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最後の安定業種?パチンコ業界すらも先細り、、、それでも痩せても枯れてもだけれど。。。

■先細りに焦るパチンコ業界
なりふり構わぬ異業種荒らし

2000年代前半には約30兆円の市場規模を誇ったパチンコ業界だが、
相次ぐ規制強化に若者のパチンコ離れも加わり、20兆円を下回るまでに凋落した。
生き残りのために仕掛ける積極的な行動が、軋轢(あつれき)を生んでいる。

 真の狙いは約230万人の“小金持ち”名簿─。

 昨年11月、東証1部上場のパチンコメーカー・平和の傘下でゴルフ場運営会社2位のPGMホールディングスが、同じくゴルフ場運営会社最大手のアコーディア・ゴルフに敵対的買収を仕掛けた。

 ゴルフといえば、サラリーマン時代にゴルフ接待が必須であった団塊世代の象徴の一つだ。買収に成功すれば約130のゴルフ場に加え、今後の収益源としてターゲットにしている団塊世代を中心とした約230万人の“小金持ち”名簿が手に入ったが、必死の抵抗を試みたアコーディアが、配当金の大幅増配を打ち出したことなどにより、今年1月、不成立に終わった。

 様々な業界が“小金持ち”の多い団塊マネーを獲得すべく動き出しているが、最も派手な動きをしているのがパチンコ業界ではなかろうか。この動きは「団塊の世代をパチンコホールに呼び込もう!」という生易しいものではない。「パチンコ事業以外で団塊マネーを取り込み、それを収益の柱にする」という方針の下、相手の嫌がる敵対的買収などの行動も辞さない。

 なにゆえに軋轢を生じさせてまで異業種への進出を試みるのか。それは、パチンコ業界の市場規模縮小と関係がある。

3分の2に減った市場規模

 警察庁が毎年公表している「ぱちんこ屋等営業所数及び遊技機別備付台数」によると、2011年12月末のパチンコホール営業所数は、前年の1万 2479店から156店減少し、1万2323店となった。1995年の1万8244店をピークに、16年連続で前年比減少となっている。近年の推移を見れば、07年12月末時点の前年比1089店減少が最大で、それ以降、年々減少幅は縮小しているものの、減っていることには変わりない。

 12年末の店舗数も、毎月加盟店の調査を行っている全日本遊技事業協同組合連合会によれば減少する見通しとなっている。この数値は都道府県公安委員会における許可数を示しており、休業・開業準備中の店舗も含まれるため、実際に営業している店舗はさらに少なくなる。業界では、通常営業中の店舗は全国で1万1000店を割り込んでいるとの見立てもある。

 2000年代前半まで約30兆円の市場規模を誇ったパチンコ業界であるが、04年以降パチンコと関わりの深い法律の規制強化が打撃となり、現在では20兆円を下回る規模まで凋落している。パチンコホールの店舗数推移だけ見ても、そのことが裏付けられている。

“コンプガチャ”もライバルに

 「“飲む、打つ、買う”という言葉は、もはや死語。最近の若い世代の動向を見るとギャンブルをする割合が減ってきたのではないでしょうか」都内でパチンコホールを経営する店長はそう嘆く。確かに、公営ギャンブルを運営する日本中央競馬会(JRA)を見ても、12年、15年ぶりに売上高が前年を上回ったが、11年までは14年間連続で減少していた。12年の前年比増は前年が東日本大震災の影響を強く受けていたためであり、実質的には98年から続く減少傾向に歯止めがかかっていない。

 要因として考えられるのは、可処分所得の減少はもちろんのこと、最近では、携帯電話やスマートフォンのゲームがギャンブル業界のライバルとの見方もある。ギャンブルは、射幸心を煽り、そしてそれを満たすことの繰り返しにより、人の心を取り込んでいくものだ。ケータイゲームでいうと昨今、未成年を含むユーザーに高額の利用料を支払わせることに繋がると問題視された、コンプリートガチャ(コンプガチャ)がその代表例である。

 「射幸心旺盛でパチンコホールの常連になる要素を持った若者が、コンプガチャ程度のドキドキ感で満足してしまっているようだ。若者がパチンコホールに足を運んでくれなくなることは、業界として将来的な不安要素の一つ」と業界団体幹部は危機感を露わにする。

 実際、パチンコホールは、「多くの企業の給料日である25日直後に加え、年金の支給日である偶数月の15日直後が最も繁盛する」(前出のパチンコホール店長)。このことからも、若い世代のパチンコ離れが顕著になっていることがわかる。先行きは極めて不透明である。

 とはいえ、パチンコ業界にはまだまだカネが有り余っている。メーカーでいえば、12年に年間を通じて最も売れたパチンコ台は、三洋物産の「CR大海物語2」で約25万台。続いて、京楽産業の「CRぱちんこAKB48」の約20万台である。パチンコの新台は1台あたり40万円前後でホールへ販売されるのが一般的であるため、1台40万円で計算すると、「CR大海物語2」は約1000億円、「CRぱちんこAKB48」は約800億円である。帝国データバンクによると、12年末時点で、製造業で年商1000億円以上の規模を誇る企業は454社しか存在しない。ヒットさえすれば、1機種1000億円を売り上げてしまうのがパチンコメーカーの恐ろしさである。

