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一億総自営業者社会、、、それがすべて一人会社であることが究極の理想。。。Vol.3
■社長は会社を「大きく」するな!
山本憲明 [税理士]
とうとう最後の連載になりました。ここまでおつき合いいただきまして、ありがとうございます。これまで「安易な拡大戦略をとるのはやめて、無理に会社を大きくするのはやめよう。時代に合った経営をしていこう」というお話をしてきました。最終回の本日は、経営者の「幸せ」「やりがい」について考えてみたいと思います。
「人生の充実」も
経営者の大きなテーマ
経営者の幸せ・やりがいの1つ目は、「仕事だけをするのではなく、広い視野を持って活動することで、人生が充実する」ではないかと思います。
小さな会社の経営をやっていく場合、時間的な余裕が生まれる場合が多いと思います。仕事以外の余剰時間を使って、家族と過ごす、あるいは地域社会に貢献するなどの活動もできます。また子どもがいる方は、子どもと接する時間を長くしたり、子どもに直接教育を施すことができるでしょう。
仕事だけではなく、それ以外のことにも時間を使ったほうが、人生全体のバランスもとれますし、世の中にとってもプラスに働くのではないかと思っております。
経営は、会社規模を拡大すればするほど難しくなります。資金繰りの問題をはじめ、さまざまなリスク対応を迫られるからです。労務・法務・税務など、おそらく多くの経営者にとって「嫌な仕事」の比重がどんどん高まります。
難しい経営をすれば、そのぶんプライベートにしわ寄せがきます。家族との時間もなくなり、土日も仕事に明け暮れる、これならサラリーマンのほうがよかったんじゃないか、そんな経営者をたくさん見てきました。
「経営者としての成功」ももちろん大事ですが、こうした「人生の充実」も、経営者にとっては大きなテーマではないかと思っております。
「小さな会社」による
大きな社会貢献
経営者の幸せ・やりがいはもう1つあります。雑誌などの「社長さんインタビュー」では、よく次のようなお話がされます。「会社をどんどん大きくして、社員をたくさん雇い、雇用の確保に貢献したい」というものです。
もちろん、これは本当に立派な考え方だと思いますし、否定するつもりはまったくありません。しかし、私のような才能のない普通の経営者は、普通の経営者なりの社会貢献ができるはずです。「小さな会社の社会貢献」について考えてみたいと思います。
まずは、納税や寄付による社会貢献が挙げられます。小さな会社の場合、利益を出せば、その約40%程度を税金として支払うことになります。「規模を大きくしたはいいものの、利益が出ず、納税がほとんどされない」という会社も多い中、金額は小さいながらも納税をしっかりすることで、立派な社会貢献になっていると思います。
また、もしサラリーマンの方が本連載を読んで、小さな会社を立ち上げて利益を出したとすれば、私にとってとても嬉しいことです。そういった成功例が増えることで「思い切って起業しよう」という人が増えれば、それは社会全体にとってプラスです。
小さな会社が増えるということは、それを経営する経営者(同時に、その事業に投資する投資家)が増えるということだからです。その会社がしっかりと利益を出し、納税をすることができれば、大きな社会貢献につながります。
「経営規模としては、
むしろ小なるを望む」
ここまでおつき合いいただきまして、本当にありがとうございました。では最後に、ある経営者の言葉を借りて、本連載を終わりたいと思います。
「経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する」
これは、ソニー創業者、井深大氏の言葉で、東京通信工業(ソニーの前身)設立時に起草した「東京通信工業株式会社設立趣意書」に書かれてあるものです。
この設立趣意書が書かれたのは、終戦の翌年、1946年です。「経営規模としては小なるを望む」。こうした精神が、戦後の日本の「ものづくりの現場」にはあり、それが高度経済成長に結びついたのではないかと思っております。
それがいつしか、「いたずらに利益ばかりを追う利益至上主義」、あるいは「時価総額を最大化することのみが目的」となり、その反動の1つが、現在、多くの大企業で行われている、大規模な人員削減ではないでしょうか。
企業経営に100%の正解はありません。しかし、「会社は大きくするもの」という価値観は、今の時代に合わなくなってきている、私はそう思っております。
経営者・会社役員の皆さま、起業を考えられている方々、そして、今後社会の中枢を担う30~40代のビジネスパーソンに、本連載が、少しでもお役に立てば、これ以上の喜びはありません。
(連載了)
[DIAMOND online]
Posted by nob : 2012年11月12日 17:53