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汗までは出ないけれど溜め息は。。。

■定年後はやっぱり1億円欲しい

総務省の「全国消費実態調査」(2004年)によると、65歳以上の夫婦2人世帯の年間の生活費は平均305万円

 定年後のゆとりある暮らしには夫婦2人で1億円かかるとよく聞く。しかし、実際にかかるコストは暮らしぶりや住宅ローン残高、健康状態などによって異なる。リタイア時に必ずしもきっちり1億円持っている必要はないが、海外旅行や高度医療などのコストを上乗せすると、総額は1億円を超えるケースも出てきそうだ。夏休みの頭の体操を兼ねて、間単にできる算数ドリル程度の資産を試みてはいかが。出た数字を見て、汗が引っ込むかもしれない。

 日本人の平均寿命は女性が85.99歳、男性が79.19歳。男女そろって過去最高を更新した。厚生労働省の2007年「簡易生命表」に基づく最新データだ。長寿はもちろんめでたい事に違いないが、長生きできれば、コストも増える。先々を見越した資金の手当てが一層必要になるのは避けられない。

 総務省の「全国消費実態調査」(2004年)によると、65歳以上の夫婦2人世帯の年間の生活費は平均305万円。計算を分かりやすくするために、リタイア期間を定年退職の60歳から、女性の平均寿命の85歳までの25年間と想定しよう。60歳からコストが同じペースで発生すると仮定すると、 60〜85歳の25年間で305×25=7625万円となる。

 平均305万円という数字はそのままどの世帯にもあてはまるわけではない。平均というからには上にも下にも幅があり、高額所得世帯の場合、当然平均値よりも額が大きくなりがちだ。仮に2割上積みすると、総額は9150万円に跳ね上がる。平均よりも金額で2割程度豊かな暮らしをする世帯は総コストが1億円に迫る計算になる。

 ただ、実際には男性の平均寿命は女性より短いので、女性が1人で暮らす期間は生活費が下がる。しかし、住宅ローンを完済していても、固定資産税、リフォーム費用などが発生する。リタイアしてから10〜15年程度は車に乗るとしたら、車両費、維持費もかさむ。リタイア後は夫婦で旅行して回りたいと考える人が多いが、その費用もばかにならない。子供の結婚のようなライフイベント費もかかる。

 生命保険文化センターが全国の4000人余りに聞き取り調査した「平成19年度 生活保障に関する調査」によると、回答者が挙げた、「ゆとりある老後」にかかるリタイア世帯の月間生活費は平均で38.3万円。25年間を掛け合わせると、トータルの生活費支出は約1億1490万円にのぼる。

 老後を夫婦2人で暮らしていく上で、必要と考える最低日常生活費は月額23.2万円と、「ゆとり」ある暮らしよりも15.1万円低かった。この場合でも25年間トータルでは6960万円に膨らむ。

 総務省の「全国消費実態調査」には、高度医療の負担や、たびたびの海外旅行、趣味に投じる費用などが十分に見積もられているわけではない。住宅の建て替えやリフォーム、最近広がりつつある2地域居住も必ずしもたっぷりとは織り込まれてはいない。その意味では悠々自適のリタイアライフを思い描くのであれば、計7625万円よりも上積みを考えたほうがよさそうだ。

 現在の暮らしとは異なるコストも見越しておきたい。リタイア後に起業するケースでは当初資金が欠かせない。親・パートナーの介護費、年老いたペットにかかる費用なども現在は発生していなくても、いずれは必要になる可能性がある。

 しかも昨今の値上がりラッシュのような事態も想定外だ。インフレで貨幣価値がそがれていく流れになれば、現在の貯蓄額はインフレ分を割り引いてカウントせざるを得なくなる。75歳以上が加入する後期高齢者医療制度(長寿医療制度)のようなシニア層の公的負担がさらに重くなる可能性がある上、年金財政の窮迫を背景に、年金制度の見直しも現実味を帯びつつある。

 さらに、まとまった投資資金で収入を得ようと思うのであれば、その分は余裕資金として扱う必要がある。つまり、急な支出には使えない。資産運用でリターンを期待するなら、別のくくりで運用原資をキープしておく必要が出てくる。

 厚生労働省が想定するモデル世帯の年金は夫婦2人で計23万円程度。先に挙げたゆとりある生活費支出には毎月約15万円も足りない。残りは自前資金で埋め合わせしていくしかないわけだ。月15万円(年間180万円)を単純計算で25年に掛けると、4500万円に達する。運用に回した余裕資金や、緊急時の手元資金を除いて、4500万円を用立てるのは生易しくはない。

 日本経済新聞土曜朝刊の「日経プラスワン」が6月28日付けで掲載した記事「資産1億円で早期リタイアする?」では、「資産1億円で早期リタイアする」(不動産も含む全財産)と答えた人は3割弱にとどまった。引退にふさわしい金額は平均で約1億7400万円にのぼった。

 引退後の収入としてしばしばイメージされるのが、比較的安定した金融商品からの金利収入だろう。代表的な預け先としては、銀行の定期預金が挙げられる。ただ、昨今の定期預金は、金利を比較的高めに設定しているネット銀行でも年1%程度にとどまる。仮に1億円を預けても、1年間で100万円程度しか金利収入は見込めず、1カ月に30万円程度使っていたら、3カ月分しか持たない計算。早くから始めて複利効果を最大に生かす長期投資の取り組みが必要とされるゆえんだ。

 キャッシュがリタイア時に5000万円あっても、運用しないで単純に取り崩していくと、1カ月当たり30万円の支出ペースが続けば、16年余りで使い果たしてしまう。60歳からリタイア生活が始まると、76歳までしか持たない。支出を月15万円に抑えて、ようやく33年。93歳まで持たせられる計算だが、それでも病気や住宅リフォーム・建て替えなどの追加コストが発生すれば、女性の平均寿命をクリアーできるかどうかが怪しくなりかねない。どうですか、リアル怪談で汗は引いてきましたか?

[日本経済新聞]

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Posted by nob : 2008年08月24日 00:55