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抜本的対策には遠くとも、、、対処開始には評価。。。

■生活保護改革:打ち切り対象、明示 国、地方中間まとめ

 厚生労働省と全国知事会など地方側代表は12日、「国と地方の協議」を開き、生活保護受給者の自立・就労支援強化などを柱とする生活保護制度改革案の「中間とりまとめ」を行った。月額10万円の給付金と無料の職業訓練をセットにした支援制度に関し、職業訓練中の受給者が理由なく訓練をやめた場合に加え、就職が見込めるのに訓練の申し込みをしないケースも生活保護打ち切りの対象とすることを盛り込んだ。

 10月に始まった同制度を最大限活用するため、中間案では理由なく訓練をやめた場合など、生活保護の打ち切りを検討する対象を初めて示した。法改正は不要で、厚労省は詳細を詰めた上で速やかに実施する意向。

 他の見直し案も運用改善策中心で、検討していた生活保護受給者の医療費に自己負担を導入するといった抜本改革案は影を潜めた。柱の就労支援強化策では、年齢などに応じた支援策を国が作り、期限を定めて集中的に実施するとした。清掃など直接就職に結びつきやすい技能訓練に取り組む自治体には、財政支援などを検討する。

 保護費の半分を占める医療費の抑制策については、電子レセプト(診療報酬明細書)のチェックを強化し、医療機関の過剰診療を防ぐことを挙げた。

 不正受給対策では、国による告発基準の策定、保護申請時に暴力団員でないとの申告を求めることや、申請書類に顔写真を添付する案を示した。地方側が要望していた保護費の全額国庫負担は「中長期的な課題」として事実上、見送った。

 不況と高齢化に伴い、生活保護受給者は今年8月時点で約206万人に達し、過去最多を更新。11年度の給付費は3・4兆円(予算ベース)に上る。地方はその4分の1を負担するため、受給者が全国最多の大阪市などが抜本改革を求める声を上げ、今年5月から国と地方で協議を進めてきた。【石川隆宣】

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 ◇生活保護改革案、中間とりまとめ骨子

・年齢などに応じた就労支援パターンを国が策定し、期間を定め集中的に実施

・就労に結びつきやすい技能習得訓練の実施(例・清掃、警備など)

・貧困の連鎖を断つため、子どもや親への養育相談・学習支援などの充実

・正当な理由なく求職者支援制度を受講しない場合は保護の停廃止も検討

・電子レセプト(診療報酬明細書)を活用した医療扶助適正化に向けた地方自治体の取り組みを支援

・金融機関へ資産調査の際、本店に一律照会できるよう要請

[毎日新聞]


■生活保護の急増は本当に“不正受給”が原因か?
蔓延する「受給者悪玉論」の死角と真に論ずべき課題

厚生労働省の発表によれば、今年7月時点での全国の生活保護受給者は、205万495 人と過去最多になったという。この報道とセットで語られるのが、「不正受給」の問題だ。「不正受給が増えているから、生活保護費が膨れ上がり、国や自治体の財政を圧迫しているのだ」という論調が、世間に広まっている。しかし、生活保護受給者の増加は、本当に「不正受給」や受給者の怠慢ばかりが原因なのだろうか。報道の裏に隠された受給者の実態を探ると、これまで定説のように語られていた「受給者悪玉論」が、一面的なものの見方に過ぎないことがわかってきた。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

「戦後最大」「過去最多」の生活保護
不正受給報道の裏に隠れた興味深い議論

「生活保護受給者、戦後最大の205万495人に」

 厚生労働省の発表によれば、今年7月時点での全国の生活保護受給者は、205万495人に達し、過去最多となった。「戦後最大」の4文字に、眉をひそめた人も多いだろう。

 追い打ちをかけるように、今月6日には、8月時点での受給者がさらに9376人増え、2ヵ月連続で過去最多を更新したことも発表された。それに関連して、とりわけ問題視されているのが、各自治体が発表する「不正受給」の件数が増えていることだ。

「不正受給が増えているから、生活保護費が膨れ上がり、国や自治体の財政を圧迫しているのだ」という論調が、世間に広まっている。

 この論調を裏付けるかのように 12月1日には「生活保護を受けているのに高級車に乗っている人がいる」と通報を受けたことから、ある受給者が生活保護費を搾取していたことが発覚し、逮捕に至った事件が報道された。

