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原子力への依存こそが人災、、、地球を蝕み生命を脅かす原子力は決して人類の幸福な未来を担保できない。。。

■特集ワイド:東日本大震災 福島原発事故、専門家に聞く 最悪の事態、制御できるのか

 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の被災は、高濃度の放射能漏れという最悪の事態に発展した。政府は国民に対して「冷静」を求めるが、なぜ、原発の暴走を制御できないのか。安全は保たれるのか。それぞれの立場から専門家に聞いた。

 ◇まずは外出せぬこと--名古屋大教授・量子工学専攻、井口哲夫さん(56)

 今回の事故では、既に放射性物質のセシウムが周辺に放出されている。放射性物質が発する放射線は、細胞の遺伝子を傷つけてがんの発生リスクを高める。大量に被ばくすると直ちに人体に影響が出て、リンパ球の減少などが起きる。リンパ球をつくる骨髄は特に放射線のダメージを受けやすいからだ。

 一般人の1年の被ばく限度は1ミリシーベルト。15日に3号機周辺で記録された放射線量は時間当たり400ミリシーベルトでその350万倍。リンパ球の減少が起きるとされるのは累計500ミリシーベルトで、観測した場所に1時間半程度いればその値に達する状態になった。

 セシウムなどは静止状態では地面に落ちるが、風に乗ればほこりなどに付着して遠くに運ばれ、最後には路面や家の屋根に落ちる。外に干した洗濯物、歩いている人の衣服や皮膚にもくっつく。既に避難や屋内退避の指示が出ている地域は、そこの屋外に長時間いれば健康を害する恐れがあると、国も認めているということだ。

 放射性物質が飛来する危険が迫った場合はまず外に出ないこと。体に付いた可能性があれば、セシウムなどは水に溶けるので、手洗いしたり、シャワーを浴びれば落ちる。一番大切なのは体内に入れないことだ。放射線を出す能力が半分になる半減期はセシウムで30年。粘膜などに付着すると、長期に影響が出る。外出する必要があるならマスクやゴーグルを着け、ぬれたタオルで鼻などをふさぐのが効果的だ。

 自分が住む地域の放射性物質の量がどの程度かは気になるだろう。自治体は放射線量を測定するモニタリングポストを設置しており、公的な情報に注意してほしい。数値が大きく変動しなければ過剰な心配の必要はない。通常なら時間当たり0・1マイクロシーベルト程度。100倍でもまだ、人体に影響が出る程度ではないとみられるが、心配ならば、食べ物は水洗いすればいいだろう。【宮田哲】

 ◇気になるのは2号機--元原子炉設計技術者の科学ライター・田中三彦さん(67)

 直接目で見ることも近づくこともできないから、肝心の「原子炉圧力容器」や、それを格納する巨大なフラスコのような形の「格納容器」中でいったい何が進行しているのか誰にも分からない。その状況で作業をせねばならないところにこの問題の深刻さがある。

 多くの人の命がけの作業にもかかわらず、12日に福島第1原発1号機は水素爆発を起こし、翌々日には3号機がより規模の大きい水素爆発を起こした。一方、2号機は14日、原子炉圧力容器内には冷却水がほとんどなくなり、燃料棒がむき出しになった。そればかりか、格納容器の一番下にある「圧力抑制プール」というドーナツ形の構造物の近くで爆発音が起きたとの発表や、圧力抑制プールが損傷したらしいとの報告もあった。断定はできないが、恐らく圧力抑制プールの中で水素爆発が起き、そのために損傷したのだろう。損傷が大きければ、圧力抑制プールから放射性物質が格納容器の外にばらまかれた可能性もある。さらに4号機でも突然火災が起きた。5号機、6号機の燃料貯蔵プールの温度が上昇しているという報告もあった。地震発生時に定期検査中だった4~6号機にいったい何が起きつつあるのか、これも気がかりだ。

