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それぞれの自分基準のビジネス、、、スタイルではない価値観の問題なのだけれど。。。

■働くのは1年で4ヵ月だけ、残りはサッカー観戦へ!?
定住地を持たない“ガチノマド”ライフの実態

オフィスではなくカフェなどの場所でWi-Fiやクラウドを駆使しながら働くスタイル「ノマド」が注目を集めている。しかし一方で、ノマド批判が一部でブームとなっているのも事実だ。ネット上では有名無名問わず、多くの人がこの話題を論じ、過激な批判も目立つ。

なぜ、ノマドはこんなにも話題になるのか。それはノマドという言葉が、単なる仕事術やスタイルを越え、なぜ人は働くか、人はどう働くべきなのかといった根源的な問題を突きつけているからなのではないだろうか。

そこで当連載『ノマドってどうよ? ~賛否両論から「働く」を考える~』では、ノマドの話題を軸にしながらも、「理想の働き方は?」と言った根源的な問題を考えていきたい。

今回は、ノマドを実践する1人であり、“ガチノマド”を自称するフリーランスの経営コンサルタントである村上アシシさんにご登場いただいた。(インタビュー日:2012年8月下旬)

■村上アシシさん
本名・村上敦伺さん、通称アシシさん。1977年生まれ、北海道札幌市出身。大学卒業後外資系経営コンサル会社アクセンチュアに就職。6年間働き、退社時の役職はマネージャー。2006年からは独立し、個人コンサルタントとなる。サッカーの国際大会がある度に開催国に出向き観戦し、世界中を放浪、自身を“ガチノマド”と名乗る。
公式サイト:http://atsushi2010.com/
Twitter:@4JPN
Facebook=https://www.facebook.com/atsushi.murakami

【ノマドへの見解/筆者の印象】
[ノマド肯定派]
本人自ら“ガチノマド”(=ガチなノマド)を自称することから、ノマドに対する思い入れは強いようだ。一方で、ただのノマドではない呼称を付けるところに、現在、メディアに取り上げられる機会の多い著名なノマドへのアンチとも受け取れる。どこがどう“ガチ”なのかは本編で紹介する。

――はじめまして。今日はよろしくお願いします。今回は、アシシさんご本人から出演したいとご連絡をいただいたのですが、登場してくださった理由はなんですか?

 僕はノマドについて他の方とまた違った考え方をもっているんで、そこを語りたいと思いました。まあ、自著の宣伝になれば良いかな、とも思いまして(笑)。

W杯がどうしても見たくて、会社を休職
お金より自由がほしいアシシさんのワークスタイル

――プロフィールを拝見しますと、大学卒業後アクセンチュアに就職して、6年間働いて2006年に独立してコンサルタントをされていらっしゃいますね。独立されたきっかけを教えていただけますか?

 2006年のワールドカップ(開催国:ドイツ)がどうしても見たかったんです。で、3ヵ月間、自己都合で休職をすることにしました。W杯を見たいという理由で休職するのがバレるのは嫌だったので、会社にはMBAを取得するために英語力を高めなくてはいけない、だから、語学留学のためにカナダに行くという名目で休むことにしました。そこで、カナダに1ヵ月留学してから、カナダ経由でドイツに向かいました。

 ……と、いろいろ細工はしましたが、まあテレビ放映もされていますし、結局は会社にバレました。まあ、会社のルールではたとえW杯に行きたいという理由であっても、直属の上司が許せばOKなんですよね。で、3ヵ月経って日本に戻らなければいけないときに、海外の自由な雰囲気に触れていたら会社に戻りたくなくなってしまいまして。社畜にはなりたくないと思いました。

 実はそれ以前から、僕より先に独立した先輩や、仕事を紹介してくれるエージェントからも助言をいただいていて、「お前なら独立してもやっていけるよ」と言われていたんですね。そういうことも理由の1つで、会社を辞めて独立しました。

――W杯に向かう前までは会社に不満はなかったんですか?

 なかったですね。会社のなかにいると、仕事内容はすごく充実していました。毎日深夜2時に帰宅しても、僕のなかでは納得できていましたし、それなりの報酬をもらっていたので。

 ただ、海外に出るといろんな価値観の人と出会うことになりますよね。そのなかで、様々な生活をしている人の話を聞くうちに、自分の働き方は狂っていた、働きすぎていた、と思いました。

――独立してからすでに6年間が経過していますが、事業の調子はどうですか?