 パチンコホールに目を移しても、業界最大手マルハンの12年3月期売上高は2兆718億円となり4年連続で2兆円を突破した。当期純利益も238 億円を確保している。第2位のダイナムを傘下に持つダイナムジャパンホールディングスは、12年8月に香港証券取引所へ上場を果たし、約160億円を市場から調達した。12年のパチンコ販売台数は約248万台。ピーク時の350万台という販売台数からすると、危機的状況にも見えるのだが、業界内でも淘汰が進んでおり、生き残った業者は大手企業を中心としてまだまだ勢いはあるといえる。

 平和は11年12月にPGMをTOB(株式公開買付)により連結子会社化したが、実はゴルフ場経営を手掛けるのは2度目である。

 前回は94年だった。当時の子会社である平和ローランドが世界的コースデザイナー加藤俊輔氏を擁して群馬県に「平和ローランドゴルフ倶楽部」をオープンさせた。しかし、ゴルフ場運営のノウハウがなかったパチンコメーカーには、そのコースを支えるだけの手腕はなかった。パチンコ関係者以外の利用客が伸び悩んだことなどにより、99年に子会社の株式とゴルフ場諸施設を平和の創業者であり、当時の大株主であった中島健吉氏へ売却した過去がある。

 「PGM買収時に平和の大株主であった石原昌幸氏が、『カネは出すがクチは出さない』と確約したため、現社長の神田有宏氏は経営を引き受けた」(業界関係者)そうだ。

 平和は過去の失敗を踏まえ、パチンコ業界以外から人材を登用することにした。実際、PGMには平和側から管理部門の社員が数人程度出向しているだけで、人材交流はほとんどない。石原氏は平和従業員に「パチンコもゴルフも時間を消費させることによって報酬を受け取るビジネスモデルとして共通するところが多い。パチンコ業界が縮小傾向の中、2つ目の事業の柱を創り出さなければならない」と説明しており、パチンコ事業とは一線を画す方針だ。

 異業種に進出しているのは平和だけでない。セガサミーホールディングスは、12年2月にRHJインターナショナルが保有する「フェニックス・シーガイア・リゾート」(宮崎県宮崎市)運営会社の全株式を取得し、子会社化することについてRHJインターナショナルと合意し、株式譲渡契約書を締結、3月に子会社化した。セガサミーはこの買収によって複合レジャー施設を運営し、時間に余裕のある団塊世代への長期滞在型サービス提供を模索する。

 しかし、こんな声もある。「4億円という破格の株式取得価格に飛びついたようでした」あるセガサミー社員は当時をそう振り返る。フェニックスリゾートに対する借入返済目的で、約54億円の貸し付けを同時に行っているが、合計しても60億円にも届かない。複合レジャー施設の運営ノウハウの蓄積こそ目的の一つだったことは確かだが、「上層部としては、買収してから考えるということだったのですが、買収から1年が経とうとしているにも関わらず、目新しい動きはありません」(前出の社員)というのが現状のようだ。

 そうした状況の中、13年に入ってからも、韓国の釜山広域市が実施した複合レジャー都市「センタムシティ」開発計画に公募入札し、落札している。ここでもまたノウハウの吸収を狙う。

 実はセガサミーにも、過去ゴルフ場経営に失敗した平和と同じく、カジノ構想を含む複合レジャー施設計画を実現させようとして失敗した過去がある。 07年、横浜市のみなとみらい21地区で、当時の中田宏横浜市長と組んで大規模開発を計画した。しかし、リーマン・ショックや法律の壁など障害が次々と発生し、断念していたのだ。平和もセガサミーも“リベンジ”となるか注目だ。

まだまだ続く異業種荒らし

 ノウハウはないが、資金だけは豊富にある、というパチンコ業界が、他の業界を荒らし回っていることについて、警戒感の広がりとともに問題視される向きが強まっている。たとえ黒いものでもトップが白と言えば白になるパチンコ業界の常識に変わりがないということも問題だ。

 パチンコ業界は上場している企業が存在するとはいえ、まだまだ不明瞭な点が多い業界である。パチンコホールにおける換金行為は言うまでもなく違法であり、“三店方式”という仕組みを利用してグレーゾーンで営業をしているに過ぎない。

 そうした組織に一般企業が飲み込まれることになるので、軋轢が生じるのは当たり前だ。セガサミーは、03年にパチンコメーカーのサミーがゲームメーカーのセガを買収して誕生したが、未だに、旧セガ社員の中には、旧サミーの企業体質に拒絶反応を示す人も少なくないそうだ。

 冒頭で触れたように、平和傘下のPGMによる敵対的買収劇から身を守ったアコーディアも、13年3月期末の配当を前期末の1200円から5500 円にまで引き上げざるを得ない状況になった。TOBは不成立に終わったものの、混乱に乗じて今年1月にアコーディア株を買い占めた村上世彰氏と関係の深い投資会社「レノ」との攻防を含めて、今後アコーディアに財務的な影響を与えることは必至だ。

 マルハンが介護業界へ進出するという噂もあるように、平和、セガサミーのほかにも、異業種へ進出を目論むパチンコ関連企業は多い。なりふり構わぬパチンコ業界の行動に異業種が翻弄されるのは、まだまだこれからである。

[WEDGE Infinity]

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Posted by nob : 2013年03月16日 11:53