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やれば容易い、、、原発停止も自然エネルギーへの転換も。。。
■原発停止で電力は足りるか
日本列島が夏本番を迎え、電力不足懸念に震えている。全国54基の原発がすべて停止する事態が現実味を増しつつある。10電力の地域独占体制に電力安定供給を依存してきたツケが回ってきた。
政府は11日、欧州連合(EU)のストレステスト(耐性調査)を参考に、定期検査を終えた原子力発電所と運転中の原発の安全性を2段階で評価し、再稼働の是非を判断すると発表した。再稼働の時期は不透明になり、来春にも全国54基の原発がすべて停止する事態は一段と現実味を増しつつある。
東電から「離脱」したのに…
高島屋東京店と日本橋三越本店本館。東京・日本橋を代表する2つの百貨店には、意外な共通点がある。両者とも、東京電力から電気を買っていない、という事実だ。
電力の小売り自由化で、契約電力50キロワット以上の事業所なら、どの電力会社からでも電気が買えるようになった。百貨店はもちろん、中規模のスーパーやビルまで、全国の消費電力の6割は自由化の対象だ。
電力業界用語では、東電など地域を独占する10電力会社から離れ、「PPS(特定規模電気事業者)」と呼ばれる新規参入の電力会社に乗り換えることを「離脱」と称している。
電気新聞の調べによると、4月1日時点での「離脱」は全国で約2万6000件、735万キロワット。出力100万キロワットの原発なら7基分に相当し、前年同期より1万件、140万キロワット増えたという。電力もほかの資材と同じく、価格やサービスの内容を比較して決めるという、ごく当たり前の商取引だ。それでも、これまであまり離脱の実態が表に出てこなかったのは、各企業にとって重要な取引先である電力会社との“関係”を意識したからだろう。
高島屋は東京、新宿、横浜、港南台、高崎の各店が三菱商事系のダイヤモンドパワー(東京都中央区)、大宮、柏、岐阜の各店が住友商事系のサミットエナジー(東京都中央区)、京都、洛西の両店が、東京ガス、大阪ガスなどの出資するエネット(東京都港区)というPPSから電力を買っている。三越伊勢丹ホールディングスは新宿三越アルコットなどもPPSと契約。スーパーでもイトーヨーカ堂は全国170店舗のうち10店舗がPPSから電力を調達しているという。
こうした事業所は、本来なら節電の必要はない。しかし経済産業省は東電と東北電力管内の大口顧客と契約しているPPSも電気使用制限の対象としたため、あえて東電を選ばなかったメリットが受けられなくなっている。
やはりPPSの新日鉄エンジニアリング(東京都品川区)から電力を調達しているルミネ(東京都渋谷区)の花崎淑夫会長は「東電から買っていないのに、節電の対象になるのは納得がいかない」と憤る。
「協力するつもりはない」。関西電力の15%節電要請を拒否した橋下徹・大阪府知事。ところが、府庁舎の電力はエネットから購入していると分かり、「節電の意味はない。府庁を電力会社に頼らなくても電気が賄える象徴にしたい」と、言い換えた。
PPS各社には今も問い合わせが殺到しているが、実際に原発停止による不足分を埋め合わせるには、PPSでは力不足だ。
経産省・資源エネルギー庁の電力調査統計によると、4月の発電実績のうちPPSは6億6732万キロワット時で、全体のわずか1%。小売自由化部門の販売電力量のシェアでも3%止まり。なぜこれほど低いのか。
電力会社がPPSと競争になった場合、採算を半ば度外視した価格設定で契約を押さえにかかったり、電力調達の場である日本卸電力取引所(JEPX)や送電線の利用を制限されたりすると、PPSは太刀打ちできない。
かつて北海道電力が大口顧客との長期契約で料金を割り引く一方、PPSや自家発電への切り替えを理由に途中解約した場合は高額の違約金を義務づけていたため、2002年6月、公正取引委員会から警告を受けたことがある。
震災後は東電の計画停電でPPSまでもが送電網を使えず、JEPXが東電管内の取引を停止(6月から再開)したあおりで、一部の電力調達がままならなくなった。「需要家PPS」としてJEPXで割安な電力を調達しようとしていた日産自動車、ホームセンターの島忠、食品製造の武蔵野ホールディングス(埼玉県朝霞市)はJEPXを脱退した。
「埋蔵電力」引き出せぬ市場
PPSからの調達が期待薄だとすれば、ほかに電力不足を解決する妙手はないのか。経産省と電力業界に対する不信に駆られた菅直人首相が飛びついたのが「埋蔵電力」。企業などが持つ自家発電設備が生み出す電力である。
電力調査統計によると、2011年3月末の自家発電所の発電能力は全国で5383万キロワット。2010年9月末は6035万キロワットとしていたが、経産省は最近、その数字を630万キロワットも大幅に下方修正した。それでも100万キロワットの原発に換算すればちょうど54基分で、7月末で 5680万キロワットという東電の供給力にも匹敵する。東電管内だけでも1656万キロワットあり、これをそっくり上乗せできればいいのだが、そうもいかない。
自社の電力需要を補い、停電に備えるための自家発電設備だが、最近の燃料費高騰で電力会社からの方が電力が安く手に入る状況にあり、稼働率は半分程度にとどまる。経産省は「180万キロワットしか使えない」と報告し、菅首相に突き返されたというが、どれだけ稼働率を高められるかが問題だ。
九州電力玄海原発の再稼働が遠のいた九州では、安川電機が6月末までに北九州市内のロボット工場などに最大消費電力の5%を賄える自家発電設備を導入した。トヨタ自動車九州は九電から節電要請があった場合、主力の宮田工場(福岡県宮若市)で自家発電を消費電力の最大5割まで引き上げることを検討する。こうした企業努力がどこまで広がるかがカギになる。
東電管内では節電が効果を発揮し、藤本孝・東電副社長は12日の日本経済新聞のインタビューで「夏場は乗り切れるメドがつきつつある」との見通しを明らかにした。「電力が足りないから原発が必要というのは脅し」という橋下知事の発言は正しいのかどうか。電力不足の焦点は徐々に、原発依存度が高い関西へと移りつつある。
電力危機の直接の原因は福島第1原発事故と原発の順次運転停止にある。だが、もう1つの大きな失敗は、電力自由化によって多様な電力会社が競争する市場の構築を怠り、地域独占の電力会社に安定供給を委ねてしまったことだ。余剰電力を自由に売買できれば自家発電やPPSの潜在能力をもっと引き出せるはず。1つの電力会社が供給能力を失っても、他から電力を調達できるように市場を再構築することが必要不可欠だ。
[日経ビジネス]
Posted by nob : 2011年07月19日 23:11