 安定していますね。コンサルという仕事の特徴ですが、仕事を紹介してくれるエージェントが複数いまして、まあ人材派遣なんですが、そういう人達と仲が良いので、僕の働き方に合った仕事を紹介してくれています。

――仕事を紹介してくれるエージェントとの信頼関係があるということですね。ノマドは影響力で仕事が来るという話もありますが、やはり仕事をくれる発注元との関係が重要ですよね。

 サッカー観戦から戻ってくる1ヵ月前に、そろそろ日本に戻るから案件を紹介してください、と言うときちんと適材適所な仕事を紹介してくれるんですね。そこで、いくつかの候補のなかから、忙しさと報酬を見ながら決めていきます。個人コンサルは6年間やっていますが、挫折というのはあまりなかったですね。

――コンサル業界は門外漢なので、重箱の隅をつつくような細かい話になるかもしれませんが、プロジェクトによっては契約を延長したいとか言われることもあるんじゃないですか?

ロンドン五輪を観戦したアシシさん

 それはありますよ。個人コンサルは1ヵ月や2ヵ月など小さな単位で契約を更新していきます。でも、その際に、ロンドン五輪があるとなると、どうしても現地でサッカー観戦がしたいので、五輪前に契約は打ち切ります、という前提ですすめます。それをお客さんに直接伝えることもあれば、エージェントに伝える場合もありますね。で、それでも村上を使いたい、というクライアントとは契約します。あとから希望を出すと関係が弱くなってしまうので。

 あと、今まで個人コンサルをやってきて、最も長く1つの会社で個人コンサルを続けたのは8ヵ月なんですよね。だいたい助っ人で入って、役目が終わると契約も終わるというのが多いです。逆に、長期の契約と違って、今すぐ来てほしいとか、そういう案件も多いんですよね。

――ただ、やはり「○月で必ず辞めます」という条件は、「いつでも働きます」という人と比べて弱くなったりはしないですか?

 確かに損になることはありえますね。ただ、先ほども話したように個人コンサルはそもそも契約期間が短い。それにマーケットが狭いので、競合もそれほど多くはないですから、仕事の出来不出来、これまでの経歴とかを見ながら総合的に判断されるので、今まであまり問題になったことはないですね。

――あと、場合によっては半年以上休まれることも多いということは、働き出したときに仕事のカンが戻らないとか、そういうことはないですか?

 今のところないですね。逆に、長期で休んでいるとモチベーションがすごく上がります。働きたくてしょうがない、という感じになります。

――もう1つ質問です。単純に、1年の半分だけではなく、全部働けばもっと儲かるわけですよね。僕なんかはわりと貧乏性で、仕事があるなら受けることが多いんですけど、そういう考えはないんですか?

 そこがノマドになるかどうかの気質の問題ですね。僕はそれほど物欲がないので、キャリアが欲しいとか、お金が欲しいとかあんまりないんですよね。それよりも自分が楽しみたいとか、そういうことが僕のなかでは大きいんです。

 あと、人生には優先順位があって、若いうちにしかできないことがあるとも思っています。僕は結婚して家庭も持ちたいし、そうなると独り身の今ほどは自由にならないですから。

――前回登場されたイケダハヤトさんに続き、ノマドの方々は家庭に対して意外にしっかりとした考え方をお持ちですね。でも、現在の年齢では(アシシさんは34歳)、1年の半分を休んだとしても稼げるかもしれないけど、今後も稼げるかどうかは心配になりませんか?

 僕は40代になったら、個人コンサルとして現場に出ることはないと踏んでいます。40代の個人コンサルはいるんですけど、そうなるとどんどん単価があがっていくんですよ。さらに、ポジションも高まるので、そんな重要な役目を会社に所属しない個人に任せるのか? という問題点が出てきます。そうなるとやはり狭き門なんですよね。40代になっても下っ端で良い、という発想もありますが、そうなると現場で上に立つ人が30代とかになって、扱いづらくなったりしますからね。

 だから、今のような働き方ができるのは30代のうちのあと5年ぐらいかな、と思っています。40代になったら、それまでに仕組みを作って起業するというのも手ですし、逆にエージェントの立場になるというのも手ですね。何かしらの変化、決断は必要になってくるでしょうね。

フリー(ノマド)になって、
労働時間と単価(報酬)はどう変わったのか?

