく、各部署にヒアリングをした方がよいでしょう。

 ドレスコードを決める時は、例えば「胸元が開きすぎていない服装」というのでは、どこまでが許容範囲か分かりづらくなります。具体的に「キャミソールやジーンズの着用禁止」「首から約何センチ以上の襟ぐりは不可」と規定するか、ネックラインを示す写真を掲載するなど、分かりやすいドレスコードを作ることが必要です。

 ヘアカラーについても、サンプルがあればより分かりやすいでしょう。日本ヘアカラー協会によると、6万5000セットを超える同協会のレベルスケールを使い、企業が自社内の従業員の染めてもよい髪の明るさを決めていると報じています。このようなサンプルを利用するのも1つの方法でしょう。

 ドレスコードを決め、それに違反する従業員は懲戒処分の対象となる場合もあります。バス運転手が制帽を着用せずに業務に従事した事案では、会社側の減給処分は有効とされました(横浜地裁平6・9・27判決労働判例664号33頁)。しかし、服装に関する規則や規律に違反した従業員に最も重い処分である解雇を課した事案では、解雇が無効とされる判例が大勢です。

 例えば、下記のような例があります。

茶髪を理由に解雇されたトラック運転手の事例では、解雇無効(コラム第5回)

ノーネクタイで業務に従事していた私立中学校教諭が解雇された事例では、ネクタイを着用しなくても乱れた服装とは言えないとされ、解雇無効(麹町学園事件東京地裁昭46・7・19労働判例132号23頁)

ハイヤー運転手が口ひげを生やしていて解雇された事例では、口ひげを生やしていても業務に支障はないとし、解雇無効(イースタン・エアポートモータース事件東京地裁昭55・12・15労働判例354号46頁)

 一昔前は、職場での茶髪は「暗黙の禁止事項」でしたが、今では髪を染めるのは一般的になっています。このように時代や年齢によって身だしなみに対する感じ方が異なりますし、会社のイメージも業種や業態によっても異なります。昨今では「カジュアルフライデー」や夏場の「クールビズ」、冬場の「ウォームビズ」などの浸透で、服装に関する意識もかなり変わってきています。

 最近、来年の米大統領選で民主党の指名争いでトップに立つヒラリー・クリントン上院議員が、胸の谷間が見える服装をしていたことが話題になりました。これについて「誰も見たくない」と酷評した記事が発表され、さらにその記事に対して「記事の内容は性差別そのもの」といった批判が殺到しました。大統領候補の女性も、胸元の開いた服を着る時代になったのかもしれません。

 今回の件についても、相談者のあなたの感じ方がほかの人より過敏なのかもしれない、という見方もあります。まずは問題の女性の服装の適否に関して、信頼できるほかの社員に意見を聞いてみてはどうでしょうか。その結果「やはり社会人としてふさわしくない服装だ」と思われた場合は、部下に注意をしてはいかがでしょう。

[BIZ PLUS]

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Posted by nob : 2007年11月24日 23:55