 これらの報道に関する街の声を聞くと、生活保護受給者へ向けられる視線は、日に日に厳しくなっていることがわかる。

「真面目に働いている人が損をして、生活保護を受給する人が得をするような仕組みはおかしい」(20代男性)

「役所は、受給するべき人なのかどうか、しっかり見極めて欲しい。現状では見極めが不十分なのではないかと感じる」(30代男性)

 不況が続き、上がらない給料に頭を抱える納税者らにとって、「働かずに保護を受けている」ように見える生活保護受給者は、疎ましい存在かもしれない。また、「不正受給」がこれだけ報道されれば、「行政の管理がずさんなのではないか」という疑いも生まれる。

 しかし、こうした「不正受給」は本当に増えているのだろうか。また、これほどまでに大きく取り沙汰されるべきものなのか。

 一連の報道の陰で、「不正受給」に焦点を当てずに、生活保護問題を扱う報道もある。11月24日付けの読売新聞「急増『生活保護』緊急座談会」では、「本当に困っている人たちが受給できるようになった」という発言があり、急増の背後にあるのは、医療、雇用、介護、年金などの社会保障制度のほころびと指摘された。

 また、「生活保護「受給者最多」のカラクリ――本当に問題なのは貧困の放置」(オルタナ・オンライン)と題されたネット記事では、全人口に占める生活保護受給者数の割合である「保護率」は、これまで受給者数が過去最多だった1951年の2.4%に比べ、今年7月時点で約1.6%と、むしろ少なくなっていることを指摘している。

高級車に乗るような受給者はごくわずか
実は国際的に見ても低い日本の「捕捉率」

「日本の捕捉率は国際的に見て非常に低い」と指摘するのは、『絶対にあきらめない生活保護受給マニュアル』(同文館出版)の著者で、社会福祉士の田村宏氏。捕捉率とは、生活保護を受けるほど生活が困窮している人の中で、実際に生活保護を受けている人の割合のことで、日本は20%程度と言われる。

 生活保護受給者の増加で、誰も彼もが生活保護を申請しているかのような印象を受けるが、実際のところ、保護を受けるべき環境で暮らしていても申請しなかったり、申請しても役所の窓口における「水際作戦」で受け付けられなかったりするケースは多いという。

「家族がいる場合、子どもが学校の給食費を免除されたり、区役所の職員が定期的に訪れることなどがあり、近所に生活保護を受けていることが知られやすい。『恥ずかしい』と感じ、申請しない人は多いと考えられる」(田村氏)。

 本当の問題は、生活保護受給者の増加ではなく、むしろ「まだ受給しなければならない層がいること」と田村氏は指摘する。

 しかし、生活保護受給者の増加により、「財政の圧迫」を叫ぶ声は多い。震災や雇用状況の悪化により、受給者がさらに増えることが予想される今後、財政再建のためには何が必要なのか。

「現在の問題点は、生活保護が、年金や雇用保険、児童扶養手当、障害者年金などの社会保障でカバーし切れていない人のセーフティネットになってしまっていること。本来ならば、他の社会保障制度で助けなければいけない人が、制度の不備によって、生活保護を受けるしかないところまで追い込まれているのが実態だ」(田村氏)

 これは、前出の読売新聞の座談会記事と重なる内容だ。

働いても収入が同じでは頑張れない!
国会議員も指摘する生活保護の問題点

 それでは、不正受給の実態についてはどうだろう。

 各自治体の不正受給の件数を報じる記事は、地方新聞で多く読むことができる。11月20日の茨城新聞で報じられた内容によれば、2010年度の生活保護の不正受給は前年比37%増、1億922万円に上ったという。

 信じられないような額だが、記事をよく読むと、「極めて悪質なケースは少ないが、年金の遡及(そきゅう)があった場合や、高校生の子どものアルバイト収入などを申告しないままにしているケースが目立つ」という、県福祉指導課のコメントがあることがわかる。

 収入を申告しないで生活保護費を受け取る「不正受給」の実態については、「受給者の問題とばかりは言えないところもある」と話すのは、民主党生活保護ワーキングチーム事務局長でもある、初鹿明博・衆議院議員。