――読者がいちばん興味を持つのは、会社員時代と個人コンサル時代で、労働時間や所得はどのぐらい変わったのか、というところだと思います。

 この6年間を平均すると、1年間に4ヵ月しか働いていないんですよ。ちなみに去年は1.5ヵ月しか働いていません。労働時間を単純に期間で割ると、労働時間は3分の1ということになると思います。会社員だったころは、土日の出勤が必要なプロジェクトだとしても、会社の命令なら行かなくてはなりませんが、今は土日の出勤が必要な案件は断っています。その他もろもろを考えると、単純に年間の労働時間は5分の1ぐらいになっていますね。働いている時期は、終電が終わるまでには帰れる程度ですかね。

――労働時間は総合すると5分の1ぐらいに極端に減っていると。所得はどうですか?

 所得は減っていますよ。これは特定の会社の話ではなく、コンサル業界や、外資銀行などの所得水準の話ですが、仕事ができて役職が付いていれば、30代だと年収は額面で1000万円は越えると思います。で、僕の場合ですけど、1年間フルに働けば、余裕でそれを上回るんですよ。だから、単価で言えばアップしていますね。ただ僕の場合は4ヵ月間しか働かないので、当然年収は1000万円には届きません。家族を養っているわけではないので、今の年収で十分やっていけてますけど。アクセンチュアの元同期はマンションを買ったり外車を買ったり、羽振りのいい生活をしてますけど、僕は一切生活水準上げてないんですよ。夕飯は300円の牛丼をよく食べるし、服もユニクロが多いです。それで節約した分をサッカー観戦旅費に充ててるんですけどね。

ウィークリーマンションをフル活用!
定住地を持たないガチノマド実践法

――日本に帰られたときはウィークリーマンションを契約しているという話を聞きましたが、本当ですか?

 僕は都内に定住している場所はないんですよ。まず、実家が札幌なんですけど、海外から日本に帰るときは札幌に寄って実家に荷物を置きます。で、都内で暮らす用の必要最低限の荷物を持ちます。今回は、段ボールが2個とスーツケースが2個でした。それを郵送します。で、ウィークリーマンションに入居します。割引キャンペーンで、2週間限定で住むと半額以下という物件が多いんですよ。それを活用しています。

 で、本格的にプロジェクトに入る前に、面談がありますよね。その段階ではどの会社で働くかまだ決まっていません。なので、その期間はできるだけ安いウィークリーマンションを活用して、都内を転々としながら面談に臨みます。今は家賃・管理費・光熱費・インターネット代・契約手数料など、込み込みで2週間6万5000円とかですね。と言うことは単純計算で月額13万円ですね。20平米なんですけど。これはすごく安い。この暮らしは、ものが少ないからできることなんですよね。スーツケースに入らない荷物は持たない主義なので。

 で、会社が決まったら、会社のできるだけ近いマンスリーマンションに切り替えます。1ヵ月15万円とかですね。まあ、普通の賃貸契約と比べると高いと言えば高いですが、もう働き出しているので所得もあがります。僕は仕事を始めるとできるだけ仕事に集中したいので、会社の近くに住んで通勤代を浮かせますね。

――なかなか真似をするのが難しそうな生活ですが、すごく参考になります。スーツケースに入らない荷物は持たないって、映画「マイレージ マイライフ」(※1)みたいですよね。

(※1)2009年アメリカ映画。ジョージ・クルーニー主演。主人公は会社に所属はしているが、年間を通してほとんどアメリカ国内を移動し続け、スマホ(劇中ではiPhoneではなく確かBlackBerryだった。時代ですね)を駆使して仕事をこなす、というスタイルはノマドそのもの。アシシさんと話していて、マイレージマイライフはノマド映画だと気づいた次第。

 なぜこんな生活をしているかというと、長期で海外に行っているときに東京での賃貸契約を切れるからです。家賃を払わなければ、かなり浮きますからね。定住する場所を本当に持たない。だから僕は、“ガチノマド”なんです。

――なるほど、ガチノマドを自称される理由が分かりました。本当に定住地を持たないという意味だったんですね! 本日はありがとうございました。

 まあ、コンサルだからこんなことが出来るんでしょうね……。

■今日のまとめ

 分量の問題で書けないことがたくさんあったけど、アシシさんとのインタビューは1時間30分を越え、有意義な話がたくさん聞けた。実際にノマドや期間労働者を目指したいという、特にコンサル関係の職種にとってはすごく参考になるものではないだろうか。自著の宣伝の一環とはいえ、年収などキワドイ部分もいろいろ語っていただいて助かった。

 このような働き方ができるのは30代まで、など終わりを定めているのも、とても現実的だと思った。現実的に考えた結果、一見トリッキーな生活スタイル(ウィークリー・マンスリーマンションを移動するガチノマド)になっているというのが面白いなと感じた。

[DIAMOND online]

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Posted by nob : 2012年10月08日 02:45