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様々な立場と視点。。。Vol.6
■[FT]今こそ原発を推進しよう(社説)
原子力業界にとって、今週はまたつらい1週間になる。日本の福島第一原子力発電所からの放射能漏れが続いているうえに、26日はウクライナのチェルノブイリ原発事故からちょうど25年という節目の日を迎え、原子力に反対する活動家たちに格好のスローガンを与えているからだ。
■原子力のない世界は不安定
例えば先週末には、9人のノーベル平和賞受賞者が原子力発電の段階的な廃止を求める書簡を各国の元首に送付した。世界中の人々が「これまで以上に平和に、そして安全に暮らせる」ようにするためだという。
実際のところ、原子力のない世界は安全性が低くなる。原子力は現在、世界の発電量の14%を占めており、これを化石燃料や再生可能エネルギーで代替することは当面できない。強行すれば、エネルギー市場が深刻な不安定性や不足に見舞われる恐れがある。要するに、エネルギー安全保障には原子力を含む多様なエネルギー源が必要なのだ。
こと安全性については、原子力は別の基準で判断することが避けられない。広島への原爆投下で原子力の時代が始まって以来、人々は核分裂の破壊的な威力と、姿も見せず音も立てずに忍び寄ってくる放射能汚染の危険性の両方を懸念してきた。
しかし、原子力の時代が始まってからの原子力エネルギーによる死傷者数(鉱石の採掘や燃料精製の現場での事故から、発電所からの放射能汚染によるものまでを含めた数)は、石炭や石油、天然ガスの燃焼による犠牲者数よりケタ違いに少ない。炭素燃料がもたらす気候変動という、論争の的になっている2次的影響を無視した場合でもそうなのだ。
■現実的な安全性評価を
政治家は、原子力に対する国民の不安を尊重しなければならない。チェルノブイリがもたらした長期的な放射性降下物には、恐ろしいものがある。現地から2000キロ離れた英国の一部地域では今も、農家が自由にヒツジを移動させられない。そして悲しいかな、福島第一原発の数キロ圏内に住む人々は、今後何年も普通の生活に戻れないかもしれない。
このため、世界各国の政府が福島の事故に対応して原発増設計画を一時停止し、既存の原子炉の安全性を点検することにしたのは正しかった。ただし、巨大地震と津波という特殊な状況が欧州北部に当てはまる可能性が低いことを考えると、原発7基の一時停止を命じたドイツは行き過ぎだった。
こうした点検は、形ばかりのジェスチャーではなく、福島で起きたことを踏まえて本当に安全性を評価する試みでなければならない。それと同じくらい重要なのは、点検を不必要に長引かせ、政治家たちがエネルギー政策について難しいが不可欠な判断を下すのを回避させてはならない、ということだ。
■研究を停滞させてはならない
現在の原子力の嘆かわしい特徴は、大半の発電設備が古いことだ。これは1979年のスリーマイル島の事故に続くチェルノブイリの事故で、新規の承認と建設が何年も凍結されたためだ。世界の原発の大多数は、20世紀半ばの防衛産業で生まれた設計に基づき20年以上前に建設されたものだ。
アレバの欧州加圧水型炉(EPR)やウェスティングハウスの軽水炉AP1000といった現在の「第3世代」の設計は、受動冷却システムなどの安全装置を備えている。こうした装置があれば、津波の後に福島第一原発を破壊した深刻な過熱をほぼ確実に防げたはずだ。
しかしこうした設計は完璧からはほど遠く、将来に向けてより優れた原子炉(例えば、ウラン燃料ではなくトリウム燃料を使う原子炉や、地下深部で稼働する原子炉など)を開発するにはもっと研究が必要だ。
そして言うまでもなく、原子炉の安全性以外にも対処すべき問題がある。特に大事なのは、放射性廃棄物の長期的な貯蔵や処分だ。
チェルノブイリは過去四半世紀にわたって原子力の開発を凍結させた。もし福島が今後25年間にわたって、これと同じくらい効果的に原子力の開発を凍結させるようなら、世界にひどい遺産を残したことになる。
(翻訳協力 JBpress)
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[The Financial Times/日本経済新聞]
Posted by nob : 2011年04月26日 13:45