「たとえば、生活扶助で10万円もらっている受給者が、月給5万円のアルバイト収入を得た場合、控除はあるがほぼ同額が減らされる。働いても働かなくても、得られるのは10万円ちょっと。頑張って働いてももらえる金額はほぼ同じなわけで、これでは就労する意欲がなくなってしまう。これが生活保護の一番の問題点だ」(初鹿議員)

 事務局では現在、受給者が働いた分を少しずつでも貯金できる仕組みができないかを、検討しているという。

 冒頭で紹介したような「生活保護をもらっていながら高級車を乗り回す」といった例は、実際はごくわずか。制度の不備が、不正受給の増加を招いている一面もあるのではないか。

受給者のお金を管理する第三者の不在
生活保護の扶助に「後見扶助」を加えるべき

 また、前出の田村氏は「生活保護の使途」についても指摘する。現在の生活保護制度は、申請がなかなか受け付けられないという現実がある一方で、いったん受給が決まると、その使途を管理されることは少ない。

「20年ほど前までは、アルコールなどで金銭管理に問題のある人は、役所の窓口に毎日来てもらい、1日2000円ずつ渡す……などというようなこともあった。今は申請が多いので、そんなことはやっていられないだろう。受給者のお金を管理する第三者の存在が必要だ」(田村氏)

 田村氏の提案は、生活保護として認められる扶助(現在は、生活扶助・住宅扶助・教育扶助など8つ)に「後見扶助」を加えることだという。

「後見扶助をつけ、受給者のお金を管理する成年後見人などを付ける。保佐や補助人も含め、後見人などを付けることで、生活保護が貧困ビジネスなどに渡ってしまうことを防ぐことができるし、後見扶助は後見人などに渡ることになるので、そこに小さな雇用が生まれることになる」

 生活保護の介護扶助は介護保険を、医療扶助は医療制度を支える。「後見扶助」は、受給者の金銭管理の手助けになると共に、雇用のかたちにつなげることで、所得の再分配につながるというのだ。

背景には社会保障制度そのものの不備も
自己責任を問うより受給者の生の声を聞け

 厚生労働省の発表によれば、生活保護者受給世帯のうち、最も多かったのは「高齢者世帯」(42%)だが、目立つのは10年前に比べて4倍に増えた「その他の世帯」(17%)だ。「その他の世帯」は、「高齢者世帯」「母子世帯」「傷病・障害者世帯」以外の受給世帯で、働ける年齢層を含む。

 この「その他の世帯」の受給については、「怠けているのではないか」「困窮は自己責任ではないか」という批判がある。これについて、田村氏と初鹿議員の双方が口にしたのが、「生活保護受給者の問題を自己責任と考えるのであれば、一度、実際に生活保護受給者に会った方がよい」という意味合いの言葉だった。

「周囲に馴染めなかったり、いじめられたり――。社会がずっと排除してきた人たちが今、雇用の場をなくしている。健康状態が良いからと言って、仕事に就くことができるわけではない」(初鹿氏)

 大卒でも就職が厳しいと言われる現況がある。指摘しづらい問題ではあるが、受給者の中には、これまで社会に上手く適応できなかった人も多い。「その気になれば働けるはずだ」と言うのは酷ではないのか。

 IT化による単純労働の減少や、核家族化により就労能力のない層を身内がカバーしなくなったことも、社会への適応能力が低い層が生活保護に走る遠因となっている。「自己責任」と決めつけることは簡単だが、高齢化が進む中、就労人口を少しでも減らさないためには、貧困層への教育制度を考え直す必要があるのではないだろうか。

 これまで述べてきたことは、生活保護に否定的な読者からすれば、「甘すぎる」のかもしれない。しかし、「生活保護は怠け者が受けるもの」「不正受給が横行している」といった一面的な見方では、生活保護制度の本来の意味での不備や、その背景にある社会保障制度の未整備を見落とす恐れがある。

 客観的な視点は忘れてはならないものの、生活保護受給者に理解を寄せることは、生活保護につながる社会問題に改めて向き合うことにつながるはずだ。

[DIAMOND online]

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Posted by nob : 2011年12月13日 09:59