 福島第1原発のうち特に気になるのは2号機。考えうる最悪のストーリーは、燃料棒が溶けて原子炉圧力容器の底に落下すること。原子炉圧力容器や格納容器は鋼鉄製だが1500度ぐらいで融解する。大量の燃料棒が溶融して落下すれば、やがて原子炉圧力容器の底は溶けてしまうだろう。“その後”どうなるかは誰にも分からないが、地下水脈に触れて大規模な水蒸気爆発を起こす可能性もある。そうならないようにと、2号機の原子炉圧力容器への必死の海水注入作業が試みられている。この深刻な事態が一刻も早く沈静化されることを祈らざるを得ない。【本橋由紀】

 ◇悪条件が重なった--近畿大原子力研究所長・伊藤哲夫さん(62)

 高濃度の放射能漏れが起き、想像を絶する大変な事態になった。残念だが、想定した以上のことが起きた、としか言えない状況だ。

 福島第1原発は、これまでの災害から考えられる安全対策を、何重にも施してきたと考えている。

 マグニチュード9という大地震は海外では起きているが、国内では予想を絶する大地震だった。それによって、次第に手の打ちようがないところまできている。

 建設時の安全審査においては地震規模はマグニチュード8程度を想定し、さらに地震を起こす断層は13万年前までさかのぼって調査していた。ここは1971年に営業運転を開始しているが、古いから悪い、というものではないと私は思う。

 1号機、3号機の爆発は水素爆発による原子炉建屋の破壊だった。2号機や4号機でもそれぞれ爆発や火災が起きている。対策としては、原子炉の中を少しでも冷やせる状態を確保して、事故の拡大を防ぐことに全力を注ぐしかない。

 東京電力は詳しい情報をもっと速やかに出すべきだと指摘されているが、今は人災だと責める段階だとは言えないと思う。

 そもそもインフラが切断されてしまったので、冷却処理するための水、さらには作業のための電源も確保ができなかった。これは考えられないことだった。悪条件がすべて重なってしまったのだ。「誰の責任だ」とは言えないだろう。

 福島第1原発で次々と爆発が発生し放射能漏れが伝えられるが、そのたびに菅直人首相は記者会見において、国民に冷静な対応を求めている。政府が避難指示を出している限りは、それに従ってほしい。

 今回事故のあった原子炉が今後どうなっていくのかも、今は予測ができない。ただ、原子力発電の先進国・日本のこの事態を受けて、世界的にも原子力行政の見直しが進んでいくのではないか。【江畑佳明】

 ◇想定すべき人災--ノンフィクション作家・広瀬隆さん(68)

 これは人災だと考えています。その責任の所在は東京電力だけでなく、菅直人政権、経済産業省の原子力安全・保安院、原発を推進してきた大学や大学院教授らにもあると言えますよ。

 津波発生は日本の宿命で、1896(明治29)年の「明治三陸沖地震」では高さ38メートル以上の津波が起こっている。だから「想定外」という表現は当たらない。想定すべきだったんです。

 原子炉設備とその周辺には膨大な配管、配線があって、津波と地震の揺れで相当な影響を受けたと見るべきです。電源系統がだめになっているから、非常用のディーゼル発電機が動かなかった。

 配線にダメージを受けている中で、コントロールルームが機能しているのか。膨大なデータを処理する能力が維持されているのか。計器を信用してよいのか。それも分かりません。

 そもそも、東電は原発の単なる「運転者」なんですよ。詳細な構造は原発メーカーの技術者でないと分からない。保安院の職員も分からない。これを解説している学者も「現場」を知らない。

 メディアはなぜ、東電や政府の発表を垂れ流すのでしょうか。放射能が漏れていても「直ちに人体に影響を与えない」と繰り返しています。しかし、発表されているのは1時間当たりの数値。365日×24時間で計算してみなさい。想像力もなく、レントゲン並みとか自然界の何分の1と報道している印象です。漏れるという「異常」に対する驚きも怒りも薄れている。

 福島から排出された放射線は宮城県の女川原発付近でも検出されましたし、風向きによって関東地方にも達しています。

 仮に最悪の事態に至ったならば、放射能汚染は1週間ぐらいかけてじわじわ列島を包んでいく。逃げる場所は全くありません。

 これが原発の震災、人災なんです。【根本太一】

[毎日新聞]

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Posted by nob : 2011年03月16日 16:16